嘘
祖母がガンになった時
僕はまだ生まれていなかった
皆が祖母に嘘をつき
すぐに良くなると励ました
祖母は遠くに旅立って
せっかく買ったという杖は
一度も突かれはしなかった
それから僕は生まれてそだち
父に祖母の話を聞いたのだ
父が僕を育てるにあたって
嘘をついてはいけないと
教えてはくれなかった
父はいつも家族の嘘を一身に背負い
正しさに迷いながら
生きてきたから
今父も母も齢をとり、願う
こんどは僕が
やさしく長い嘘を
つかなくても良いように
僕のこどもに
できるだけ嘘はつかない方が良いと
教えられるように
嘘