小さなおくりもの

小さなおくりもの

君はたぶん
喧騒の中で、ふらりと立ち寄りたくなるカフェ
深煎りのコーヒーの香り
薄暗がりのランプ
ジャズの音色
安らぐ時間
呼吸を思い出す場所
僕の存在を確かめる機会

君の声を聞くとそれだけで、
退屈も悩みも吹き飛んで
次の一歩を踏み出す勇気が湧いてくる

君はたぶん
雄大な地平線、海に生命を吹き込む朝焼け
はじまりを謳うさざ波
冷たくも優しい風
砂浜の薄明かり
小鳥の呼び声
世界に色が灯る場所
生きる目的を確かめる機会

君の姿を認めるとそれだけで、
疲れも気怠さも吹き飛んで
今日の一日を乗り切る気力が湧いてくる

代わりに僕は
溜息をつける公園
優しくなれるティータイム
安心して眠れる毛布
グラスリッツェンの眩さ
好奇心を刺激する辞書
行く先を照らす木漏れ日
炬燵で蜜柑を食べる平和な時間
スリル満点のジェットコースター
散歩道の美味しい空気
そんなものを僕と一緒に丁寧に包んで
君と会う日にひとつずつ

小さなおくりもの

小さなおくりもの

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-04

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