せーぶ じ あーす

サークルの展示会で発表させて頂いた作品です。ファンタジーバトルするけどバトル描写少ない風味の環境保全物語です。

「何か、俺だけの力、って奴がほしいなあ」

 涼しげな夏風が吹き込んでくる教室の中で、俺、柏木悠馬は半ば独り言のように呟く。教卓の前には初老の男性教授がスライドに写っている資料の説明をしているのだが、話の八割は世間話のような内容である。今になって思い返すと、この講義も真面目に聞いていたのは最初の一回目だけだった。
「訳のわからないこと言うな、なんだよ、俺だけの力って」
 隣でノートをせかせかと取っている眼鏡が似合うインテリ男子大学生、川崎薫が興味もなさそうに、一応といった感じで返事をした。
「例えば……超能力、サイコキネシスとかで地球を滅ぼす悪と戦う、とかを俺はやりたいのだ、エスパー柏木降臨、って感じで」
「エスパー柏木? ああ、あの鞄の中に体入れるあの人か」
 ペンを持つ手はそのままに、左手を膝の上にポンと叩いて薫はそう言った。
「それは芸人だろうが!」
 思わず突っ込みを入れてしまった。教授の説明が止まり、教室中の視線が俺に向けられる。薫はというと、そっぽを向いて完全に他人のふりをしている。

 教授が咳払いをひとつして、資料の説明に戻ると同時に視線の檻からも解放されることができたが、これ以上無駄話をするほど俺も不真面目な訳ではないので残りの時間は久しぶりに真面目に受けることにした。


 終業のチャイムが鳴る。これで今週の日程はすべて終了だ。
 薫はこの後、自らが所属しているアカペラサークルに顔を出すということで、今日は一人で我が家まで帰ることにした。講義棟からアスファルトの上に降り立つと、地面に溜め込まれていた熱気が舞い上がってきた。この暑さは、今年一番なのではないだろうか。腕時計のデジタル液晶は14時30分を表示している。そういえば今朝見ていた天気予報でも、昼ごろに最高気温を更新だとか、水分補給を忘れずだとか言っていたような気もする。

 大学生協でペットボトルのコカコーラを購入し、坂を下りはじめる。
 しかし、教会を通り過ぎたころには汗もだらだら、足取りも重くなってきてしまった。
 どこか涼を取れるようなところが無いかと、辺りを見回してみる。すると、小道を抜けた先にこぢんまりとした神社が見えた。鳥居をくぐって境内に入ると石畳のひんやりとした感触が足裏を通って体中に染み渡っていく。それにしても、何故こういったところは涼しく感じるのだろうか。

 大きなミズナラの木の陰に設置されている、木製の古臭いベンチに腰を落ちつけ一息ついた後、コーラの余りをちびちびと飲んでいると、どこからか風が吹いていて、まるでここが楽園かのように思えてきた。
 もう少し休んでいこう、と思いipodのボリュームを少し大きくして自分の世界に入り込んでいると段々まぶたが重くなってきた――


「ふあ……ってやべ、寝ちゃってたか」
 腕時計に目をやり今の時刻を確認する、午後4時を少し過ぎた辺り。大体一時間ほどここでうたた寝をしてしまっていたようだ。
 この神社にも随分長居してしまった、お礼がてらお参りでもしてから家に帰ろう。
 そうして俺は空のペットボトルをベンチの上に転がし、拝殿に向かって神に感謝の意をこめてお参りをした。
「さて、今日の夕飯は何にしようかな」
 踵を返して出口へと向かおうとしたその時、視界が真っ白になった。その数瞬後には拝殿のさらに後ろ側、本殿がある方向から、とてつもない衝撃音が俺に襲い掛かってきた。
 俺は短い悲鳴を上げながらその場にうずくまる、目がちかちかして周りがよく見えない。
 1分ほど目を閉じて、深呼吸を数回行ってから立ち上がり後ろを振り向いた。本殿の方から煙が立ち上っている。煙のもとは建物の陰になってしまっていて見ることができない。
 なにがあったのか全くわからない、もし今の俺を誰かが見ていたら頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでいることだろう。
 それにしても、あんなに大きな音がしたのに、野次馬の一人も来ないのも不可思議だ、さっきの衝撃は俺の白昼夢だったのだろうか。しかし、だとすると煙の説明が出来なくなってしまう。

 俺は恐る恐る本殿の方に歩き出していった。長いこと庭の手入れもされていないのか、少し奥に進むだけで雑草や蜘蛛の巣がわんさかあり、なんだか辺りが鬱蒼としてきた。くそう、ハーフパンツなんかで来るんじゃなかった。
 それでもなんとか歩を進めて本殿前に来た。すると入り口の扉が消滅していて、代わりに半径2メートルほどのクレーターが出来ていた。

 昔どこかで、隕石が人に直撃する確率は100億分の1だと聞いたことがある。しかしそれはあくまでも人に直撃する場合のみの確率であって、神社の本殿に隕石が落ちる確立となると大雑把に考えても1億分の1くらいになるのではないだろうか。そうなると、もしもこのクレーターの原因が隕石だとしても、全く真実味の無い話、という訳でもないのではないか。と独自の理論を展開して今の状況を無理やり飲み込む。うん、よくあることよくあること。
 恐る恐るクレーターに近づいていく。くぼみの中は落下の衝撃で舞ったであろう土煙のせいではっきりとは見えない。

――正直に告白すると、俺はこのとき楽観的な考えしか頭の中を回っていなかった。例えば「もし落ちてきた隕石の中に滅茶苦茶高価な宝石とか含まれていたら俺ってスーパーラッキーボーイじゃね?」とか「UFOのかけらとかだったら、俺が第一発見者ってことでNASAから取材うけるのかなあ、そして特別功労賞的な賞をもらえたりして!」とか、そんなつまらないことしか頭に無かった。
 クレーターのすぐそばまでやってくると、俺は屈んで窪みの中を覗き込んだ。
「まだ土煙が濃くて何がなんだかわかんないなあ……ん? 」
 窪みの中になんだか丸っこいシルエットがあった。これってもしや未来からのカプセルとか?
 その瞬間、土煙の中から、にゅっ、っと2本の青白い触手のようなものが現れて俺の首に巻きついてきた。
「うわああ!」
 急いで触手を振りほどこうにも力が強くてうまく解けない。段々と脳に酸素が送られなくなっていく。俺は薄れ行く意識の中で先ほどの甘い考えを反省し、心の中で今まで育ててくれた両親への感謝の言葉を述べ、神さまにどうか天国に連れて行ってください、とお願いした。
 その時、耳に妙な雑音が入ってきた。甲高くて、たまにはひっくとまるでしゃっくりの様な音も混じっている。もしかしたらこの音の発信源は今まさに俺を殺そうとしている異星人なのではないだろうか。天を仰ぐ形で悶えていた俺はその視線を青空から目の前のクレーターに移す。最後に一目見ておけば天国に行ったときにいい土産話ができるだろう。
 すると視界に映ったのは火星人でもエイリアンでもプレデターでもないものだった。
 黒くて細い毛髪、短めの手足、そして俺の膝の上にすっぽり収まるくらいの身長。 間違いない、こいつは幼い少女だ。少女が俺の首に手を回して泣きじゃくっているのだ。
「誰だお前!」
 俺は少女にむかって最後の力を振り絞って叫んだ。
「え?」
 少女はこっちを見る。泣き止んでくれたのはいいが、肝心の俺の首を絞めている両手はそのままだったので少女の腕に手のひらを二回ぶつけてタップすると、ぱっと両腕を離してくれた。
 脳みそに酸素を送り込むことに数分かけてから、もう一度少女に質問をする。
「おま、……君は、どこから来たの? さっきの爆発で怪我してない?」
 頬に残る涙の跡を拭った少女は、赤いプリーツスカートの裾を俺の首の代わりに掴みながら答えた。
「わたし、わたしはあっちのほうから来たよ。」
 雲ひとつ無い青空に向かって指をさす。そして「お兄ちゃんのほうこそ怪我してない?」と続けた。
「ああ、俺は大丈夫だけど……、空?」
「じゃなくて、3EJR841世界からきたんだよ、あ、ここじゃあただの英数字の羅列にしか翻訳されないんだっけ。」
 まだ幼さの残る口調で少女は訳のわからない言葉を含む返答をしてくれた。その辺りは軽く受け流して質問を続ける。
「それで、君はなにをするためにここまできたの?」
「あ! そうだった、あのね、お兄ちゃんにこの星を救って欲しいの! 本当はわたしが一人で守る予定だったんだけど、せいたいじょうほうをさいこうせいしてとうがいわくせいにおくりとどけるさいにえらーがはっせいしちゃって、これじゃあわたしじゃだめだっておもって、ね、おねがい。 悪い奴らと戦ってちきゅうを救って!」
 ここまで話を聞いてみて、俺はある結論を出すことが出来た。
 この子は、頭が弱いのだ。もしかしたらさっきの爆発に巻き込まれてしまったのかもしれない。その衝撃が運悪く脳に異常をきたしてしまったのだろう。
 そして俺はなおも説明を続ける女の子を尻目に「お兄ちゃんは地球を救うには力不足だよ」と一言言い残して神社を後にし、アパートまで戻った。

 部屋でレトルトのカレーを温めて本日の夕食を済ませて、薫に借りた漫画を読んでいると、辺りは完全に暗くなり、壁時計の短針は頂点を越えるほどになっていた。そろそろ就寝しようとおもい、携帯電話を充電器に装着しようとポケットの中を漁るが見当たらない、しまった、あの神社に忘れてきてしまった。



 神社の近くに街灯は一つも無く、ただ月明かりのみが境内を照らしている。それでもなんとか自分が居眠りしていたベンチにまでたどり着くと、携帯電話と空のコーラのペットボトルがあった。携帯電話を拾い上げて入り口まで戻ると、入るときには丁度死角になっている物陰に先ほどの少女が座り込んでいた。
 もしかしたら悪ふざけのいたずらで俺を困らせようとしていた訳ではなく、何か特殊な事情があるのではないのだろうか、本当に頭のネジが緩んでいるのだとしても、来る途中にパトカーや警官を見かけなかったということは、ご両親は恐らく捜索願を出していない。
 このまま放って帰ってしまえば俺の明日の目覚めも悪くなってしまう。俺はうずくまる少女の目の前に立って「住んでいる家はどこにあるの?」と尋ねたが、少女は相変わらず「座標特定するのにしばらく時間がかかって……とにかく協力してくれる地球人がいないと……」と、昼の調子で理解できない返答をしてきた。
 その後もぶつぶつ独り言を呟いては「あうう」とため息を漏らす少女。
 俺としてはどういう形であろうと家に帰ってくれればそれでいいので、話に乗っかってやることにした。
「よし! わかった、お兄ちゃんがこの地球を救ってやろう!」
 深夜にはつらつとした声を出すのは正直しんどかったが、少女はそれ以上の快活さを持った声色で「ホント!? それじゃあそれじゃあ、これを使って地球を救って!」と言い、プラスチックで出来たコンパクトを渡された。
「これを叩くとつよくなれるから、それじゃあ、地球の平和はお兄ちゃんにまかせた!」
 そう言って少女は俺に向かってビシッっと指差した。

 結局言いたいことはよくわからなかったが、これでこの子も一安心だろう、俺は少女の目に付かないような草むらの中にコンパクトのおもちゃを捨てた。

 家まで送ってあげようと思い、二人で一緒に神社から出ようとしたときに、背後から砂利を踏む足音と金属音が聞こえた。振り向くと、携帯電話を置いてあったベンチの近くに3メートルほどの物体がある。人のようにも見えるが、それにしては大きすぎるし、何よりシルエットがとてもゴツゴツしている。そしてそれは動くたびにカラカラと薄いトタンを小石で叩いたような音が鳴っている。
 そしてその物体は俺の方へゆっくりと歩み寄ってきて、2メートルほどの距離まで近づいてきたときに、急に一撃、これまたゴツゴツしている右腕からストレートが飛んできた。
 少女をかばいながらも咄嗟のところで避けることができたが、後ろにあった石垣は今のパンチで消し飛んでいる。数秒間頭の中が真っ白になったが、怪物が二撃目の為にまた腕を振り上げようとしているところで脳が再回転してくれたので、少女の手を引き、外に逃げ出そうとした。しかし少女は自分から走り出そうとはしない。
「おい、早く逃げるぞ!」
 すると少女は今まで怪物に向けられていた双眸を俺に向けて
「まって!これがの戦わなきゃならない相手なの!」
 少女の目は真剣そのもので、得も言われぬ説得力が宿っていた。それに、この怪物をどうにかしない以上、俺たちが無事に家に帰ることはできない。そのどうにかできる情報をもっているのはこの場では少女だけだった。
「わかった。だが、どうしたらいいんだ!」
 再びゆっくりと、だが確実にこちらに向かって歩いている怪物から逃げながら少女に尋ねた。
「さっきのコンパクトを出して! はやく!」
「そんなん捨てちまったよ!」
 えー! と少女の叫び声。
「あれがないと私たち殺されちゃうよ、早く捨てたところに戻って!」
 しかしコンパクトを捨てた草むらは神社の中にあり、ちょうどその近くに怪物がいるのだ。とはいっても、あれを手に入れなければどうやら勝ち目はないらしい。俺は少女の手を掴みながらコンパクトの位置にまで近寄ろうとする。怪物の動きはがたがたと遅いので難しいことではないのだが、先ほど見せつけられた破壊力のせいか、それとも非日常を体験しているせいか、膝ががくがくと震えてうまく動くことができない、つまずき、転びながらもなんとか攻撃をよけることで精いっぱいだ。

 そうこうしているうちに俺たちは袋小路になっている塀と建物の中に追い詰められてしまった。ガランガランと音を立てて怪物が向かってきて、月明かりを背中に受けて俺たちの前に立ちふさがった。
 この時になって初めて気が付いたのだが、この怪物、ところどころ透明で月明かりが透けて見える。特に左腕はすべて何か別の物体でできているみたいだ。左腕で一度も攻撃を繰り出していないところを見ると金属よりは攻撃力が低いものなのかもしれない。俺は改めてコンパクトの位置を確認する。運が良いことに、丁度怪物の左側を抜けることができればすぐに草むらがある。
 俺は意を決して怪物の脇腹を抜けていくことにした。だが肝心の足はまだ震え続けている。太もものあたりをゴツンと殴ってやったら少し治まったので、軽く息を吸い込み、思い切り地面をけり上げて走り始めた。怪物は俺の動きに気付き左腕を振りかぶった。足がまた震え始める、いくら足に力を込めてもうまく地面を踏みしめることができない。振り下ろされた左腕は俺の背中に直撃した。
 しかし衝撃はあったものの、バランスを崩す程度のものであり、予想通り壁を吹き飛ばすほどのものではなかったのでそのまま草むらに飛び込むことが出来た。
 手入れのされていない草むらのおかげで、身を潜めながらコンパクトを探すことができた、ピンク色の安っぽいコンパクトも案外すぐに発見することができたので、それを拾い上げ、立ち上がると怪物がこちらに気づいて襲い掛かってきた。俺は少女の言うとおりにコンパクトを手のひらで二回叩くと、全身がまばゆい光に包み込まれていった。
 光が足元から頭の先にまでたどり着くと光はいっそう力を増して、直後はじけ飛ぶように霧散していった。精神的には何も変化が無いみたいだが、何故だかジーンズとTシャツ姿から黒を基調とした3本ラインの上下ジャージ姿になっていた。
「なんで?」
 俺は少女のほうを向いて尋ねた。
「機動性を重視したの!」
 少女の返答に納得しかけていると、怪物の右ストレートが俺の顔面に向かって高速で繰り出された。避ける余裕も無く、俺は目をつぶりながら両腕で十の字を切るような形のガードをするのが精一杯だった。鈍い金属音が辺りに響く。
しかし、体に痛みや衝撃はいつまでも来なかった。恐る恐る目を開けると怪物の右腕が、正面衝突を起こした軽自動車のようにグシャグシャになっている。俺に当たる前に何かあったのだろうか、とその原因となりうるものを探してみたが境内には見当たらなかった。
 怪物もパンチを繰り出した体勢のままで硬直している。試しに軽く右足に当たりそうな部分を小突いてみる。瞬間、怪物の右足はべコリと凹み、凄まじい衝突音とともに反対側の塀にまで吹き飛んだ。いきなり右足部分をごっそりなくしてしまった怪物はバランスが取れずその場に倒れこんでしまった。
「これって……」
「お兄ちゃんの力だよ」
 少女が明るい笑顔で俺の二の句を遮るように答える。
「冗談だろ?」
「ホントのことだよ、もう一回やってみたらいいんじゃない?」
 足元に転がっている怪物の頭を、キーボードのエンターキーを押すくらいの力で叩く。ズドン、という音とともに足元が一度大きく揺れ、怪物の頭が平面状になった。頭が潰れると、怪物の体が少しずつばらばらに分解されてゆき、空き缶やペットボトルの集合になっていった。
 するともう一度俺の体が光に包まれ、光が解けると俺はジャージ姿からいつもの普段着に格好が戻っていった。俺は怪物を潰した右の手のひらを見つめた。変わりない俺の右手だ。ただ、指先から段々と血の気が引いていくのを感じた。この感情はさっき怪物と相対したときにも感じたものだ。
だが、今感じているのは、怪物でなく、自分自身が手に入れてしまった能力に対する恐怖だ。
「この力は何だよ。おい……」
 少女のほうを振り返るよ、塀に背中を預けたまま眠ってしまっている。いくらゆすっても起きてくれないので、仕方が無く抱きかかえて、今度こそ本当に神社を後にした。


 それから数日後、昼休みに大学構内で俺は薫と学食に来ていた。
「どうした? お前ここ数日表情が暗いぞ、なんだかやつれているみたいだし」
 薫が俺の顔を覗き込むようにしながら尋ねる。
「いや、気にするな。ちょっとレポートが溜まっているだけだ。」
 嘘である。俺のローテンションは他に理由がある。しかし、これだけは薫といえども話す訳には行かない。
 
 幼い少女と同居しているなんて、口が裂けても言える訳が無い。
 
 あの夜が明けて少女が目を覚ました時、すぐに帰る家を問い詰めた俺だったが、少女はずっと空を見つめて「私は今お家に帰ることはできないの」と呟くのみであった。ポケットの中や背負っていた黄色いリュックサックの中をひっくり返してみても、住所はおろか、少女の名前がわかるもの、両親の連絡先などヒントになりそうなものは一つとして出てこず、今もまだ我がアパートに彼女を住まわせているのが現状だ。
 ローテンションの理由は以上なのだが、やつれているのはもう一つ理由がある。
 少女の世話はびっくりするほど手がかからなく、料理を二人分作ればあとは勝手に俺の部屋のマンガを読んだり、夕方には児童向けアニメを見ていたりと、一人で時間を潰せるようであったのだが。しかしながら俺はというと、あの日から数日に一回のペースで怪物退治を行っていた。
 何かを感じ取った少女がいきなりマンガを放り投げて俺を外に連れて行くと必ずそこには怪物が居るのだ。怪物の種類はあの日のようなものだけでなく、例えば、昔にテレビCMで放映されていたようなタバコの怪物のようなものと対峙したこともあった。

「とりあえず、レポート片付けなきゃいけないから、俺はこれで」
 とはいっても俺の目の届かないところにあいつを一人にさせておくのは、なんだか不安だ。トレイを持って席を立つと、まだ講義の残っている薫を残して俺は先に食堂を出た。

 部屋に戻ると、少女は朝と同じ場所で寝転がり、マンガを読み続けていた。
「あ、おかえりなさい」少女が一度目を俺にむけて挨拶をした後、すぐにまたマンガに目を戻した。
「お前は飯を食べるかマンガを読むか、アニメを見るかしかしないのか」
「だってこんな面白いもの、私のところには無かったんだもん」
 目をらんらんと輝かせて、某海賊漫画の表紙を俺に向けながら話す。
 少女の親御さんはなかなか厳しい教育をしているみたいだ。いや、俺も小さいころはそうだったかもしれない。「そうか、よかったな」と適当に返事をした後、俺もテレビゲームのスイッチを入れた。少女は本を閉じ、俺の背中にととと、と寄ってきて、ゲーム画面をまじまじと見つめる。格闘ゲームに女子小学生が興味を持つとはとても意外だった。ただ恐らくこいつの家にはゲームの類も無いのだろうと考えると、この行動も珍しくは無いのかもしれない。俺たちはこのまま夕暮れまで自堕落な空間を創造し続けていた。
「そろそろ夕飯にするぞ、今日もカレーだけどな」
「うん、カレー大好き!」
 俺は少し小さめの深皿に適当にご飯とカレールーをよそって、机の前に正座している少女の前に置いてやる。
「お兄ちゃんのぶんは?」首をかしげながら上目遣いで俺に尋ねる。
「俺はシャワー浴びてくるから、先に食べてろ」
 わかったー、という少女の言葉を背中で聞きながら俺は風呂場に突入した。

 シャワーを浴びながら俺は、これからのことについて考えていた。いつまでもこのまま少女を預かっているわけには行かない。少女のご両親のためにもならないし、俺もいつまでも世話をし続けたくは無い。だがいくら俺が問い詰めていても返ってくる答えはいつも初日と同じであった。
 やはり警察に引き渡すのが一番いいのかもしれない。ただあいつと初めて出会った日から早一週間。下手に日にちが経ってしまった。もしかしなくとも、俺は児童誘拐の罪に問われるのではないのだろうか。
 その時、不意に部屋のチャイムが鳴った。「はーい!」という声とともに少女が床をぱたぱたと駆けて行く音が聞こえる。まずい。非常にまずい。
「おい! 俺が出るからお前は隠れていろ!!」
 俺はあわてて玄関に向かう。しかし、既に少女はドアを開けてしまっていて、その向こうには薫と他の友人数名が立っていた。買い物袋をぶら下げている彼らの目の前には、見知らぬ女子小学生。そしてその後ろには全裸の成人男性。この瞬間、俺の大学生活は唐突に終わりを迎えた。

――その夜、我が家ではこのメンバーで鍋会が行われた。
 俺の必死の弁明により、先週より旅行に行った叔母夫婦の代わりに娘さんの世話を頼まれた。という事でなんとか彼らには納得してもらえた。大学生活は首の皮一枚で何とかつながることができて何よりだ。ただ皆一様に遠い目をしているのが気にかかるが。
 ちなみに薫たちはどうにかして俺を元気付けてやろうと思い、仲間内でサプライズ鍋パーティーを計画していたのだという。俺はなんていい友達を持ったのだろう。ただ今回はタイミングが悪すぎたことだけが悔やまれる。
「その、ゆりかちゃんだっけ? ゆりかちゃんの好きなものは?」友人の一人が少女に尋ねる。ゆりかというのは俺が即興で名づけた名前だ。それにしても物分かりのいい子で助かった。
「うん、わたし、プリキュアだいすき!」満面の笑みでゆりかが答える。彼女はすぐに男子大学生の人気者となった。
「でもね、なんでみんな中途半端に強いんだろう。わたしなら、もっと強いのになあ」
 少女の言葉を受けながら、強すぎるのも考え物だよ、と思いながらも「それが、粋ってものなんだよ」と返事しておいた。

 次の日からは、大学にもゆりかを連れて行くことになった。俺が講義の間は薫たちが面倒を見てくれるらしい、「ほら、お前も疲れているだろうし、そっちの方がゆりかちゃんも安全だからさ……」との事だ。まだ俺の疑いは晴れていないらしい。
 ただ、薫たちのおかげで日常生活での俺の負担は減ることになり、だいぶ楽にもなった。夜の怪物退治は流石に皆に頼るわけには行かないので、そちらの負担は相変わらずではあったが。

 そんなある日、午後から急な休講で暇が出来た俺は、ゆりかと一緒に薫の練習を見に行くことにした。薫はサークルの中でも一番の歌唱力を持つ男である。学生会館の前のベンチに座り、俺たちはしばしの間、薫のソロコンサートを堪能した。
「不思議……聴いているだけで、自分の中身がコロコロかわっていく」
 感受性が強いのか、ゆりかは曲によって涙ぐんだり、笑顔になったりしていた。確かに、それだけ薫の歌声には力がこもっている。
「だろ? それが歌の力だよ」
 水を飲みながら薫が答える。
「かおるはなんで歌うの? 聴いてくれる他人の中身を変えるために?」
「それもあるけど、もっと答えは簡単だよ。俺は歌いたいから歌っているんだ」
「かおるは歌っていると、楽しくなれるの?」
「そうだよ」
「じゃあ、歌ってすごいね。聴くひとも、歌うひとも、どっちも楽しくなれるんだ」
「試しに歌ってみる?」
「うん!」
 それから夕暮れまでの間、ソロコンサートは薫と少女のふたりでの合唱会となった。

 他にも休日は出来るだけ外に出て、色々なものをゆりかに体験させた。遊園地、映画館にウインドウショッピング。ゆりかは全てのことに目をキラキラと輝かせてその物の存在意義を質問し、男子大学生たちはお得意の詭弁のようなそれらしい説明をして、ゆりかを納得させていた。傍から見るとあまり健全ではない光景ではあったが、それなりに楽しい日々を俺たちは過ごしていた。

 しかし、時が経つにつれ、夜の怪物たちは二体、三体と数を増していった。複数の怪物を相手取ることで初めてわかったことだが、この与えられた能力にも限界があるらしく、長時間の戦闘などで体力が消耗されると、それに比例するように能力の効果も低下していくのであった。ゆりかはというと、夜になると小さく縮こまって震えるようになった。それは怪物にではなく、その背後にいるもっと大きな何かに怯えているようにも見えた。

 そしてその日は訪れた。
 とある平日の深夜、近頃は日課になりつつあった怪物退治を一通りこなし、怯えるゆりかの手をとり起き上がらせてやった。今日は、あの隕石が落ちてきた神社に5体もの怪物が出現したので、非常に疲れた。早く帰って眠ってしまいたい。
 そういえば、空には青白い月がひとつ浮かんでいる。ゆりかと目が合った。少女の瞳には未だ恐怖の色が見え隠れしている、その容姿のせいか、恐怖というには少し幼さを感じさせるものではあったが。
 俺は最初に出会った時から今まではぐらかされ続けてきた質問を、もう一度問いかけてみた。
「お前は何者なんだ? そしてあいつらはどうして地球に襲いかかって来るんだ?」
 それにこの力のことも聞いていない、戦いや共同生活の忙しさで忘れていた疑問が再び芽吹き始める。

 ゆりかは少しの間視線を落とした後、意を決したかのように勢い良く首を振り上げ、俺と視線を合わせた。
 そして唇を動かし始めたその瞬間、背後にあるコンクリ塀がぶち破られて、そこから何体もの怪物が出現してきた。ざっと数えてみても20体はいるだろうか。
「ちょっとこの数は……しんどそうだな」
 俺は自嘲的に笑って、コンパクトを叩いた。

――それから30分ほど経っただろうか。俺は数々の空き缶やタバコの吸殻の中で一人棒立ちになっている。まだ目の前には怪物たちが群れを成して俺に襲いかかろうとしているのだが、これ以上は身体が動かない。完全にガス欠だ。
 一体が俺の鳩尾に強烈な一撃を食らわせる。ろくにガードも出来ずに俺は逆側の塀にまで吹っ飛ばされた。ぶつかった塀と同じように俺も崩れ落ちる。
 仰向けになっている俺にとどめを刺そうと怪物たちがやってくる。「ああ、ここで死ぬんだな」と俺は直感で理解した。
 そのとき、夜空の中にきらりと一点の光が生まれた。その光はそのまま空の全てを覆うように広がってゆき、数秒もしないうちに、月明かりのみで照らされていた世界が、全て真っ白な光の下に曝された。怪物たちは動きを止め、夏の夜風も吹かなくなり、この地上で動いているのは俺とゆりかだけになった。ちなみにゆりかは隅でがたがたと震えている。
『もう、十分でしょう? 早く出てきなさい』
 天から女の声が聞こえる。まるで空全体がスピーカーになっているかのようであった。
「ママ、これってやっぱりママがやったのね」
 ゆりかが顔を上げて、その声に向かってそう言った。
『ええ、あなたがいつまでも出てこないから、それに元々このキットの中身は廃棄予定だったし』
 キットという言葉が聞こえた。いったい何の話をしているのだろうか。天の声は続けて言う。
『これは私たちの研究物であって、あなたの遊び道具ではないのよ? もうその研究も終わって、新しい実験も開始したいの。このままだとこの箱が壊されてしまうわ。ケースだってタダじゃないのに』
 ゆりかが空に向かって言い返す。
「でも、このキットの中にはここだけの文化があるよ」
 文化。そういえば、ゆりかが俺たちとの生活の中で異常に興味を持っていたものは、全て文化的なものであった。
 しかし天の声はゆりかの反論をばっさりと切り捨てた。
『そんなもの、対象の精神の不安定さを補うための応急処置的な産物に過ぎないわ。ヒトという生物は感情の揺れ動きが大きすぎる結果、エラーとして異常行動を誘発してしまう。そのために文化、とりわけ娯楽という形でカバーを行っているの』
 天の声にとって、文化や感情というのはエラーであるようだ。
『さあ、早く、ママをこれ以上困らせないで。それにあなたが気に入っていたその個体も、もう限界みたいじゃない。勝手にわたしたちの力の一部を与えたりなんかして』
 俺に話が向けられたようだ。話題に挙げられたのだから立ち上がってやろうかと思ったが、指先ひとつも動かせないほど、俺の体はぼろぼろだった。仰向けのままで話に入る。
「当事者も参加させずに好き放題言いやがって」
『まあ、強靭な生命力をもつ個体なのね。いや、今くらいの成長度合いが最も活発な時期だし当然かしら』
 感嘆したように声が響く。
「おにいちゃん……」
 ゆりかが俺のほうを見やって心配そうな表情をする。ゆりか、と一度少女の名前を呼ぶ。
「今聞こえている声の主、つまりお前の母親がこの世界を作ったのか?」
「うん。お兄ちゃんからだとそういうことになる。神様って説明すればわかりやすいかな」
 俺が今こんな状況じゃなければ、到底信じられないカミングアウトだ。薫に「ゆりかは神の子なのだ!」と話したってあいつは憐れみの目で俺を見ることだろう。
 俺はもうひとつ質問を今度は天に向かって投げかける。
「ケースとか研究とか言いやがっていたが、この世界はお前らにとってありの巣観察ケースなのか?」
 ありの巣観察ケース? と戸惑う天の声に対してゆりかは「ママ、今情報概念を送るね」と言い、数秒間目をつぶった。
『ふーん、こんなものがあるのね……ええ、大体は合っているわ。私たちは、あなた達の言う生物学者のような仕事をしていて、これ以上大規模な発展が認められないセカイは一度分解、洗浄して新しい要素で再実験をするの』
「つまり地球は滅亡する。ってことか」マヤ文明も捨てたものではないみたいだ。
「そしてこいつらはその為に送り込まれたんだな」俺は怪物たちに目線を送る。
『半分正解。だけれど彼らは私が送り込んだ訳ではないのよ。あなた達人間は不思議よね、自らの娯楽のために、自分たち生息できる適正な環境を破壊している。単純な未来予測もできない程度のリスク管理能力しか持ち合わせていないのは非常に残念だったわ。……そうそう、それであなたが今まで戦ってきた相手のことなのだけれど、私はあなた達が生み出してしまったケースを破壊してしまう要因となるものに少しわかりやすい形を与えただけのものよ。自業自得という奴でしょう?』

何も言い返せなかった。確かにその通りである。この世界は、怪物たちによって壊されてしまうのか、ただ緩やかに終わりを迎えるかどうかしか違いは無いのだ。
 

「ママ、聞いて」
 ゆりかが一歩前に出て話し始める、いつの間にか少女の体から震えは止まっていた。
「ママの言うとおり、この世界の住民は皆、目先の便利さのみを追求して、大局が見えていない。確かに文化だってエラーをカバーするために生まれた副産物だと思う。でもね、でもね! わたし、お兄ちゃんとここで過ごしてみてわかったの! 笑うこと、泣くこと、怒ること。これは応急処置なんかじゃないよ、人間だけじゃなくて……私たちにだって必要なもの!」
 震えの止まった少女はとても強く、凛とした態度で自らの母親にこの星の価値を語りかけた。
 しばらくの間、周りが静まり、天からの声が聞こえなくなる。30秒ほどすると、はあ、というため息が空一面に響きわたり、
『ママの言いたいことはちょっと違うんだけどなあ……そこまで言うならわかったわ。このケースはあなたにあげましょう。ただ、ケースが壊れたらそれまでよ。このままだとすぐに壊れてしまいそうだけれど。それと、明日から新学期よ。そろそろ戻りなさい』
 と宣言した。
 神の世界にも学校があるのか。という突っ込みは置いておいて、どうやら、地球は一人の神の子によって救われたみたいだ。いや、救われてはいない。首の皮一枚でつながっただけである。

 光が引いていき、元の夜空に戻る。月明かりのみの世界に戻り、先ほどの怪物たちは全てゴミに変わっていた。俺はそれを手にとって、ゴミ箱に投げ入れた。
「一件落着、なのかな」誰にでもなく独り言を呟くと、「ふふん、わたしのおかげ!」とかゆりかが横で勝ち誇った笑みを浮かべていた。まるで、宝物を守れたかのようなその笑顔に神の面影は無かった。

「ありがとうな」
 人類の代表として、お礼を言う。
「救ってくれた感謝ももちろん、こんな地球を好きになってくれたことも、ありがとう」
 ゆりかはいやいや、と首を左右に振る。
「こっちこそ、こんなすばらしい世界を作ってくれてありがとう。いつかママにもわかってもらえるといいな」

 それから、少しの間、今までの話をして、もうすぐ来るお別れを惜しんだ。
 もうお休みも終わりかあと嘆くゆりかを見ていると、この世界を作った奴らも案外俺たちと変わらないのだなと感じてしまう。

 俺はポケットからコンパクトを取り出して渡した。「それじゃあ、お別れだね」とコンパクトを受け取ったゆりかがうつむく。不思議に思いその顔を覗き込んでみると、彼女の目からは大粒の涙がこぼれていた。そしてとうとうコンパクトを地面に落としてしまった

「おい、大丈夫か?」
「うん、でも、皆とお別れって考えたら、寂しくなっちゃって……こんなこと、今までなかったのに」
 俺の脳内にもゆりかと過ごしてきた約一ヶ月の日々がフラッシュバックしていた。
 視界がぼやけてきていて、喉の奥が熱い。あろうことか、俺もどうやら泣いているようだった。何年ぶりの涙だろうか、もう前回の涙の記憶は思い出せないほど向こうにある。数年ぶりの涙は大洪水になってしまった。しばらくの間二人で向かい合って泣き続けた。
と、その時急に口元が曲がった。今度は胸の奥からくすぐったい何かが上がってきて、俺は不意に吹き出してしまった。

「あははは! おまえっ、なにした、ぶっはは!!」
「だってお兄ちゃんいつまでも泣いているんだもん、笑わせたほうがいいと思って」
 前を向いてみると、いつの間にかゆりかは泣き止んでいて、手の中にはコンパクトがしっかりと握られている。このコンパクト、こんな使い方も出来るのか。
「だからっつって、こんな、強硬手段にでること、ないだろ!」
「この前見たプリキュアで、お別れは笑顔で、っていってたもん、ねぇねぇ、これが粋って事でしょ?」
 やっと笑いが止まり、俺は失われていた酸素を深呼吸で取り戻した
「馬鹿、全然違えよ」
 そういって俺はゆりかの手をとり、コンパクトを叩かせた。


 それから一ヶ月が経ち、時折吹く秋風が夏の終わりを感じさせるようになった。
 そんな中、南小樽駅の近くにある洒落たカフェで俺は薫の話を聞いていた。

 薫は歌手を目指すため、来年から東京の専門学校に転入することにしたらしい。
 あの時、ゆりかに歌の話をしたときから、不思議と夢に向かって前向きになることができたと、少し照れくさそうに薫は話してくれた。
 来年から友人が上京してしまうのは少し寂しいが、それ以上に夢を追いかけることにした薫は輝いて見えた。声に出すのは恥ずかしいので心の中でエールを送ってやることにする。ぜひ、持ち前の美声であいつを楽しませてやって欲しい。

 あの後、ベールのようなものに包まれて、天に昇っていくゆりかを見送った俺は、翌日から札幌にある環境保全団体にまで赴き、メンバーに加入させてもらった。誰にも話していなかったのだが、試しに薫にその事を話してみた。
「どうして?」
 心底不思議そうな顔をして薫が尋ねる。
 夏になる前の俺なら、あるいはあの時携帯電話を神社に忘れていなければ今でも、俺はそんな団体には入っていなかっただろうと思う。もしかすると、薫だってこの大学で四年間過ごし続けていたのかもしれない。
 俺は薫に話しかける。
「結構前に、俺は超能力で地球を滅ぼす悪と戦いたいって言ったの、覚えているか?」
「うん」
「見つけたんだよ、地球を守る方法」
 そうだ。
「俺は、火ばさみと四十五リットルのゴミ袋で、地球を救ってやるのさ」
 それは、超能力でもなんでもない、ただの大学生でも出来ること。

 そうして俺は今もこの世界を見ているであろう彼女のことを思い出した。


                                               

                                                終

せーぶ じ あーす

せーぶ じ あーす

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-17

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