真夜中のヴィジョン
目と唇のひとから
告げられたとおりの5つのおまじないの言葉を囁いて
目隠しを解いて 外気に触れると
生き残った思いの残り火は 地下鉄に飛び乗ったあのひとと ともに 広場の夜へと走り去って もう探しようがない
(光の僕を追いかけていた途上で 闇の僕が 僕を追いかけていることに気づく)
あのひとの広場はどんな広場だろう。
きっと観覧車やキャラメルがある 青い指輪や鏡ばかりの部屋もある。
オリオン座のドレスが釣り下がっているのが見える。 ビードロの絨毯の上で僕は休息を取るに違いない。
黄昏時に迷子になれば きっと 帰れない。
どうやってここへ来たのか きっと 思い出すことを いつしか 僕は拒むだろう。
目と唇のひとの広場。
(光の僕を見失って 闇の僕から逃走することへと僕は費やされる)
(でも、むしろ僕は 光の僕に追い求められることを願う)
目と唇のひと。
名前のない 愛しあう誰かと誰かたちは 名づけあってから
次の日には もうその名前はシュレッダーで裁断される
暗がりの中だと 通りすがるみんなの顔が綺麗だね だなんて、
そんな呟きの誰かも 午前一時の空爆 か この世界のディスクドライブから消殺されて 永遠に 見えなくなったよ。
(疾走しているうちに)
(僕は光の僕でも闇の僕でもなく あなたを いつか見つける)
(その時 僕はようやく光の者でも闇の者でもなく あなたを知るひとになるだろう)
地下鉄の通路の闇にシェルターをイメージして 誰かと誰かの愛情 一人ずつ守りながら、
僕は 際限もなく沸き起こる羅列の錯乱に 告げられた5つのおまじないの言葉 すり切らして、
目と唇のひとのこと を 考えてる・・・・・・・・
真夜中のヴィジョン。
あの目と唇の像を 紡ぐ 真夜中のヴィジョン。
真夜中のヴィジョン
僕の好きな女性ミュージシャンのスザンヌ・ヴェガの歌に“Night vision”というのがある。
その音のイメージで、スザンヌ・ヴェガに似た人のことを考えながらこれを書いた。
“Night vision”はYouTubeで聴くことができる。https://youtu.be/zETMiioinxE
作者ツイッター https://twitter.com/2_vich