ticket-タイミング-
低いステージと隙間の空いたフロアであの人はギターをかき鳴らす。それを恍惚の表情で見つめるのはわたし。
あの人はわたしを妹のように大切な存在だと言う。それがどれほど残酷なことか、わたし以外誰も知らない。
あの人と一緒にいるために、わたしは好きでもない「あなた」と夜を重ねていく。
誰でもよくない
ハタチを越えた彼氏がいるなんてすごいな
なんて10代のころは隣にいる友達を羨んだりもした。
だけどいざ、直面すると、出たのは溜息ばかり。
好奇心だった。
あなたの地元に出向き、案内されたチェーン居酒屋はいつまでも騒がしく、体内時計を狂わせた。
『卒業アルバムみせてやるよ』
そんなもの見たかっただろうか。
いや、彼こそ
そんなもの見せたかっただろうか。
辿り着いた部屋の中は隠せない笑いが零れるほど愛された星条旗や西部の何かと言おうか、
趣味に溢れたいい場所だった。
卒業アルバムもそこそこに、いつの間にか消灯した世界で眠れずにいた。
明日のチケットは鞄に入っているだろうか
こんな瞬間さえ考え事が頭をよぎるということは
やはり望んでいない夜なのだ。
何分も、目をつぶったり開けたり
変な時間をすごした。いよいよ眠れると思った頃に重なった。というより脳の時間が止まった。
朝寝坊をして、心底腹が立ったのはいうまでもなく、1度も顔を見ずに電車に飛び乗った。
失敗もある。
ticket-タイミング-