時間の概念と時計のなんかそういうの

はるか昔、時間と言う概念は存在しなくて、世界は昼も夜もない、ずーっと同じ明るさ、人も年を取らなかった。
とてもとても長い時間を、人々は特に何をするわけでもなく、一部の変人たちを除いてなんとなーく生きてきた。
そんなある日、ある一人の変人が「一定のリズムで動き続けるモノ」を偶然作り出した、その人はとりあえず「ソレ」を放っておいた、別のものを作るのに忙しっかたからだ。
変人が「ソレ」を作り出した日から、人々に変化が起き始めた、今まで「寝ること」は暇を持て余した人々が行うものだったのに、「ソレ」ができた日からみんな同じタイミングで寝るようになった、原因は誰もわからなかったけど、みんな眠たいから深くは考えなかった。
けれど、こんなことは初めてだったから、偉い人達が集まって話し合った。30人集まっても原因はわからなかったので、一番偉い人が「私が眠たくなったら鐘を鳴らすから、鐘が鳴ったら寝ることにしよう。」特に異論は出なかった。
一方、原因の「ソレ」を作った変人は、別のものを作り終えたので、偶然できた「ソレ」をいじくってみることにした。なにせ偶然できたものだから、どうやって作ったかも覚えてないので、変人は四苦八苦しながら「ソレ」を分解した。
分解してわかったことが3つあった。
①分解することがめんどくさいこと
②自分で作ったとは思えないほど複雑だということ
③一定の間隔で動く部分が3つあること
変人は確認しやすくするために動く部分に棒をつけた。もっといろいろ確かめたりしたかったけど、鐘が鳴ったので寝た。
変人が「ソレ」をいじくった日から、また、人々に変化があった。今度は、お腹がすくようになったのだ。
「寝ること」と同じく、「食ベること」も暇人の「お遊び」だったから人々は戸惑った、けれど、睡眠よりも多くの人が「お遊び」をしていたので、大変なことになることはなかった。
その日から、町は少し汚くなった、当然だ、町のど真ん中で「お遊び」をする人が続出、食べかすなどを落としたまま掃除をしなかったのだから。
町が汚くなるのが嫌な偉い人がまた集まって話をした、結論は「私がお腹がすいたら笛を鳴らす、そうしたら私の家に集まってみんなで「お遊び」をする、笛を鳴らすまでは「お遊び」を禁止することにしよう」特に異論はなかった。ついでにこの時「お遊び」を「ごはん」と呼ぶことになった。
おいしいごはんを食べた変人は、それまで行き詰っていた「ソレ」の研究に進歩が出た、ある発見をしたのだ。
ずーっと「ソレ」を眺めているうちに、毎回同じ場所に棒が来たら鐘が鳴ることに気づいた、ごはんも同じ場所だった。
変人は「これは使える!」と思い、毎回鐘や、笛が鳴る場所に棒が来たら、音が鳴るように仕掛けを施した。
この目論見は大成功し、変人はいつ鐘や笛が鳴るかが分かるようになった、いままで、研究中に鐘が鳴ったりして慌てたりしていたが、そんな心配はなくなった。
ある日、変人は町で知り合いにあった、彼もまた変人だった。
彼は「暗いところを明るくする機械」を作って有名になった人物だった、そして、彼もまた鐘や笛の音が研究中になったりして困っていた。
変人は彼に「ソレ」についてと、作り方を教えてあげた、彼ならさらに色々なことを発見してくれる、と思ってのことだった。
けれどかえって来たのは期待とは違う言葉だった。

「なあ、詳しく教えてもらっておいて悪いんだが。」
「何だい?」
「ソレは俺には作れないよ。」
「作り方を聞いただけなのに、なぜそんなことがわかるの?」
「変人ならではのカンってやつだよ、すまないが期待には応えられない」
「そっか、残念だよ」
彼は少し残念そうな顔で去って行った、心のどこかでは作ってみたかったのだろう。

その日から変人は、より一層研究に励んだ、しかし、なにもわからないまま、しばらくたった。
それを思いついたのは、これまた偶然だったのか、変人は棒がついているだけの「ソレ」をなんとなくおしゃれにしてみたくなった。とんでもなくバカらしい考えだったがこれが功を奏すとは変人すらも思って居なかった。
むき出しのからくり部分を木で覆い、黒い棒の下に白い板を置いて更に見やすくした、そして、その白い板の上に、12までのすうじを、棒の下になるように書いていった。なぜ12なのかは変人すらも知らない。
こうしてしっかりとしたつくりになった「ソレ」を見た変人は満足して鐘が鳴ってないのに寝てしまった。
さて、ここで外を見てみよう、変人が「ソレ」を完成させた瞬間、
世界中が真っ暗になってしまった
いつも橙色の光を放っていた「明かり」は青白くかわり、とても光が弱くなって、少し前も見えなくなった。
いままで暗闇なんてほとんど経験したことのない人々は大慌て、5人に1人くらいは「暗いところを明るくする機械」をもっていたから、急いで持っている人の家に集まった。
その日はみんな集まって過ごした、鐘は鳴らなかった。
翌日、大騒ぎを知った変人は、この出来事が「ソレ」のせいだと思った、特に根拠はない、変人ならではのカンだ。
一方、偉い人たちも大慌てだった前例がないことが立て続けに起こって、みんな疲れていた。そんな中偉い人のところに変人が来た、「ソレ」を持って。
「昨日の大騒ぎは恐らく私が原因です。」
「恐らく、とは?」
「こちらの機会は一定のかんかくで回り続けます、そして、この棒が6を指すと世界が暗くなってしまうのです」
別に実践したわけではなかったが、自分でも不思議なくらいすらすらと言葉がでてきて、偉い人に説明を続けた。
そして、すべての説明と、暗くしてしまった謝罪を聞いた偉い人は言いました。「それは素晴らしいものを発明したな」
思っていたこととまったく違うセリフに変人は驚きましたが、それ以上にどこか安心していました、怒られなくてよかった、と。
その日、偉い人は「ソレ」をみんなの分作るように言いました。
それからの変人は大忙しでした、あの知り合いの言葉通り、変人以外に「ソレ」を作ることができなかったので、変人は一人で「ソレ」を作り続けました。
忙しいし、とても大変なことだけれど、変人はひとりで最後の一つをつくり終えました。
そして、「ソレ」は「時計」と名付けられ、「時計」が示す数字のことを「時間」と呼ぶようになり、長い間が過ぎました。
時計ができて、変人はそれをもとに色々なものを作り、人々を驚かせていきました。
暗くなる回数を数えて「カレンダー」を作ったり。
時間を図る「タイマー」を作ってみたり。
変人は、とても偉大な変人になっていた。
しかし、変人が時計を作ってから、眠り続ける人が出てくるようになった。
そうなりそうな人たちは、少しずつ体や顔が皺くちゃになって、動きが鈍くなり、元気がなくなっていくからすぐに分かったけど、対処法もないからどうすることもできなかった。
そうして、一人また一人と眠り続ける人が出てきて、ついには変人と一番偉い人だけになった。二人とも、姿は変わらなかったけれど、次に寝たら目覚めないことをなんとなくわかっていた。
最後の夜、二人は抱き合うように眠った、そこにあったのは寂しさだったのかなんなのかは、だれも知らないし本人たちもわかっちゃいないだろう。
二人が眠った後、二人の間からふたつの大きなつぼみができた、時計だったものは大きな木になり、つぼみの周りは草木が茂る楽園のような場所になった。
そしてつぼみから二人の男女が生まれた、二人は楽園でそれなりに幸せに暮らした、そこから先はみんながよく知るあの話だ。fin

時間の概念と時計のなんかそういうの

時間の概念と時計のなんかそういうの

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2017-01-06

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