雪が降らなくても
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大雪の翌日。
余り雪の降らないこの場所が予報外れの大雪に見舞われ、街は一面、銀世界だった。朝日が昇り、雪が日を反射させて、普段は地味で質素なただの住宅街も、今は眩しく煌めく自然のイルミネーションが街を彩っていた。
氷った涙を流し切った空は雲が一つもなく、綺麗に白んだ空がこの街を覆っていた。
大雪の翌日。予報外れの雪の中、産まれた私の名前も予報外れの名前になった。
元々私は「真理(まり)」という名前を付ける予定だったらしい。
だが、驚くほどの大雪、そして綺麗な銀世界に魅せられた父が「美冬(みふゆ)」はどうか、と母に提案した。
母の異論はなく、すんなりと私の名前が決められた。
そんな話しを小学生の頃に聞き、それから雪が好きになった。
この頃から勉強しかしていない日々で、年に一度、降るか降らないかの雪を楽しみに生きているようなものだった。
この頃からだったと思う。勉強しているフリをして部屋に篭り、窓から雪景色を眺めてそれをスケッチするようになったのは。
カメラなんて触れたことないし、ましてや携帯なんて「子どもに悪影響」と買ってもらえなかったし、私が雪化粧した街を雪が降らなかった年に見られることができる方法が絵を描くことしかなかった。
それから3年ほど経った今もずっと続いている。
今日は2年ぶりに雪が降る。午前中には降り始めるはずなのにまだ降る気配がない。
私は勉強机に手をかけて立ち上がり、窓のそばへ行った。
雪が降らなくても