もう2度と会えない人

もう2度と会えない人

12月9日

何のイベントもない日。強いていうならもうすぐクリスマスだねって日。12月9日、AM5時。父方の祖母が亡くなった。らしい。正直まだ、実感はわかない。
僕の父方の実家は鹿児島。僕が今いるのは新潟。7時43分に起きたら来てたライン。
『5時にばあさんが死んだ』たったそれだけ。

現在時刻22時26分。新幹線で上野まで行って、朝一の便で鹿児島に帰郷。あっても話せないばあちゃんに会いに行く。

まだ悲しくはない。ただ誰かのそばにいたい。けど、孤独を感じているわけでもいない。食べ物は喉を通らないが、食べたいと意思はある。顔は何の変哲もない普段の顔。
どうしちまった感情。そりゃそうだよ。初めてだもん。こんなの。身内の誰かが死ぬ。もう会えない。話せない。いつか必ず来る時間。それが今来ただけなのに。何だよ。何で今なんだよ。

おかしいよ。心配かけないようにさ、2ヶ月前から入院してるの俺に言ってないなんてさ、どうなんだよ。嬉しいよ?その心は嬉しいよ?誰よりも優しかったばあちゃんがしそうなことだよ?でもさ、2年前から少しずつだけど、痴呆入ってたじゃん。もう俺のことなんて忘れかけてたじゃん。それなのに何で…。ただでさえ口が軽いじいちゃんも父さんも当日まで言わないほどの願いって…ずるいよ。

心配ぐらいさせてくれればよかったじゃん。
遠くにいるんだからさ。少しぐらい心配させてよって思ったよ。
小学校から中学までほとんどばあちゃん家で育ったじゃん。毎週金曜日は泊まってさ、同じ部屋で寝てさ、うまく説明できないけど、縦長の部屋でさ、ばあちゃんが上半分、俺が下半分で寝ててさ、9時を過ぎてもお話ししてたじゃん。
何かあったら喧嘩してさ、じいちゃんに2人で怒られてさ…。
足が不自由でも、一生懸命散歩してさ…外で一緒に歩く練習してさ。
じいちゃんの寝室でかくれんぼしてさ…。叩きあってさ…ごめんねばあちゃん。
いい思い出の中にいれた…?最後は俺のこと思い出してくれた…?
数時間後には会えるけどさ…もうお話しできないからさ…ありがとうばあちゃん。いい時間だったよ…。18年間、ありがとう。30歳で倒れて以来、ずっとずっと頑張って生きてたね…。お疲れ様。安らかに。

もう2度と会えない人

もう2度と会えない人

たくさんのありがとうと後悔と

  • 自由詩
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-09

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND