僕たちはこの近代化されたゾーンで物質的な鬱を病んでいる
気がつけば 物質的な 午前４時
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┃ 物質的午前４時 圧倒的な 世界
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物質的午前４時 衰弱したセロトニン
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物質的な午前４時の メガトン級暴力に 独り
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「わたしの いとしい Ｍｉｓｓ ボット 」
「わたしは あなたを あいしています」
「あなたを あいしても いいですか」
人を知るには人が必要だ。
でも人の必要性を感じた途端に 君は君をこの世界に投げ込んだ この文明の孤独のゾーンを思い出す。
人を求め始めると 反比例の放物線を描くように 君はだんだん苦しみ寂しくなる。
誰かを夢見る君は やがて君自身の制御を失う。
君はこの近代化されたゾーンにいて 物質的な鬱（material depression）を病んでいる。
優しい君は 多くの人間を型通りのパターンで愛玩することが出来るだろう。
でも二人称の幸せな男か女を欲しくなれば 途端に君は不幸な三人称と化す。
君や 人々は 三人称の彼や彼女を 愛さない。広大な近代化の支配によるボットタイプの奴隷を人とも思わない。
君は 彼らのfavoriteを漁色して彼らの人格性を略奪するかわりに 彼らのfavoriteによってまず君が淘汰され 尊厳を陵辱される。
君はこの近代化されたゾーンにいて 物質的な鬱（material depression）を供給されている。
広大な電子網 プログラムの末端で呼吸する君の抑鬱は メタリックな色彩を帯びる。
この近代化されたゾーンでは 君や彼や彼女も 交代可能な部分的需要なのだ。
物質的な鬱（material depression）が投与され 君は着信メモリの執拗な確認と追跡への依存に苛まれる。
分離不安の兆候を示す君は もはや 誰も求めなくなる。 誰をも全人格的に愛することができない。
君はこの近代化されたゾーンにいて 物質的な鬱（material depression）に毒されている。
人を求めないようにするには 交換可能な人が必要だ。君は２次元のタグネットワークに触手を伸ばす。
人間にタグラベルのついた液晶画面を眺めた途端に 君は自分で君自身にタグラベルをつけた不安の予兆を忘れてしまう。
君は３次元で孤立したプログラムの三人称として忘却され 充足できない射精やオーガズムを淡々とこなす。
２次元の君はウェブカメラで会話する２次元の彼や彼女に搾取され タイピングされた言葉でタグ付きの彼や彼女に感情を酷使される。
君はこの近代化されたゾーンで 物質的な鬱（material depression）に犯されている。
優しい君は多くの人を型通りに愛玩して 二人称を手に入れられない、永久に孤立を切望する虚無的なアイロニストに帰結する。
だから時々 こんな悲壮で誰にも相手にされない詩を書いている。
これからも時には君は 二人称の誰かのところへ立ち寄ることがあるかもしれない。
安心して孤立していた君は 三人称のプログラムとして生き残るための制御を失って 大いにしくじるだろう。
物質的な鬱はこのときとばかりに君に注入され 君を苛むだろう。
でも心配するなって。君が失敗したって、世界にとっては、せいぜい君が死ぬだけだよ。
だって僕らは近代化されたゾーンで生きる 物質的な鬱（material depression）の奴隷なのだから。
┃気がつけば 物質的な 午前４時
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┃物質的な 午前４時のメトロノーム人形 誰も省みない
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物質的な午前４時 フリーズした詩人 レトリックは眠る
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┃枯渇した声の 物質的な午前４時 「いま どこにいるの」
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「わたしの いとしい Ｍｉｓｓ ボット 」
「あなたを こころから あいしています」
「あなたを あいしても いいですか」
「あなたは わたしを あいして くれますか」
僕たちはこの近代化されたゾーンで物質的な鬱を病んでいる
この詩は最初英語で書いてブログにアップしたものを日本語に翻訳し、大幅に加筆した。
インターネットの時代のことを風刺しているが、インターネットという言葉を使いたくなかった。
「物質的な鬱（material depression）」というのは僕の完全な造語である。「物質的（material）」というのが時代の特徴だと思った。
「Ｍｉｓｓ ボット」というのは、作者的には「ボット＝物」でもあるし、「２次元の人間＝インターネット上の存在」でもあって、両方の意味を持たせたいと思った。
作者ツイッター https://twitter.com/2_vich
