空蝉


的外れな爪が宙を切る
なんとも細い放物線
バッハのおごそかな調和の中で
ふたり 結晶になりたかったのに


春は逃げる
夏が逃げる
秋も逃げる
では



冬は?



しろに透ける淫らな いろ

君の内臓をきゅっとつねるような
無邪気な子供でいたかったのに



糸電話
大六角形
ピアス
君のカーディガン
砂浜
還元反応


電話線で君の首を絞めて
送電線でふたり 吊るし合って
そうやって生きていたかったのに




いま どこにいるの?

空蝉

わたしはまだまだ幼稚です。

空蝉

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-09

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