美しい子のままで

深夜、テレビで
肌を曝す仕事に就いた女性と
その家族のドキュメンタリーを
流していた

女性、母親、父親

三人は久しぶりに
食卓を囲んでいた

鳥のソテー
彩りの良いサラダ
スープ
赤ワイン

やがて
母親は女性の仕事を泣きながら
詰り出した

カメラの前で
ソテーを頬張りながら

父親は女性達に嫌われるのを恐れて
口をつぐんでいる

「娘は可愛いが、自慢の娘ではない」
「折角国家資格を取らせてやったのに」
母親がワインに酔って口走る

娘である女性は泣きながら、時々謝罪する

しかしその頬は、その瞳は
少しだけ笑っている

ああこれは復讐なのだ

自分の価値観だけを押し付け
娘のことを考える振りをして
自分のことだけを考え続けた母親と

それに気づかぬ振りをして
仕事に逃げ続けた父親への

良い子の娘の反抗なのだ

自分勝手な父母を恨めない
人生を賭けた反抗期

もちろん娘にもその番組にも
悪いところがあるだろう

しかし

子供はどんな親も愛さざるを得ない
どんな言葉も届かない
愛すべき相手を説得するのに
彼女は人生を捧げた


いつか来るだろうか


「自慢の娘じゃないなんて言ってごめんね」
「私があなたを縛っていたのね」
「愛し方を間違ってごめんなさい」
「今まで何も口出さずに悪かったな」
「家族から目を背けて済まない」

そう両親が娘に頭を下げる日が


そして娘が
美しい子のまま
暖かく 彼らを許す日が

美しい子のままで

美しい子のままで

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-17

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