世界は全体として美しい
トンツー
トンツー
聞こえていますか?
トンツー
トンツー
他でもないあなたに
誰でもないあなたに
そっと言葉を贈ります
包装紙は破ってしまっても構わないけれど
中身だけは大切にして下さいね
高速道路を進むバスに乗りながら
暮れてゆく夕方の空を眺めていました
ああ、世界はどうしてこんなに!
人は絶頂というものを知らないのです
それは命の絶頂
それは世界の絶頂
人は青空の絶頂というものを知らないから
それがくすんでいくのを知って初めて絶頂の輪郭に触れ得るのです
だから夕方の空を見ながら世界の美しさをようやく知ったのです
どこが?
青空の名残り?
太陽の断末魔?
それとも天頂の一点に輝く星の光?
それは全てなのです
世界はそう、全体として美しい
ただそれだけが言いたかったのです
それを敷衍していくとするなら
世界の中に身を落とされた私たちもきっと美しいのです
私という存在の正統性を世界に担保させるなんて
何という罪深さ
でもきっとそうするしかないのでしょう
生きていくことは醜くあらねばならないのだから
世界は全体として美しい