わたしは西園寺リルケゴールです。どうかこの詩をゆっくりスクロールさせながら、ゆっくりと読んで下さい

わたしは西園寺リルケゴールです。どうかこの詩をゆっくりスクロールさせながら、ゆっくりと読んで下さい

   







   






   



   







   






   


みなさん  こんにちは。



西園寺リルケゴール の 詩へようこそいらしゃって下さいました。



今日 この時間    あなたと    大切な時間を過ごせることを


とても



とても     嬉しく思います。



あなたはまず この詩のタイトルをご覧になりましたね。




そうです。   「わたしは西園寺リルケゴールです。どうかこの詩をゆっくりスクロールさせながら、ゆっくりと読んで下さい」。




どうか、この詩は    ゆっくり、ゆっくりと読んでいって下さい。 




あなたの人生の時間を、しばらくわたしに預けてください。









さて





まずは肩の力を




抜いてください。




十分にリラックスしてください。







そのつぎに





深呼吸をしてみましょう。





そう、ゆっくりと






ゆっくりと






体が十分にリラックスされましたか?






いい感じですか。






では  ゆったりした姿勢をおとりください。






さあ、これからの時間。






わたしとともに  しばし時間をお過ごしください。















あなたは   今朝   どのように目覚めましたか?











すがすがしい目覚めだったでしょうか?










それとも   低血圧のあなたには  かわりのない

朦朧とした目覚めでしたでしょうか?











それとも    あなたは悪い夢に追われていましたか?











追われた挙句、「起きろ」という自分の頭の声に振り返り、

     不可解な世界から今日の朝へ生還されたのでしょうか?












今日、


(この詩を朝に読まれる方は昨日のことでもかまいません)


あなたは 何をして過ごされましたか?















お友達とどこかへ出かけられたでしょうか?

        ひとりで部屋の掃除に明け暮れたでしょうか?















「それどころじゃない、俺は今日も働いてたんだ」

       そういう方もいらっしゃるかもしれませんね。
















一日の出来事を思い返してみてください。・・・・・完全に。   完全に。   できるだけ、完全に。















ゆっくり思い出してみましょう。
















あなたの発した言葉、誰かがあなたに放った言葉、

   誰からのものでもない通りすがりの言葉。
















あなたが今日(あるいは昨日)、目にした光景。すれちがった人の影。思いが焼きついた景色。


      あなたが明日には忘れてしまうかもしれない


              あなたの心を何も動かさなかった場面。








  










いま・・・・・あなたの想像力は

    どこまで今日(もしくは昨日)のあなたの一日を思い返すことができたでしょうか?


















記憶の掘り返しが十分なところまで至ったら・・・・・・


さあ、あなたにとって今日(昨日)はどのような一日でしたでしょうか?














なに一つ変わったこともなかった平凡な一日だったのでしょうか?


それとも何か意味のある特別な一日だったのでしょうか?














あなたにとってそれは平和な一日だったのでしょうか?


それとも ひどく心を痛めた不幸を感じた一日だったのでしょうか?














・・・・・あるいは何の感慨も呼び起こさない、


   止まってしまった一日を ただ今日も延長したに過ぎなかったでしょうか?
















さあ、ここで休憩しましょう。

肩の力を抜き、深くゆっくりと呼吸してください。













それでは。
















あなたが今までに書いた数々の文章のことを考えてください。



手紙やメール、LINEなどによって、誰かに送った文章、

あなたがお書きになった日記や小説、エッセイや詩、



なんでも構いません、あなたが  ずっと前  過去に書いた文章を、なにか一つ思い出してください。















その一つの文章を、出来れば、思い出せるだけ、言葉一つ一つ、洩らすことなく、思い出してください。お願いします。













あなたが書き連ねた言葉、あなたが書こうとした事柄、


   言葉の一句ずつ、  そしてその全体。












では。











あなたはその文章にどのような思いを吐き出したのでしょうか?
     

あるいはただ気の赴くまま 字を書き連ねたのでしょうか?



もしかすると誰か、あるいは不特定の人々の


    反応を想定して気持ちを込めてお書きになったのでしょうか?















あなたの想い、気まぐれ、意図が含まれた文章・・・・・・・


あなたがこの世界に作り出した文章のことを思ってください。














そして


あなたの文章を目にした人、届けられた人の反応はどうだったでしょう?













あなたは あなたの文章を目にした人たちの反応に何を感じたでしょうか?


あるいは何を感じなかったでしょうか?














あなたは あなたの文章のことを思い出せましたか?


それにまつわる あなたの人生の一部を思い出せましたか?














あなたが今までに書いた文章はすべて過去のものですね。













その文章は  今どこにあるのでしょう?


どこに 保存されていますか?


今どこへ行ってしまってるのでしょう?


あるいは  どこで 無くなったのでしょうか?














あなたはその文章の言葉とともに


それを書いた後、あなたのなにを  置き去りにしましたか?













あるいは その文章が行方知れずになっても


あなたが 何も変わらないものがあるとすれば 


               それはどのようなものですか?















先へ向かいましょう。












過去を考えてみましょう。


・・・・・・いえ、



過去の出来事ではなく、



ここでは 過去にあなたが出会い、別れていった人々のことを。














過去。


愛した人、憎んだ人、自分にとって何の感慨も残さなかった人。

どのような人でも構いません。



あなたが出会った人、そしてもう記憶の遠い向こう側にいる人。



そのような方々を  出来るだけ多く  思い出してください。













あなたは 


その人々と どのような時間を過ごされたでしょうか。


あなたの人生の どれだけの時間を その人々とともに費やしたでしょうか。














それは あなたにとって どのような時間だったのでしょう?


満ち足りていましたか?  退屈だったのでしょうか?


それとも時間が、ただ過ぎていくばかりであるような、無意味なものだったでしょうか?













その時間に出会ったあなたは


あなたは淋しかったのでしょうか? 


     とても感情が張り裂けそうだったでしょうか?


  あるいは幸福と呼べるようなあなただったのでしょうか?


もしかすると今の自分と変わらない なにも感じられない日々の中にいましたか?













あなたが出会ってきた人々は あなたに何をしたのでしょう?













 あなたが出会った人々は


    あなたに、何を残していったでしょうか?


    あるいは、何を残さなかったでしょうか?







              






あなたが出会った人々に


   あなたは なにを与えましたか?


そして   なにを渡さなかったのでしょうか?













あなたは あなたが出会った人々との時間を


完全に思い出すことは出来ますか?













あなたは 過去に出会った人々との間で


  彼らが決して忘れていないことを、


    あなたが忘れている、ということはありませんか?



同じように


    過去の人々がもうすっかり忘れているのに

 
     あなたは決して忘れられないことがあるかもしれないように。















あなたの過去の人々は  どこに行ったのでしょう?



彼らと過ごしたあなたの時間は  どこへ行ったのでしょう?



あなたは彼らについて忘れたことは  どこに埋葬されたのでしょう?


彼らが忘れたあなたの想いは  どこへ葬り去られたのでしょう?















あなたは  いま  なにかをお感じになってるでしょうか?
















最後に


みなさんに  お願いがあります。












いま この詩を書いている、

 (厳密に言えば書き終えている)

この詩の作者 西園寺リルケゴール、

    わたしのことを 想像してください。



PCのモニター、もしくはスマホの画面の  この空白の多い画面を通じて

    わたしのことを 想像してください。    














想像してみて頂けますか?
















あなたは 何を想像されたでしょうか?


わたしが今まで書いた詩でしょうか?


   それともわたしがツイッターで あなたや他の方に送った「いいね」や、メッセージでしょうか?


   あなたはもしかすると 初めてわたしの詩を読む方でしょうか?



あなたは 何も想像できなかったでしょうか?


あるいは わたしの思いも及ばないことを想像されたでしょうか? 


もしかすると ただこの画面の詩のことだけ お考えになったでしょうか?

















みなさんが想像された わたし  西園寺リルケゴールというのは、


きっと、わたしがあなた方を想像する場合と


         ほとんど同じ存在ではないでしょうか?
















つまり       虚構。


     しかも半分だけの虚構、つまり、まぼろしです。



わたしとあなたは 


         ネットを通じて  詩というフィクションを通じて



こうして   画面を通じて対話する関係ですね?


わたしが詩を書いて  それをあなたが読んでいる。  これは現実。


しかしその詩の作者 西園寺リルケゴール。


  その人物と、その詩というものは、まるで現実性の危うい実態です。


分かりやすく申し上げますと、


   わたしが詩を書いている。それをあなたが読む。   

   
これはまぼろしではない。


   しかし


   あなたには  わたしのことを  実際には見えない。


  そして


   わたしが詩の中で  あなたに伝えようと思ったことは、決してそのままあなたには伝達できない。


   だから   これはまぼろしの姿です。















だから  わたしとあなたの関係は   半分だけ虚構、  まぼろし。



・・・・・・もっと詩的な言い方がいいですね。



「半分だけ現像した写真」。



ぼんやりと半分だけしか写らなかったポラロイドの写真。


いかがでしょう?
















「半分だけ現像した写真」。



















今日  わたしはこの詩の中で たくさんのことを


       みなさんに思い出してしていただきました。



今朝の目覚め、今日、あるいは昨日一日のあなたに起こった出来事、過去に書いたあなたの文章のこと、


        それに過去に出会った人々のこと。


それらに対するみなさんの想いの記憶。



















あえて、わたしは 極論します。






それらはすべて「半分だけ現像した写真」のようなものではないでしょうか?
















「半分だけ現像した写真」のように

 
   わたしたちは   わたしたちのなにかを


     いつも  半分だけ どこかへ置き去り、無くして、偽って


わたしたちは  決して


      真実   本当のことへ  歩み寄っていくことが出来ない。
















そしてその半分が  何であったかも 忘れ去っていく。

















半分の光景は  いったいどこに  今いるのでしょう。



















そして


半分の光景を失ったまま生きる  わたしたち。


わたしたち自身が  「半分だけ現像した写真」  なのかもしれません。


















「半分だけ現像した写真」の   ように


いつもなにかを 留められなかったまま、


「半分だけ現像した写真」のような   人生を


「半分だけ現像した写真」な存在として   終わりを告げ、


あとには


「半分だけ現像した写真」のような   形見が残るのかもしれません。



















あなたはどう思われますか?























この詩は これで終わりになります。



貴重な時間をご一緒させていただいたことを


心より感謝します。



わたしは  あなたがどんな方なのかは  わかりません。


でも  あなたの貴重な唯一の人生に  一瞬だけ立ち会えたことを   幸福に思います。



ありがとうございました。




   







   






   



   







   






   

わたしは西園寺リルケゴールです。どうかこの詩をゆっくりスクロールさせながら、ゆっくりと読んで下さい

10年以上前に書いた作品。
どうして、こんな詩を書こうとしたのか思い出せない。
どうやって、この詩を書いたのか思い出せない。
当時と今では変わっている部分もあるので、加筆訂正した。

作者ツイッター https://twitter.com/2_vich

わたしは西園寺リルケゴールです。どうかこの詩をゆっくりスクロールさせながら、ゆっくりと読んで下さい

  • 自由詩
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-23

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

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