あんたなんか風に吹かれて飛ばされちゃえば良かったのに
ああ、私はあんたなんかに負けちゃいないと書き殴る
あんたの小説なんか読まないと決めていたのに
飲み友だちが私の部屋に忘れていったのが悪いのよ
酔った勢いで、パラパラとページを繰る
ああ、読む気なんてなかったのに
一文字一文字に引き込まれるのが悔しかった
読みながら、思い出すあんたの顔が、憎らしい
その顔はいつもスカしている
私に誇示するかのように、ピアスを刺した左耳を私に向ける
燻んだチタンの小ぶりなピアスが私を嘲笑するかのようで、憎らしい
煙草をふかして、横目で私にニヤリと笑む
その横顔が、憎らしい
私は、他の女とは違うのよ
って言ってやりたかった
でも、それって結局、他の女と一緒だったのよ
だから、私はあんたの小説なんか読みたくなかった
気づいたら、もう時計の短針は三に差し掛かる
グラスの氷はとうに溶けて
水滴がだらし無くテーブルを濡らす
薄まったウイスキーと、女が一人
あんたなんか風に吹かれて飛ばされちゃえば良かったのに
久しぶりに本を読みました。