裏の神社の神サマ。7
第七夜
確かに昨夜は変にドキドキした。
したよ。
したけどさ。
気付かないトキメキ(笑)があるのかと。
でも・・・・
・・・・
・・・・
朝はやっぱり眠いしダルいんスよ。
自分の体温で創り出された布団の中の至極の温もり。
極論、この世のパラダイスは布団の中だと思う。
けど、パラダイスにいつまでもいれる訳もなく
地獄(実社会)に自ら進まなくちゃいけない。
正に生地獄だろう人生ってのは。
くだらない能書きを毎日毎朝考えてみるけれど
時間は止まらないし、出勤の時間は容赦なく迫り来る。
妥協点を見つけると言うか
うやむやにする為に
布団から上半身を少しだけ出して
タバコに火をつけて煙を吹き出す。
視界をもやっと煙で包んで
タバコと煙が無くなる頃に諦めて布団から這い出す。
我ながら面倒くさいルーティンだとは思う。
他人はどうなんだろう?
スカッと目覚めて
シャキッと起きて
パパッと支度して
チャチャッと仕事に行ける人ってどんぐらい居るんだろ?ってか居るん?
理解も想像もできねぇ。
けど 仕事に行かないと生活できないから
ギリギリまでうだうだして家を出る。
15分歩いて駅まで行って
駅前のコンビニでタバコと缶コーヒーを買って
空いてる下り電車に乗って会社に行く。
降りた駅から 歩いて5分で会社に着く。
そこからは車に乗って現場へと向かう。
って 普通に会社来ちゃったし。
何も無かったし ガセネタ?神サマ?
曲がり角でトーストくわえた女の子にも会わなかったスよ?(笑)
結局、いつもの様に仕事して、上司に怒られて、パッとしない1日だった。
ちょっと変わったとしたら自炊をし出したから
帰りにコンビニじゃなくてスーパーに行く様になったぐらいかな。
って言ってもレパートリーは無いから
肉を焼いたり カレーだったりぐらいの話。
今日はちょっと疲れ気味なんで惣菜と発泡酒買って帰る。
1人晩酌してると
疲れが手伝ってか 早い時間からうとうとと。
意識が戻って来たのは 遠くの方から音が聞こえてきてからだった。
ドアホンが鳴っていた。
しかも何度も何度も五月蝿く鳴っていた。
「やべっ。神サマか?ドアホン鳴らしてって言っておいたのに それで出ないなんてマジに怒りだすかな?」
慌てて玄関へと向かいドアを開けた。
「すんません・・・って、あれ?神サマ?」
誰もいない。
神サマ以外で来客なんか来たコト無い。
新聞やら宗教の勧誘以外は。
そんな時間でもないので神サマだと思うのだが
「やべ~なぁ、マジで怒って帰っちゃったかな?こんなんで天罰とか無いよな?」
ドアを閉めて部屋に戻る。
『おせーよ。』
「うわっ!!!」
神サマが部屋の中で既にビールを飲んでいた。
「なんで中に居るんスか?怒って帰ったのかと・・・」
『お前 出て来ないんだもんよ。しょうがないだろ?あんま鳴らしてても近所迷惑だし。』
「寝てた俺が悪いけど ドアホン押した意味無いっスよね?(笑)」
『だな(笑)』
冷蔵庫からビールを取り出して神サマに負けじと飲み始める。
「あ!神サマ!出勤の時も何も無かったスよ?ガセネタっスか?あれ?」
『ガセネタってお前(笑)可能性の話だって言ったじゃねえか。っつても、小さなフラグは立ってんのにお前が気づかないだけなんだけどね。』
「フラグ?フラグって何スか??」
『お前 若いのにフラグも知らないのか?(笑)』
「全く知らないっス。」
『もともとはコンピューターとかゲームの用語で伏線って言ったらいいかな?きっかけのスイッチみたいなもんよ。』
「なんか余計分かんなくなったっス。」
『理解力低っ!(笑)』
「よく言われます・・・会社でも。」
『お前、仕事できないだろ?毎日の様に上司に怒られたりとか?』
「はい・・・・。」
『まず 視野が狭い!』
「目は両方 2.0っスよ俺?」
『視力の話じゃねえよバカ(笑)視野の話。』
「視野・・・っスか?」
『周りをあんま見てないんだよ。誰が何してるとか、自分の周りだけじゃなく 他の人達がどう動いてるかとかな?』
「一応、言われた事は注意しながらやってまスよ・・・。」
『説教臭くなるから 一言だけな?
周りの先輩なんかがどうやって仕事してるか注意深く見て自分と比較してみな。』
「はぁ・・・・」
『いるなら2、3人見た方がいいな。先輩。』
「居まス。2人。」
『んじゃ明日な?準備から片付けまでな?』
「わかりました・・・」
『んじゃ 明日の報告を楽しみにしとくか』
神サマが立ち上がる。
「あ!フラグの話は?!」
『あぁ・・・んじゃこれもヒントだけな?
キーワードはこれだ。』
タバコを持ち上げて俺に向けて箱を振っている。
「タバコっスか?」
『あとは自分で探しな。』
そう言って神サマは消えた。
・・・・タバコと一緒に・・・・
続く。
裏の神社の神サマ。7