サンタクロースを信じさせるほどの

美しい女性がいました

誰よりも優しく
朗らかに笑い
上手に歌い
情熱的にドラムを叩き
北国の生まれで
自分に厳しく
お酒が好きで
美しいものが好きで
誰からも愛される


彼女は当然のように結婚していて
でも幸せになりかねているようでした

ある12月、彼女は長く続けていた楽器屋さんを
辞めることにしました
福祉の仕事に転職するのです
その仕事は誰の目にも
彼女にぴったりに見えました

同僚の誰もが悲しみ、惜しみましたが
誰にも止められません

だから楽器屋さん達は集まって
彼女のためにバンドを作りました


ベース
キーボード
ギター
トランペット
サックス
もひとりサックス
彼女がドラム


折しもクリスマス近く
楽器屋さんの楽団は クリスマスの歌を
彼女のドラムに合わせて演奏しました

クリスマスソングには
ドラムが似合わないかと思われましたが

彼女の叩く
力強くて優しいドラムは
楽団員たちを踊らせながら
誰よりも歌っていました

ドラム
ベース
キーボード
ギター
トランペット
サックス
もひとりサックス

楽団の人々は皆、演奏しながら
サンタにお願いをしました


どうか彼女に幸せを

どうか彼女に
永遠の安心と微笑みを

優しい雪と 年月(としつき)


楽団の人々は久しぶりに心からサンタクロースを信じたくなりました



美しい女性がいました

誰からも幸せを願われる

人々にサンタを信じさせるほどに
美しい女性が

サンタクロースを信じさせるほどの

サンタクロースを信じさせるほどの

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-18

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