代理恋愛アプリ

たんなる思いつき。

「はじめましてだよね」
月並みのセリフ。面白味もなにもない。
「ええ、そうだと思います…」
まずい、会話が続かない。
タカシはスマホをとりだした。
『誕生日は9月?』
エミコはびっくりした顔で、
「え?なんでわかったんですか?」
『そのネックレス、サファイアでしょ。9月の誕生石。
誰かのプレゼント?』
「え、えぇ」
『大丈夫。それ以上は聞かないよ。誰だって大切な想い出があるもんね』
エミコはネックレスをいじっていた。
「やっぱりこれ、外します。タカシさんに失礼ですもんね」
『ありがとう。今日は楽しんじゃおう!』


「どうですか、皆さん!これが全く新しい、
人工知能を組み込んだスマートフォンです!」
会場に拍手が鳴り響いた。
「女性を口説くアプリをも可能にした画期的な技術。
その成功率はプロのホストにも引けを取らないでしょう。」


「タカシさんとお話ししていると、楽しいです」
「そう?嬉しいな」
『嘘つき。この子を口説いたのは僕なのに』
「誰だ!」
『君のスマホだよ。黙って聞いてれば、嘘ついてばっか。
僕がいなければ何も出来ないくせに』
「うるさい!」
タカシはスマホの電源を切った。
「こんどはどんなお話をしてくれるの?」
言葉が浮かばない。なにを話せばいいんだ?
「う…ん…今日は帰ろう」
「え?」
「じゃ、またね」
タカシは逃げるように、その場を立ち去った。


「お待たせしました。恋愛アプリの女性バージョンのデビューです」


街にはスマホを持つ男女であふれた。
でも、本人同士は黙ったまま。
会話をしているのは、お互いのスマホ。
『今日はどこに行こうか』
『ちょっと待って。いま検索するから』

「最近、20〜30代の出産率が落ちていることが明らかになりました。
原因は、セックストークアプリの開発が遅れているからのようです…」

代理恋愛アプリ

代理恋愛アプリ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-25

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