首吊り少年と煙草男

首吊り少年と煙草男

少年は縄を天井に吊るしそこに首をかけた。
胃の中の物が全て迫り上がってくるのを感じた。
この廃墟の一室に誰かが入ってくるのを感じ目を向けると、煙草を咥えた男が立っていた。
男は無言でこちらに近寄ってくると、少年を無理矢理縄から下ろした。
少年はゲホゲホと咳をして、目に涙を浮かべながら言った。
「何故助けたんですか」
男は無表情で少年に目をやると、また無表情で少年の問いに答えた。
「助けて欲しそうだったから」
男は煙草をふかした。
少年の目には涙がみるみるうちに溜まる。
「僕がそう言ってるように見えたんですか」
少年はボロボロと泣き出した。
男は少年の前にしゃがみ込む。
「いいや、見えなかったけれど、大体こういう事をする人って、助けて欲しそうに見えるから」
男は少年にハンカチを差し出すと、立ち上がって扉の方へ向かった。
「余計なことしたかもしれない。余計だと思ったのなら、もう一度同じ事をすればいい」
そう言うと、男は扉の向こうへ消えた。
少年はハンカチで目と口元を拭く。
「煙草の匂いがする」
少年はハンカチをポケットにしまい、男が消えた扉へと足を向けた。

首吊り少年と煙草男

首吊り少年と煙草男

少年の前に現れたのは、煙草男だった。

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-12-08

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