ちょっとした理想、深夜の憂鬱

午前4時、4時12分
恋人は眠りについている
薄ぼんやり電灯
まっさらな毛布と肌
オレンジに照らす
枕元のライター、小説、コップの水
タバコに火をつける
煙が目にしみる
手を額に擦る
ノイズ混じりのラジオから
「わたしを月まで連れてって」


ーーーなんだって わたしがこどものころ、
純粋無垢だったこどものころ
枕元でずっと誰かが唄っていた
今ではもうすっかり染まっちまった
蒼に黒に紅に
ああいけない
なんでか 目から水が溢れた
In other word ?
思い出せない
In other word ?
思い出したくもない


ーーードアの隙間からシャムが来る
おおシャムや、まだ起きていたのか
恋人との隙間をシャムは埋める
目を細め
灰皿に穂先を拭う
スイッチ、OFF
黒の部屋
カーテンの隙間
ひとすじの水銀灯
腐ったみたいなわたし
毛布にうずまって
シャムのぬくもり
あたたかい
ああ生きてるんだ、
生きてるんだ

明け方までの小一時間、わたしは星間を浮遊して、もう遠くなったあなたがまた近くへと飛んでくる夢を見た。

ちょっとした理想、深夜の憂鬱

浅丘ルリ子の「シャム猫を抱いて」とJulie Londonの「Fly me to the moon」が大好きなので詰め込んだの。
眠れない夜、横に恋人なんていない。シャム猫も飼ってない。タバコも吸えない。ひとりで独りを噛みしめるだけ。空想の中ぐらい、理想描いたっていいでしょ?

ちょっとした理想、深夜の憂鬱

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-15

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