まいごのえんそく!
※ちよりんの一人称は「ちより」となっていますが、読み方は「ちよりん」です。
いち
「ちよりん!起きて!」
とおくのほうからおねえちゃんのこえがきこえている。ゆらゆらからだがゆれている。
「ねむい……」
ちよりのくちからぽろっとでたひとことに、おねえちゃんが「はあ〜……」とためいきをついたのがきこえた。
「ちよりん、今日は何の日だったっけ?まさかちよりんが忘れちゃったりするの?」
(きょうは……あっ!!!)
「えんそくだあー!!!」
ばっとおきあがると、めのまえにいたおねえちゃんのあたまとごっつんこしたよ。すごくいたくて、でもちよりはそれよりもえんそくがたのしみで、いたいのなんてわすれちゃった。
でもおねえちゃんはおでこをさわりながら「いたたた……」っていってる。おねえちゃんはえんそくじゃないから、いたいみたい。
「おねえちゃん、ごめんね?」
おでこをゆさゆさするおねえちゃんのてのうえにちよりのてをおいて、いっしょにゆさゆさした。
するとおねえちゃんのゆさゆさがとまって、ちよりのかおをみてきた。なんだろう、とおもって、くびをかしげると、
「ちよりんのお陰で痛いのなくなったよ〜!ちよりんありがとうありがとう!今日も私の妹でいてくれてありがとうね、ちっよりん〜……」
って、なんだかめをきらきらさせてちよりにだきついてきた。こういうこと、よくあるんだ。おねえちゃんのいたいのとか、かなしいのをなくせるのってちよりだけなんだって。だからちよりはおねえちゃんのおいしゃさんなんだよ。でもちよりはげいじゅつしてないんだよ。ちよりがいるだけでおねえちゃんはげんきになるんだって。
「おねえちゃん、ぎゅ〜はすごくうれしいけど、ちよりはえんそくにいきたいです!」
「そうだったね、ちよりん。お着替えしようね。今日のお洋服決めた?」
「うん!きのうちゃんときめたよ。きのぼりもとくいだよ!」
じゃじゃーん!とおねえちゃんにようふくをみせた。おねえちゃんはてをぱちぱちしてくれた。
ちょっとまえは、いつもおねえちゃんがふくをきめてくれてた。でもぷりぱらにいくようになってから、じぶんでふくをきめるようになったんだ。もっきんはたたいておとをだすよ。
「かの〜、ちよりん〜。朝ご飯できてるわよ〜!」
とおくからままがちよりたちをよんだ。
「今行く〜!」とおねえちゃん。
「ちよりも〜!」とおねえちゃんのあとにつづいてちよりもへんじをする。
べっどからたちあがって、かーてんをあけると……
「わ!まぶしい!」
おひさまがぎらぎらおそらにういていた。くもはどこにもなくて、とってもきれいにはれている。さいこうのえんそくびより!ちよりのなまえはことざとちよりだよ。
まいごのえんそく!