靴と観覧車

夕暮れ
電車の座席
靴を脱いで窓の外を見る
3歳ほどの女の子
わたし、あれ好き
何かを指差して母に伝え
あれ、素敵ね
と、また母に

母は頷いて、娘の髪を優しく撫でる

綺麗に揃った娘の靴は
ラメが入り、シャンパン色でお洒落

親子は目的の駅に着いたようだ

娘はその小さな靴を履き
母に手を引かれ電車を降りる

その娘は足がわるいらしく、
可愛い靴を引き摺りながら
ゆっくりと歩く

(今だけは
母親に抱かれずに
シャンパンの靴で
泡のように歩きたいのだ)


母親の左手は愛情と苦しみと責任と
言葉にならない思いを
ちいさな右手と共に握っている


母娘は無事 駅に溶け
窓の外

大きな大きな
虹色の観覧車が
ゆったりと回りながら
遠ざかっていった

靴と観覧車

靴と観覧車

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-23

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