小学校の思い出(運動会)
「イチニツイテ」
「ヨーイ」
ドンッ
♪ タンタタ タッタ タンタッタ
ターラ ターラ ターラ タタタ
タンタタ タッタ タンタッタ
タタタタ タタタタ タッタタタ ♪
「アカ ガンバレ」、「シロ ガンバレ」
ワーッ、ワーッ
ピストルの音が鳴り、「クシコスポスト」や「天国と地獄」の曲が流れると緊張と期待でドキドキ、ワクワクして、運動会は盛り上がってきた。私の子供の頃の小さな木造小学校の校庭は満開の桜に取り囲まれていて、ゴザを敷いた親たちは身を乗り出し、わが子に声援を送った。村中聞こえるような拡声器の音は農作業をしている人々をも楽しませた。
私はかけっこ競争は嫌だったが運動会は好きだった。子供達の控え席は親の居る所だったので、すっぱい夏みかんに顔をゆがめたり、カバヤキャラメルを頬ばったりしながら出番を待っていればよかった。先生たちは競技が終わるごとに道具の片付けと次の準備で忙しかった。メガホンで「次は三年生の100メートル競走です。集まって下さぁーい」などと呼び出しをしながら縄で張った観客席を回った。
お昼になると子供達は桜の木の下で家族と一緒に御馳走を食べ、ラムネを飲んだ。親の来なかった子は先生達と一緒にやはり桜の木の下で食べた。私と弟と母も輪になって、持ってきた重箱弁当をひろげた。いつもの弁当と違って、「おいなりさん」などが入っていておいしかった。この日は特別に小遣い銭をもらえるのも嬉しかった。運動会も中盤にさしかかり気温が上がってくると、チリン、チリンと振鈴を鳴らし荷台の箱に小旗を立ててやってきた自転車のおじさんからアイスキャンデーを買って食べた。
♪ タララ タララ タララッタッタ
タララ タララ タララッタッタ
タララッタッタ タララッタッタ
タララッタ ラッタ ラッ ♪
突然「ラデッキー行進曲」がかかり午後の競技開始を知らせると子供達も赤や白のはちまきを締めなおした。
昨年の5月下旬に孫娘の運動会を見に出かけた。おなじみの曲が聞こえてくると子供の時の気持ちになり、早く早くとせかされた。校庭に着いてみると暑い日差しを避ける木陰が無く、時々砂塵が風に舞って汗ばんだ顔にかかった。赤や白の運動帽をかぶったKidsの控え席をみると、低学年の孫が私達家族の居場所をみつけて安心したように時々手を振って、出番が来るまでしばらく椅子にジッとすわっていた。昼の食事も親と一緒でなく教室でとるようだった。運動会が終わり家に帰ってから、競争で三位だった孫に運動会はどうだったかと聞いてみたら、太陽にあたってまっかにほてった顔をして「楽しかった、一番楽しかったのは球入れかな」と言ったので私はホッとした。私は、自分の運動会の時は桜の花の下でアイスキャンデーを食べた話をしようと思っていたが、やめた。
運動会は子供達にとって懐かしい思い出として残る。孫の場合は競技で楽しかったということになるだろうし、私の場合は食べ物で楽しかったということになるのかな。 2017年1月3日
小学校の思い出(運動会)