11月のパースペクティヴ
晴れた空の朝を ようやくみつけて
山の上の古寺まで 君の車で走った。
枯山水の庭に臨んで
押し黙ったまま 静寂を護るように眺める 比叡の山
縁側に座っている君の背中を 不安に思いながら
敷き詰められた紅葉の つづれ折りの上に
一枚 落ちる
冬へと沈みゆく 木の葉
一瞬向きなおった君からこぼれる微笑が
変わらない平穏を 僕に教えて
ありきたりな杞憂が 数秒だけ溶ける
昨日の夜の優しさが ずっと繋がり続けてゆくことを知る。
疑いもなく
この 忘れられやしない人生 に対して
息をころすのをためらわずに 一回だけ 声なく 背中に呟く。
「これで いいんだよね」
11月のパースペクティヴ