「和歌山想起」

実家に帰って手を合わす 居間に佇む仏壇に
信心なんてないけれど どこか嬉しそうな母の顔

飼い犬と歩く河川敷 高校サボった散歩道
純粋無垢な間抜け面 死ぬまでずっと見てたいな

歩道橋からゴミを捨て 知らないオヤジに怒鳴られて
泣きべそかいて土下座して 2度とすんなと釘打たれ

そんな小学生の頃 何度か遊んだ友のこと
10年余りたった今 犯罪者として名を見るとは

真冬の王子公園に降り積もるような蛾の死骸
その上をはしゃいで走る 同級生が気持ち悪い

中学二年辺りには 保健室に入り浸ってた
何にも言わない先生が 何も言わずにベッドを空けて
隠そうとした色々が 結局あの人にはバレていた

親戚の集まる正月が嫌いになったのもその頃だ
年明け直後 酔いどれが絡んでくるのがウザかった

進路はどうだ? 彼女はどうした? ガッハッハ
今さら戻れない道程を 俺を使って懐かしむな

高校入ってすぐの頃 隣の女子に告白(こく)られた
男を取っ替え引っ替えで今に思えばヤリマンだった
それでも本当に好きだった

大雨の後の紀ノ川は 珈琲牛乳の色合いで
龍門山は無表情 鞆渕(ともぶち)の山を蛇行 吐きそう
桃の畑に黄色高圧ナトリウムランプ
カブトムシなんか飛んでこんでええよ
標識の下の花束がやけに目に留まった日に
スピード超過で違反切符を切られた友達
アポなしでうちに来るところだったらしい
そう言うところがお前らしい
頼むから事故で死なんといてよ

「和歌山想起」

「和歌山想起」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-22

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