ボーイフレンド(仮)版権小説「第二美術室の扉は今日も開かない」(桑門碧・性的表現あり・拘束)
*前置き
ボーイフレンド(仮)美術部の桑門碧(くわかどあおい)が美術室に林田美羽(緑主人公その5)を連れ込んでぐるぐる巻きにしたりする話。
*登場人物設定
・桑門碧(くわかどあおい):3年生、美術部。美術系の賞を頻繁にもらっている。専門は造形だが絵も得意。手先が器用だが、機械ものにはめっぽう弱い。一人称「俺」。いろいろ不思議な人、というのが周りの認識。雨に濡れるために傘は持たずに来たりする。片手で食べられるおにぎりが大好き。
・林田美羽(はやしだみう):緑主人公その5。碧先輩とよく美術室に居る。友人曰く、かなり鈍いらしい。少しふっくらめのもち肌。胸は大きめ。桑門と恋仲。桑門にモデルを頼まれるのが日常になってきた。食べるの大好き。
・廣瀬櫂(ひろせかい):桑門と同じ美術部員。林田美羽と同学年。
・友人:林田美羽のクラスメイトで、一緒に昼食を食べる仲。
・若桜郁人(わかさいくと):保険の先生。保健室でいろいろな生徒の心と体の手助けをしている。
本編
1
昼休みの教室に、桑門碧(くわかどあおい)がやってきた。
三年生の碧が初めてこの二年の教室に来たときにはクラス中がざわめいたものだが、いつの間にか林田美羽(はやしだみう)を探しに碧が教室にやってくるのも、クラスメイトにとっては見慣れた風景になってしまったらしい。
だが、未だに先輩が入り口のドアをくぐった瞬間には、まるでモーゼが大海の前で杖を突いたかのように、教室に道ができる。
美術で様々な賞をとっては、全校集会で表彰されている桑門碧。
この学園には優秀な生徒が多く、全校集会での表彰は決して珍しいわけではないが、碧の存在はさすがに際立っている。その碧がしばしば美羽を訪ねてくるわけだから、騒ぎにならないはずもない。
一緒に弁当を食べていた美羽の友人もさすがに慣れてきたようで、クラスが静かになった瞬間、ちらっと教室の扉に目をやって碧の姿を確認した後、碧が入りやすいよう、少し椅子を動かした。クラスで一番最後まで碧の来襲に気が付かないのはきっと美羽だろうと思いつつ、彼女はおにぎりにかぶりついている美羽を眺める。
「美羽ちゃん、ちょっといいかな?」
クラスが静かになったことにも、クラスほぼ全員、および目の前の友人の視線が突き刺さっていることにも気が付かずおにぎりを頬張っていた美羽だったが、さすがに目の前に先輩が来て呼びかけられると、さすがに気が付き、のんびりと顔をあげた。
「あ、こんにちは、碧先輩」
「おにぎり、おいしそうだね」
「食べます? 今日はシャケですよ」
「ん、いいのかな? 一ついただこうかな」
いつの間にか近くに差し出されていた椅子に座り、美羽の大きめのお弁当箱から、これまた大きめのおにぎりを碧がつまみ上げる。一口かぶりつくころには、クラスにはまたいつもの喧騒が戻っていた。
「美羽ちゃんの作るおにぎりが、やっぱり一番おいしいね」
「ありがとうございます。先輩がそう言ってくれるから作り甲斐がありますよ」
「ふふ、美羽ちゃんの食べる姿を見つつ食べるからさらにおいしく感じるのかな。本当に君っておいしそうに食べるよね」
「そうですか? そんなにおいしそうですか?」
碧以上に、美羽と席を囲んでいた友人が大きく頷く。美羽が食べると何を食べてもおいしそうに見えるのが不思議だ。
「ところで、美羽ちゃん。今日は放課後、美術室に来てもらっていいかな?」
「あ、久しぶりですね。いいのですか?」
美術室に来るように碧が美羽に告げるのは一週間ぶりだ。
毎日のように美術室に通っていた美羽だったが、先週から放課後の美術室に碧は居なかった。
美術部の廣瀬櫂(ひろせかい)に尋ねたところ、碧は第二美術室に籠っているとのことだったが、普段使われていない第二美術室は静まりかえり、扉も開かなかった。
「うん。美羽ちゃんに是非手伝ってほしいことができたんだ」
「わかりました! 私でできることならぜひお手伝いさせていただきます!」
「よかった。安心したよ。……美羽ちゃんが居ないと俺はだめみたいだから。第二美術室に来てくれるかな?」
碧が教室を去る姿を見つつ、何か少しいつもと碧の調子が違うことに気が付いたのは友人だけだった。碧先輩が美羽だけに頼みたいことが今一つ想像できないが。
「美羽、あんた幸せそうだよね」
「ん? から揚げもおいしいよ。食べる?」
「いらないいらない。それより早く食べないと昼休み終わっちゃうよ」
「うん。ありがとう」
友人の心配をよそに、美羽は久しぶりに碧の役に立てるかもしれないことに心を躍らせつつ、少し形がいびつなから揚げを口に入れた。
2
放課後、第二美術室の扉を美羽はノックした。第二美術室は旧校舎の奥にあり、放課後の喧騒も届かず静まり返っている。旧校舎自体、廣瀬に聞いて初めて足を踏み入れたのだ。空気は少し埃っぽく、歩くたびに木製の古びた床がキーキーと音を立てた。
今日も第二美術室のドアにある小さな窓から光が漏れていない。ノックの返事もない。
ただ、今日は碧との約束がある。美羽はとりあえず扉に手をかけた。
一週間開かなかった扉が開き、埃っぽさと油絵のかおりが混じった独特の空気が廊下まで漏れてくる。
「碧……先輩?」
暗幕の間から少し光が差し込んでいるが、美術室の中が見通せないほど暗い。その中で、大きな、そして真っ白なままのキャンバスの前に立つ、深緑の作業服をまとった碧の姿だけが、弱いスポットライトがそこだけ当たっているかのように薄ぼんやりと光っていた。
キャンバスに向かって鉛筆を動かしている碧には声をかけづらいが、こうしてただ背を向けて立たれていると、それ以上にためらわれた。
先輩の描く絵は美しいが、こうして白いキャンバスの前に立つ先輩も、まるで一枚の絵が飾られているようにも思える。
あまり美術は得意ではないし、絵心もとてもあるとはいえない美羽だったが、彼が描く絵、彼が作り出すモノ、そして、彼を囲むとその風景までもが、これだけは自信を持って美しいと言えると思った。
絵のような風景がゆっくりと動き、碧が振り返る。
「あ……美羽ちゃん。来てたんだ」
「先輩、大丈夫ですか? また何かに……」
何かに囚われている。そうとしか言えないようなぼぉっとした瞳が美羽を捕らえる。
最初に美羽が碧に出会った時にも、碧は雨に囚われていた。
先輩の瞳に映る世界は美羽が見るものと違うが、先輩を包む世界までもが美羽の世界とは違っているのでは、と思うことがある。
「うん。俺は、また何かに。……でも、俺には君が居るから、きっと大丈夫だよ」
全然大丈夫なではなさそうな声が、静かな美術室に柔らかく響く。
碧が何か答えを出すまで、美羽は何も言わずにただ待つのが習慣になっていた。もともとのんびりした美羽にとっては、そもそも待たされているという意識も少ない。
「一つ。分からないことがあるんだ。ただ、君となら……分かるかもしれないって、ね」
碧は静かに美術室を横断し、隅の机に置いてあったカバンに手をかける。
「これ、着てもらってもいいかな?」
鞄の中から碧が取り出して、広げて見せたものは、たくさんレースがあしらわれた真っ白なワンピース。
碧の絵のモデルなら美羽も何度か務めたことがあった。服をこうして渡されたこともある。
「今日は……下着をつけないほうがいいかな。汚れるかも……汚すかもしれないから」
絵具でもかけられるのだろうか。
美羽は服を受け取り、碧が指し示す美術準備室に向かった。古びた扉は耳障りな音を立ててゆっくりと開く。
「なに、これ……」
何か異様な風景に、美羽の足が止まる。普段なんとなく美術室の棚の上に鎮座しているだろう石膏像が、床に無造作に並べられている。
いや、ただ、並べられているのではない。
すべて、紐がかかっていた。いや、縄、か。これは。
綱引きの綱のような少しごつごつした黄土色の。ただ太さはそれほど太くはない。
それが、数体の石膏像を、様々な方法で縛っていた。
ただぐるぐる巻きに首を縛られた男性の胸像。
脇から首、頭にかけて器用に縄が回された女性の胸像。
そして、どのように縄が回されているのか良く分からない縛られ方をした、全身像。これはミロのヴィーナスだったか。
――だれが、こんなことを――。
「ん、美羽ちゃん、どうかしたのかな?」
「あ、いえ、何でもないです」
……何でもないのだろうか、これは。
ただ、うっかり何でもないと口から出してしまった以上、この状況を聞き直すのも少し微妙な気がする。美羽はとりあえず準備室に入り、扉を閉めた。
碧が手渡したワンピースを広げてみる。生地は少し薄めの、Aライン。胸元に少し目が粗めのレースが覆っているだけのシンプルなデザインだ。碧が美羽に渡すのはこうした飾り気の少ない服が多い。
並ぶ胸像の間で、とりあえず制服を脱ぐ。下着を脱ぐのは多少ためらわれたが、胸が見えるわけでもないし、裾は膝より少し長い。めくられたりのぞかれたりしない限り、中が見えることはないだろう。今のところ、碧がきわどいポーズを求めてきたことはない。
美羽はすべて脱ぎ、ワンピースを頭からかぶった。少しだけゆったりめの柔らかな生地が体を覆う。この下が素っ裸というのは多少気になるが、あまり考えないことにして、裾を少し直した。
――気になるのは、ワンピースではない。この石膏像達だ。
3
何も見なかったことにして、美羽は美術室に戻った。碧はデッサン用の鉛筆を手にしてキャンバスに向かっていた。先ほどは気が付かなかったが、視線の先には白い胸像がある。
――縄で、巻かれた。
この異様な像を作ったのは碧先輩だ――。
疑惑が確信に変わっていく。
「先輩……、あ、あの……」
「あ、美羽ちゃん。準備できたかな」
碧は振り返り、美羽の姿を見て、うんうん、と軽く頷いた。
「いいね。やはり俺の思った通りだ。あとは……。ちょっと手伝ってくれるかな」
「はい、わかりました」
石膏像について聞く機会を逸したまま、美羽は碧先輩の後を追い、美術室の隅に向かう。
机の向こうに少し錆びついた灰色のロッカーが並んでいる。碧はその一つの扉に手をかけた。
ぎぎっと耳障りな音がして、金属の扉がが開く。
「少し待っていてね」
碧は少し屈んで、奥から小さな箱を取り出して、美羽に渡した。それからまた屈み、今度はロープをずるずると取り出していく。
美羽はしばらく碧の背中を見ていたが、渡された箱に目をやる。
「なに、これ……」
――まるで、先ほど見たミロのヴィーナスのように。
白い肌を惜しげもなく見せる女性。その体には赤い紐が這っている。
電化製品が苦手な碧がDVDを手にしているだけでも驚きだが、まさかこんな……。
「若桜先生が貸してくれたものだよ。俺が少し怪我して保健室に行ったときにね」
保険の先生がどうして、こんなものを……。渡された箱が、いわゆる「エロDVD」だということくらい、あまりこういったもに触れたことがない美羽にも分かった。
ロッカーからロープをすべて引きずりだし、碧は美羽が固まっているのを気にも留めず、ロープを腕の端にかけて器用に円状にまとめていく。
「では、美羽ちゃん。こちらに来てくれるかな」
碧は美羽を美術室の一番広く空いている場所へと促す。
第一美術室での美術の授業では小さな机の上にビンが乗せられていたり、放課後美術部にお邪魔するときれいな花が置かれていたりする。それらを囲むようにイーゼルが立てられ、生徒の視線が集中する場所。
美羽も、何度か碧に頼まれてその場所に立ったことがある。
第二美術室も、構造は似ている。ただ、慣れ親しんだ美術室と空気が違う。
不安げな視線を寄越す美羽はそのままに、碧は椅子を一つ持ってきて、中央に置いた。
「まずは椅子から試してみようと思うんだ。座って。あ、それは適当に机の上にでも置いておいて」
DVDの説明も求めづらい。
碧の柔らかな笑顔が、今日は少し怖いと思った。
ただ美羽は何となく逆らえず、勧められるまま椅子に座る。
「うん。手は、後ろに回してくれるかな」
美羽は背中に腕を回した。
「あ、違うよ」
碧は美羽の二の腕を取り、椅子の背もたれの後ろに回す。碧はいつも何気なく美羽に触れるが、むき出しの腕を持たれて動かされると、それだけで碧にすべてをゆだねたい気分になってくるのが不思議だ。
美羽はそのままもう片方の腕も背もたれの後ろに回す。
「うん。こうかな」
碧は美羽の後ろに回り、美羽の手の甲を持ち、手首同士をくっつけた。少し脇が窮屈だが、それほど姿勢を維持するのが大変なわけではない。美羽は素直にその姿勢を維持した。
美羽の手に碧の手以外のものが触れる。
「そのまま、動かないで」
びくっとして振り向こうとした美羽を葵の声が制す。少し毛羽立った、ざらついた感触。これはさっき碧が取り出していたロープか。
自分の手が碧の手に包まれたまま、手首をロープが這う。
「まずは、こんな感じかな」
二周、くるくると手首に巻きつけたあと、少し締めてからロープの端をまだ長く余ったロープに結び付ける。碧は残ったロープをそのままに、美羽を残してイーゼルの前に立った。
「碧、先輩……?」
距離を置かれてしまうと、この状況が急に不安になる。
少し手を動かしてみたが、軽く縛られただけかと思いきや、間を通るロープのせいで、かなり固めに美羽の手首は拘束されていた。
動くとざらついた感触が痛い。足元を見ると残った黄土色のロープがとぐろを巻いていた。
「俺のほうを見てくれるかな」
美羽は慌てて顔をあげる。碧は立ったまま鉛筆を片手にキャンパスに向かい、美羽を見ていた。
しばらく経ったが、碧の手が動かない。
普段なら、碧が描きたいものは碧の頭にあり、美羽はそのイメージ通りに体を固定すると、すぐ碧の鉛筆が紙の上を動くのだが。
「……違うね。もう少し」
碧は鉛筆を少々乱暴に置き、美羽のほうに戻ってきた。
ロープの端を手に取り、美羽の前に立つ。
「うん、もう少し増やしてみようかな」
何度か首を傾げた後、碧は美羽の足元にしゃがみこみ、まだ靴下の跡が残る素足を手に取った。そして手を拘束したロープを、椅子の下を通して前に流し、両足首をそろえて巻きつける。こうして碧にまじまじと足を間近で見られているとそれだけでどこかこそばゆく、美羽はむずむずと太ももをすり合わせた。
足首に回し、二度きゅっきゅっと締め、碧はまた器用にロープを結ぶ。
長い端を持ったまま碧は立ち上がり、美羽を見下ろし、少し顔を歪めた。
「違う」
碧は乱暴に結び目を外し、足の拘束を解いた。続いて後ろに回るのももどかしいといった様子で、美羽の体越しに手を回して腕の拘束も取る。
「立って……、くれるかな」
拘束が外されて安心したのもつかの間、命令語をかろうじて依頼に直したように、碧は美羽に告げる。
美羽はとりあえず言われるまま立ち上がった。碧は乱暴に椅子を少し遠くに滑らせる。
「……俺の絵にはね、足りないものがあるのだって」
碧はロープを両手で持って美羽に向き直る。
一歩碧が近づいてくるのを感じ、美羽は一歩下がりそうになるのをかろうじてこらえた。
――今日の碧は、何か違う。
いや、今日からか? 先週からではないのか。
一週間、第二美術室の扉は閉まったままだったのだ。
4
「俺の絵は、最近変わったと言われたんだ。それは間違いなく君のおかげだと思う」
碧は喋りつつ、美羽を軽くつかんで半回転させる。
すっと腕を取り、またまとめて手首を縛った。
碧は自分が動くのももどかしい様子で、また美羽を回転させて前に向かせる。先ほどより縛りが強いのか、手首に縄が食い込んで結構痛い。ロープが次は胸の上を通り、腕と体を拘束する。二周同じところを通った後、胸の下をロープが這い、美羽の少し大きめな柔らかな胸を強調するかのように回される。
碧の手が容赦なく場所を変えつつ美羽を掴み、ロープを締める。また後ろを向かされ、手首を結んだロープが少し持ち上げられ、胸の周りを侵食するロープときつくつなげられる。残った縄が乳首の上を通り、美羽は小さく声をあげた。
「変わったからこそ、物足りない部分が出てくる。なんだろうね」
「でも、それとこれってどういう……」
美羽の抗議の声を意に介さず、碧は何かを見定めようとするかのように美羽をただ眺めた。
「俺に足りないものを知るにはこれだろう、って。僕はこれまで描きたいものを描きたいときに描ければよい、そう思っていたんだ。人の評価、そんなもの気にしたことがなかった」
碧は美羽の前に片膝をつき、スカートのラインに沿って横腹から太ももにかけてゆっくりと手を這わせた。スカート越しの感触でも、碧の触れたところだけが熱くなるようで、美羽はただ碧の手の動きを目で追う。
「足りないものがある。自分で薄々気が付いていたんだ。でもそうして指摘されてしまうと、ね。迷っていた時に、若桜先生が貸してくれたんだよ、あれ。俺に足りないものを理解する助けになるだろうって」
「あれって、あの……あのDVDのことです?」
「あぁ。確かに、何かわかる気がしたんだ。で、いろいろ試してみたんだけど」
「あの石膏像は……」
「そう。でも、そうじゃない。あ、ちょっとこのまま寝てみてくれる?」
両腕を後ろで拘束されたままでは、座るのも難しい。目で訴えると、碧はすっと美羽の膝と背中に手をかけて持ち上げ、あっという間もなく美羽は床に転がされていた。
少し冷たい床が腕にあたる。美術室の床は古い絵の具が木目に入りこみ、軽い掃除では拭いきれない不思議な模様をかたどっていた。
碧は美羽を残してまたキャンバスに向かい、少し思案した後戻ってきて、美羽のスカートの位置を少し直した。いや、乱した。
「少し、動かないでくれるかな」
スカートの端は辛うじて股下を隠してあるくらいの位置まで上げられる。下着をつけていない状況が心もとない。腕を後ろで縛られた状態で胸の大きさが協調されてしまうのも気がかりだった。
それ以上に、碧が何をしたいのかが見えない。
碧の言葉、説明が少ないのはいつものことだし、碧が何かおかしなことをするとも思えなかったが……いや、すでにこの状況は多少おかしいとさすがの美羽にも分からないわけではなかったが、とりあえず美羽はそのまま碧に従うことにした。
碧は碧なりの言葉で美羽と向き合ってくれる。それだけは信じられた。
また鉛筆を握り、碧はただ美羽をまるで写生用の静物を見るように眺める。ただ、碧の鉛筆は少し動き……そしてまたすぐに動きを止めた。乱暴に髪をかき乱す。
「なんだろうね。何が足りないんだろう」
碧はまた美羽のところに戻ってきた。鉛筆を持ったまま、横たわった美羽の前に座る。そして美羽のむき出しの腕を、鉛筆の削られた木肌ですっとたどる。腕から肩の丸みをゆっくりと撫でるようにたどり、首筋へ。そして顎のラインを少し通った後、また首筋から肩へと滑らせる。
そして、鉛筆を乱暴に制服の胸ポケットに入れ、碧は指先で同じように美羽の腕を辿る。
「こんなに……きれいな……暖かな……」
木肌とは違う温もりが触れるか触れないかで移動する感触が心地よく、美羽は体を震わせた。
指先がゆるりと肘を通り、後ろに拘束された腕、手首まで沿う。そして、拘束したロープを解いてくれることもなく、自由に動ける手のひら、そして美羽の指を絡めるように通り、そのまま背中、臀部へと指が這う。
めくれたワンピースのすそはすぐに通り過ぎ、むき出しの太ももへ。
足は自由なのだから、逃げようとしたら碧を蹴り飛ばすなりなんなりすればよいのだろうが、碧の苦悩する姿を目の当たりにすると、碧がもし自分に何かを望むなら、応えないという選択肢は美羽には無い。
好きだと言われ、唇まで許した男が、望んでくれるなら。
それ以上に、もし少し、ほんの少しでも自分が碧の役に立てるなら。
そして、何よりも、碧が新しい世界を作品として紡ぐ姿を見られるのなら。
碧の指が、自分でもあまり触れない太もも裏を撫で、ひざ裏を通り、ふくらはぎをすべり、足首の周りを味わうのを感じる。足指をこそばせるように指が動き、そしてまた敏感なふくらはぎを通り、太ももに戻る。
碧はそこで手を止めて立ち上がり、美羽を跨ぎ、そして膝で美羽を挟むように、膝立ちになった。
「どうしたら……よいかな」
片手を床について体を支え、もう片方の手で美羽の太ももを撫でる。そして今度はスカートの中に手を入れ、直接尻に遠慮なく触れた。
少し湿り気を帯びてきた自分の中心を隠すように美羽は少し体をよじった。碧の手がずいぶんと大きく感じられる。感触を確かめるように丸みを辿り、尻の割れ目を指がさらに割るように通る。そして指先が美羽の敏感な入口を探る。
くちゅ、と水音が聞こえた気がして、美羽は足を竦めた。
「……濡れてる……ね」
一本の指が、美羽の自分でも触れたこともない部分をそっと探る。
「先輩……そこダメ……」
「どうして?」
「どうしてって……」
少し濃い毛をかき分けるように、指が動き、そして入口の襞に沈んだ。
「暖かいね、ここ。美羽ちゃんの体はどこも暖かいけれど、ここは格別に」
指が少し動くだけで、くちゅくちゅと美術室に音が響く。そして美羽の呼吸が知らぬ間に上がっていく。さすがに逃れようと思ったが、美羽の足はもう碧の膝で挟まれて動かなかった。拘束された腕をばたつかせても、碧の動きを止められない。
「この感触……」
碧は襞の感触を味わうかのようにゆっくりと指を動かす。
「ここ……見せてもらっていいかな」
美羽の返事を聞かず、碧は美羽の体に手をかけ、少し引き起こした。
続
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有料版 一部抜粋
普段よりずっと熱い、濡れた唇。軽く押し当てるだけでお互いの興奮がじんじんと伝わってくる気がして、美羽はその先を求めるよう、少しまた角度を変えて当てた。ゆっくり離すと、碧の荒い息が唇にかかる。
「ねぇ……もう少し……美羽ちゃんのこと……教えて……」
少しとろんとした瞳で、熱っぽく囁かれる。下唇を唇で挟むように辿られ、背中に回された手が背筋から臀部にかけてゆるゆると下り、丸みの形を確かめるように撫ぜられる。
手のひらが尻から内腿へと移動し、何度か往復した後、碧のまだいきり立った肉棒と、棒を咥えている美羽の秘肉が交わるふちを指でじらすように触れていく。開くようにかすかにひだをゆすると、期待で美羽の中がまた熱く濡れた。
「ここ……俺のこれで……中も確かめさせて……」
きれいな桃色の亀頭が二人の間で揺れる。
「中って……」
「ん。これ、美羽ちゃんの中……入れたいってこと」
無邪気な顔で言われ、またきゅっと腰を引き寄せられると、断れるはずもない。
●著者紹介:http://www.pixiv.net/member.php?id=12368939
●著者の他の作品を読みたい場合:
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(主に1ページ位のショートストーリー、
書きかけの小説、実験的な小説を公開)
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(完結した作品の販売)
*dream novel:http://dream-novel.jp/viewuser/index/40310/?guid=ON
(主人公の名前を設定できるように夢小説加工した作品)
●Twitter:https://twitter.com/miyato_nishi
(小説の公開お知らせ、その他、気になる情報のリツイート中心)
ボーイフレンド(仮)版権小説「第二美術室の扉は今日も開かない」(桑門碧・性的表現あり・拘束)
桑門先輩初描きです。桑門先輩って、シナリオ読んでいると結構喋り方は普通なのね。変な口癖とかないし。一人称「俺」なのはびっくりした。
西園寺先輩が恋人を木に縛り付けるネタは以前書いたが(https://miyato.booth.pm/items/208150、https://slib.net/48627)、なんとなくちゃんと拘束した感じのものを書いてみたく(結局「ちゃんと」にはならなかったけれど)。
ボーイフレンド(仮)登場キャラで考えた場合、一番似合いそうなのが桑門先輩かな、と妄想。性的な拘束ではなく、純粋に芸術のためなら思いつけばとことんやっちゃうかなぁ、とか。
恋人モードの桑門先輩は美羽の裸に興味があるが、芸術モードの桑門先輩は純粋に対象としての裸に興味がない感じで。SRは恒常とマップの程度しか持っていないけれど、意外と大胆で接触好きな感じだよな。穏やかな草食系に見えて、好きなものに対しては容赦なくかつ純粋に手を伸ばす感じが、穏やかタイプが多いキャラクターの中でも際立っていると思う。自分の中で、キス、体重ねるまでの時間までの早さランキングで勝手にNo.1。西園寺先輩は慣れてるからじっくり責めて楽しむタイプだと思うし。もう少し碧が自分と葛藤する話にしたかったのに、エロシーン書いているとなんとなく満足してしまい、葛藤部分は同時並行で書いていた一之瀬学先生のほうに投げてしまった。
それにしても、桑門先輩、部長じゃなかったのね。部長じゃない人に美術室占有させちゃった……。部長じゃないと気が付いたのは半分以上書いてからだったし。途中で「旧校舎の中にある、碧がほぼ占有で使っている第二美術室」に書き代えました。