仕事前の暇つぶし

寝る前にぱっと思いついたネタです。短編なので特に深く構成を練らずに書きました。
登場人物も二人だけと、狭い空間の中で繰り広げられる話です。

 夜でも十分に暑かった。動くだけで汗が出そうなほどの蒸し暑さ。時刻は、午前一時を回ったところだった。前触れも無く、俺の携帯電話が鳴った。携帯電話が鳴るのに前触れも何もないのだが。液晶には、大学の友人の名前が表示されていた。俺が起きていたからよかったものの、普通こんな時間にかけてくるのは迷惑な行為ではなかろうか。しかし、大学では世話になっている友人だ。出ない理由もない。

「もしもし、こんな時間にどうした。」
『も、もしもし、悪い夜遅くに。』
「まったくだ。もし寝てたら出ないか、出てもキレてたぞ。」
『あ、ああ。本当に悪いと思ってる。だけどちょっと聞いてくれ。』
「なんだ?なんか悩み事か?夜は悲観的になりやすいらしいからな。」
『違う。茶化さないでくれ。』
「…わかったよ。ほら、話せ。」
『ああ…うちの家の玄関にな、センサー式の電気があるんだ。わかるだろ。』
「うん。よくあるやつな。」
『あれがな、点いてるんだ。一定時間経てば消えるんだけど、すぐ点くんだ。』
「…どういうことだ?」
『いやな、いつものように適当にギター弾いてて、さあ寝ようと思ってふと窓の外見たんだよ。そしたら電気が点いてて…』
「よくそんな時間にギターが弾けるな。」
『部屋にちょっとした防音対策してるから大丈夫なんだよ。てかそんなこと今はどうでもいいだろう』
「それでどうした。」
『考えて見ろよ。動きに反応して点く電気がずっと点いてるんだ。誰かがうろうろしてるってことじゃないか!』
「大きい声を出すなよ。お前んとこの親が起きちまうぞ。」
『すまん…でも今日親がいないんだ。用事があるとかで、二人とも母さんのほうの実家に行ってて。だから親に頼ることもできないんだよ。』
「ん、そうだったか。まあその年で親に頼られてもな。気になるなら覗き穴からでも見てやればいいだろ。人か人じゃないかぐらいはわかるだろ。」
『嫌だよ。怖いからこうやってお前に電話かけてるんだろ。』
「いい年して何言ってんだ。他に家には誰にもいないのか?」
『ああ。兄弟とかもいないしな。今家には俺一人だ。』
「…そうか。お前の住んでるところ辺りで、最近強盗が増えてるらしいな。それだったりしてな。」
『笑いながら物騒なこと言うなよ!マジで怖いんだから…』
「いや悪い悪い。そうか…お前のギターって高いやつだっけ。」
『はあ?今は関係ないだろ。…俺がバイト頑張って買ったいいやつだよ。まあ中古だったけど。』
「そうか。関係ないな。で、状況は変わってないのか。」
『えっと…ああ、まだ電気は点いてる。いつまで居るんだよ…なあ、どうしたらいい?』
「どうしたらいいって言われてもなあ。ほっといて寝たら?」
『気になって寝れないだろ!警察呼ぼうかな…』
「やめろ!ほんとに誰かいるかどうかもわからないのに警察呼ぶなんて近所迷惑だろ!野良犬とか猫かもしれないだろ!」
『…だよな。ていうか、なんでお前がそんなに怒るんだ。びっくりしてちょっと冷静になっちゃったじゃないか。』
「わ、悪い。ちょっとテンションが上がっちゃってな。」
『そうだよな、動物かもしれないしな。そう思ったらあほらしくなってきた。寝ようかな。』
「そうしろ。絶対なんでもない。」
『悪かった。じゃあまた明日な。』
「おう」

 電話が切れた。まったく勝手なやつだ。それにしても暑い。暑さというものは、いくら服を脱いでも仕方がないから困る。だから夏は嫌いなんだ。かと言って、今は脱ぐわけにはいかない。もう少しで仕事だからだ。そしてそのために外にいる。また電話が鳴っている。またあいつからだ。もう寝るんじゃなかったのか。呆れつつも、俺は電話に出た。

『助けてくれ!さっき寝る前にトイレ行こうと思ったら、なんか玄関のドアがドンドンいってたんだ!おまけにドアノブも少し動いてたし…慌てて部屋に戻って布団にもぐりこんで電話してんだ!』
「お前この暑いのによく布団かぶれるな。」
『今はそんな話じゃないだろ!』
「わかったうるさいな。ドアがドンドンいってたって?何でだと思う。」
『そりゃお前、誰かが入ろうとしてドアを開けようとしてるんだろ!ドアノブも動いてたし。今は部屋にいるから音は聞こえないけど、きっとまだやってる!』
「お前本当に怖がりなんだな。今、外は結構風吹いてるぞ。風でドアが動いただけだろ。」
『でもドアノブが!』
「お前が怖がったから動いてるように見えたんだろ。よくある話じゃないか。」
『…そうかな…うん、そうだな。ちょっとびびりすぎたわ。何回も悪い。』
「ああ。じゃあ俺そろそろ仕事だから。」
『仕事…?お前こんな時間からバイトなのか?』
「こんな時間に電話かけてくるやつが何を言ってるんだ。まあバイトというより趣味みたいなもんだからな。」
『よくわからないけど、がんばれよ。』
「ああ、ありがとう。」

 電話を切った。すでに仕事場についていた俺は、鍵の開いたドアを開けて、中に入る。キッチンに入り、包丁を取り出して、俺は今夜の仕事に取り掛かった。

仕事前の暇つぶし

仕上がってみればありがちな話になってしまいました。もうちょっとちゃんと練れば何とかなるかもしれないですが、そうすればきっと短編じゃなくなります。難しいですね。

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他作品もあるので、ぜひ読んでみてください。

仕事前の暇つぶし

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-19

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