零下の部屋
「心臓に、魚の小骨が刺さったの」
ちくちく、 血管 ちくちく。
寝間着のままゴミ出しに行く月曜の朝
僕はテーブルに置かれた弁当を手に取り
家を、出る
夕方
僕が帰ってきたら、今度は彼女が出て行く
僕がいない間寝ていた彼女
彼女がいない間寝ていた僕
部屋に舞う白い息 漂う埃 失う誇り
口には出せない感傷 綯交ぜの感情
空っぽの部屋にこだまする溜め息が、
独りでに、増殖している
脱ぎ捨てた下着 縫い掛けた雑巾
シンクに積まれた食器 斑らに空く戸棚
冷たくなった服で満たされた洗濯機
を、回すのは3日後 ぐちゃぐちゃの布団
散在する重要書類 や チラシ
要るモノ 要らないモノ 捨てるモノ
ぜんぶ、 ぜんぶ、 ごちゃごちゃと、 綯交ぜ。
休み無しの 安月給で暮らす 毎日
僕らは共に生きているだけで
生き生きとしていない 毎日
万年冬の世界で暮らす2人
今日も、綺麗な雪が降る。
零下の部屋