バス停
バス停のベンチの向こうに
焼けた堤防を進む茶色い班目の猫が、
鏡のように波のない海を遮る看板の隙間に消えてゆく。
その後を、小さな老婆が通り過ぎた。
バスがやってくる。
林間学校の子供達が、
バス停の僕と君をはやし立ててくる。
君は、立ち上がって歩き出す。
僕は、妙にかっこ悪い気分に落ち込んで、
リュックサックの中から、水筒を探し出して、
ガブ飲みしながら、追いかけてゆく。
通り過ぎるバスの最後尾で、
子供達が笑っている。
バスは、砂ぼこりを巻き上げて、走り去った。
先ほどの老婆が道を横切り、
茶色い班目の猫が追いかける。
僕は、君の名前を呼んだ。
何度も、何度も。
君が道の曲がり角で、
いきなり振り返ると、
僕をにらんで、木陰の下に座りこんだ。
僕は、道の反対側の堤防に登って、
海が運んできた風を吸いこむ。
今度は、
君が僕の名前を呼んでいる。
何度も、何度も。
バス停