キオク

はじめまして、愛桜です。
今回は短編の童話風にしてみました。
説明口調なので読みやすいと思います。
どうぞ最後までお付き合いくださいませ(●´ω`●)

ここは、街の片隅にある小さな小さな本屋さん。
そこの店主の名前は キオク さん。本当の名前は誰も知らない。みんなからキオクさんって呼ばれている。看板猫のニーナ。黒猫。
今日は一体誰が来るのでしょう。

「いらっしゃい」
キオクさんが出迎えたのは金髪の少女。少しオドオドしていた。
ニーナが少女に近寄る。
「可愛い・・・」
少女は小さく微笑み、ニーナを抱き上げる。
「可愛いでしょう。ニーナというんです」
キオクさんが優しく声をかける。少し安心したのか、少女はキオクさんに一歩近づく。
「あの、キオクさん。私の悩み、聞いてくださる?」
「ええ、もちろん」
キオクさんは本棚の本を眺め始める。
「私、何故ここに来たのかわからないの」
「おやまあ」
「あとね、私は今までどうやって過ごしてたのかもわからないの」
「そうか。大変だね」
キオクさんは一冊の分厚い本を手にする。
「私、家に帰りたい。どうすればいいの?」
「家に帰りたい・・・それはみんなが思うことですね。あなたも、そう思っている」
少女は小さく頷く。
「君の名前は?」
「キャロン」
「そう・・・キャロン」
キオクさんは本を開いた。
「キオクさん、それはなに?」
「ある少女の物語だよ。話を聞きたいかい?」
キャロンは頷く。
キオクさんは口をゆっくり開いた。

昔々、ある港町に可愛らしい少女が生まれました。
少女は可愛らしい笑顔で周りの大人達を和ませました。
少女はスクスクと育っていきました。愛想のよい、素直な優しい子でした。
しかし、悪夢はやってきました。
少女が15歳のときに母親が他界しました。
父親はショックで正気を失い、自殺をしてしまいました。
取り残された少女は親戚の家に預けられましたがそこではこき使われ、虐待を受けていました。
少女は家出をして1人隣町に行きました。
しかし少女は誰にも歓迎されませんでした。
少女はハーブを育て、それを売ってなんとか食い扶持を繋いでいました。
しかし、町の人々はそれを見て魔女だと言いました。
少女は魔女裁判にかけられ、火炙りの刑で死んでしまいました。

キオクさんは口と本を閉じました。
「キオクさん、その本のタイトル・・・なに?」
「ああ、タイトルかい?タイトルは・・・」

「キャロン」

その瞬間、キャロンは膝をついて床に倒れ込みました。
「あ、ああぁぁああっ?!」
キオクさんの仕事は、死者のキオクを呼び戻すこと。
そして死者を昇天させること。
「私、私っ・・・・・・!!?」
「キャロン」
キオクさんはそっとキャロンに近づき、抱きしめました。
「大丈夫、キオクは戻ったよ」
「あ、ぁあぁぁあああっ・・・!!」
「もう、帰れるよ」
扉がガチャリと開く。キラキラ光っている。
ニーナが扉の外に出た。
「さあ、ニーナについて行きな。もう迷わずに行けるよ」
キャロンはゆっくり立ち上がり、ニーナの後を追いました。
扉はバタンと閉まります。
キオクさんはため息をついて本を仕舞いました。
迷える魂達よ、私の元においで。
キオクさんは微笑み、店の奥の部屋に行きました。

次はどんなお客様がくるのでしょうね。
またのご来店をお待ちしております。

キオク

愛桜です。
最後まで読んでいたたぎ、感謝しています。
はじめての作品はサクサク読めるような短編がいいなと思いこの様な作品ができました。
このキオクさん、私的にも結構気に入ってまして、今後も時間とネタがあれば続きを書いてみたいと思っています。
しかし、一番のお気に入りはニーナです(笑)
基本、色々なジャンルを書くのでまた違う世界観やジャンルの作品で皆さんにお会いするかもしれません。
まだまだ未熟者ですがよろしくお願いします。(ぺこり

キオク

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-07-14

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