涙の理由

窓の外にはのんびりと青い空が広がっている。
さらさらとした風が水色のカーテンを揺らす。
白いふんわりしたワンピースを着た彼女がそこにいるような気がしてふりかえる。
生まれつき色素の薄いさらさらした髪。
切れ長の目の琥珀色の瞳。
柔らかいピンク色の唇。
白く細長い手足。
しっとりと冷たい肌。
彼女に会いたくて触れたくて愛しかった。

あぁ、そうだった。
涙が頬を伝う。
彼女はもういないのだった。
ぼくは彼女を深く愛していた。
裸の足にぬめっとした感触がある。
生温かく生臭い液体が広がっている。
白いワンピースに赤黒い斑点が広がっている。
こうするより他になかったのだ。
彼女を失うのが怖かったのだ。
誰にも触れさせたくなかったのだ。
彼女が愛しくてぼくは泣いた。

涙の理由

涙の理由

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-01-29

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