祖母がガンになった時
僕はまだ生まれていなかった

皆が祖母に嘘をつき
すぐに良くなると励ました

祖母は遠くに旅立って
せっかく買ったという杖は
一度も突かれはしなかった

それから僕は生まれてそだち
父に祖母の話を聞いたのだ

父が僕を育てるにあたって
嘘をついてはいけないと
教えてはくれなかった

父はいつも家族の嘘を一身に背負い
正しさに迷いながら
生きてきたから


今父も母も齢をとり、願う

こんどは僕が
やさしく長い嘘を
つかなくても良いように

僕のこどもに
できるだけ嘘はつかない方が良いと

教えられるように

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-04

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