いつかまた逢おう・・・たとえ世界が変わっても
気付けば心の中に君がいて
刺さったままのナイフから流れ込んだ数千ものイメージと痛みで気を失った俺は病院に搬送された。
一時は心停止状態だったから、それとも空部屋が無かったのか俺は、個室に入れられていた。
小さめのビルと、ビルの間から朝日が昇ってきた。この街は山々に囲まれている。
海に行くにも、大都会の喧騒を味わうためにも、山を越えなければいけない。
そんなに遠くない昔。まだ交通手段が確立していない時代この街・・・。いや。
この村の人々は何を求めて山を越えたのだろうか。
徒歩で山を越える人々は自分が背負う荷より、大きな夢を背負って山を越えたのだろう。
この街に生まれた俺も、山を越えなければ何ひとつ手に入らないのだろうか・・・。
もっと楽に生きる事は出来なかったのか・・。
-看護師が来る。-
(そうですか~。(#^ω^))
香奈に遇いたい。そんな思いから、感傷に浸っていた俺の気持ちを現実に引き戻す一言。
あぁ~ぁ。狂ってる。現実に引き戻すのが、一次元世界の人間だなんて。
どっちが夢なのか解らなくなる。
どちらでもいい。好きにするがいい。看護師ね。何か問題でも?
開き直った所にそいつはやって来た。
体温計を渡しながら看護師が話しかける。
看護師「井上さん。気分はいかがですか?」
若い女性の看護師は何故か怪訝に俺を見ている。
あぁ。現実に引き戻されたおかげで、恥ずかしくて熱がでそうだよ。
彰彦「大丈夫。」
そう言ったはずだけど、看護師は何故か帰らない。
気分を壊された腹いせに、ろくに顔も見ずに生返事を繰り返す俺をこの看護師はのぞき込むように見ている。今頃になってわかった、この看護師・・・かなりカワイイ!
浮かれた気分になりそうなところを抑え、帰らない看護師に
彰彦「まだ何か?」
どうだよ。これだけ冷たくすれば帰るだろう。
俺は香奈の事を考えたいんだ。早く帰ってくれ!俺の心は、力一杯そう語っていたが
コイツには通じなかった。
看護師「やっぱり、覚えていないですね。」
看護師は少し震えている。ん~。なぜ? 怒りを堪えているようにも見える。
-前回。担ぎ込まれたときに対応した看護師だ。
勿論。自殺した時の話だ。-
くっそ! バビロンの野郎~!最近は人間に近くなりやがって
嫌味まで覚えやがった!『担ぎ込まれた。』だけで解るよ。
-怒るな。彼女はお前に何か話したいようだ。-
(そうだな。嫌味を覚えても、冷静さは健在だな。)
彰彦「で。なに?」
看護師「はっ~ぁ?!」
ヤバい。現実とバビロンとの会話が一緒になった・・・。
バビロンにするはずだった冷たい態度を力一杯表現して看護師に答えてしまった。
(笑うな!)
-彼女の名前はメイ。だ。-
彰彦「ぁ。ゴメン。メイさんだよね。」
オレ、なに機嫌取ってんだ?
看護師「覚えていたんですか!」
バビロンの入れ知恵があったのは認める。だが、覚えている。
応急処置室に運ばれた俺に、初めて声を掛けた若い女の声。
そしておぼろげに見えた、命と書いたネームプレート。
彰彦「ホントの事を言えばね。会話した内容は覚えている。
う~。そのつもり。だけど顔は覚えていないんだ。
ただ、そのネームプレートに書かれた名前。命。
医者が君を呼んでいた。メイちゃんと。」
メイ「あの状態で・・・。そこまで覚えているなんて・・・。
やっぱり。運命・・・。」
え。なに? 運命って。君は、ウン・メイ(運 命)って名前だったの?
中国籍の人?そこまで覚えてるって・・・ネームプレートの事しか言ってないし・・・。
彰彦「そんなにひどかった?俺。」
取りあえず。間を取る為に一言。適切だったはず。間違った受け答えはしてないはずだけど
返ってきた言葉はこれ。
メイ「都市伝説。信じますか? 私。信じます。」
(ばびろん! おれ、危ない扉開いたか?話が、かみ合わない。)
-危ない扉とは何の事だ?お前は、危険な扉以外開いた事は無いはずだ。-
(そうだけど・・・。なら、てきとーに流して逃げる。それも、いつもの事なんだろう!)
-入院中のお前が、看護師からどうやって逃げる。-
(う~。せめて、この場をやり過ごそう。)
俺とバビロンの会話はメイには聞こえない。その間をどう勘違いしたのか
彼女はヒートUPして続けた。
メイ「私、小さい頃からカエルやウニの解剖が好きで・・・。彰彦さんの体から出た毒素。異常です。」
もっし、も~し!話が繋がらないよ~!はいちゃったよ。不思議っ娘スイッチ。
普段ならカエルの解剖で、かなり引く。
だけど、今だけは解剖って残酷な響きより、ウニってなんだ。これが勝って残酷な響きは無し。
何処でウニが解剖対象になる? それって・・・食ってるだけだろ。
話は繋がらないし、ウニの解剖だし・・困惑する俺をよそにメイは続ける。
メイ「貴方の体にあった。毒素は異常です。私、調べたんです。その毒素を!
それで、解ったんです!正体が!」
彰彦「そうなんだ~。俺さ。眠いから寝るね。」
-そんな手は、彼女に通じないな。-
メイ「その毒素。知りたくないですか?」
そこか!ヤメロよその話は!知ってるって!俺が、自分で飲んだヤツだよ!
頼む。それ以上、俺の傷口を広げないでくれ!
彰彦「自分で飲んだから知ってるよ。」
冷たくあしらったつもりだった・・・。
だか、不思議っ娘は自分の世界に入り込み、俺の反応は無視された。
メイ「私、夜勤ですから。10時で勤務終わりますから。
中庭で会いましょう。10時30分に!」
余りに一方的だけど、なぜか逆らえない。彼女の雰囲気に圧倒されながら思わず答える。
彰彦「解った。十時半。中庭ね。」
そうは言ったが!行くもんか! いくら可愛くても
危ない女は御免だ!中庭なんて、何処にあるか知らね~し。
わかったから、帰れよ。早く。俺はウニじゃねえよ。解剖しても旨くねえよ。
メイ「じゃあ。中庭で!」
何故か使命感に目覚めたその顔は、すがすがしさを感じさせたが・・・。
俺には、危ない世界の入口に見えた。何故、俺の周りの綺麗処には
痛い性格がついてくるんだ。
-逃げるのか。-
(当然。)
メイ「あ。彰彦さん。この前、入院した時。寝た切りでしたよね。
中庭も知らないですね。私、迎えにきます。10時30分に。じゃあ!」
彰彦「・・・。はい。」
-諦めろ。逃げ道はない。-
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10時過ぎたら売店にでも行って、メイから逃げよう。考えが纏まり逃走準備をしていると
誰かが、ドアをノックした。時間が無いのに・・・彰人か?だったら、しかたねえ。
そう思いながら「どうぞ」と言った途端に俺はフリーズした。
入って来たのは、きったね~え黒のジャージに短パン。短パンからはみ出た脚は
オレンジの横ボーダーのオーバーニー。『どこで買ったんだ。』とツッコみたくなる衝動を
抑える事がギリのハート型メガネ。手には、ハンドバックの代わりにナップサック。
あ・彰人じゃない。だれ?占い師風の詐欺師?
「お間違いじゃないですか。」いたわるように優しくかけた俺の言葉を無視して訪問者は
おもいっきりドアを手で押したと思ったら両手を広げ、かなりなスピードで滑るように
俺の前を通り過ぎた。すーって。通りすぎた。
へッ? なんで? なぜ? 滑った。すーって。なに?
あっけにとられ、一連の動きを見ていると、まったく足を動かす事なく。スーと
反対側の壁まで滑り。壁にたどりつくとまた、反動をつけ歌舞伎風のポーズをとったまま
ベットの前までスーと戻って。ビッシ!と止まった。???なに?
足元を見てやっと解った。あぁ。ローラーシューズね。
予想外の行動で訪れた、痛いカッコウのチビ女。(ロラーシューズ付き。)
しかも、ドヤ顔で俺を見ている。何だよ。今日は最悪だ!と思いながら誰なんだと顔を見る。
おお!かなりカワイイ!って。メイじゃねえかよ!
コイツは10時前に来やがった!10時まで仕事?騙しやがったな!
天然か?それとも俺が逃げると予測したか?どちらにしても侮れない存在だ。
そう思うと同時に、逃げなければ解剖される・・・と、俺の第六感が危険を知らせる。
生き延びる為に、この痛過ぎる女になんとか対応し、何事も無く逃伸びる為に弱点を捜す。
解った事はロラーシューズが自慢。それだけ・・・。
対応策なし・・・。
何か言おうと口をパクパクした俺の目に、ジャージの間からカワイイようで
凶暴な、シュールな熊が胸いっぱいに刺繍されたTシャツが目に入った。
あう。痛すぎる。しかもその熊、何か・・・食ってんじゃん・・・。
人か?それ、人間だよね・・・刺繍のクマに人が頭からかじられている。
直視することに耐え切れず目を伏せたが、生きる為に気を取り直し、もう一度メイを見た俺は
さらにダメージを食らった。
ジャージのロゴは「Puma」じゃなく「kuma」だった・・・。
そこまであからさまなバッタもんのジャージ。クマ。
もしかして、プーマより有名なのか? なんて思ってしまうほどの、どや顔。
シュール過ぎる。なんて表現すればいいんだ。こう言えばいいか。
昔・・・くっそ暑い夏の日、山道を車で走っていた時に背丈より高く茂った道路脇の草藪をかき分けて
トップレスのババアが道路に飛び出して来た事がある。その容姿はモンペ姿に上半身裸。
頭から手ぬぐいをかぶり首にも手ぬぐいを掛けていたが・・・ババアの乳は首から掛けた手ぬぐいと
同じぐらい伸びていた。効果音で表現すると『シワシわだらーん。』命カラガラ逃げた俺は
後日、広辞苑で『シワシわだらーん。』の正体を調べると、山道に住む妖怪トップレスババア。
暑い夏の日だけ出るらしい。と載っていた。しかも俺が出くわしたのはクワを持った戦闘型。
有名な伝説的UMA。妖怪トップレスババア(武器所持バージョン)を車で轢きそうになった。
あの時の色んな意味での衝撃をメイは凌駕した。はるかに超えていた。
-開き直りは必要だ。-
彰彦「く・。く・。クマ好きなんだ・・・。」
メイ「わっか・っります~。私、クマ。大好きなんです~。」
お前が好きなのはクマか?ウニか? どうせなら『Uni』ってロゴのジャージ見つけてこい!
解剖したウニに対しての償いをしろ!落ち着きを取り戻しつつあったが、また負けた。
うなだれてこう言った。
彰彦「うっ・ウニも・好き・なんだ。」
ナップサックにはウニのキーホルダーが付いていた。キーホルダーのウニも・・・
やっぱり、なんか食ってる。う・うす・牛じゃん。ウニが食ってるの牛だろそれ!
俺のファッション感覚・・・半壊。
俺の小さな常識・・・崩壊寸前。
俺のスケール感覚・・・全滅。
全ての感覚が崩壊していく中、一通りのウニとクマについての拘りを聴かせられ
さらにロラーシューズに話が変わる頃。立ち直った俺は、メイに要件を切り出した。
彰彦「毒素の話はどうした。」
いきなり過ぎたか?メイは今までとはうって変わり不機嫌になった。
やりすぎたか?でも、可愛くてもコイツの破壊力はテロリスト並みだ。
気を許したら解剖される!
メイ「そんな態度でいいの?」
ヤバい。解剖される・・・あっあ
彰彦「ああ。悪いな。どうしても気になったから。」
-今の態度は良くないな。-
(そうだね。)
もういい!よく考えれば俺の方が強い!うりゃ~あぁ~・・・。どうでもよくなって来た。もう疲れた。
メイ「約束は守るためにある。」
解剖は守るためにある・ん。違う。約束か!あっ。もしかして、助かるかも。
彰彦「何の話だ?」
メイ「照れてるのかな。病気だったから仕方がないのかな。
一度だけ教えてあげる。私と約束したの。」
メイの態度が又変わった。やっぱ、解剖・・・。
メイ「生き残ったら、結婚してあげるから頑張ってね。って言ったら
あなたは、『わかった。頑張るよ。』って、言って私と指切りしたの。」
生き残ったら解剖してもいいよ。う~あの時なら言いそう・・・ん~?解剖じゃなく結婚?
-心温まる話だ。-
幼児退行を起こしていた俺がやりそうな事だが・・・。
-お前は幼児退行だろうが、彼女は心が痛い人だ。
約束を信じていたんだろう。-
俺は、時間がすべてを解決してくれる道を選んだ。
簡単に言うと今の話を無かったことにした。何となくメイの態度から解剖は無いとも思った。
彰彦「それは、わかった。今は毒素の話をしてくれ。」
メイは、驚いたようだったが、納得したようだ。ヤリ~ぃ!勝った。俺のペースだ!
まるで人が変わったように毒素を語り出した。
毒素にも色々あり、蛇等が持っている毒の主成分はタンパク質で、飲んでも害にならない場合が多いが
体に直接注射すれば死に至る。そんな具合で体にどうやって侵入させるかで
毒か栄養素かが決まる事があるらしい。つまり口から入れば栄養。直接体に入れば毒。この逆もある。
看護師である彼女は幼児退行を起こしたりする俺の症状に不信を覚えたらしい。
診断を下し、治療法を決めるのは医師の仕事だが、実際に点滴などの治療を行うのは
看護師で、患者と接する機会が多いのも看護師だ。
事実、患者の異変に気付き医師に進言した結果。本当の病気がなにかわかったり
命を取り留めた者も少なくない。だが、彼女の場合は特別だった。
俺の症状に不信を感じた彼女は採血した血液を自分の研究用に密かに持って帰った。
勿論。違法だが、この場合それはどうでもいいことだ。
彼女が血液から見つけたのは、俺が自分で飲んだ覚醒系の薬ではなく。
微量だが神経毒を見つけていた。その種類は非常に珍しい上に、残留性が高い。
致死量に達すれば当然死ぬが、微量の毒を摂取し続ければ精神異常をきたすそうだが
その頃には、体に抗体のようなものが出来ていくら接種しても死ぬ事は無くなるそうだ。
当然だが、そうなってしまったら治療法は今の所ない。
だが、俺の場合はかなり微量だったから、大事に至る事はないらしい。
驚いたことに、この毒素に似たようなものは有るが、それらは全て接種した途端に死に至るような強力な毒素で今回のように死に至る事は無いような致死率の低いものは、まだ発見されたいなかったらしい。
書籍はもちろん、論文にさえ一度も出ていない毒素だと言う事だ。
唐突にメイは俺に尋ねた。
メイ「ねえ、貴方はどうやって、この毒素を摂取したの?」
彰彦「薬に入ってたんじゃないのか?」
メイ「貴方が飲んだ薬には入っていなかったの。」
それも調べたんだ。
-彰人が来た。-
(そうか。)
-問題が発生した。-
(どんな?)
メイ「売店でシュークリーム買ってきたの。みんなで食べましょうよ。」
彰彦「あ。ありがとう。」
ん。? みんなで? シュークリームは3っつあった。
もしかして、彰人が来ることを知っていたのか?
痛い心を持った、エスパーか?こいつは・・・。未知の毒素を発見したり、要注意だな。
メイ「隠し事はダメよ。貴方がシュークリームが好きなのは
知っているし、子供が居るのも知ってるんだから。」
なんてヤツだ。シュークリーム好き処か、彰人の存在まで知っているなんて・・・。
しかも、予知能力まであるのか・・・。
メイ「ボク! 隠れていてももダメよ。こっちに来て一緒に食べましょう。
気になって、さっきからチラチラこっち見てるの知ってるんだから。」
彰彦「え? 誰に言ってる? 彰人はまだ来てな・・・。」
俺に掌を見せ、『いいから、わかっているから。』そんな有無を言わせぬ強さで
俺の話を遮りメイは続けた。
メイ「アキト君って名前なんだ。彰人君。こっちにおいで!
お姉さんが遊んであげるから。こ~んなかわいい子供が居るのに
自殺なんて、ダメなお父さんね~。彰人君。お姉ちゃんを
お母さんだと思っていいのよ~。」
え。バビロンのことか!見えているのか!
-私が、見えるのか・・・。-
メイ「いっちゃった。お母さんだって。えへ。」
俺は、どうすればいいのか解らず、ただメイを見つめている。
-彰彦。問題がさらに大きくなった。-
聞き返す間もなかった。バビロンの言葉は直ぐに解った。
彰人「よ。!」
本物の彰人・・・。登場。しかも、いつのも軽い挨拶とは裏腹に
表情は硬く。引き攣っている。未知の何かに立ち向かう時の表情とは今の彰人の表情なのだろう。
そのいで立ちは、破魔矢と弓を持ちポケットから御札が何枚もはみ出ている。
余程、怖かったのだろう、首から特大の数珠を下げ、頭にはタオルをまいて御札を挟んでいる。
悪霊退散モード。恐怖の余り暴走したな彰人。
ああ。どうなったらこうなるんだ・・・。最悪だ。
制限があるとはいえ、バビロンが見える2人がそろい。
メイは、バビロンが俺の子供だと思い込み、さらに彰人と言う名前だと思っている。
間髪入れず。本物の彰人登場。こいつはバビロンを悪霊だと思っている。
おまけに暴走してる。逃げたい。てか、そのカッコでよく此処までこれたな・・・。
彰人「悪霊退散!はっあ!」
怖かったんだな。怖かったんだよな。彰人。
彰人は、気合と共に明後日の方向に破魔矢を放った。
気合とは真逆の破魔矢はバビロンとは違う方向にヘロヘロ~と飛んで
ポスッと床に落ちた。
彰人は2本目の破魔矢を放つ。つもりだった。そうだな。
-間違いないだろう。-
だが弓は、ぺキっと折れ、破魔矢に纏わりついている。
引き攣った笑いを浮かべながら彰人は振り向き俺に、こう言った。
彰人「俺、射撃ヘタだから、弓もダメなのか?・・・新しいの買ってくる。」
彰人・・・。逃げるつもりだな。
どこかの神社で買ってきた飾り物の弓に破魔矢。
ヘロへろ~と。一本飛んだだけでも上出来だ。
なんだか『ホントに使うんじゃねえよ。俺は飾り物だ。』と今にも言いだしそうな折れた弓と同じく
彰人の心も折れてしまったようで、引き攣った照れ笑いを浮かべ逃げようしている。
-このままだと、次に戻って来たときはボウガンぐらい持ってきそうだ。止めた方がいい。-
(そうだな。)
現実世界ではバビロンとの会話を聴くことの出来る人間はいない。
今、俺の周りには何とも言えないシュールな世界が広がっている。
一言で表すなら『なんで?』だろう。
シュールから一番早く立ち直ったのはメイだった。
さすがだ、不思議生物。こんな空気になれているな。
メイ「誰?」
どう見ても占い師風の詐欺師メイに気づいた彰人は驚き、後ずさり、目で俺に説明を求めている。
彰彦「ああ。ここの看護師さんだ。」
-彰彦。完全に彰人は嘘だと思っている。-
(だな。)
仕方がない事だ。きたねえ『kuma』のジャージにハートを形どったメガネ。
誰が看護師だと信じる?
正確さは欠くが、さっき会ったばかりの看護師だとか
説明しても何の役にも立たないし・・・。やるか。
(バビロン。いいな。)
-仕方があるまい。-
彰彦「彰人。メイ。手を貸せ。」
意味が解らない顔だったが、2人はおとなしく俺の手をとった。
メイ「ちょっと!なんであんたが手を取ってるのよ!あき・・・」
彰人「うぉ~!悪童退散!」
悪霊退散な。悪童はお前だよ!又パニックになりやがった・・・。
バビロンを悪霊だと思っている彰人に、完全ではないらしいがバビロンを視認出来るメイ。
こいつはバビロンを彰人だと思い込んでいる。
説明するには難しい問題が山ほどある。そこでだ!
俺に、触れればバビロンが見えるらしいからはっきりと
バビロンの存在を認識させるのが一番だと2人の手を取ったのだが・・・。
問題はそんなに簡単に解決しなかった。
俺はガッチリ彰人の手を握り離さない。聞き手の自由を封じられたパニック彰人は
空いてる手で持っている破魔矢を全部バビロンに投げつけるが破魔矢はバビロンを素通りする。
今度はメイが驚く番だった。俺の子供だと思っていたバビロンに当るはずの
破魔矢が全部素通りしたのだから当然だ。メイは俺の手を握ったまま恐怖の余り抱き着いた。
彰人はポケットの御札も投げつけるが、御札は投げつける勢いに似合わずヒラヒラと宙を舞い
バビロンに届くことすらない。もう投げつけるものがなくなり彰人はキョドっている。
彰彦「落ち着け。あそこに居るのは悪霊じゃない。」
2人は共に驚き俺とバビロンを交互に見ている。
バビロンと俺を何度も見比べるタイミングが全くそろわない2人に
思わず笑ってしまったが、気を取り直し俺は説明を始めた。
バビロンは俺が小さい頃に、引き裂き捨て去った心が長い年月で
自我を持ち姿を形成した存在。俺の分身だと。
そして、8歳程度の子供にしか見えないのは、心を引裂いたのが8歳位だったからだとも教えた。
彰彦「だから、悪霊でも俺の隠し子でもない。
それからメイ。こっちに居るのが彰人で俺の子供だ。」
メイ「彰彦・・・。本物の、でんぱさん? UFO呼べる?」
彰彦「お前にだけは、言われたくないな。」
人に抱き着いたままで、何て事を言い出しやがる!電波娘が!
そっち側の反応をするとは予想外だった・・・・
彰人「小さい頃に鏡に映っていたのはコイツだったのか・・・。」
お前も電波さんかぁ・・・。ん?小さい頃。
あれか!よく言っていたアレの事か?
驚きだった。彰人は小さい頃にバビロンの姿を鏡を通して何度も見ていた。
俺が、バビロンの存在にさえ気付かずにいた遠い昔に彰人は・・・。バビロンを見ていた。
確かに彰人は鏡を見てパパが居ると言っていた。
俺の幼い頃の写真と同じ顔のバビロンがそこに映っていたからだ。
だから鏡を見るたびに、パパが居る。そう言っていたのか・・・。
バビロンが存在していた証拠を彰人が持っていたなんて・・・。
これで自信を持って断言できる。俺は狂っていないと!
まてよ・・・。彰人が子供の頃にバビロンを見ているなら
なぜ、今は見えないんだ。そして、なぜメイはバビロンが見える?
子供だけが見える妖精の話を聞いたことがある・・・。
もしかしたらメイは・・・。子供?いや、子供にしては乳がでかい。
と。言いうことは、メイは・・・。アホなんだな。
何はともあれ。彰人は納得させられたが、問題は・・・。アホのメイだな。
コイツは俺がシュークリーム好きと知っていたのだから
当然、カルテに書いてあることなら、なんでも知っているはずだ。
なのに・・・『でんぱさん』扱いしやがって。
う~。どうする? アレをやるか!
-それをやるのか?-
(当然だ。メイに説明するのはかなり骨が折れる作業だ。)
-お前に抱き着いたままだが、できるのか。-
(大丈夫だ。馴れている。)
-理解した。-
彰彦「彰人。何かわかったか?」
彰人「え。あ。ああ、あの、途中のコンビニで。」
彰彦「え?コンビニ?」
彰人「あ。あぁ。事件の事ね。」
何をどう間違えるとコンビニが出て来る?。
まだ逃げようとしているな・・こいつは。
メイ「なに? 事件って?」
彰彦「彰人。知ってる事があれば教えてくれ。」
彰人「何も、進展はないんだ。」
なにか、隠している時の顔だ・・・
メイ「ねえ。事件ってなに?バビロンってなに?」
アレとは無視する事だった。タダでも面倒なメイ相手にこれ以上
バビロンの説明をしても、異次元に連れていけとか宇宙人に合わせろとか
言い出すに決まっている。だから、無視するのが最善だ。
彰人「それよりバビロンってなんなんだよ。人なの?
幽霊みたいに、そこに居るだけかのか?それとも・・・。
災いを招くのか・・・。」
コイツはしつこいんだよな~ぁ。昔っからさ。
手探りで彰人は破魔矢を捜しているから、まだ疑っているな。
悪霊ではないかと・・・。仕方ない説明するか。
彰彦「バビロンは元々は俺だけど、ベースが俺ってだけで
俺とは違う人格になっている。
話もするし自分の考えも持っている。
ただ、俺以外には聞こえないらしい。
そして、全ての人って訳じゃないが、お前のように
俺に触れた時だけバビロンが見える事もあるらしいんだ。」」
だから何なんだ。バビロンは?と言いたげな彰人。
-彰彦。私が話してみる。-
(どうやって、話す? 俺がお前の言葉を伝えても意味がない。)
-私がお前に触れれば伝わるかもしれない。-
(その方法は危険だ。それで俺が死にそうになったのを忘れたか。)
メイ「なんで、黙ってるの?」
-しかし、他に方法がない。-
(まあ待てよ、言葉が通じる事だけでも解れば彰人は安心するはずだ。)
彰彦「彰人。バビロンに話しかけてみろバビロンには、お前の言葉は通じている。」
半信半疑のまま彰人はバビロンに話しかけた。
メイ「ねえ。」
-まだ無視するのか-
彰人「左手を挙げてみて!」
粗い言葉で中ば命令じみた投げ掛けだったがバビロンは素直に従った。
彰人「少し後ろに下がって。」
メイ「あっ。さがった。」
バビロンはまた彰人の言葉通り従った。
彰彦「ちゃんと通じるだろう。言葉に出さなくても通じるぞ。」
彰人は黙ってなにか念じている。大袈裟なヤツだ。だが、なぜか、バビロンは困惑している。
(どうした?)
-2人が一度に近くに来てくれと言っている。-
ああ、そうか。忘れていた。
暫くほっといたメイは、抱き着いたままベットの上までのっている。
図々しいヤツだ。
彰彦「2人同時に言われても無理だな。」
メイ「じゃあ。私がやる!」
彰人「ど、どうぞ。」
彰人はメイに圧倒されやがった。
困惑顔の彰人とバビロン。やっぱり良く似ている。
似た顔を持ち、同じような表情をするバビロンに彰人は親近感を持つだろう。
しかし、メイの存在を侮っていた。もっと注意すべきだった。
メイ「ヤッター!つかまえた!」
メイの言葉に従い近づいたバビロンをこいつは捕まえた。
えっ・・・。捕まえたって!無茶クチャだろ!
あんで、お前がバビロン見えて、触れて、捕まえられる!
誰も触れる事は、出来ないと思っていたバビロンをメイはあっさりと捕まえてしまった。
驚いたバビロンは子供のように俺の所に逃げ込んだ。
バビロンと俺が触れ合ったその瞬間。
俺、メイ、彰人そしてバビロン。この4人が物理的に接触した。
それは、互いの意識も接触させてしまった。
バビロンを媒介として、3人の意識と記憶が混ざりあった。
その中には俺の記憶となっていた香奈と沙紀の記憶も
そして、殺された人々の痛みも同時に流れた。
死の痛みが引き金となり、俺達はバビロン世界に意識を飛ばされた。
メイの予想外の行動で・・・。イヤ。違うな。俺の不注意だな。いつもこうだ。俺は・・・。
俺を介してのバビロンとの接触により、予期せぬ形でバビロン世界に飛び込んでしまった俺達は
深層心理が望むままにバビロン世界を動き廻り、全てを知ることになってしまった。
彰人はバビロンの誕生から今までの経緯を知り、メイは俺の心に住む者を捜しだした。
互いに心の赴くままにバビロン世界を旅した後。見知らぬ2人が同じ答えにたどり着いた。
たどりついた答。それは『香奈』だった。
『一生、隠し通そう。』そう思っていたのに・・・。
一晩しか持たなかったな。半ば諦め、俺は彰人に話しかけた。
彰彦「バレたようだな。香奈の事が・・・。」
彰人「いつから居たんだよ。驚いたな。
でも、何処にいる?見えない。」
触れたくないんだな。まあいい。変わらず優しいな彰人。
クスっと笑いながら、俺は答えた。
彰彦「ここは、一次元世界だ。いつからと聴いても意味がない。
あえて答えるなら、始めから居たよ。が正解だ。
メイ。もう解っただろう。俺がどんな人間かが。
お前が、俺に熱を上げる所なんて何にもなかっただろう。」
メイ「え。」
メイも驚いている。俺は二人に話しかけた。
彰彦「俺達はバビロンの世界に来たんだ。ここでは過去も現在も
上も下も区別がない。そして、時間そのものが存在していないんだ。
自分が知っている所なら過去も含めて何処にでも行ける。
目的の場所まで行く時間は0だ。」
メイ「何処にいるの?彰彦!何処にも見えない。」
もう、ほとんど泣いているメイ。少しだけど可愛く見える。ハートのメガネだけど。
彰彦「彰人も良く聞けよ。現在の俺に遇いたいと思えば
すぐに俺の所に来る。俺はもうお前たちのそばに居る。
お前たちが今の俺を見ようとしていないから、見えないだけだ。」
彰人「どうやって見分けるんだよ!父さんが・・・あっちこっちに居る~。」
落ち着けよ彰人・・・・
彰彦「話しかけても、答えないのは過去の俺だ。過去を見る事は出来るがどんなに小さなことでも
変える事は出来ないし、いくら話掛けても、聴こえないんだ。
問いかけに、答える事が出来るのは現在の者だけだからな。」
メイ「あ。居た!」
そう言って走って来たメイは俺の腕をしっかりと抱いて離さない。
少しだけ遅れて彰人が俺を見つけた。
彰人「やっと見つけた!結構、捜したよ。」
結構、捜した? 彰人は違う場所を辿ったらしい。この世界で時間が掛かるはずが無いのだから。
-それは違う。彰彦。この世界に私達以外の者が初めて足を踏み入れた。
私達以外の記憶と知らない景色。
絶対に知ることが無いはずだった記憶が、この世界に流れ込み
始まりが異なる時間を持つ2人がこの世界に来た。-
(何を言っている?)
-彰人とメイは私の世界にそれぞれの記憶を持ち込み、過去世界を広げた。-
(過去が分岐したと?)
-そう言っても良いだろう。-
(何か意味があるのか?)
-二人は私達より若い。だから過去方向に世界が広がる事はない。
過去を遡る方向を後方と仮定するなら、左右に広がりを持たせたのだ。
言い換えれば、過去のバリエーションが2つ。この世界に出来た。
だから、お前が言ったように『過去が分岐した。』も正しい表現だ。
だが重要なのは、それぞれが私達と違う時間を持っている事だ。-
彰人「バビロンは何を言っているんだ。父さん。」
メイ「時間なんてみんな同じじゃ・・・。
えっ。もしかして、異なる時間って・・・。
アインシュタインの相対性理論のこと?でも少し違うかな。」
相対性理論は俺の記憶にも、彰人の記憶にも詳しい事はない。勿論バビロンもだ。
だが、メイの記憶には相対性理論がはっきりとあった。
俺、メイ、彰人も、この世界では同一人物になっているのだろう。
今では全員がメイの記憶の中から相対性理論を見つけ、それを理解している。
理論上は、此処にいる全員の記憶を全員が持ち、必要と認識すれば誰の記憶の中からでも
必要な記憶を呼び出すことが出来る。
-この世に初めて生を受けた時に、その個人の時間が始まる。
そして、少しだけだが時間は個人個人異なる進行をする。
どちらの方向に動くか?それだけでも時間進行は変わる。
今、この世界には私と彰彦の時間的尺度、メイと彰人の時間的尺度。
それぞれ始まりと、時間進行が異なる3つの時間が共存した。
その結果。時間が動きだした。-
(この世界が変化したと?)
-そうだ。時間次元が生まれた。-
(何か、変わるのか?)
-私にも解らない。だが、世界が広がる事は良いこだ。-
バビロンは突き付けられた現実から俺を逃がそうと
さも偉大な瞬間が来たような口調で話している。
ありがとう。今はお前の話に付き合う事にするよ。
彰人「父さん。俺たちは元の世界に帰れるのか?」
ふぅ。彰人か・・・。お前はいつも俺を現実に戻してくれる。
お前にも、言いたい。ありがとう。
彰彦「大丈夫だ。 帰れるよ。」
彰人「そうか・・・。」
彰人の浮かない顔の原因は香奈の事だと解る。
バビロン世界で警官と沙紀を殺したのが香奈だと知った彰人は
心を痛めているだろう。現実世界に戻れば香奈を逮捕しなければいけなくなる。
俺の心を知った彰人なら、なおさら悩むだろう。
いくら悩んでも答えは一つしかない。そのジレンマは彰人の顔を曇らせる。
彰彦「やっぱり見てしまったのか?」
彰人「ああ。可愛そうだと思う。だけど・・・。
父さん。香奈さんは人を殺しているんだ。」
彰彦「知っているよ・・・。」
もう数える事を拒否したくなった。そのくらい殺してしまった事もね。
メイ「彰彦。あの人は狂っているのよ!」
俺の心に入り込んだのか?コイツは・・・。
彰彦「それも、知っているよ。」
メイ「そうよ。心に入り込んだのよ。
彰彦の心に入っちゃいけないって、わかっているけど
駄目なの、どうしても気になって・・・。」
やっぱりコイツはエスパーなのか?バビロンを見る事ができて
バビロン世界とは言え、バビロン以外に俺の心を読み取る。そんな事が出来るなんて・・・。
彰彦「いいよ。今更・・隠しても意味がない。」
メイ「彰彦!私を見て、私の心を見て!今なら解るでしょう!どれだけ私が
あなたの事を愛しているか!」
メイが望んだのだろう。メイの姿にはハートのメガネもクマのジャージもなかった。
だけど、心を読むことは出来ない。俺の心はバビロンに筒抜けだがバビロンの心は伝わらない。
バビロン以外に俺の心が伝わるなんておかしな話だ。
偶然だと言ってもバビロンを生み出したのは俺。
バビロンが住むこの世界を作った切っ掛けも当然、俺のはずなのに・・・。
メイは俺よりこの世界になじんでいる。電波娘から不思議娘に完全昇格な。
その不思議ぶりならこれで通じるだろ。メイ。
彰彦「それでも、助けなければいけない。」
-メイ。彰彦を止めてくれないか。-
-彰人。彰彦を・・・。-
始めて俺以外にバビロンが話しかけた。
もう俺を止める事は出来ない事を知って助けを求めたんだな。
始めての言葉がSOSか・・・。バビロン。やっぱり人間に近づいていくんだな。
メイ「私は・・・。
彰彦の記憶も彰人君の記憶も見てしまったから
2人が巻き込まれている事件の事も
その犯人も知っている。そして・・・。
それが・・・。どうして始まったかもね。
正直言って迷っているの。」
彰彦「何を迷っている?」
メイ「彰彦。私はあなたが好き。
私を電波娘だと思っていても、変な格好だと思っていても好きなの。」
彰彦「何を言い出すんだ?関係ないだろ。」
全部バレてるのが恥ずかしかった。
彰人「なんで、部外者のメイさんが知っているんだ。
警察でもまだ香奈さんの事は一部でしか知られていないのに。」
メイ「見たのよ。彰彦の記憶を!彰彦が見た香奈さんの記憶を!
彰人君あなたの記憶もみた。そう言ったでしょ!」
より一層メイは俺の腕を強く抱き、放そうとしない。
そうだな。あの記憶を見たならそうするだろうよ。
でもな、それは一時の感情だよ。メイ。
感情に流されるメイ。お前を好ましく思うよ。正直。クッラっときそうだよ。お前にさ。
迷いを吹っ切りメイは話し出した。
メイ「彼女が狂ったのは薬のせいよ!
彼女が痩せる為に飲んでいた健康食品のせいよ!
彼女が、悪いんじゃない。知らなかったのよ。
副作用があるなんて・・・。」
そうだよ。でもなメイ。それは・・・。
彰人「彼女が・・・。香奈さんの事か?」
そうか、彰人は香奈に興味が無いから過去までさかのぼらなかったんだ
彰人が見たのは、派出所襲撃事件の意外な真相ってことか。
彰人「確かに狂っているけど・・・。」
彰彦「そうだな。お前も知っていた方が良いかも知れないな。
警官だしな。最も、これから話すのはお前ひとりでは解決できない問題だがな。
いつか解決して欲しい。願わくば・・だがな。」
メイは好奇心から俺の体内に残ったわずかな毒素を見つけたのは何年前の事だろう?
それはどうでもいいか。始まりはそこじゃないしな。
俺は、メイの記憶。彰人の記憶。そして、バビロンの特異性を使って全てを
知ったのはついさっきの事だったしな。ゆっくりと俺は話だした。俺の心は
悲しみいっぱいの青い空の下で・・・そんな感じだった。
---------
何処から話せばいいのか複雑すぎて良くわからない。
そうだな、現実世界では派出所襲撃事件の犯人が誰か解っていない。
香奈に疑いは掛かっているだろうが、女が一人で派出所勤務とはいえ猛者ぞろいの
警官一人と女を殺し、拳銃まで奪うなんて思ってもいないだろう。
メイの記憶から香奈が狂った直接の原因が解った。ピープルドリーム。
そう、取って付けたような変な名前の健康食品。痩せる為に香奈がいつも飲んでいたやつだ。
自殺するときに、少しでも香奈を感じていたい。そんな気持ちから
香奈が買ってくれたお気に入りのグラスを抱いて眠った。それと同じ気持ちで
バカな名前の薬を一日分を飲んでいた。それをメイは俺の血液から見つけていた。
残留性が高く、死に至る事はないが飲み続けると精神障害を起こす毒物。
それがコイツだった。メイは毒物と断定しているが、カエルやウニを解剖しているマニアックな
看護師の言葉を信じる人はいないだろう。この健康食品が危険だと彰人に証明して欲しい。
それはバカな親が子供に描く幻想でしかないけど・・・。
香奈が狂ってしまったもう一つの原因。
俺が・・・。俺が。香奈に言った。「ダイエットしてくれ。」だった。
その一言で、香奈はあの薬を飲み続けた。その結果。香奈の精神は崩壊していった。
そして、手当たり次第に人を殺す。殺人鬼になってしまった・・・。
認めたくないが、もう香奈はバケモノだ。
全てが繋がった。嘘ばかり付くようになった香奈はあの時にもう、狂い始めていた。
皮肉だな。あれほど必死になってバビロンと幸せになる魔法の言葉を捜しに過去まで行ったのに・・・。
ダイエットしてくれ。そんな言葉が引き金だったなんて。それに取って付けたような名前の健康食品に未知の毒素が入ってるなんて、バカバカしくて悲しくなる。中2病に出て来るような悪の秘密結社が作り出しだしたバケモノ変身薬の方がまだいい。憎しみを向ける対象になるから・・・。
なのに、現実はその辺で売ってる健康食品で・・・切っ掛けが痩せてくれ・・・
笑えるよ。そんなのあるか!何処にでもある普通のものじゃないか!普通の言葉じゃないか!
なのに・なのに、それだけなのに・・・この世界は何処まで俺を追い込むつもりだ!
----------
メイ「貴方が悪いわけじゃない。」
彰彦「じゃあ。誰が悪いんだ?」
メイ「誰も・・・。誰も悪くない!」
彰彦「そうかも知れない。だけどね。メイ。よく聞いて欲しんだ。
言葉は人生を変えていくんだ。変えてしまったんだ俺が・・・。
俺はバビロンと運命を変える為の旅をした。
過去に戻りもう一度、香奈と幸せに暮らせる人生が訪れるように
人生をやり直せないか・・・。そう思って過去に行った。
だけど過去は何も変えられなかった。
それなら、せめて未来を幸せにするおまじないの言葉を捜そうとした。
どちらも、見つからなかったけどね。
人生を変える言葉を見つけられない俺は、過去を悔やみ
狂ってしまった香奈を救う事も出来ない。せめて今の香奈を止める。
それだけが、俺に出来る事はそれしかないんだ。」
彰人「魔法の言葉は教えてくれただろ!子供の頃に!クリスマスの夜に!
俺、覚えてるよ。『ありがとう。』と『ごめんなさい。』
人を優しくする魔法の言葉だって父さんが言っただろ!」
彰彦「言ったよ。おまじないの効力も教えただろ。」
彰人「覚えてるよ。魔法の言葉も早く使わないと効果がでな・・・。」
彰彦「そうだよ。彰人。もう、香奈には『ごめんなさい。』では効かない。」
メイ「彰彦!違うよ!違うって!貴方のせいじゃない。
あなたが、謝る事も無いの・・・。」
彰彦「そうだな。俺のせいじゃないかもしれない。
メイ。もう一度聴くよ。じゃあ誰が悪いんだ。
・・・・そうだね。誰も悪くない。けどね。彰人も聴いてくれ。
俺が悪くないと言い切れるのか?
俺は何かを間違えた。香奈の時も、彰人。お前の母さんの時も
お前が小さな時も、何か間違いを犯したんだ。そして、周りの人を・・・
全部。全部。不幸にした。」
彰人「違う。違うよ。父さん。」
彰人は、否定しながら次の言葉を探している。
彰彦「彰人。聞けよ。お前は知らないだろう。
香奈は、もう・・・。元には戻らない。
メイの記憶からすると、あの毒物はシナスプを破壊する。
そうすると、脳細胞の中で情報伝達が出来なくなるんだ。」
彰人「解らないよ。解らない! そんな難しいことなんか解らない!」
いつまでたっても、嘘がヘタだな。彰人。
彰彦「なあ。俺は・・・。香奈が・・・。何人殺したか数える事を拒否した。
だけど、数えたよ。28人だ。」
メイ「もう辞めて。彰彦。お願いだからヤメて
香奈さんはもういいじゃない。ね。
私が香奈さんの代わりになるから・・・。
ねえ、彰彦!お願い。私が!香奈さんの代わりになるから!
もう、やめて!」
彰人は何も言えずにいる。メイは泣いている。バビロンは俯いたまま動かない。
もう、長くは時間が取れない。何故かって? 香奈が29人目を殺してしまうからだよ。
彰彦「メイ。お前は香奈の代わりにはならない。」
メイ「なんでよ。私。私・・・。香奈さんより綺麗だし。
彰彦の好みの恰好をすれば絶対に香奈さんに負けないもん。」
彰彦「ははっ。そうだな。でもな。メイ。
お前は誰かの代わりじゃないんだよ。短い時間だけどさ
俺はお前を好きに成りかけている。ゴメン。嘘だ。
もう、好きだよ。だけど香奈の代わりじゃない。
お前はお前だよ。メイ。香奈とは別だ。お前が好きだよ。メイ。」
メイ「だったら。香奈さんには係らないで。お願い!
彰彦が不幸になるだけよ!彰人君のお母さんの時だってそうじゃない。
お義父さん・・・。彰人君のおじいさんが、彰彦の愛人を連れて逃げたから
すべて、狂ったのよ!貴方のせいじゃないのよ!」
彰彦「それも見たのか・・・。やれやれだな。
確かにそれが原因だ・け?・・???ど? えっ? 愛人?なに?
彰人のおじいさんが俺の愛人を連れて逃げたべ~?へ?
お前は!どうやったら、そんな過去をねつ造できるっぺよ!
どこで見たんだよ!」
メイ「~ん。」
彰人「この人は何を言ってる?んで、何してるんだ?」
メイ「あっ。ごっめ~ん!愛人じゃなくてお金だった。えへ。
良かった!お金で。あっ。愛人がいても私、気にしないから
過去の話だしね。だけどこれからはダメかな。
お金だったんだ。私、もっと彰彦が好きになったかな。」
俺はお前が嫌いになったよ。何が『えへ』だ。中途半端エスパーが!
その力でお前はいつか身を亡ぼせ!
メイ「嫌いにならないでよ!間違いなんだから~。ね。」
彰彦「この~!また俺の心に入ったな!」
メイ「許してタモリ。」
彰人「二段階ひねったよ。許してを『許してたもれ』すっとバして
タモリさん出したよ。この人。」
彰人。メイに係るな・・・。不幸になるぞ。
メイ・・・。こいつは一体何なんだ? 手当たり次第に引掻き廻して・・・。
だけど、真実も・・・。真実か、戻らなければ。
-現実世界で香奈を捜すつもりだろうが、香奈を捜す手立てを持っていないだろう。-
(香奈が何処に居るか俺は知っている。)
-お前が、香奈・・・・-
(聞こえない。何を言っている。)
****
何故だ。私の言葉が届かない。彰彦にも彰人にも届かない。
聴こえないのか、私の言葉が・・・。
****
「ちょっと、あなた達!起きなさい!起きなさいってば!」
おばちゃんの怒鳴り声・・・。
看護師「あら、メイちゃんじゃないの!この人は?お知り合いなの?
何やってるの、も~う!あなたはベットから降りなさい。
ここの看護師なんだからもう!そんな恰好で!
うお!なに、あなたは!なに、何を頭に刺してるの!御札?
ちょっと!一体何をしているんですか!貴方たちは!」
前回、俺を現実世界に戻したのはADEの電気ショック。
今回、現実世界に強制送還したのは、小太りなゴブリン。じゃない。
小太りな、おばちゃん看護師。おばちゃんパワーは電気ショック並みって事か?
おばちゃんは引き際を知らない。周りを見廻し、さらにヒートUPして繰り返す。
看護師「ちょっと!あんた達!ここは病院ですよ!一体何をしてるんですか!」
ヤバい。床に散らばった破魔矢に大量の御札。
左を向けば頭にタオルを巻き御札を挟み込んだ。イカレタ格好の彰人。
右は・・・。そそくさとベットから降りるメイ。こっちもイカレタ格好だ。
まあ、コイツはいつもの事だろうが。そして、精神異常の疑いがあった俺。
一つの部屋に、これだけの逸材が揃い、それを世界で一番強い。『最強部族』おばちゃん族が見つけた。
彰人が最強部族おばちゃんに決定打を放った。
彰人「大丈夫です。落ち着いてください。私は警察官ですから。」
自分の恰好見てから言えよ彰人。そのカッコで警察官?誰が信じる?
お前が落ち着け!
看護師「へ~え、そう。警察官ねえ~。メイちゃん。私、前から貴方のことは、変だ、変だって
みんなに言ってたのよ!やっぱりそうだったのね。」
どうやら、メイは最強部族に敵対するUMA部族(未確認生命体)に分類されているらしい。
メイ「boys be ambitious!少年よ。大志を抱け。」
へっ。お前、なに言ってる? 最強部族捕まえて不思議っこ返しか?
しかも敬礼付きで・・・。彰人!のっかるな!なぜ、お前も敬礼する!
彰人「自分は、警察官でありま~す!ニカ。」
メイに係ると不幸になるそう声に出して伝えればよかった・・・。
けど、ニカってなんだ。笑顔を表現したのか?最強部族を刺激しやがって。
看護師「やっぱりね。決りだわ!」
そう言い捨て、病院なのに最強部族おばちゃん看護師は全速で走っていった。
ほどなく、医師を連れ戻ったおばちゃんは医師をまくしたて、俺達を精神内科送りにした。
C'est la vie.(セ・ラヴィ、セラビ)現実世界なんて、こんなもんさ。
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彰人「ダメだ。これは、診察室に入ったら取るんだ。」
なんの拘りがあるのだろうか・・・。御札に・・・。
なにがあるかは知らないが、こんな時は・・ほっとく方がいい。
何やかんやで診療内科に強制送還された俺は、彰人の御札がどうしても気になる。
*****
-彰彦。彰人はお前を笑わせる為にそんな恰好を続けているんだ。
お前を説得する事は無理だと悟り、少しでも長くお前を引き留めることで
思い留まってくれるかも知れない。そんな可能性に賭けた。
メイも彰人と同じ事を考えている。
出遭って間もないメイが・・・。ああ。理解した。
お前にとってメイは数時間前に現れた見知らぬ人でも、この子は
もう一度・・・。お前が自分の前に現れる偶然をずっと待っていたんだ。
彼女は数年間もお前をただ待っていた。
再び、お前と出会ったメイは、私の世界でお前の全てを知り、理解者になった。
今ではもう世界中の誰よりも、お前を理解できる人間だろう。
メイは・・・。香奈を超えたんだ彰彦。後はお前が心を開くだけだ。
頼む、私の言葉を聴いてくれ彰彦・・・どうして聞こえないんだ。-
*****
そら、そうだ! 沢山の受信者が居る待合室で頭に御札を挟んだままの彰人。
メイは・・・。よそいき、なんだな? そうだろ!そうだよな~。
ハート型メガネにロラーシューズ。オレンジボーダーのニーハイを着込んだメイは
でっかいキノコの帽子をかぶっている。何処からだしたんだそれ・・・。
受信者の注目を全て集める2人に挟まれた俺は、居たたまれず現実から逃げる事にした。
メイ。コイツは、ほっといて! 彰人の事を考えよう!なんで御札に、こだわるか?
彰人。コイツの父親を長い事している経験が、そう言っている。
御札は取ってはいけないと。何故か?考えると過去が蘇った。
小さい時に彰人は膝を擦りむいた。当たり前のように誰にでもある経験だ。
しかし、俺からみたら結構な血が出ていた。親ばか。かな?
それでも擦り傷の部類に入る程度だと自分に言い聞かせ、もう一度傷を見る。
よく見ると皮膚を少し深く傷つけただけ。やっぱり親ばかだな。
これなら、傷薬を塗ってやれば大丈夫。そう思えた。
彰人に薬を塗り『もう痛くないだろ。』そう聞いても、彰人は一向に泣き止まない。
元々こいつは声がデカいから、鳴き声でだけでクラクラする。
そこで俺は、絆創膏を貼れば治るかと聴くと
『なお~る~う。ヒック。ひっく。』泣きながら答える彰人。
それじゃあ絆創膏を貼ってやると言うと『自分で貼る!』そう言ってる彰人の目が輝いている。
『ちゃんと貼れるか?』
『貼れる!』
結構、痛いはずだが痛みより、絆創膏を自分で貼りたい!
その気持ちが勝ったようで、おとなしくなった。
救急箱から絆創膏を一枚取り出し彰人に渡す。
彰人はニコニコしながら膝に絆創膏を貼っている。けど・・・。
彰人・・・。逆だぞ・・・。膝。膝!ひざが逆だって。
コイツは、血が出ている膝とは逆の膝に絆創膏を貼った。アホ・・・。
満足したんだな。満足したんだな!彰人!
無傷の膝に絆創膏を貼った彰人は、嘘のように泣き止み又遊び出しやがった。
膝から血が出てんのに・・・。
暫くほっといて彰人を観察・・・。
全く!全然!痛がる様子がない!
『なあ~!膝。痛くないか?』
『もう。痛くない!』
『そっか~。・・・。』
ちょっと迷ったが、血も出てるし・・・。聴くか。
『彰人~。ホントに痛くないか?』
『大丈夫!』
『そっか~。絆創膏。逆だぞ~。ケガしてない方に貼ってるぞ~。』
膝を確認し血を見た彰人は、痛いと泣き出した・・・。しかも大泣き。
こんな彰人だから、今。彰人の御札を外したら泣き
「泣き出さない!」
彰彦「お?$%&”!終え¥の心に入ったな!」
メイだった。コイツは又、俺の心の中に入ってやがった!
俺の回想をブッちっと断ち切りやがった。
しかも、超カッコ悪い所で、ムカつく。
メイ「今。思ったでしょ!東南アジアに売り飛ばすとか!
見世物小屋で儲けるとか!」
彰彦「思ってない!」
メイ「嘘は良くないかな。」
思いっきり耳を引っ張られた・・・。
彰彦「ちょっとだけ、思いました。すんません。」
メイに心を読まれている以上、絶対的に不利。
こんな危機的状況の俺を救う、天の声が聞こえた!
「井上 彰人さん、彰彦さん! 鈴木命さん。診察室にお入りください。」
なんで俺だけ語尾が強い?彰人より先に俺の名前だろ。メイって。
「だから、鈴木なの。普通なの!」
メイはもう俺の心を読む事を辞める気が無いらしい。
メイ「心を読める有効距離? 考えたことないかな?
あっ。もう駄目よ。ストーカーって言われても、離れないからね。」
うっ。
メイ「彰彦~。あのね。無心、無心って。小学生ですか?彰彦は~。
カワイイですね~。逃げようって思っても無駄かな。」
無心2秒。逃走計画1秒。全てを諦め。白旗まで6秒。
メイ「それでいいの! 逃げられないからね。
メイと彰彦は赤い糸で結ばれているから、ダメよ。」
彰彦「今の語尾には『かな?』はないのかな?はあ~。
メイ。赤い糸は信じよう。だけど。
俺に繋がれた赤い糸は何本あったと思う?」
メイ「それを私に数えさせるのかな?(#^ω^)」
彰彦「あ。イヤ。ゴメン。数えなくてもいい。あっ。あの~赤い糸は・・・。
運命が選んだのかも知れない。俺も信じるよ。
だけど、俺は知っている。
運命の赤い糸は、糸なんだよ。・・・。糸でしかない。
その糸はとても細くて、目を凝らしても見えないくらい細いんだよ。
だから・・・。少しの無理や、無茶をしたら、それだけで切れてしまう。
なんの前触れもなく、突然に切れるんだ。そして・・・
切れてしまった赤い糸はもう二度と、繋がる事が出来ないんだよ。」
メイ「・・・。・・・。」
おい!聴こえてるか~!今いい事言ったよ!俺。なあ。メイ聴こえた?
メイ「彰彦!うるさい!
メイと彰彦の赤い糸をもう一度、観にいってるから‼ 邪魔しないで!
・・・・・・・・・・・・・。
彰彦。私達が繋がった運命の赤い糸。それは間違いだったわ!」
少し寂しい気もする。イヤ。今度も、強がりを言ってしまった。
だけど・・・。それでいい。メイにはもっと幸せな未来があるはずだ。
彰彦「残念だったよ。メイ。此処を出たらお別れだ・・・。」
メイ「なに、カッコつけてるのかな? あなたのランクは三流芸人よ!」
へっ。なに言ってんのメイさん? 今度は何処のチャンネルが入ったんですか?
メイ「何処のチャンネルも入ってない!私たちの運命の赤い糸は・・・。
チェーンよ!運命の赤いチェーン!絶対に切れないの!」
お前はそれで俺の首を絞めるのか。
メイ「それでもあなたは死なない。」
気が遠くなって来た。俺はドSは嫌いなんだ。
メイ「何言ってるのかな? メイちゃんは、どMだよ。」
・・・。二度目の白旗。
彰人「悪いんだけど・・・。呼ばれてる・・・。」
彰人!お前だけが俺の周りで唯一まともな存在だ!
だから・・・。御札・・・取れよ。頼むからさ!
彰人は俺の心を読むことは出来ない。御札を取る事も無く診察室に入る。
ん。3人で? なんでだ?
診察室に入ると、テーブルに付くまえに医師が気さくに話しかけて来た。
医師「お久しぶりですね。井上さん。」
彰人「え! 初対面だと思ったのですが・・・。
以前にお会いしたことありましたか?」
お前・・・。そんなキャラだったっけ?医師は怪訝な表情をしている。
医師「これは、失礼しました。私がお久しぶりなのは、彰彦さんの方です。」
彰人「そうでしたか~。どうも生前にあったような気がしたもので、つい。」
彰人はそれほど口数が多い方ではない。
それが今の彰人は俺より先に口を出している。
それも、売れない芸人張りの一生懸命さで、くだらないギャグを挟み込んで・・・。
医師は、彰人の笑うに値しないユーモアを無かった事にした。
医師「ところで皆さん。変わった服装ですね。
長い事、ここに務めてますが、ここまでの方は初めてですね。」
彰彦「イテ。ヤメロよ。そう思っただけだ。罪はない。」
メイは、ここの看護師だぞ。観たことない訳ないだろうが、こんな変なカッコした看護師。
そう思った途端にメイに耳をおもいっきり引っ張られた。
医師「何をしているんですか?」
医師の言葉にかぶせ気味でメイが
メイ「私は、この人の心が読めるんです!」
彰彦「おい!ヤメロよ。」
彰人「この人には、霊が付いてます!一刻も早く除霊しなければいけません。
あっ。申し遅れました。私、警察官です。ニカ。」
彰彦「どんだけ気に入ったんだ!そのニカ!をよ。
いい加減にしろよ。そんなに精神異常と診断・・・。」
彰人もメイも俺をそっちのけで、俺がおかしいと医師にアピールしている。
望んでいるんだ。精神異常の診断を待っているんだコイツら。
俺の心を読んでいるはずのメイもチラッと俺を見ただけで、医師に俺がおかしいと
アピールしている。
どんなに、説得しても俺は香奈を止めに行く。
そして、そのまま俺は香奈を匿い一生逃げ続けるだろう。
俺が死ぬか、2人が捕まるまで・・・。ずっと。
香奈がまともになる事を信じて・・・。ずっと。叶うことなら・・・永遠に。
知ってるんだコイツら。
だから俺を精神異常扱いにして、ここに釘づけにするつもりだ。
その為に・・・。自分達も精神異常扱いされるつもりなんだ。
そんな事をしたら、人生を棒に振るぞ彰人。お前は警察官なんだから・・・。
メイ・・・。そんなに・・・。ん。
コイツはいいか。ホントに頭イカれてるから。
彰彦「イってェ~。」
メイの野郎。医師と話してるくせに、こちらも見る事もなく
いきなり殴りやがった。
医師「皆さん落ち着いて下さい。大体の事は解りましたから。」
解ったのかよ。これで。メイも彰人も大人しくなり、医師に注目している。
医師「さっきお話ししたように彰彦さんが入院した際に
何度か、お会いしたことがあります。
最も、彰彦さんは覚えていないでしょうが、どうですか?
覚えておいでですか?」
彰彦「申し訳ないですが覚えていません。何か話をしましたか?」
医師「いいえ、一度もありません。」
彰彦「それでは思い出しようがありませんね。
入院初期の頃は、人の顔が判断できなかったもので・・・。」
医師「おお。そこまで自分の状況を思い出せますか。素晴らしい。
あなたは、意識障害に幼児退行などの症状があり、苦しんでいるか
死んだように寝ているかのどちらかでしたから、正直に言ってしまうと
そこまで回復するとは誰も思いませんでしたよ。
集中治療室の最長入院記録も作りましたしね。」
彰彦「そうですか。」
何を言いたいのかよくわからない。
医師「ところでですが、先ほどから心が読めるとか、霊が付いているとか何とか・・・。
どのような事か?を説明して頂けませんか?」
彰人とメイが我先に話し出す。医師はあきれる様子も無く
順番に話して下さいと二人を制した。
メイがまず俺の心を読めると言いだし効かないので医師は仕方なく
紙に何かを書き出す。書き終わると
俺にだけ見せるから、何が書いてあるかを当てなさいと・・・。
心が読めるなら、そのくらい簡単に解るはずだと考えたのだろう。
医師が書いたのはAWWの3文字。対してメイの答えは即答で『ドラえもん。』
へ。っと、一言いった医師は、暫く言葉を失った。メイは強かった。
俺も、言葉を失った。頭がイッテしまった人の振りをそこまでするのか・・・。
メイに食いついたのは彰人だった。
彰人「俺には、救急車だと霊が言っている!」
だから、お前は無理をするなよ。限界だろ。もうヤメロよ。
彰人の一言であきれ果てた医師は、気を取り直し本題に入っていった。
医師「もう、やめませんか?狂った振りは・・・。
あなた達を連れて来た看護師にも少々問題が無いわけでもありませんが
あなた達が狂った振りをする訳を教えてくれませんか?」
メイ「私は、まともよ。おかしいのはこの人!」
コイツは、切り替えやがったな。俺だけ精神異常にする作戦に・・・。
頭が切れるようだがメイよ。お前の恰好が全てを無駄にしている。
医師「鈴木君。君は少し黙ってくれるか。」
強い口調にメイはビビった。この医師はメイを知らない振りしていただけだな。
それでも負けまいと、メイは何か話そうとするが・・・。
医師「もう、帰りなさい。診察は終了です。君達は少し、おかしな所もあるが
ハメを外した一般人にしか過ぎない。君たちの茶番に付き合う程、私は暇では 無い。」
メイ「でも、この人は・・」
医師「もう、やめなさい。」
彰人とメイに無理だと医師は告げている。充分に2人に言葉がしみこんだのを確認した医師は
医師「彰彦さん。始めに当院の看護師が二人も貴方に、ご迷惑を掛けた事をお詫びいたします。
確かに以前の精神状態もありましたし、今回も悲惨な現場を目撃したようですから
もしかしたら・・・と考え、看護師の暴挙に付き合ってしまいました。
申し訳ありません。ですが・・・。結果は良かった。
貴方が、受診する良い切っ掛けだったと思って、水に流して下さい。
あなたはもう普通の精神状態ですよ。以前お会いした時とは別人のように回復 しています。
自分に、自信を持っていいですよ。
それと、退院許可も出ていますから自宅に帰って頂いて結構です。」
コイツ俺と話した事あるな。それどころか診察してんじゃねえか。
でも・・・。そうだな、茶番は終わりだ。
彰彦「それでは失礼します。行くぞ。」
医師に一礼し、2人を連れて診察室を出る。
俺の心を2人は解っているが、話し合いが必要・・・。そうだ、香奈が言っていた。
『言葉に出さなければ、伝わらない事もある。』と。
病院からの帰り道。彰人が運転する車中。当然のようにメイは車に乗っている。
お前は部外者だか・・・
メイ「もう、部外者じゃない。私は彰彦の人生、その全てを知っている。
貴方から観た、彰人君の生まれた頃からの全ても知っているし
貴方から観た香奈さんの事も全て。だから、私はもう・・・部外者なんかじゃない!」
泣きながらメイが訴える。
全部、知っているのか。それならば、認めなければいけない。
そして、彰人にも話さなければ。・・・・俺の心が決まった。
2人を信頼しよう。そして、俺のわがままを許してもらおう。
俺を気にかけてくれる2人に。せめて、俺なりの誠意を告げよう。
間違った誠意と身勝手な行為だと解っているから、なおさら酷い人間だと自分を罵りながら。
彰彦「メイ。お前とは出遭ったばかりだと思っていた。
だけど、出遭ってどのくらいか?
そんな事は、お前と俺には無関係だったんだな。お前は俺の心を読んでいる。
お前に対して俺がどう思っているかも知っているはずだ。だから、聴く。
それでも、お前は俺を選ぶのか?」
メイ「選ぶ。貴方は自信が無いだけよ。
香奈さんよりも、私の存在の方が大きくなっている事を知っているのに。
私が?貴方と一緒にいて不幸になる?そんな訳ないの。
貴方に、お金が無くても、働かなくても私は面倒を見てあげられる。
貴方が、年老いても私は彰彦を見捨てない。
今だけじゃない! 気の迷いじゃない! 信用して欲しい。」
彰彦「参ったよ。又、途中で心を読まれた。
彰人も、車を止めて聴いてくれ。香奈が殺人鬼になったのは俺のせいだ。
理由はそれだけじゃない。何となくだ。
俺は香奈を捜す。そして、出来る事なら・・・。
香奈を連れて逃げたい。何人殺していても、狂っていてもだ。
彰人の立場も知っている。メイの気持ちも知っている。
俺が間違っているのも知っている。だけど、邪魔をしないで欲しい。」
彰人「何となくってなんだよ。」
怒りを抑えているのが伺える。
彰彦「何となくだよ。」
彰人「ふざけるなよ!そんな理由があるかよ!
香奈さんの事は俺に、警察に任せろよ。
香奈さんが人を殺したのは、父さんとなんの関係も無い事だ。」
彰彦「なあ、彰人。関係ないとは思えないんだ。
それも、何となくに含まれる。
強いんだよ。何となくは。
理由が無い。ただ、何となくだから、変えられないんだ。
誰にも、何となくは変えられない。俺、自信にもだ。
何となくを変えるロジックを誰も知らないんだ。」
彰人「そんな理由で・・・。
ふざけんな! ふざけんな!! ふざけんなよ!!!
いつもそうだ!だから、いつもいつもいつもいつも!不幸ばかり引くんだ!」
彰彦「解ってい 」
メイ「解ってない!彰彦は解ってない!バカ!
もう、貴方には私が居るのよ!彰人君もよ!
私がまだ信じられないなら、信じるられるようになるまで
時間をちょうだい。その位、私にハンディをくれてもいいでしょ!
貴方はバカなんだから!沢山は救えないの!救うのは私や、彰人君にして!
香奈さんに向ける優しさを私達にちょうだい!」
お前達は俺が居なくても大丈夫だろうよ。返って俺が居る方が迷惑をかけ
メイ「香奈さんはもう、彰彦を必要としていないの!」
またか、心を・・・。それにしても辛辣な事を
彰人「バカオヤジ。香奈さんは。イヤ。香奈は・・・。
警官をまた2人殺した。」
彰彦「知っているよ。何人殺したか。そして信じられないくらい香奈は・・・
凶暴で、目で追いきれない程に、俊敏になっている事も。」
メイ「え。そんなに・・・。」
彰人「何か知っているのか?」
メイ「ええ。あっ。あ、あの薬は、神経組織に作用して
筋肉が動いていると錯覚させる・・・。
その結果。代謝が促されて脂肪を燃焼させる。つまり、痩せるの。
でも、運動を絶えずしていると勘違いした、筋肉細胞と伝達神経は
発達を続け、やがて人間としてのリミッターを外す。
そんな可能性もあった。けど・・・。可能性だけの話よ。
現実に起こるなんて、あり得ない・・・。」
彰彦「何となくを無効にするロジックが無いのに
香奈の人間離れした動きを説明するロジックがあるなんて
狂ってるな、この世界は。」
彰人「バカオヤジ。考えなおせ。
黙っていたけど。また、警官を殺した時に防犯カメラに香奈が映っていた。
容疑者の一人として以前から目を付けられていた香奈は直ぐに照合され
被害者数が多すぎる事、人間離れした力、その凶暴性からモンスターと
呼ばれている。もう、香奈さんじゃないんだ。モンスターなんだよ。」
彰彦「モンスター。それは、知らなかったよ。」
メイ「悲しいのは解る。私が悲しみを癒してあげるから
もう、諦めて。考えなおして!」
香奈が、人間離れした動きをする事も、面影さえ見る事が出来ない凶暴な表情も見ている。それでも、『モンスター。』そんな呼び方をされている事がショックだった。
彰人「それから・・・。香奈。違う。モンスターは全国指名手配が掛けれれた。
香・・・。モンスターには射殺許可も出ている。事実上の射殺命令だ。」
メイ「やめて!行かないで!一人にしないで!
一人しか救えないのよ。全部は救えないの!私に・・・」
射殺許可。事実上の射殺命令。その言葉を聴いた途端に俺は飛び出した。
香奈を止める。香奈を救い出す。そんな事しか俺には考える事が出来ない。
メイが、彰人が遠くで何か叫んでいるが聞こえない。
今の俺には言葉を理解する程の冷静さはなかった。
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必ずまた逢おう。
****アキヒコは****
心に嘘を付く暇も無かった。自然に行動した。香奈を助ける。
それだけの為に体が動き出した。意外だろうが頭の中はフル回転し、自然に見える行動をとる動作
周りを欺くための自然さ、走り出すタイミング。
全部、計算していた。でも俺の頭は香奈。それしか無かった。
****アキトは****
ゆっくりとさりげなく、車のドアを開け、『なんだろう。』こちらがそう考えた瞬間。
全速で走り出しやがった!ドアを開けるまで、あまりにも普通の行動だったから
手を伸ばした時にはもう遅かった。捕まえ損ねた。逃げやがったバカオヤジが!
追いかけようと車のドアを開けた途端に車が通り過ぎる。降りられない。
メイさんは父さんを呼び止めようと、絶叫と言いってもいいくらい叫んでいる。
やっと車から降り父さんを捜すが、OUT。・・・完全に見失った。
こんな時の逃げ足は世界一だ。こうなるともう、ひとつの才能。
そう呼んでもいい位の見事な脱走劇。どうする?どうする?
戸惑う俺に声が響く。
メイ「私が、彰彦を見つける。」
静かに響く声は、自分に言い聴かせるようであり、悔しさを噛みしめるようでもあり
なにより、決意を感じさせた。
彰人「どうやって?」
そう聞かずにはいられなかった。
メイ「私は、彰彦の記憶の全てを見た。だから、捜せる。
最初に彰彦が行くのは猿山がある、ロープウェイに乗って行く山の頂上よ。
彰人君は警察に戻って香奈さんを捕まえて、彰彦が見つける前に!」
父さんとメイさん。この2人は特殊能力者と言ってもいい。
一次元世界と自由にリンクできる父さん。そして、父さんの記憶を知り、父さんの心を読むメイさん。
普通では考えられない事をこの2人はあっさりとやってのける。
そう言った意味では、モンスターも・・・。
メイ「早く行って!なんなら、彰彦を指名手配してもいいから!」
戸惑っている俺に追い打ちをかける一言だった。
彰人「そ・それは、いくらなんでも無理だよ。」
メイ「じゃあ、行って!早く!早く!彰彦が香奈さんと遇ったら
必ず殺されるから!」
その通りだった。モンスターはもう人の心を持っていないだろう。
例え父さんでも、出遭った瞬間に殺されてしまう。
彰人「わかったよ。でも、何かわかったら必ず連絡して下さい。」
そう言い残し、俺は県警に向かった。
メイさんを残し車で走り出した俺は、迷っていた。
正直に言って。モンスターは香奈と呼ばれていた時から好きではなかった。
父さんが母さんと別れて何年も過ぎてから、現れたのは知っている。解っているんだ。
だけど、俺達から父さんを奪ったようで好きになれなかった。
そんな気持ちが強い俺は香奈さんに遇うと、いつも冷たい態度を取っていた。
父さんの前から消えた時は『ザマーミロ!』そう思っていた。
ザマーミロは殺人鬼を超えたモンスターとまで呼ばれるようになり、射殺許可まで出ている。
それなのに・・・今になって、優しかった香奈さんしか思い出せない。
父さんを香奈さんから助けたい。だけど、警察に戻れば香奈さんを殺すかもしれない。
父さんの命を守る為に、多くの命を守るために。解っている。だけど・・・。
優しい香奈さんしか思い出せない。そんな香奈さんに冷たい態度しか取らなかった。
どうすればいいんだ?父さんならどうする。教えてくれよ。
・・・・思い出したよ。迷った時、行き詰った時、そして苦しい時も、そんな時は
いつも父さんは抗っていたな。強いんだ。抗えるなんて。
俺は抗えない。警察組織に世間に流されるしか出来ない、多分。
だけど、父さんの命が最優先だ!これだけは譲れない。何があってもだ!
-アキト!聴いてくれ!私は此処にいる!
見えないのか?聞こえないのか!頼む、届いてくれ。
未来が・見えたのだ・・・。
届かないのか・・・。
アキトよ。流されるのも正しい選択だ。多くの人がその道を選んでいる。
『流される』彰彦は、それが出来なかっただけだ。
だが、抗ってくれないか。アキト。
未来は・・・お前が、彰彦を殺す道に繋がってしまった。今だけは運命に抗ってほしい。-
***メイは***
彰彦が初めに行くのは、あの場所。ロープウィエイに乗って行く山の頂上。
ロープウェイの色は赤。風景も解る。猿山の先に山道が続き、近くに売店もある。
「ティア。」
風景が色あせているのは彰彦が行った日が曇りだったせいね。
でも、どこ?旅行会社で調べるしかないのかな。
「ティアよ。」
彰彦の心を読めれば・・・。ダメ。遠すぎ・なの?何も伝わらない・・・。
「ティア。聴こえるか?」
右端の大きめの街路樹の脇に能天気な老人が『ティア』と呼んでいる。私の事?
危ないエロジジイね。無視よ。エロジジイに掛ける優しさはもっていないもん。
「待ちなさい。私を良く見なさい。」
走り出した私をエロジジイがしつこく呼び止める。もう~イヤ!キモ。
私の前に立たないでよ。忙しいんだから。えっ。なんで私の前?
さっき後ろに居たのに・・・。
よけようと右に左に動くと、エロジジイも動いて私の前をふさぐ。
こんな、真昼間から、もう!イヤ!
「まだ、思い出さないのかね。」
メイ「???誰?」
「仕方がない。これならどうだ!」
メイ「えっ。何するの!何すんの~!パンツ脱いだりするの!。変態ジジイ!」
ジュドー「間て、待て、待つんじゃ~!ワシだピッタ!」
メイ「ピッタ。・・・・。」
さてと!変態ジジイは無視して、彰彦を探さないと。
ジュドー「待たんか~!無かった事にしたピッタな。ワシの存在を無かった事にしたピッタな。」
メイ「もう~!うるさい!しつこい!汚い!ついてこないで!」
ジュドー「酷い言われようじゃ・・・・。ピッタ言っても思い出さんか。
仕方がないのう。メイ。彰彦の事はもうよい。ア奴の運命は決定した。」
私を知っている?彰彦の事も・・・・。でも・・・キモイ!
メイ「誰よ。彰彦の知り合い?・・・でも、記憶には一切ないかな。
それじゃ!ゴメンあそばせ。変態ジジイ!」
ジュドー「待たんか!
(長すぎたか・・・・。心をこちらに向けねば戻せん。仕方がない。策を変えるか。)
メイ!変だと思わんか?お主がなぜ、彰彦の心を読めるのじゃ。」
心を読む?なんで知ってるの・・・。変な喋り方も辞めた。何?このジジイ。
どうしても気になり振り向いてしまった。
ジュドー「振り向いてくれたか。ふう。やれやれじゃな。
この世界の時間で6年ちょっとか。それでは仕方がないのかもしれんのう。
すまなかったな。メイ。お主は、ワシがこの世界に送ったんじゃ。
この世界の理に反したアノマリー。彰彦を監視する為にな。
じゃが、もう監視する必要がなくなった。返るぞ。」
メイ「さっきから、なに言ってんのかな?メイちゃんは忙しいの!
後で警察呼んであげるから、おとなしくそこでスクワットでもしていなさい。
変態、徘徊ジジイ。」
ジュドー「また、呼び名が増えたな。(これだけでは無理か・・・)
しかたないのう、もう少し話してやろう。
メイ。それはこの世界での名前じゃ。命と書いてメイ。ワシらの世界では命は
ティアと言っておる。ティア。それが、本来お主が住む世界での名前じゃ。
この世界から、はみ出したアノマリー彰彦が運命を終える間際にワシらの
世界に迎え入れる為、お主をこの世界に送ったのじゃよ。
もちろん。ワシらの世界に彰彦がふさわしい人物なのかも
お主に見極めて貰う必要もあったのじゃが・・・・。
予想外の事が起こりおった。バビロンが、彰彦の運命を変えおったんじゃ。
彰彦が死を選択した時に、本来であれば死んでおるはずじゃったものを
バビロンの奴が、自分の世界に彰彦を引込み命を救いおった。
その上、わずかじゃが、時間軸をねじ曲げロスタイムまで創りおった。
今よりも、少しだけ幸せになりたい。そんな彰彦の望みを叶えようとしおたんじゃ。
じゃが、そのせいで彰彦と香奈は、より過酷な運命をたどってしまったがのう。」
私が違う世界の人間?死んでるはずだった?・・・
ジュドー「彰彦の運命は変わらん。もう、ワシらの世界に彰彦が来ることはない。
お主には別の候補者を監視してもらう事にした。」
来ることは無い?彰彦にバビロン。時間・・・。ワシらの世界?
ジュドー「これは、覚えておらんか?」
信じるのか、信じないのか・・・迷っている私に只のビー玉を見せた。
タダのビー玉。透明でラムネに入っているヤツより少し小さい。
これがなによ!・・・えっ。何か・・・映っている。風景。人・・・
これ・・私の記憶・・なの?記憶が繋がり始め
ジュドー「見えているのは、ワシがこの世界にお主を送る為に封印した記憶じゃよ。」
私の記憶なの?でも、関係ない。今の私には彰彦が、この世界が全てなんだから。
メイ「過去なんか・・・過去なんかいらない!もう私に係らないで!」
ジュドー「待たんか!ティア。」
叶わんのう。逃げようとするとは・・・。彰彦の行動パターンまでうつりおって。
これでは、手の施しようがないのう。それ程までこの世界が、彰彦が好きか・・・。
じゃが、それでもお主はワシの世界に住む者じゃ。ワシが作ったルールに従ってもらう。
ワシに逆らう事は許されんのじゃよ。どんなに抗ってもよい。
抗いながら、生きる道を選んだとしてもワシが世界を書き換えれば良いだけじゃからのう。
『全知全能は我が与えるものなり、世界の理は我が決める事なり
世界の理に置いてティアの記憶をあるべき場所に、生きるべき世界に戻す。
我が名はジュドー。我が名において命ずる。あるべき姿に。』
メイ「痛。いった~い!何すんのよ!ぶつけなくてもいいでしょ!」
あら?なんでじゃ?理を変えたはずじゃ。
バベルはティアに光と共に引き込まれるはずなのに・・・。
ジュドー「お主!なぜバベルをはじき返す?ブッ。」
こ奴、ワシにバベルを投げ返しおったあ?しかも、ワシにあたるのか?バベルがワシにあたる?
メイ「何が!バベルよ!ビー玉に、たいそうな名前つけて!」
ジュドー「ちょっと、ちょっと待ってくれ!今、整理するから、少しだけ待ってくれ。」
メイ「あっ。消えた!も~う!ムカつく(#^ω^)。
このぐらいじゃ、メイちゃんは驚かないからね。
そのくらいバビロンだって出来るわよ!」
ムカつくエロジジイ。また来たらギャフンと言わせてやるかな。
だけど、辻褄が合うのかな。
私が、異世界の人間・・・? そんな訳ないかな。
それより彰彦を捜さないと
「ティアよ。」
早く捜さないと、彰彦が死んじゃう。って
「ティア」
また、来たかな~。邪魔なジイイかな~。エロジイイの話を信じるなら
「ティア!」
も~う。うるさい。このジジイ違う世界の人間みたいだし、消えたりするからやってもいいかな?。
「ティ」
メイ「ちょっと待ってくれるかな。」
消えて見せたのは正解じゃ。こ奴ワシの話を信じる気になりおった。
何じゃかナップサックの中をごそごそと捜しておるが、まあよいわ。
これでようやく計画がすす
「うぎゃ~あ#%’’??”」
メイ「あっ。さすが、消えてたりするだけの事はあるかな?
彰彦が私を拒否った時の為にフル充電したスタンガンに
耐えてるもん。じゃ、もう一回!あれ、このジジイ丈夫かな
違う世界の人だから、死んでもいいかな?・・・それじゃあ、もう一回!」
ジュドー「ちょっと待て!うぎゃ~あ#%’’??”
それ以上は死・うぎゃ~あ#%’’??”
あ・彰彦を助けうぎゃ~あ#%’’??”」
彰彦を助ける?そう言ったのかな。ん~。もう一回!
ジュドー「うぎゃ~あ#%’’??”
待つピッタ。もう、解った。彰彦を助けるから、やめてくれ~」
メイ「彰彦を助けてくれるのはありがたいけど、出来るのかな。
・・・もう一回スタンガンする?」
ジュドー「待て、待て、待ってくれ!話し合おう。ワシはお主に元の世界に戻って欲しい。
お主は、彰彦を助けたい。ワシが彰彦を助ける代わりにお主は
元の世界に戻る。それでどうじゃ?」
スタンガンを持ちながらじゃが、ティアは一応話を聞き気になったようじゃ。
本来であれば、彰彦の監視役として影のように見張っておるはずじゃったティアが
彰彦に惚れおった。タダでさえややこしい彰彦とバビロンに異世界人間が接触してしまったかえら
余計厄介じゃ。どこから話せばよいものか・・・。そうじゃな。世界を分けて話すか。
それが一番じゃろう。
彰彦が心を裂き、バビロンがそこから生まれた。これはミラクルじゃった。この世界での奇跡じゃ。
それでも、バビロンはこの世界と接触すら出来ずに傍観者として何万年もこの世界を
ただ見ているはずじゃった。ところがじゃ。自分の分身である彰彦を不憫に思ったバビロンが
彰彦が死ぬ事を良しとせず、わずかな意識をのこし死の世界に向かう彰彦を自分の世界に引き入れおった。全てはそこから狂い出したのじゃ。
傍観者として生きるしかなく、触れるはずの無かった人間感情に触れた時に
バビロン自信にも起こるはずが無い変化が起きてしまった。感情が生まれたんじゃよ。
感情を持ってしまったバビロンは彰彦の体が回復するまでバビロン世界に匿った。
結果、死を免れた彰彦はロスタイムを生きる事になった。
心を引裂いた時、自ら死を選択した時、彰彦は2度も死の運命を免れおった。しかも
三度目には死の世界そのものが迎えに来たというのに、ア奴は『まだだ!』と叫び
自分の意志で死の世界を拒否しおった。まったく信じれれん事をしおるわい。
そんな彰彦をこの世界が否定しておるんじゃ。
ア奴が生きれば生きる程に、運命は過酷になっていきおる。
二番目の世界。これはワシらの世界のことじゃ。
解決できない危機がせまり、外世界から救援を求める事にしたワシは
人間世界のアノマリー彰彦に目を付けた。しかし、アノマリーは危険じゃ。
奇跡だったとしても、バビロンとその世界を創造したのだから当然、注意が必要。
そこで、ティア。お主の記憶をバべルに封印し、この世界の人間として生きながら、彰彦を監視させた。
もちろん、問題が無ければ死の直前に彰彦をこちらに迎え入れるのも、お主の役目じゃった。
本来であれば、彰彦と一度目に接触した時点で役目が終わるはずじゃったが・・・。
このありさまじゃ。
運命をねじ曲げてまで生きた彰彦は、死んでしまった方が幸せじゃったろうよ。
お主が彰彦と彰人、バビロンと物理接触した結果。彰彦は彰人に殺される運命に定まった。
メイ「ちょっと待ちなさいよ!なんで彰人君が彰彦を殺すの!
それが全部、私のせいなの?」
お主のせいではない。接触によって未来が変わっただけだ。
もちろんバビロンも変わった。バビロン世界に時間次元が生まれ、ア奴は未来が見えるようになった。
もちろん、彰彦が殺される事も知っているじゃろうが、未来が見える代わりにア奴は彰彦と接触できなくなってしまった。今頃は、必死に未来を伝え、変えようと叫んでいるじゃろうが無駄じゃ。
メイ「なんで、彰人君が彰彦を殺すかって、聞いてるのよ!」
偉い剣幕じゃのう。誤射じゃよ。
彰彦に襲い掛かる香奈を撃とうとしたが誤って彰彦を撃ってしまうんじゃ。
バビロン世界と接触を断たれた彰彦はもう、ただの人間とあまり変わりがない。
わずかに残っていた察知能力も、もう無いじゃろう。この運命を変える事はア奴にはもう出来んことじゃ。
メイ「そんな・・・。酷い。」
ちなみにじゃがな。モンスターと呼ばれる香奈は彰人も殺す。
最も彰人は、父である彰彦が生きているわずかな期待と父に駆け寄りたい一心で最後に抗いおった。
モンスターに襲われながらも残りの銃弾を全部モンスターに撃ち込むが、相手が悪すぎた。
そして、香奈も遅れて来た警官隊に、手足が千切れるほど銃弾を食らって息絶える。
愛情で結ばれた3人は、互いに殺し合い最後に触れ合う事も出来ずバラバラに死ぬ。
互いの亡骸が半径50m以内にあった事が、せめてもの救いかのう。
メイ「そんなの酷すぎじゃないの・・・」
ティアよ。世界には理があるんじゃ。理を侵した者は世界自体が排除しようと働くんじゃ。
じゃから、彰彦にはこの世に生を受けた瞬間から過酷な運命しか巡って来ないんじゃ。
取るに足らぬほんの少しだけ他の人とは違う力を持って生まれただけなのにのう。
世界は許さんかったんじゃよ。
世界は彰彦を嫌い排除しようと過酷な運命を与え続けア奴は、抗い続けた。
だがもう限界じゃろうて。もう、彰彦には抗うすべがない。
そして此処までこの世界から嫌われた彰彦をワシらの世界に迎える事はもう出来んのじゃよ。
メイ「さっき、彰彦を助けるって言ったでしょう!
助けなさいよ!私の彰彦を助けて!」
私の彰彦とはのう。深入り過ぎたのか。
良いじゃろう。彰彦を助けるのは良いが必ずしもお主が望むようになるとは限らん。
ワシが出来る事は運命を変える切っ掛けを創る事だけじゃ。
代わりにお主は、この世界の記憶全てを失う事になるがこれは代償じゃ。
メイ「どうしてよ。なんで私の記憶をなくすのよ!」
そう怒るな。説明がヘタじゃったのう。
お主が接触してバビロン世界に時間次元が生まれ未来が見えるようになったがバビロンは彰彦と
リンク出来んようになった。その瞬間に彰彦の運命が決まった。
であれば、バビロン世界を本来の一次元世界に戻せばまた運命は変わるじゃろう。
彰彦とバビロンのリンクも回復するじゃろう。そうすれば奴は少しだけ人とは違う力が使え
また抗うすべを持つじゃろう。全てはワシの予言じゃが可能性は大いにある。
メイ「説明になってない!なぜ、私の記憶を無くす必要があるのか聴いているの!」
簡単な事じゃよティア。お主がこの世界に来なかった事にしても
お主が記憶を持たままでは運命は何も変わらん。じゃから
この世界でお主が生きた証、全てをバベルに封印する。
それでやっと、お主の記憶はこの世界から消えるんじゃ。
メイ「彰彦が私を忘れてしまうなんて・・・イヤ!絶対に嫌よ。」
わがままはもう終わりじゃ。それ以上の事はワシには出来んのじゃ。
メイ「信じようとした私がバカだったわ。
エロジイイ!さっさと消えなさいよ。
互いに何も覚えていない。
そんな世界なんか、望んでいないの!勝手な事ばかり言って!
いったい何様のつもりよエロジジイ!」
神じゃよ。別の世界での話じゃがワシは神じゃ。気が付かんか?先ほどから
ワシはお主の心に話し掛けているし、あれだけ大声で何度もエロジジイと叫んでおるのに
周りの者がなんの反応も起こさんのは変じゃろうて。
メイ「えっ。」
諦めの悪い奴じゃ。通行人、壁、街路樹はてはアスファルトまで触っても
何も掴めんというのにまだ掴めるものを捜しておる・・・こ奴も人の心を持ってしまったか。
人の心は諦めを知らん。1%の希望があればそれだけで生き残りおる。
メイ「解ったわ。決めた。」
唐突に言いおったか。
解ってくれたか。なら、帰るぞ。
メイ「何を勘違いしてるのかな。
そんな冷たい神なんていらない。私も彰彦と同じく
抗う事に決めたかな。
それがエロジジイ姿の神でもよ!」
やれやれ、これが人の心か・・・。
これでは、この世界の神がこ奴らを当の昔に諦め、ほっておくのもうなずけるのう。
ティアよ。ワシはお主を元の世界に戻せねばならん。じゃが、どうやら人の心を持ったお主には
ワシの力が及ばんらしい。力ずくで戻そうとしたのじゃが出来んかったしのう。
そこでじゃ。ワシが出来る限り手を貸そう。じゃから戻ってはくれんか?
メイ「コズルイのね。神って。神なんだからなんでもできるでしょ!
私と彰彦が幸せに暮らせるようにしてくれるなら戻るかな。」
むちゃを言うでない。神と言っても全て思うままではないのじゃ。
お主が思うよりも多くのものが神であるワシにも手が出せん。その一つが人の心じゃ。
ましてワシは、この世界の神ではないからのう。
ティアよ。この世界でお主が彰彦と幸せに暮らせる可能性は0じゃ。
しかし、ワシらの世界に来れば、ほんの少しだけ希望が持てる。
メイ「さっき、彰彦はそっちの世界に行けないって言ったでしょ。
記憶も無くすって言ったでしょ!」
まあ聴くがいい。
お主が、この世界で係ったもの全てを無かった事にすれば、彰彦の運命はまた動き出す。
代わりに、お主も彰彦もお互いを忘れてしまう。ここまではさっき話した通りじゃが
お主たちの未来の為にワシがプレゼントを贈ろう。但し、ワシが出来るのは切っ掛けを
創ることだけじゃ。その先を切り開くのはお主たちじゃ。
メイ「無責任ね。」
ほっほっほっ。本来、神は無責任で冷たい。そして気まぐれじゃ。
どうじゃ、ワシの話に乗ってみるか?
メイ「・・・い・いいわ!どうするればいいの言ってみなさい!」
・・・。まあよかろう。お主たちが幸せになる為にはこの世界は厳し過ぎる。
ワシの世界ならまだ可能性があるが、ワシの世界でお主たちは互いに知らんものどうしじゃ。
運よく出会う事も無いかもしれん。だが、今は互いに心が繋がっておる。
心が繋がっておる内に、何か彰彦の心に残せ。世界が変わっても心に残る物があれば必ずまた逢える。
メイ「そんな・・・何か残せって・・・大雑把過ぎる。
何を残せばいいのよ!」
何でもよいのじゃ。お互いの心が呼び合い必要としていた事を彰彦の心に刻むのじゃ。
例え世界が変わり、お互いを覚えてなくても心が呼び合うように深く刻むのじゃ。
ワシの力も及ばぬ人の心じゃて、その位は出来るじゃろう。
さあ、ティアよお主は彰彦に何を伝え何を心に残すのじゃ。
メイ「決まっているわ。私の心を伝え、私の心を残す。」
ほう~。良い考えじゃな。同じ心から生まれたバビロンが彰彦と繋がっているのじゃから
お主の心を彰彦に残せば・・・。良かろう。ティアよ心を彰彦に伝えよ。
メイ「心を伝えるって、どうすればいいのよ。」
彰彦に電話せい。
メイ「電話?はっ?そんな・・・。
神様なのに電話なの?普通だったら、心に送るとかさ。他に方法あるでしょ。」
ほっほっほっ。現実とはそんなもんじゃよ。良いか。彰彦に望みを伝えた終わったら
お主はこの世界から離れる。チャンスは一度だけじゃ。
彰彦。お願い。生きて。伝えるたいことはいっぱいある。これからも一緒にいたかった!
もっと、彰彦のそばに居たい。でも今は出来ない。私はジュドーにこの世界に贈られた監視役。
だから、帰らなければいけない。帰れば彰彦は生き残れるかも知れない。
そして、また逢える。たとえ、世界が変わっても必ずまた逢える。
決まったわ。私は心を決め、彰彦に電話した。精一杯の願いと祈りを込めて・・・。
メイ「彰彦。香奈さんを必ず助けて!メイは彰彦を信じる。
それから、世界が変わってしまっても、必ず・また・逢い・ま・しょう。」
***彰彦は***
何か様子が違っていた。短い電話だけどメイは何か伝えようと必死だった。
俺に届いた言葉よりも、ずっと多くの何かを伝えようとしていた。
そう、言葉と言うよりも言霊のようにメイの声は心に響き消えない。
何度も、頭の中でリピートしている『信じる・必ず助けて・また逢おう・世界が変わっても・必ず。』
-何を考えている。-
(何処に行っていた?俺の心は解るんだろ・・・。あいつと同じで・・・。)
-誰の事だ?-
(今、電話が・あって・・・)
-何を言っている?誰からの電話の事だ?-
(・・・こう言った。必ずまた逢おう。たとえ世界が変わってしまっても、必ず。)
-お前が言ったのか?-
(そうだ。俺があいつに言った。約束した・・・。でも誰だったか思い出せない。)
なぜだろう。心にポッカリと空間が出来ている。
それ程大きくないけど・・・とてつもなく深く心に穴をあけている。
俺は何度、心に穴をあける?埋まらない空間がまた一つ・・・・・・・・。
記憶が?イヤ違うな。心が混乱している。
必ずまた逢おう。約束したんだ。約束したんだ。約束したんだ。
例え世界が変わっても約束したんだ。必ずまた逢おう。誰とだ・・・・・・。
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いつかまた逢おう・・・たとえ世界が変わっても