○○ポンの恐怖

「おい、お前、○○ポンって知ってるか?」
「は? 」
俺の友達であるYは顔をしかめながら答えた。
「○○ポンってあの○○ポン?」
「そうだよ。ついに俺、手に入れたんだよ。」
俺は興奮しながら言った。
「まじかよ、お、おい声小さくしろよ。周りに聞かれたらやばいだろ。」
Yは辺りを見回しながら小声で言った。
「あと、○○ポンって名前は言うな危険だ。」
「ああ、だな。」
「にしても、あれって中2でも手に入るもんなんだな。」
Yはさっき自分で言ったことも忘れたのか大きな声で言った。
「静かにっつってんだろ!」
「ごめんごめん。」
時計の針は12時15分を指している。昼休みが終わるまであと15分だ。
「でもあれって依存性がすげぇって聞くぜ?大丈夫なのかよ。」
「大丈夫だろ…まあ、昨日は手に入れられた興奮のせいもあって一日中使ってたけどな。」
俺は話しながらも昨日の興奮が蘇ってくる。ああ、早く帰ってあいつを使いたいなぁ。
「やっぱやばいんじゃん。友人として忠告しておくけど早いうちにやめておいた方がいいって。」
「ううん…」
「この間、授業でもやってたじゃんか。依存性が高いから気をつけろって。」
「ううむ…」
「はあ、そんなにいいか?」
Y呆れた様子でそう聞いてきた。
「当たり前だろ。お前も一回使ってみろってやばいから。しかも、いろんな使い方があるから飽きないんだよこれが。」
「そ、そうか。じゃあさ、明日持ってきてくれよ。」
「おう!分かった!」
俺は満面の笑みで答えた。この快楽をYにも味わってもらえる。そう思うと、感動で胸がいっぱいになった。
昼休みの終わりを告げるチャイムがなる。次の時間は英語だ。英語は最悪だ。
授業中、俺が机に伏せて寝ていると英語のうざい教師が俺の頭を叩いた。
「っせえな!」
「お前なー、そんなことしてるからアルファベットも読めないんだろうが!」
教師がそう言うと教室からちらほら笑いが起きた。ったく恥をかかせやがって、アルファベットなんて読めなくても生きてけんだろうが。俺はそう思いながらもう一度机に伏せ、睡眠を始める。それ以降教師が俺を起こしにくることはなかった。薄い意識の中でYを怒る教師の声が聞こえてきた。Yは俺と同じような反論をしているように聞こえた。


「持ってきたぜ。」
「これか…」
Yはそいつを手に取りまじまじと眺める。
「かっけえな。」
「で、どう使うんだ?」
「ふっ、まずはここのボタンを…」
俺はそこまで言ってから血の気が引くのを感じた。Yの後ろには例の英語の教師が立っている。
「終わった。」
俺がそう小さく呟くとYが後ろを振り返り、唖然としていた。
「おい!お前ら、なんで学校にそんなもん持ってきてんだ!没収だ!」
「ちょっと待って、反省文でもなんでも書くから、この○○ポンだけは…」
「アイポン?なんだそれ。」
英語の教師は真顔でそう言い、俺たちは目を合わせる。
「え?」
「お前らな、アイフォンだよ。アイフォンって読むんだよ。」
「嘘だろ?」
俺とYは途方にくれる。
「でもPって入ってるし。」
Yは言った。
「お前ら、今日の英語の補習来いよ。」
英語の教師はその捨て台詞と俺たちのアイフォンを持って教室を出て行った。

○○ポンの恐怖

○○ポンの恐怖

ヒロポンとは強い中枢興奮作用および精神依存、薬剤耐性により、反社会的行動や犯罪につながりやすいため、日本では覚せい剤取締法により覚醒剤に指定されている。(wikipedia より引用)

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-30

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