『エリットとサリー』

紅蛇 作

※研究のために、複数の人が共同で使用しているアカウントです。作品に感想を入れてくださると嬉しいです。宜しくお願い致します。

紅蛇さんによる作品です。

「やぁサリー」

「やぁ!エリット、どうしたんだい?」

「僕の話を聞いてくれるのか?」

「あぁ、もちろんさ!」

「突然だけどサリー、君はどうしてサリーなんだい?」

「ん?どういう意味だ?俺は生まれてくる前からサリーだよ」

「どうして?生まれる前から決まっていたの?」

「そりゃあ、親が俺が生まれてくる事を知っていたからさ」

「じゃあ、サリーは親が決めた名前なんだね」

「ああ、そうとも」

「じゃあ、親はどうしてサリーって名前にしたんだ?」

「わかんない。でもいいんじゃない?」

「そうか……じゃあサリーのこと、これからビリーって呼ぶね」

「え、どうしてなんだ?」

「親はサリーと名前を決めた。なら僕はビリーという名前にするよ」

「え。俺の名前はもう決まってるんぞ」

「それは親が決めたことだ。僕じゃない」

「だからって…」

「それに親が勝手に君のことをサリーと呼んでいるだけで、本当の名前は違うかもしれないよ」

「いや、書類にもそう書いてある。『サリー』ってね」

「それは本当は仮の名前だったら?」

「はぁ?仮!?」

「そう、だって本当の名前じゃないから。ただ、そう呼んでいるだけ」

「俺がそうだったら、エリットもそういうことになるな」

「あぁ、そうだ。僕もエリットじゃない。わかる?」

「やっぱ、意味わかんねーわ」

「分かんないかな?僕らの名前はただ、呼ぶときに困るからあるだけで、本当は名前がないんだ」

「え?無いの!?」

「あぁ、ただそう呼ばれてるから、そう自分の名前がそうなんだなぁ、って思うだけ」

「他人がそう呼んでるから…」

「ペットもそうでしょ?自分が「ポチ」だって最初から知ってたわけじゃないじゃん?なんか人間にそう呼ばれてるから「あれ?おいらの事かな?」って思って「ポチ」っていう言葉を聞くと反応するんだよ」

「そ……そうだな。まぁ、一理ある」

「一理ってどういうことだよ」

「エリットが言ってることは話を聞いて何となくだけど、わかってきた。でも俺の名前を勝手にビリーって呼ぶのはな……結構今の名前気に入ってるんだけど」

「わかった、君がそういうのならポチ」

「え、ちょいちょいちょい!なんでポチなんだよ!しかもさっきのペットの例で使った名前じゃんかよ!」

「え?でも君はちゃんとそれが自分の事だってわかったじゃん。君が反応してくれたってことは、君はポチっていうことでしょ?」

「いやいやいや、ツッコんじゃダメってことかよ!」

「だってもしかしたら僕は自分の事をポチって呼んでるかもしれない。もしかしたらセリフの最後には「ポチ」って言わなくちゃいけないゲームかもしれない」

「あぁ、それで?」

「でも君は「自分の事」だって理解してたじゃん」

「うわぁ…混乱してきたぞ」

「それにあだ名ってあれでしょ?あれも本当の名前じゃないじゃん。でもみんなそれが自分だって理解している」

「まぁ、そうだけど…でもポチは嫌だよぉ」

「それが君の生まれてくる前から起きてることだよ」

「はぁ?あ……」

「そう。君自身の名前。親が決めた名前のことさ。それも君には拒否権もなんもない。勝手にそう決められて呼ばれてるだけ!」

「うーん、そうだけどなぁ……でもそれとこれはナンカ違うじゃん!」

「何がだよ?」

「なんかこっちは俺のためを思ってる感じがするだろう?でもエリットが呼んでるのは……なんか嫌だ!」

「それって刑務所にいる収監されてる囚人たちも思ってると思うんだ」

「なんか急に話が違う方面に行ったね……」

「でもそうじゃない?囚人達も自分の思い込んでいる名前じゃなくて番号とかで呼ばれてんだよ!あと社長さん達とかも!名前じゃなくて社員達には「社長〜!社長〜!」って呼ばれてんだよ!」

「そ……そうだね」

「でしょ?ただそれを言いたかっただけ」

「え?話したかった事ってこれ?」

「そう。これだけ。構ってくれてありがとう」

「えーどういたしまして?」

「じゃあねー」

「バイバーイ」

『エリットとサリー』

『エリットとサリー』

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-23

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