バスケ部

バスケ一筋の雫、たくさんのチームメイトと県予選を勝ち抜いていく青春ドラマ。

ふと、出会った想い出を深めていくの得意になった。過去は必ず良い想い出になる。辛いことも嬉しいこともだ

ふと、出会った想い出を深めていくの得意になった。過去は必ず良い想い出になる。辛いことも嬉しいこともだ。互いの恋愛観を打ちつけられても生きてみるべきだ。17歳になった雫雫(しずく）だった。11月3日産まれ、長女だ。妹がしたにいる薫(かおる)だ。

雫は高校2年生、「しずく！今日バスケの練習だよ！放課後、体育館で待ってるね。」
大きな声で、教室中にこだまして、教室のみんなが凛(りん)の方を向いた。凛は構わず、そそくさ、別の教室に入っていった。
雫はおとなしい子だったが、明るい凛とは対照的に仲が良かった。凛は次期のバスケ部のリーダー候補に上がっていた。
今年の夏には大会が終わり次第、3年生は受験勉強のため、バスケ部を卒業しなければならない。候補に上がっている、凛のポジションはセンターでチームの中盤であり、ゲームを組み立て役だった。凛の一声で一気に攻めてゲームを作ったり、ディフェンスに回る部員がいる。
雫はバスケを始めた頃には背の小さな小学生だった。当時はポートボールと呼ばれていたが、中学、高校と正にバスケしか知らない。
勉強熱心の両親の元に産まれたせいか、勉強も疎かにせず、進学高であるこの三浦高校に入学した。

「美咲せんぱーい！フリースロー教えてください！」体育館の隅から甲高い一年生の声が聞こえてくる。美咲はバスケ部の3年生で、美咲も頭の中がバスケでいっぱいの女子高生である。
何処か雫に似たところから雫は美咲二世と呼ばれていた。
手際よく一年生にフリースローを美咲は教えていく。男子バスケ部とは違い、インターハイも出場するくらいの名門校だった。
一年生は外周をさせられる。体力をつけるため、”ロード”という練習メニューがあったが、監督から”ロード”という言葉を出るのを嫌うくらい部員はおののいてしまう。
外周を走るだけならばいいのだが、陸上部にも似たメニューは実際、街を何十キロも走ることで知られる地獄の練習だった。
「小早川先輩！今日はロードではないでしょうね、前日試合でくたくたで、」
「分かんないわよ！あの鬼監督！わたしも今日はないと思うんだけど、やりかねないわよ。」
「えー、試合後にやる練習なんて、軽くしておけばいいのに。」
「あなた！分かってないわね！ここは名門よ、試合後のメニューは軽めにしてなんていうたちはないわよ！」
「あの、センコー！」
「まっ、覚悟しておくことね！やりかねないからね！」

冷える体育館で放課後、バスケ部の練習が始まった。
「集まれ！」監督が言った。
「どうかしら？今日のメニュー。」
部員達はソワソワしている。
「昨日の結果、よく分かるように、体力で勝つわたしたち三浦高校女子バスケ部には良い結果になった。さらに、強化するために、、ロードといきたいところだが、今日は試合形式の練習をする。」
「ふう〜、」
「驚いちゃった、わたしロードばっかりだと、思っていたのに。」
「そら！そこの一年！コソコソ何話してんだ！ゲームに集中しろ！！」

甲高い3年生の指示が飛び交う。

2

「お姉ちゃんまた、寝坊。」薫が言った。
「あらやだ、クラブで疲れているんでしょ、勉強にも身が入らなくなったら困るわ。お父さん新聞ばっかり見てないで、少し注意しちゃってよ！」母絵やが言った。

「いいじゃないか、クラブで疲れているんだ、なかなか、勉強とクラブの両立は難しいもんだよ！」父親が言った。

「あら、いけない、わたしも遅刻する。」
慌てて、カバンに教科書を入れ目玉焼きを加えて、飲み込んだ。
「行ってきまーす！」薫は早足で学校へ向かっていった。

「早く起きなさい！雫！もう、授業に間に合わないわよ！」
「はーい、もうちょっと。、」
右手で枕を塞ぎ、ベットから離れる。
「おし！フリースロー！何時、今？」
時計の針は8時を過ぎていた。
「やっべー遅刻だ。早くしたくしないと」
慌てて二階からドサドサ降りてきた。
「ちょっと雫！朝ごはんくらい食べていきなさいよ！」
「ごめん、時間ない！」
慌てて着替えを済まし、家を飛び出た！

校門が閉まろうとしたとき、とっさに潜り抜けた雫が早かった！
「遅刻だぞ、神前！」校門に立っていた先生が言った。
「えー、ギリギリじゃない！先生！」
「いいから早く教室に行きなさい！」
「はーい。」

教室に入ると出席をとっていた。
「また、神前遅刻か！」
「スミマセ〜ん。」
頭を下げ腰を低くして机に向かった。
「また、雫、遅刻！」
コソコソと隣の席で秋村裕太が言った。
「バーカ！」
雫は席に座るとカバンを机の右側に掛けた。

3

「さあ！クラブだ！今日も練習頑張ろう！」
凛は放課後早くボールを集め、フリースローを練習していた。「ヨッ雫！」
「凛、早くない？まだ、みんな来てないよ！」
ゆっくりと更衣室で運動着に着替え、シューズを履いた。
大会から3年生はもういなくなる。責任から凛は早く練習に来ていた。雫はセンターを務めるに値する親友だが、ディフェンスに力を入れなければならないチームで守備を固めていた。バックから放たれる速度のキラーパスは雫の得意とするものだった。
姉妹仲も良く、友人にはたくさん囲まれ雫は人気のある選手だ。雫や凛に憧れてこの高校に入ってくる新入生もたくさんいた。中学からメキメキ上達していた雫は推薦入学も考えたが、母親の学問の熱心さからもここ三浦高校に進学した。毎日、予習と復習を繰り返し、中間テストや期末テストでは学年でもトップクラスだった。部活と勉強を両立し、後輩からは慕われ、インターハイにまでいける実力も、雫の魅力だ。凛は次期にキャプテンになる、縁の下の力持ちとは正に雫のことだった。
3年生がクラブを終えるころ、この三浦高校は次の年代にバトンが渡される、インターハイの功績が掛かっているのは2、3年生に任されている。凛は推薦入学でバスケの特待生として、この学校に入学してきた。特に勉強が出来る訳ではなかったか、監督の斡旋で中学のときに上達を露わにしていたことに飼われ、三浦高校に入学した。凛もやはり、小学生からバスケ一筋だ。チームを見渡す眼識と的確な判断力は正に指導者に近い。凛がコートに入ると一瞬にして場の雰囲気が変わる。攻めと防御を全員でしないといけないバスケでは体力がとても必要になる。監督も体力があるものがゲームを制すと言っても過言ではない。ロードの練習を仕切りにいれたがるのも、伝統を受け継ぐ三浦高校のためだと思っていた。
バスケの練習はハードだ辞めていく人が後を絶たない。興味本位で入る部員は一年で過酷な練習の末辞めていく。雫と凛はそんな中でも奥歯を噛み締めながら、食らいついてきた。目を離せば先輩や監督の罵声がとび、厳しいクラブだった。
華麗なドリブルと精密なパス回し、雫はバックを務め、キラーパスを凛に送る、凛は鮮やかにネットに近づきシュートを決める。決めたら直ぐに攻守に回るカットされたボールはまた、雫のキラーパスから、凛に繋がれた。二人がいることで、チームは活気付き、チームワークも断然素晴らしいものになる。凛のドリブルは鮮やかなもので誰も止められない。パスを受け取った瞬間にすぐさまに、ネットを見ている。凛にパスが渡ることで必ず点が生まれた。
雫もそんな凛を頼りにボールを渡していく。隙間さえあれば一気に攻め上がる選手にキラーパスをバックから送る。雫には怖いものがない。幼い頃からバスケ一筋に生きてきた雫にとってバスケは人生そのものだった。涙が出て悔しい思いや食らいついていく姿勢はたくましい。

4

月日が流れ、試合の日が迫っていた。毎日のクラブ活動に力を入れ、大会に向けての練習が始まっていた。試合前には日頃の体力作りが試される。ロードは週に2、3回と厳しい練習が続いていた。
「大会が迫っている。各々、これまで練習に取り組んで来たがら各々が役割を持って行動して欲しい。3年生はもう、この大会でバスケ部を卒業になる。それまでに、よく考え、行動するように。以上。」
監督は言った。
今日の練習が終わった。ヘトヘトになりながらも家路についた。「あら、おかえり！お風呂とご飯用意してるわ。落ち着いたら、食べなさい！」母がそう言うと、母親はそそくさ、寝室に戻って行った。
凛と雫は帰り道、ある話をしていた。一年生の強化合宿。暫く休みを入れ徹底的に鍛え抜く。今は3年生が卒業して、新人戦も近づいている。合宿により、良き後継者を育てていかなければならない。
雫と凛には私たちが3年生になったとき、インターハイで優勝することを目標にしていた。
インターハイに出るまでは三浦高校の伝統とであるが、実際には全国に出てからの三浦高校は難しい成績だった。日頃から練習に明け暮れる毎日だったが凛も雫も目標は日本一だった。ふつふつと湧き上がる衝動に全国制覇を成そうとしていた。「私たちが3年生になってからが勝負よ！みんな！」今まで相当体力作りに専念した結果が新人戦で役だった。一年生はこの高校に入ってからバスケ部に入学する学生もいたが、インターハイクラスのレベルの三浦高校は入部してからどうなるかは考えていなかった。県全体で集められる部員の陣営はやはり、小学、もしくわ、中学からが前提となっている。
ところが、高宮は違った。入りたて一年の頃から小学生、中学生と部活をしていたのか、潜在意識と努力が絡み合った天才だった。体力のない一年生は訓練するのが3年生と監督の仕事だったが高宮という生徒は入部しるやいなや、直ぐに頭角を現した。高宮は先輩に言われたことや監督に注意されたことをメモに毎日記録し練習が終わっても練習し自分の能力をメキメキ付けていった。正にそれは高宮にもつ隠されたダイヤモンドを磨く作業に近かった。
生徒たちは”ロード”と言われれば、やる気を失せていたが、高宮は違っていた。走る街並みに自らに目標を立てレギュラーになるために必死で走った。ダイヤモンドは常に輝いていなければダイヤモンドの美しさは誰にも分からない。

雫と凛は新人戦はこの高宮に掛かってくると予想していた。「さあ！1年！集まりなさい！」甲高い声で凛が号令をかける。
ササッと集まる1年生。
「いい！新人戦が近いわ！試合形式にこれからは練習をシフトするからね！」
練習さ2年生と1年生の試合だった！
ピー！！
試合が始まった。
弾かれたボールは2年チームに渡る。と、その瞬間、雫がボールを手にしたとたん、一気にドリブルで1年ネットに向かっていく。右斜め後ろで凛が待っていた、直ぐにバウンドパスを渡すと凛はそのまま、スリーポイントを決めた。
ほんの5秒の寸劇だった。「えっなに？何が起こった？」高宮は圧巻と言った。
「さあ！試合は終わっちゃいないよ！あんたたちの攻撃よ！」凛は言った！
「高宮！本気でやんなさいよ！あんたが1年を動かすのよ！」雫は言った！
高宮はカチンと正直にきたらしく、悔しい思いをしていた。
試合は圧倒的に2年生ペースで進んだ。ハーフタイムに入る前には50対10だった。

高宮はもはや、体力がなく、ヘトヘトになっていた。さすがに2年生チーム、体力からは一線、１年生とは格段の違いがあった。
「さあ、後半！始めるわよ！」
ピー！と笛が鳴り後半戦がスタートした。１年生の周りには壁みたいな２年生の風圧に負けじとネットを揺らせない１年生。パッと、高宮がボールを奪った！鮮やかなドリブルでネット下まできた、そのままネットを揺らせようと、ジャンプしたがその更に上には２年生の右手があった。ネットカット！シュートは入らなかった。そのまま雫が奪いとり、前を見た瞬間に相手側のネット前に凛がいた。そのまま、凛にボールが行き、あっという間にネットを揺らした。
ビピー！試合はもう、１年生には墓場だった。点数を比べても一目瞭然、２年生の圧勝だった。まだ、高宮に潜在能力は出なかったが、こんなもんだろう、と２年生は頭を上げ下げした。

5

練習は新人戦に向け、終盤を迎えていた。
朝、教室に付いて、窓を眺めていると朝練をするサッカー部の姿があった。秋村裕太がめんどくさそうにボールを蹴っている。裕太はサッカー部の２年生だ。ちょっかいを出したりお銚子もののサッカー部は常に予選敗退の弱小チームだった。弱小なくせには朝練をするくらい、練習には熱心だったが、部は弱かった。「あっ来る！」隣で何やら女子が騒いでいる。裕太は学生の中で人気で女子には何回も告白されては付き合い、また、自分の都合で別れたりと中途半端な男子だった。
おちゃらけで軽い態度はやはり、軽い女の子を引きつれていた。そんなちゃらい様子を雫は見ながら一言「バカじゃねーの！」って告白されたついでに右頰にストレートをかましたことがあるが、やはり、ちゃら男なのか、雫にアタックしたり、ちょっかいを出し左ビンタでも！と釘をさされた！こともあった。

３年生の教育が最後になる。１年生の新人戦までに、３年生のノウハウを伝授する必要がある、高校高校と遊んでいる生徒もたくさんいたが、バスケ部は少なくとも真面目だ。
必要以上に粘り強い高宮は辞めることさえ思わなかった。人一倍負けん気の強さと我慢強さが武器な16才、しかもバスケの才能もあるときたら先輩方も黙っちゃいない。３年生は受験勉強に集中しないといけない。それを省みながら高宮を指導する。
青春という時代をみんながイキイキといきている。彼女とデートをしたり、部活に励んだり高校三年間ほどの煌びやかな青春はないだろう。一度の見返りを求めるより、ガムシャラにやることも人生には大切だ。若かりし頃の経験が大人の器を大きくする。

6

ふと、タオルを渡す高宮！
ん、「ありがと！」
凛は言った。初夏の季節で1年2年生だけの新人戦が始まった！
「ヨシ！気合い入れていくぞ！」
県の体育館に集まった部員は気合いを入れた！
新人戦！
県の高校が集まり体育館でトーナメント方式で闘う。三浦高校の初戦は江ノ島高校だった。
江ノ島高校はバスケ部としても、しっかり伝統のある高校だ。三浦高校の初戦としても負けず劣らずよい相手だった。

円陣を組む前に監督から話があった。
「今まで練習を積み上げてきたこと、３年生が卒業し、お前らの手に掛かっている、戸惑うことなく、立派に打つかっていけ！そして、初の新人戦！わたしは今回は口を出さない、お前らで考えて、試合をしてみろ！以上だ。」
「はい！」体育館中に部員の声が鳴り響いた！

ピーっ！試合開始の笛が鳴った。
ボールを高く審判が上げ、三浦高校の方へボールが飛んだ、その時、一瞬で察知しドリブルで江ノ島高校のネットに走り出した。巻き込まれると雫にパスが渡ったと思うと直ぐに右へと展開し右手の選手にボールが渡った。
スリーポイントをそこから決めようと放ったボールはネットを捉えることが出来ず、江ノ島ボールになった！「ディフェンスー！！」凛が大声をあげた。相手チームが三浦ネットを揺らした。
歓声からオー！っと聞こえる。開始早々に三浦高校は2点入れられた。エンドラインから凛が試合を展開した。センターラインで構えている凛にボールが渡った。一気に凛がドリブルで持ち込み！ジャンプ！右腕から放たれたボールはネットに吸い込まれていった。「ヨシ！」
凛はガッツポーズ、スリーポイントで3点が入った。「さあ、次よ！頭を切り替えなさい！」
「ディフェンスー！！」江ノ島高校のボールはハーフラインで待っ、敵選手に落ち着いた。すぐさまに、雫が「マーク！！」と叫んだ、ドリブルで攻め込んでくる選手の行く道を塞いだ。と、瞬間に右手の敵選手に渡るボールをカットした。バックの3人はすかさず、前線にボールを放ち、凛の前までボールが渡された、あっという間に凛はフリースローをした。ボールがネットの間をすり抜けて行く。「ヨシ！」ガッツポーズと観客ないで拍手が起こった。
凛と雫のコンビネーションは凄く誰にも止められなかった。気がついてみると三浦高校は江ノ島高校に20点の差をつける圧勝だった。高宮はまだ、実力を発揮していない。高宮の実力を発揮すれば、さらに三浦高校の戦力は上がる、時折監督の顔はニヤリと薄み笑だった。
監督の言われた通り、1、2年での新人戦初戦を圧巻の笑みで勝利した。考え方など、指導力やコンビネーションは３年生を越えたものがあった。監督の思惑通り考えのバスケが出来た。
日が沈み帰りの夕日の中で雫と凛を先頭に置きながら、みんな明るく話していた。高宮はあまり話さなかったが、この状況に責任を感じていた。１年生から２年生、３年生の美咲に話すのも話が弾んでいた。美咲二世はこの１年で成長した。卒業をしていく、美咲に負けも劣らず素晴らしい選手になっていた。

人が見かけるとき、軽はずみな態度はどうかと思う。誰しもそこにある、それぞれの大きかれ小さかれ責任を持っているものだ。例えその責任が総文に足らないものでも、生きた証には変わりはない。

7

新人戦の次の日、全部員は放課後体育館に残された。３年生の卒業だ。
「ええ！我が三浦高校の先陣を切っていた３年生はこれから受験勉強に入るため、バスケ部を卒業する。みんな分かっていただろうが、バスケ部の恥を晒さないためにも、１、2年生の力が必要だ、３年生は今日を持って卒業するが、気を引き締めて次の試合に挑まなければならない。以上。」
監督は言った。

美咲が凛にキャプテンを譲る。責任の重さか、凛は少しおどおどしていた。
「お疲れ様でしたー！」一斉に1、2年生は大きな声で頭を下げた。
３年生は体育館を涙を流しながら出て行った。
「とうとう、この日が来たのね！雫、わたしたちはわたしたちなりのバスケをしましょう！まだ、初戦は勝ったけど、次にまた試合があるわ。頑張りましょ！」
凛が言った。
「そうだね、」と思わんばかり、雫も泣いていた。
小学生から続けているバスケ、軽はずみな気持ちで雫はバスケをしてきたのではなかった。コーチや監督に罵声を受けながら悔しかったことがたくさんあった。人には言えない悩みを抱え思うようにいかないときもあった。この三浦高校に来てもまだ、バスケをやり続けたい、凛と共にインターハイを優勝したい。辛かった学生時代を男子にも目も向けず青春を駆け上ってきた雫だった。
凛も負けじと劣らずバスケ一筋に頑張ってきた。誰から見ても純情そうな明るい女性だが、バスケとなると違っていた。そこに全力をそそぎ希望の階段を登りつめてきた。ときには悔しさで涙を流すこともあったが一筋に凛はバスケを愛していた。

初夏の様相を変え、新人戦の2回戦があった。新庄の中で汗を流して戦い、勝利した。トーナメント方式では後、4回勝てば優勝だ。地区大会とは違いインターハイはなかった。2回戦を勝利し、やってきた選手たちだったが、3回戦でミスが目立ったのか、負ける試合となった。
新人戦、3回戦で敗退。選手はどんよりとした空気だったが、これから向かう新しい三浦高校のバスケ部として、頑張っていきたいと決心していた。

8

朝から家が騒々しい。妹の薫に彼氏が出来たらしい。まだ、中学の分際でと雫は思ったが、楽しい学園生活も今だけだぞ！と雫は妹に干渉しなかった。暑い夏の練習は伸びる時期、夏休みに朝から晩までバスケ漬けだった。体力作りはもとより、判断力や突破力が求められるバスケと知り、何度もネットにぶつかっていた。
秋村裕太は勉強に身が入らず夏休みと言うのに学校へ行き補習授業を受けていた。先生とマンツーマンで勉強する合間に窓からグラウンドで汗を流すサッカー部を見ていた。
「お前もずいぶんだな。サッカーがしたいだろう？ただ、今は補習授業だからな、早くサッカーがしたいなら勉強に今は励みなさい！」
そう言う英語の先生だったが、暑いせいか教室と職員室を行ったり来たりしていた。
裕太も、先生が職員室に行くのを見計らっては窓からグラウンドを見たり、ポーっとしていた。

「お姉ちゃん！私の靴下がない！おめかししなきゃ、彼氏に嫌われるー！」と遊び惚ける薫だったが、15歳の女の子が化粧をするなんて！と雫も驚いていたが、ませた時代になっていくんだ、と釘をさしていた。
雫はこのかた、化粧をしたことがなかった。男子と話したりするのも。めんどくさいと思っていた。華やかな思春期に頭の中は常にバスケでいっぱいだった。監督も新人戦の敗退には頭を抱えていたが、この夏にある、強化合宿に力を入れようと意気込んでいた。
雫や凛にとって２年目の合宿だった。ハードな練習と決まっていたバスケ部の練習も合宿はさらにハードルを上げる。１年生もここで残るかが問われる”夏の合宿”だった。夏場に体育館に入ると直射日光は避けれるが、ムンムンとする館内では汗がドーっと出た。部室に戻るや否や冷房を利かせ、扇子であおいでいる。
「先輩！合宿わたし、初めてなんですけど、ハードなんでしょ？」１年生の春菜が雫に聞いて来た。「そうだよ！合宿は成長させるよ！、、自分をね！」
「へえ、日頃からきつい練習してるけど、それよりハードなんですかー？合宿って！」
「まるで！地獄よ！ロードも気が入って一日中走っていることもあるくらいだからね！まあ、覚悟しておきなさい！あなたもビッチリ鍛え上げるからね！」雫は言った。
「はーい。」

9

季節は夏、夏休みを迎え部員たちは合宿を迎えていた。新人戦の敗北の悔しさをバネに１年生から2年生はみな気合いの入った合宿所にいた。ある施設を借り泊りがけで練習をする。練習は極めてハードだ。2週間の間、共同生活をしチームワークと体力作りに励む、この夏を乗り越えるか乗り越えないかで勝敗が決まる。
合宿の初日は重たいカバンを持った学生たちが施設の前で監督の話をきいた。
部屋は2人部屋、八畳という畳部屋で勉強も両立しながら、合宿に励む。
雫は相方は美月だ、凛は高宮と一緒だった。2年生と１年生が同じ部屋に泊まる。チームワークを気にしてか？１年生を鍛えあげるように監督に言われている。監督はまた、毎日日記を書くように進めた。日記は合宿中に練習で何を得たか？何処か足りない部分か？苦手な部分を事細かにメモし先輩に見せる。監督の配慮だ。
「高宮！今日から合宿だからね！気合い入れなさいよ！きっとあなたは凄い選手になると見込んでいるし、しっかり、ついて来なさいよ！」
「はい！分かりました。」高宮は言った。

雫は美月にメニュー表を渡した。何時に自己訓練開始だとか、事細かに書き入れるため、美月のために徹夜でスケジュール表を作ってあげた。美月は初めての団体生活におどおどしていたが、返事ははっきりと明るい表情だった。
監督は別室で1人タバコを吸っていた。食事も選手にとって大切になる。運動部で体力作りに励むに当たって、カロリーの高い食事が用意された。

「集まったな！荷物を個人個人の部屋に取り込んだと思うが、今日はゆっくり療養するように、明日からきつい練習が始まる。朝は7時に起床、班長は１年生のローテーションで行い、点呼をとる。それぞれ、考えて行動するように！」
「はい！」一斉に声が上がった。

夏の暑さで冷房の効いた部屋でゆっくり過ごす部員は多かったが、凛は雫を呼び、海岸沿いまで散歩に出かけた。夕暮れながら汗はしきりに出た。タオルで汗を拭いながら海岸沿いを歩いていく。「雫！！とうとう始まったわね、合宿！」凛が口を開けた。
「ええ、凛もキャプテンになった訳だし、以前にもまして、縁の下で支えていかないとね！」
雫は言った。
「夕陽が綺麗ね！波がこんなにも鮮やかなんて練習ばっかりしていたから気づかなかったわ！」
凛は言った。

辺り一面にキラキラと照らされた貝殻や砂浜は綺麗だった。夕陽が山に隠れる頃、合宿所に戻った。

10

合宿所からきらやかな朝日が見えた。7時に点呼が始まった。班長は順番に名前を呼び生徒たちは元気な返事をしていく。朝ごはんを食べ練習は10時〜12時、体育館に集まり、パス回しから始まりドリブルの練習、試合形式に3オン3片側だけのコートを使い練習を行っていく。高宮から美月、美月から雫に渡り、雫がネットを揺らした。エンドラインから始まりまた、ネットを揺らした。繰り返し繰り返しユニフォームを着て正解なパス回しをする。凛は腕を組みその１年生と２年生の練習を見ていた。
「そこ、違うよ高宮！その位置からは一度、スリーポイントを狙ってフリースローをしてみる！ゲームの流れや主導権をしっかり持て！」
凛は言った。
考えるバスケをしていく。監督はあまり姿を現さなかった。全てをキャプテンの凛に預けているからだ。
余計なことは考えずに、バスケだけに集中していく。あらゆるスポーツや芸術はメンタル面の強化も必要だ。しきりに集まったメンバーに10分くらいの瞑想をした。「ヨシ！午前中のメニューは終わりよ！午後からは”ロード”するからね！」

部員は部室に戻り服を着替えていく。寮に帰ったらそれぞれの部屋に着いた。冷房で効いた部屋で昼からの”ロード”まで3時間近くあった。練習で疲れているものや、食事を取るもの、体育館でフリースローの練習をするもの、さまざまだった。暑い夏にやられてか、涼しい木陰で休んでいる雫も寮に帰って行った。

凛はこの合宿所の地形を覚えていない。バサッと地図を徐に取り出し、テーブルの上に広げると高宮と一緒に”ロード”のコースを決めていた。山や海が見えるこの合宿所は実に”ロード”に適した場所だった。つまり、キツイ地形でハードな練習が出来るからだ。一度、合宿所から走り出し、ある地点で寺院にいき、階段を何度も繰り返して登り下りする練習を今日の”ロード”はすることに決めた。13時から3時間、ゆっくり休んでいる部員は今回の”ロード”を噂していた。ハードな練習にはなるが、名門校の意地に掛けてもレギュラー入りし活躍したいと思っている部員が多かった。

11

午後5時、そろそろ夏の暑さも和らいできた時間、”ロード”は始まった。「始めは軽めでいいぞ！徐々に、ジョックをしていると体がアップされてくる、軽めに走れ！」凛は先頭に立って言った。軽めに走ると言っても、夏の暑さは半端がないことは知っている。夕方になったものの、立っているだけでも、蒸し暑く、ジトーっと汗が滲み出る。休憩地点までの間、3キロ程度の道のり、海岸線を走った。２年生は体力があったが、この合宿の怖さを知らない１年生は着いていくこで精一杯だった。「ほら！もう少しだ、休憩地点までみんな、揃っていくのよ！」凛は走りながらも言った。
休憩地点に着いたのはトップに高宮がいた。3キロ地点で寺院に着いた。みんなの呼吸が荒い、「はい！休憩！」
「えっ！マジ？この長い階段？」
高宮が言った。美月は体力があるのか平気な顔をしている。汗をタオルで拭い、これからの地獄をあっけらかんと長い階段を１年生は見ていた。

「さあ！これからが本番よ！合宿”ロード”の醍醐味ってとこかしら。」
キャプテンは言った。
「5往復するの！」長い300メートルもある階段を5往復！
「四つの班に別れて！２年生は2組、１年生が2組出来るように！わたしの班！雫の班！高宮の班！美月の班に！別れて！」
階段のスタートラインに右に２年生の班2組、左に１年生の2組が並んだ。1組目が走って往復する間は他の班は休みんでいく、それを1組につき5往復の練習だ。
「ヨシ！始め！」1組目の１年生、２年生が階段を登り始めた。美月はサッサと走っていく。雫は２年目の合宿に慣れているせいか、ドンドン、１年生を追い抜いていく。高宮は半分地点で失速した。苦しいのだろうか、１年生のペースはグンと遅くなっていった。続けて2往復、3往復。足がガクガクしているメンバーもいたが渾身を込めて登っていった。倒れこみながら歩きに変わるメンバーもいた。5往復で練習が終わったあと、寝そべって倒れ込んだ。
「はあ、はあ、はあ、よく頑張ったわね！20分休憩！あとは、ゆっくり自分のペースで合宿所まで、帰ること！」凛は言った。

12

合宿1日目を経過し部員のメンバーは疲れ果てた。地獄1日目、練習のあとの”ロード”はメンバーの体力を奪った。
ぐっすり睡眠することも大事だと監督から長く休めるように、睡眠時間を多くとってある。
実に8時間くらい睡眠時間を設けた。夜に帰ってきた学生は合宿所の夕飯を食べ眠った。
「ここ1週間は主に体力作りに力を入れるから覚悟しなさい！」
朝、朝礼に集まると凛が言った。
朝食は和食、味噌汁、卵焼き、海苔、ご飯、と言った具合だ。
この1週間は毎日”ロード”をするつもりでいた。高宮を鍛えものにするまで凛が付きっ切りで扱く個人練習もマニュアルに入れていた。
2日目は朝から”ロード”に決まった。海岸線を走りまた、あの寺院まで走る。キラキラと海が見え太陽が眩しかった。寺院の側は海に近く砂浜があった。「さあ！みんな裸足になって！」と雫はフラッグを30メートル先に立てた、赤と黄色のフラッグを立て、昨日の班に別れ、どちらが早くフラッグをとって帰ってくるかを競う練習をした。砂浜では足が思うように前に出ず走りきれない。途中でつまづく選手がたくさんいた。フラッグを取りまた、走る、砂浜の練習は暑く、キツイ練習になった。足腰を鍛え低姿勢の守備の強化、懸命に１年生はついてきた。午後からは、体育館でゲーム形式で3オン3、1年生は体力の強化に励むために、グランドで、インターバルをした。半分全力で走りジョックで流しまた、半分を全力で走る。美月はもう、足が動かないと言い張ったが、キャプテンは許さなかった。「美月！立ちなさい！走るのよ！」足がパンパンになった美月はヨロヨロしながらもインターバルをやりきった。高宮はまだまだ！と気力の限り走り続けた。「はーい！みんな集まって！若さが武器なんだから、このくらいで根をあげてもらっちゃ、困るわね！まだ、走れる人！」更に選手の意思でインターバルを続けたいメンバーを募った。
１年生は、”この鬼！”と思ったが、走る人が1人いた。高宮は「まだ、いけます！」と手を挙げた。「ヨシ！あと10本やって、そのまま合宿所に戻りなさい！あとのメンバーは合宿所に戻り自由時間！分かった？返事は？」
「ハイ！」ハキハキとした声が疲れている中でも聴こえた。高宮は10本のインターバルを個人でやっていた。凛と雫はそれを見ていたが、やはり目に勝る伸びる奴！と豪語していた。自らの意思を確認することで、どんなに辛い立場にいても、自分を押し殺して判断出来る。この能力はバスケには大いに必要だ。それを知ってか凛が辛いメンバーの中でもやりたいメンバーを選んだ。

どんなときでも、苦しいことはある。だけど、あたふたしなくてはならないとき、自己犠牲を払って自らやれる意思とは社会人になっても必要だ。

雫が合宿所でシャワーを浴びている。シャワーを切りタオルで拭き、部屋へ戻って行った。ドアを開けたとき、冷房の冷たい風が吹いた。
「涼しいわねー！」雫は美月に言った。
「先輩！秋村裕太先輩ってカッコよくないですか？」
「あれ？裕太のこと？弱小のサッカー部だけで、軽い男よあいつは！えっ好きなの？裕太のことが。」
「いや、そんなんじゃないです。ただ、聞いただけです。先輩はどう思っているか知りたくて。」
「見かけに騙されちゃダメだよ！あいつはチャラいし、中身が全く駄目ね。
女性に優しいというのも困ったものね。もっとサッカー真面目にしなさいと喝を入れなきゃならないね。」
「へえ〜先輩、結構、秋村先輩のこと、詳しいんだ！」
「いや、やめてよー、そんなんじゃわよ。あいつが誰もかれもちょっかい出すから右ストレートでも食らわしてやろうかさえ思ってるんだから！勘違いしないでね。」

13

合宿は１年生の体力作りのために、”ロード”が主な練習になった。監督は見回りに来て凛に調子はどうかと言って帰っていくだけだった。
夏を越えること！夏場で伸びる選手はたくさんいる。夏場が正に正念場だった。1人だけ練習についていけず合宿の最中に辞めていった学生が1人いたが、あとのメンバーは厳しい夏の合宿を乗り越えた。合宿、最終日には監督も来ていた。監督は「よく！残れたな！しかし、まだ、試合は終わっちゃいない。練習の出来高で、試合の良し悪しが決まる。まだ、気を抜かぬように！以上。」
監督は、厳しい一言を言い合宿所を後にした。
2週間程度の合宿だったが、本当に厳しい練習だったがメンバーは歯を食いしばってついて来た。名門校の三浦高校に引けを取らないくらいに抜群に上達した学生がいた。それは高宮だ。凛と雫の予想は当たった。やはり、高宮。奇抜的にこの高宮が今後の三浦高校の将来を担う。
ほぼ、毎日の”ロード”に耐え、みんなとの練習の他に凛との個人練習もあった。凛のマニュアルにはフリースローを70%決めることを目標にし、決定率は正に60%の確率になった。バックの雫からのキラーパスを受けそのままフリースローにもっていける。ドリブルの得意な凛に手渡すと凛は敵の合間をくぐってシュートを決めれる。雫のキラーパスが高宮、凛、と2通りの展開が可能になった。
これは、凛の作戦でもあり、やはり高宮でバスケ部は決まる。美月も力及ばせながら付いてきた1人であるが、美月はパスの精度が高く、またドリブルで持ち込めるため、美月は中盤からバックよりにポジションを置くことになった。他にも実力のある学生が何人かいたが、どれも体力のある１年生だ。
これでいける！、凛と雫は期待を胸に自宅に帰って行った。

「あら！お帰り！雫！そんな真っ黒になっちゃって！そうとう扱かれたみたいね！」
自宅に帰ると母は言った。
「わたしも扱かれたけど、１年生にはビシッと教育したからね！楽しみなの。」
「あらまあ、たくましくなっちゃって！まっいいわ！早くお風呂入っちゃいなさい！」

家でお風呂に入り久しぶりに母の手料理を食べた。
「わたし、明日からしばらく部活休みだから、ちょっと遊んでくるから。」

14

合宿のあとは少しバスケ部は余暇を与えられた。そう思い、雫は凛を誘った。久しぶりにショッピングをしに出掛けてみないかと。
駅の改札で待ち合わせした、凛と雫はとびきりのおしゃれをして来た。普段見せない服装にお互いどぎまぎしながら、改札口を抜けていった。プラットホームで電車を待っていると、右から電車がおもむろにホームに入ってきた。黄色い線の外で待つ2人に周りの視線があった。どう見ても、きゃしゃな女子高生2人、この2人からまさか、キラーパスやとびっきりのフリースローが出るのを誰が予測するのか？
電車に乗り3駅目には駅前にビル群が潜む都市、駅を降り近くのデパートへ向かった。人が2人を通り過ぎて行く。デパートでランチをとった。カルボナーラや、スープスパゲティ、普段、体力強化のために肉や高タンパクな食事をしているせいか、少し苦笑した。
「久しぶりね。凛！わたし、こういう生活忘れてたかも。」雫は言った。
「そうね、ほぼ、クラブ漬けだったもんね、」
凛は言った。
新鮮な空気が、流れる。辺りは冷房で夏の様子を忘れていた。2人はたくさん、会話をし、また食事をした。普通の女子高生みたいに、クラブを忘れて。
パスタを食べ終わり、5階のフロアーへ行った。服や靴、バックや財布、日頃に貯めていたお金で、雫はバックを凛は財布を買った。
「こんな、スカッとするの、久しぶり！」
雫は言った。
夏の午後は8月下旬の様子を映し出していた。夏が終わり秋が来る。クラブ漬けの毎日を過ごし、初秋の夕日に何故か幸せを感じた。乗り切った達成感と懐かしさ、趣きのよさ、2人にはこれからも、親友であり続けたい。
ショッピングを済ませ、コーヒーカフェで雫は好きなミルクティーを頼んだ。凛はブラックがいいと、ブラックを注文した。バスケのことを話したりはたくさんして来たが、プライベートな会話は今まで、そんなになかった。
「雫ってさあ〜好きな男子いるの？」
凛が言った。
「好きな男子ね〜、気になる人ならいるかも！」雫は言った。
「えー気になる人いるんだ？」
「まあね、凛はどうなのよ、見た感じバスケのことしか頭になさそうだけど。」
「わたしさ！一度決めたらやり通すの！何だってそう！小ちゃな頃からね。でも、そんな中でも好きな男子はたくさんいたのよ！ただ、バスケにのめり込んだのも小学年の低級生だったから。それしか、考えられなくて。」
凛は言った。
「ぜんぜん、おかしくはないわよ。誰だって目標や夢はあるはずだから。」
雫は言った。
「中学生と違って、高校３年生が一生のうちの限りない青春ってやつね。今、わたしたちはその真っ只中にいるんだね、そう言えば。」
凛は言った。
「わたしはバスケが好きよ、でもこんな生活が続くことでも、男子と付き合いたいなって思う時もあったわ。」
雫は言った。
「クラブを選ぶか？男を選ぶか？どちらも青春って訳ね！」
凛が言った。
「これから、わたしたちはいろんな選択があると思うの、ただ、一度きりしかない青春には何か得るものが大きいのかもね、成人しちゃったらなんか耽楽的なんだもん。」
雫が言った。
「家事して、仕事して、子供育てて！きっと単調な毎日なんだろな。でも、自分のことが出来る学生生活も悪くはないよね。これは誰のためでもなく、自分のためなんだから。」
凛は言った。
「そうね！きっと目標をもって生きていることは宝ね、だって何かに向かってる人ってきっと少ないわよ！貴重な存在なのかも、わたしたち！」雫は言った
ミルクティーをフウフウしながら、飲む光景は巷にいる女子高生そのものだった。
「わたし猫舌なの、熱いの駄目だからって熱い飲み物頼むのおかしいかな？」雫は言った
「へえー、わたしは熱くて美味しいと思う方だけど、もしかして、雫！カレーやタコ焼きが熱いから冷まして食べるの？」
凛は言った。
「そんなに驚く？当然よ！熱くて美味しいなんて、そんなのないよ。だって熱かったら、味がわかんなくない？熱いと味は別物だよ！きっと。」
雫は言った。

カフェに3時間くらい、粘っていたが、客層も、次第にサラリーマンやキャリアウーマンから学生に変わっていった。夏休みのせいか、学生は習慣なのか、勉強を家で出来ないらしい。カフェを使って仕切りに教科書を開いていた。夕暮れから夜に近づいて来る。話すことの尽きない雫と凛はまだ、話していた。
「今何時？」雫は言った。
仕切りに時計を見る雫、「そろそろ帰らないと。」時間は18時30分を過ぎていた。部活三昧だった生活からちょっと時間が出来たことで優雅に過ごせた1日だった。凛と話がながらも、プラットホームに並び帰りの電車に乗った。

15

三浦高校も秋になり、イチョウや紅葉のきれいな枯葉から段々と寒くなっていく。
夏休みが終わり、いよいよ、三浦高校バスケ部も本腰を入れるようになってきた。
サッカー部の秋村裕太は新人戦も敗退したらしく、あまりやる気のないようにボールを蹴っていた。しかし、相変わらず彼女を取っ替え引っ換えしている様子はもはや、天才と、疑うほどだった。秋の季節になり、衣替えがあった。熱かった夏の服装ではなく、長袖シャツにブレザー着という具合に。秋には文化祭がある、その文化祭の為に色んな教室や部活から出し物やイベントがあった。実際に文化祭があるのは10月15日日曜日！、もう決まっていることから会場の準備が着々と進んでいた。バスケ部の出し物は写真部と兼用にした教室で喫茶店だった。写真部の写真を展示し、そこで有意義に過ごして欲しいと喫茶店にした。準備が整う中、いろんな人を呼ぶ為にポスターを街中に貼りに行ったり、洋菓子を求めて一駅ふんだ店まで買いに行く学生もいた。主に主役は1年生だろうと営業の方は全て1年生がやった。コーヒーの豆も一つずつ拘り、モカやエスプレッソ！ミルクや砂糖にも力を入れた。美味しく飲めるように中粒の仕方を本で学んだ。窓にバスケ部喫茶店と看板を貼り、メニュー表も用意した。
準備が整い10月12日、クラブ活動が休止になった。15日に向けての準備と模様しものが始まる。またそれぞれのクラブが勧誘を募る為にも意味がある。

16

10月15日 三浦高校文化祭

華やかに朝方には花火がなった。
色んな学校の生徒が来たが、1年生の春菜や高宮や美月は張り切って！ウエイトレスやコーヒー作りに働いていた。美咲先輩も受験勉強さながら、雫に会いに来ていた。ライブをするバンドマンや、タコ焼きや焼きそばを売る店もある。三浦高校文化祭が始まった。日にちは3日間をし、総勢2000人のマンモス高校の文化祭となった。入り口には門を花びらで着飾った青い門を用意し、潜れば直ぐに案内出来る女子高生代表案内役を置いた。近くの男子校や女子高生、駅を跨いでの学生も多かった。バスケ部が担当しているカフェ喫茶は沢山の種類のあるコーヒーが飲めると有名になって美月や高宮や春菜は忙しそうにしていた。春菜はある男子校生に話しかけられても笑顔で答えていた。高宮はどちらというと無愛想でツンとしているせいか、接客には向かないようだ。美月は調理の方で一生懸命にコーヒー豆を駐留していた。大規模な学園祭で外では軽音学部がライブの模様しをしていて「うるさい！」だの、「へたくそ！」など、罵声をかけられては、クスクス笑う女子もいた。教室の中には展示している写真部の写真とマッタリ過ごせる空間に何十人と人がいた。写真を丁重に見て行く人もいれば、見向きもしない学生もいた。
春菜は「ちょい、まち！」と下に降りてタコ焼きだの、焼きそばだの、ポテトフライなど、油っこいものをいくつか買って、バスケ部の教室に持ってきて、メンバーで食べている。
学園祭と言えば、学園天国！一致団結して、学生の力を街や近所に振る舞う。トビリきりな笑顔と明るさで、力があるようで若さ分！思いっきり楽しむ。青春な学園祭で恋が芽生えるかも？そんな期待をする。16、17、18歳の青春！なにも、部活動だけが青春じゃない。
1日目からかなりの集客を望めた。バスケ部喫茶店は思いもよらなく繁盛し、1日目で”バスケ部コーヒー”と噂が立つくらいになった。男子も負けじとおみくじ屋だの！占の館だの！幽霊屋敷だの！工夫してイベントをしているようだった。熱い熱いたい焼きを売り、口に咥えて吐き出す始末にふざけたり、真面目にやったりと楽しんでいた。
人生、楽しめれば何歳でも青春！
そうか、と思いきや風船を体で割ったら！1万円なんて、模様しものを出すクラブもあった。2000人のマンモス高校には複雑に入り込んでいる校舎もまた、楽しめた。建物が大きいだけではなく、グランドも広く体育館とホールと２つ建物があるくらい大きかった。講堂では演劇部が劇をしていた。数少ない観客だったが、3回1日に公演していく。また、あるホールでは漫才や落語、幸福を語る公演も開いていた。

2日目となると、何故かご当地アイドルが歌を歌い、よりよくアナウンサー付いていた。

学生時代をよりよく生きることが出来たなら！もっと違った人生を歩めたかもしれない。あの過去がなければ、絶対に今思い出しても辛いことは覚えてないだろう。誰もが共通な生活をして、気分良く生きた学生生活を満喫したなら大人になってもよりよい人生が得られる。誰もが悩むと言っても、必ずしも過去の云々カンヌンで決まる訳ではない。必ずしも、過去が苦、未来が喜、という方程式は成り立たないからだ。何故なら過去があるが故に今を苦しんでいる人もいる。何を考えればいいのだろう？決して過ちを消したくても消せない。あなたがわたしで、わたしがあなたで。きっと、生きて喜ぶことは現在進行形でなければならない。何故なら幸せや喜びとは考えるものではなく、感じるものだからだ。

3日目、学園祭最終日、「ええ、あのー、本日で三浦高校の学園祭が終わります。ご来場くださいました方々にあつく御礼申し上げます！
ええ、わたしはこの伝統ある三浦高校に通うことが出来て本当に感謝しています。また、学園祭の成功とたくましい、学生たちに囲まれながら三浦高校はこれからも、勉学とクラブ活動に力を入れ、より、明るく元気な伝統ある三浦高校であり続けて欲しいとの所存です。学園祭も今日で終わりますが、精一杯のご奉仕を皆様方にさせて頂きます！どうぞ、本日も楽しんで帰ってください！ありがとうございます！」
三浦高校、生徒会長が放送で呼びかけた。
集まっている人や学生は聞く耳も持たなかった。学園祭は3日目を迎えた。他校から運動部や文化部も沢山集まっていた。風船割りも佳境を迎え、とうとう、大きな風船割りも巨体のデカイ社会人が割って拍手を浴びていた。腕っぷしの強い学生たちも試していたが、3日目にして初めて、1万円をゲットする人が現れた。
カフェ兼写真展示の教室も仕切りとお客さんが来て繁盛し美月や春菜や高宮は3日間フルで動き回り、「まるで、部活みたいね！」と、小言を言いながらも働いていた。1杯100円のコーヒーは3日目も好評でバスケ部コーヒーは学校中に広まっていた。高宮は相変わらず無愛想で接客していたが、コーヒーをこぼしてしょんぼりテーブルを拭いているのだった。
バスケ部の学園祭も佳境を迎えた。売上金はバスケ部全員でステーキを食べたい！、一心で「頑張れよ！」と先輩にちょっかいだされながらも、1年生は働いていた。高宮はやはり、何か不器用だ。ふて腐れた顔の中にはありったけのバスケの才能がありながら、ウエイトレスは向かないらしい。３年生はそんな高宮の姿をみて、「やはり、顔と才能は反比例するのね。」と挑発地味た言葉を言っているのだった。
秋村裕太は相変わらず戯けて、他校から来る女子高生に声をかけてばかりいた。
雫はバスケ部コーヒーの噂を耳にするも、あまり、教室には近づかなかった。凛と2人で過ごし、演劇や落語、音楽鑑賞に映画三昧だった。いかんせん、2人にはバスケ以外に趣味がない。妹の薫にイジられる雫はバスケを出来なくてヤキモキしていた。勉学に励む３年生は勉強の合間に学園祭を見に来たがやはり、大学入試に拘ってか３年生もあまり顔を出さなかった。3日目の最後に豪華な花火で学園祭は幕を閉じた。といっても、1日目の朝の打ち上げ花火ではなく、決まって三浦高校の夜は手持ち花火で恒例の幕を閉じた。秋村裕太は戯けながらも、雫にちょっかいを出しては高宮にバトンタッチしていた。
無事に学園祭は終った。

17

夏に合宿、秋に学園祭、１年があっという間に過ぎていく。季節はもう冬に近づいていた。インターハイは３年生になった春、バスケ部も仲良し組もあり、グループやチームワークが求められていたが、不安をよそにガッチリとしたチームプレーが出来るようになった。オフェンスに於ける、凛と高宮、ディフェンスの要な雫とサイドを操る美月。１年、2年生とガッチリなレギュラーが出来た。ベンチには春菜、新しい年に向け、新たな1ページを刻む。
遅刻寸前に雫は教室に入った、隣の席で秋村裕太が「また、雫、遅刻か！」と前を見ると担任の先生が「いいから、座りなさい！」と出席を付けていた。3年生になったなら、受験勉強に集中しなければならない。春までになんとか、インターハイの成績をあげ、また勉強の両立とは難しいがやっていきたまえ！と言った担任の先生の話だった。
雫がバスケ部に入り活躍していた頃は中学の時の出来事だった。初めて三浦高校に入学して来たとき、憧れる先輩、美咲がいたからだった、シュートは狙う訳でもなくガッチリとしたディフェンスで敵のオフェンスを塞ぐ堂々としたプレーとカットボールのあとのパスだった。美咲は3年生だが、実業団からのオファーがあったり、巷では有名な選手だった。雫はそんな美咲のことを誰よりも慕っていたし、憧れが強かった。美咲先輩のようになりたい！チームで華やかなオフェンスよりも守備でネットを守る守護神になりたいと思っていた。それは決して華やかでなく地味なポジションであるし、そのポジションはどの選手にも嫌がるポジションだったからだ。守りのためのポジションを実に美咲なしっかり仕事をしていた。その姿に憧れていた。しかし、もはや、その美咲のレベル以上に雫は成長していた。何かに一心不乱に努力するとき、その達成したポジションとは小手先でシャドーボクシングを女子に見せ惚れてくれと言う男子よりも、何よりも謙虚でいなければならなかった。一度授かった能力とは実に大きな責任が伴う。その責任が大きければ大きいほど高飛車にいるよりも謙虚に人はなるものだからだ。賞状を何回かの県大会で雫は貰っていたが、動揺する訳でもなく謙虚に、受け取りっていた。トッププレイヤーになるためにはそれだけの努力が必要だった。
学校が終わると部活か始まる。放課後に部員全員が集まった。2月からインターハイの予選が始まる。目先にはいろんな高校の練習試合も始まる。監督は「体力作りに励み、また一段とお前たちは実力をつけた。これから予選が始まる。ただ、気を抜かず一心不乱にどの試合もぶつかっていくように！」と言った。
「さあ、練習を始めよう！」凛は言った。わたしたちのバスケを！

18 練習試合 嵯峨根高校

まず、試合前にはミーティングがある。キャプテン凛は控え室でみんなに「さあ！わたしたちの実力を見せつけてやりましょう！いいね！全身全霊でぶつかるのよ！」
凛は言った。
「ハイ！」メンバー全員が言った。

ピー！笛がなった直ぐ様にボールを奪った。雫が周りを見ながらパスを出そうとしたとき、相手のマークを抜けた高宮がフリーなところにいた。キラーパスで一気に高宮に渡し、高宮は得意なドリブルで切り込み、ネットを揺らした。補欠の生徒は応援にまわっている。「ヨシ！」
ガッツポーズがあった。
嵯峨根高校は、どちらかというと、あまり、強い高校ではない。伝統ある三浦高校とは違い流行りに乗っている新学校だった。みるみる内に高宮や凛、美月、が点を入れていく。ベンチの春菜にもチャンスを与えようと監督は彼女を使った。60対22、三浦高校圧勝だった。凛はベンチに下がり、雫もベンチに下がっていた。強豪相手でも引けを取らないくらいの三浦高校だったが今回の練習試合は圧勝で、終わった。
試合が終わり次第、嵯峨根高校と三浦高校の選手が握手をした。監督同士で話し合い、またインターハイに向けてお互い頑張りましょうと、話した。帰り際、凛と雫は一緒に家に帰った。
「まず、県大会ね！」雫は言った。
「そうね、予選を突破しなきゃ、インターハイもないわ！今は高宮や、美月がいるから、オフェンスでは高得点を期待できるメンバーが揃ったわ。あとは雫がディフェンスでわたしたちにボールを渡せば必ずインターハイでも、県予選でもいい結果が出ると思う。」
凛は言った。
少しずつ、近づく県予選に向けて新たな期待が伺える試合だった。

19

「お姉ちゃん！起きて！時間よ！」雫の妹、薫が言った。
枕元にはリンリン泣く、目覚まし時計！
「はっ！」ベッドの上布団を二枚に折り起きた。「薫！ありがとう！もう少しでまた、寝過ごすとこだったわ！」
相変わらず朝から騒がしい。父は言っていた。
まあ、こんなもんだろ、と父はあまり、気にしない。どこの家庭も朝は結局騒がしい。準備ををしていくにも、毎日の生活に調子が全く平行線は辿らないからだ。父は、新聞を読みながらコーヒーを啜った。ベランダにタバコを吸いに行くと、椅子に座ってゆっくりしている。
母は今朝の食事の洗い物を済ませていた。
「雫！もうすぐ！県予選でしょ！頑張ってね！」母は言った。
「ありがとう！」そそくさ、雫は家を出て学校へ向かった。
薫は今週の日曜日はデートらしい。ウキウキしながら日曜日を待っていた。薫は彼氏が出来て生活スタイルが変わったようだった。何か色っぽくなったというか、支えられる、頼れる相手が親や友人以外に特別な存在がいることで、とても、安心していた。まだ若い彼女にとって、のこれが青春だと思っていた。異性に早く出会い、特別な人と交際する。数限りなくある、恋愛の形だが、一期一会に長くも短くも、早かれ遅かれやってくる異性との出会いに薫は幸せを感じていた。家の中では、明るく振る舞う母に似て妹も明るく活発な女子だった。
雫はどちらかというと父に似ていた。頑固で真面目でちゃらちゃらしていない。一度決めたことは最後まで突き通す性格だった。それがまた、バスケを上手くさせるのだ。たくさんの出会いに感謝し理解ある人と交際する。恋愛が人の成長を妨げるときもある、しかし一概に言えない。愛の部分に於いて、決して浮かれ気分が永遠に続くこともない。ただ、薫が今の状況を知るにその長い間の恋愛よりも短くも、青春を色とく愛の部分にいるのは明らかだった。
姉の雫は薫にはあまり、恋愛のことを聞いたりアドバイスもしなかった。薫のまだ若いながらの出来事もわたしとは違い、いい経験ではないかと、干渉しなかった。

20

「これから、レギュラーを目指すものにまた、1年の中で成長したもの、たくさんいると思うがバスケや他のスポーツでも言えることだが、まず体力が必要だ。１年生がバスケ部に入部してからとうとう、1年が経とうとしている。新しい新人戦から夏の合宿で体力をつけるため、とても辛い練習をしてきて！お前たちらそれについてきて、また、越えた、自分の能力を試すためにも限界を感じるのは明らかに学生時代や若い時に出来るだけ経験した方がいい！
まだ、1年は来年があるが2年は来年で本格的に部に来ることはなくなる。おまえたちが、必死に食らいつき体力を付けたのは本物だ！メンタル面でも強く打ち負かすくらいの正念は痛いほど味わっただろう。しかし、良くやった。後は県大会の予選を突破し、ずば抜けた体力でインターハイまでかぎ付けよう！以上だ。」
監督は言った。高宮はやはり、練習の成果が出ていた。凛と雫が予想していた選手になった。態度はツンとして、何を考えているか、分からない女子だが、期待をしていたのは明らかだ。
その高宮はバスケをやっていなかった、ことからも充分にバスケ部として、破格のメンバーになった。もはや、バスケ部に高宮ありとなった。ドリブルの突破は、無造作には、計り知れないスピードがある。しかも、そのスピードで攻めたり守ったり、するのでも、明らかに体力の、ある選手に成長した。ジワジワとダイヤモンドわ磨いた結果だった。
県予選に加え、勝っていく試合にしなければ、予選は突破出来ない。監督は強豪高との練習試合を予定していた。
嵯峨根高校の練習試合は圧勝で勝ったが、相手はまずまずなところで。実際にインターハイに、行った岡崎高校の練習を予定していた。
岡崎高校も県内では有名で、この学校も進学校だった。決勝で当たったこともあり、また、伝統もあった。頭脳プレーで知られる岡崎高校とは、あらゆる工作を研究し試合に挑んでくる。
インターハイにいくまで、県大会の予選を突破し、全国の切符までトーナメント方式で勝ち続けなければならない。去年は実際にはインターハイまで行き、インターハイのトーナメント戦で2試合目に、負けたのだった。
美咲の、活躍が素晴らしく写り、新聞に載るくらいだった。美咲二世は雫だが、雫も美咲先輩の好評をよく耳にしていた。

21

試合当日、三浦高校は岡崎高校まで、遠征に行った。駅を3つ離れたところでバスで丘に登って行った。「なんとまあ、こんなところに、学校なんて、立てる？毎日、登下校大変じゃない。わたしこの高校ありえない！」
高宮が言った。
岡崎高校は山の上にあり、学者まではバスか、歩きでしか行けれない丘の上にあった。
岡崎高校に入学してきた学生はまず、高校に入学してきた時の感想は？と聞くと、「坂がキツイ！」だった。他に道が３つくらいあるのだが、一つは墓の前を通る激坂なので”地獄坂”と呼び名が付いていた。岡崎高校は頭の方はあまりレブルが高くはないが、スポーツ推薦で、高校野球も甲子園に行くくらいのスポーツ高だった。毎年入ってくる女子バスケ部には俄かにインターハイを狙っている学生がたくさんいた。名門と言えば名門だが「この、地獄坂が？」と問う学生が多かった。高台に登れば下の街並みがビルを聳え立たせ夜景にはピッタリの場所だ。
バスケ部で雫や凛のように中学で推薦していく学生も多かった。雫や凛の友人もこの名門に入部しているはずだ。
「雫！久しぶりー！」中学の時にバスケ部だった同僚が話しかけてきたマリだった。
小川マリも雫と同じ中学で部活をやり評判が上がる学生だった。ツーディフェンスでこの2人がディフェンスをすると、なかなか敵人はネットを揺らせなかった。この岡崎高校に入学したのも、マリは勉強が好きではなく、スポーツ推薦で岡崎高校に入学した。入学してからもバスケを続けている。「あんた、背、高くなったんじゃない？何センチあんの？」凛が聞いた！
「168センチかな！日頃から飛んでるから背も高くなるんじゃない。」マリは言った。
「わたしもあんたも飛ぶバスケ部なのに、不思議ね、わたしはまだ、156で、全然高くならないんだから。」雫は言った。
「そんなに、はぶてないで、今日は雫のいる三浦高校と試合が出来るんだから、そうとうにディフェンスさせてもらうから、リバウンドもネットは揺らしはしないわ！」
マリは言った。
「こっちこそ！」雫はムキになった。

丘の上に学校を作ったせいか、土地が安いのだろう。学舎がどんどん出来ていた。体育館は名門らしく２つ、他には柔道場や剣道場、卓球場まで、あった。至れり尽くせりのスポーツの名門にはやはり、校舎が広い。部活のためだけにある学校で、グイグイ練習や環境が整っている。学生は本業をスポーツと部活をやる。強くない訳がない、そんなバスケ部もやはり、マリが通うくらいの学校、強い。

22 岡崎高校 対 三浦高校 (練習試合)

監督は言った。「インターハイを勝ち抜くため、また、予選を突破するためにはこの学園に勝たなければならない。トーナメント戦で準決勝か、決勝で当たる高校と言ってもいい。今まで練習きたように、この学園も練習をとことんしている。前の練習試合とは格が違うだろう。やるやつが勝つ、今まで鍛えたメンタル面で本気でかかれ！以上。」

ピーっ笛が鳴った。
ボールは審判から上に投げられる。割ったのは岡崎高校の方だった、陣地にボールが運ばれた。前に走る選手がパスを求めている、奪ったのはマリだ。前線に向かってドリブル、雫が塞ぐ、フリースローの構から横へ素早くバウンドパスを出す。フリーな選手がいた。「あっ」と雫。その瞬間ネットを揺らした。
「強い！」雫は息が荒い。
三浦高校のボール、「高宮、声を出せ、もらえるところに走れ！」監督は叫んだ。
一気に前線に走る、とっもう、戻っている。
マリだ。瞬間的にボールを奪われた。「なに？」と高宮。奪ったボールをドリブルしダンクに近いくらいのシュートを放った。あっという間に4点先制された。「あちゃー、強いなー」ベンチで春菜が言った。
「こんなに、素早いのある？試合の展開が速すぎる。」凛は言った。
「落ち着いていこう、まだ、4点だ、うちのバスケをしよう！」雫は言った。
三浦高校のボール。高宮は息が上がっていた。才能を出すのはこの試合かもしれない。凛がドリブルで相手チームのネット際までいく。雫が後ろにいた。すかさず雫へ戻す、美月がマークを外そうとしていた、そのときに、ニヤリとマリ、雫のボールを叩く、その瞬間にボールが奪われた。そのまま、ネットに持ち込んだ。6対0、わずか3分の間で6点取られている。三浦高校のベンチは唖然としていた。「何が起こったんだ？」訳の分からぬまま、一気に6点。半端のないスピード。岡崎高校の監督は腕を組んだまま何も言わない。
「やばいわ、マリにボールが渡ったら必ずネットを揺らされる、マークを変えていこう。
雫、あんた、マリを常にマークしていて！あとのディフェンスは美月に任せるわ！」
凛が叫んだ！
「分かった！」雫は息が荒い。
背も高ければ動く素早さはまるでチーター並みだわ。何が起こっているのか、サッパリ分からない。とりあえずマリを確実にマークしておこう。心の中で落ち付けと雫は叫んだ。
体力のある雫だが、この強敵には息が上がる。「雫！わたしのボール、奪ってみなさい！」マリが挑発をしてきた。
マリがドリブルで雫の前に止まってドリブルしている、パスか？シュートか？右にパスを渡そすフェイクをし、左に流した。「あっしまった。」パスを持った敵の選手がネットに近づいた。「マークだ！」雫は完全にマリをマークしていた。ネットから溢れたボールを奪おうとジャンプする。「ちっ」マリの方がリバウンドを得た。とたんに走り出しドリブルで持ち込みネットを揺らした。8対0 もはや、圧巻だった。スピードといい、パスの精度、フェイクを入れるテクニック。マリは雫より上手だ。
「クソ、着いてけない。マークをしていても、プレーに差があり過ぎる。ボールが常にマリに集められて得点が生まれる。手強いわこの子。」雫は心の中で叫んだ。

マリは平然として、次の展開を待っている。
「雫！わたしを止めるんじゃなかったの？」
悔しがる雫だったが、負けちゃいられない。
ここまでの練習も合宿もこんな練習試合で無駄にならない！そう思った。「やってやる、わたしたちのバスケを！」
三浦高校のボール、凛にボールが渡った。ドリブルで攻めにいき、後ろの雫にパスをだした。雫は周りを見ながらフリーの選手を探した。高宮だ！右ライン上を走りぬけ、マークを外したそのときに、飛びっきりのキラーパス！ボールは高宮に渡りネットを揺らした。8対2。 おそばせながら、三浦高校2点。
大きな拍手がベンチから起こった。「ヨシ！」三浦高校監督もガッツポーズ！
岡崎高校のボール。ボールは敵選手からマリに繋がろとしていた。パスを何度か繰り返していたが雫はマリを完全にマークしている。
マリはボールを取れる場所に移動するが、マークを外せない。そのままスリーポイントシュート、ネットに弾かれリバウンド、マリが奪った。「さあ〜ここからよ！雫！わたしを止めてみなさい！」雫はマリの前でディフェンスをしている。「フェイク？いや、違う、ドリブルだ！」ドリブルをしようとしたその瞬間、雫は手を出した！出した手はボールに当たり、マリのドリブルを塞ぎボールを奪った。「やった！」雫
監督から罵声が飛んだ！「高宮走れ！」
一気に相手陣地に走り出す高宮、雫はおなじみのキラーパス！ボールがネット際まで走った高宮に繋がった。ネットを揺らした。
8対4 三浦高校4点
「ヨシ！」選手全員！
「やられたわ、雫！」マリが言った。
「まだよ！試合は、終わっちゃいないわ！これからよ！」雫は言った。

攻防戦がその後、続きハーフタイムを迎えた。
得点は岡崎高校30対三浦高校28で岡崎高校が2点リードハーフタイムになった。
汗を拭う選手たち。「いいぞ！マリのマークはそのまま、雫！ディフェンスは美月に任せろ！点取り屋の凛と高宮にパスの照準をいつものように合わせろ！高宮と凛はサイドから攻め込め！」監督はいつもにも増して熱くなっていた。
円陣を組み後半戦がスタートする。凛は言った、「いい！相手のペースに呑まれちゃダメ。わたしたちのペースを貫くの！」
ピー！後半戦のホイッスルが鳴った。今度は三浦高校にボールが渡った。ディフェンスにラインを構える美月、雫はマリのマーク、高宮と、凛は狙えるネットの近い位置を狙っている。美月にボールが渡る。軽いドリブルで周りを見ながらパスを出す選手を探す。
「斬り込め！」監督は叫んだ！
美月は、自分からネットに向かっていってシュートをした。ネットから、はじき出されたボールを凛がそのまま、ネットの中に入れた。
「さ！ディフェンスよ！」凛は叫んだ！

後半戦、体力が尽きてきた岡崎高校。体力には自信の、ある三浦高校。後半戦から、力を発揮した。46対49 三浦高校が逆転した。
「相手は、バテているわ！いんじゃない！この調子で、ぶっちぎるわよ！」凛が叫んだ。
マリも疲れたらしく、肩で息をしていた。
46対56 10点連続得点。
ピピー！試合が終わった。
終わってみると、52対64！
三浦高校の勝利！
お互い並んで手を叩きあった！
マリが言った！「雫、成長したね〜！」
「いや、あんたもさー！」雫は言った。
「今度は県予選だからね！間違っても負けたりしないから！また、会おうね！」マリは言った。「わたしもだよ！」2人の手と手が合わさった。

23

練習試合を終えたメンバーはピリピリしていた。県大会が迫っているせいか、落ち付きがなかった。学校へ付いた、雫は一瞥し教室に入って出席を取る担任の先生を机で待っていた。秋村裕太はおとなしく、席に座り参考書開いていた。冬の真っ只中、二学期の期末試験が始まる。バスケ部は県大会も控え、勉学では、期末試験もあった。期末試験のときは勉学に励むように、2週間部活が休みになる。授業中、バスケ部の練習のせいか、ウツラウツラ授業を聞いていた雫は試験前には焦り出していた。来年は再来年は大学入試が待っている。部活ばかりしていた、雫も2週間は勉強に落ち着いていた。
雫は勉強が出来ない訳ではなかった。必ず中間テストも期末テストも学年の平均よりとっていたからだ。今回もうる覚えの授業でも、みっちり2週間は勉強をする。進学高でも、勉強しない学生はたくさんいた。はなから部活も勉強も諦めて就職する学生もいる。大学に進学する学校ではあるが、個人的な指導はあまり先生はしなかった。自由に進路を選べ学生のやりたいことに何方かと言えば力を入れている学校でもあった。服装も三浦高校にはあまり、指導は入らない。年に授業を受けに月に２回しかこない学生もいたので、どちらにせよ、内定で進学出来ないのは自業自得だろ！と指をさされるだけだった。男子学生の中には授業中、教科書を外にして漫画を読む学生もいた。
2週間の間、雫は部活のことは考えず、勉強していた。秋村裕太もひごろはチャラケていたが、やはり進学高の学生、2週間のテスト猶予期間には必死に勉強しているようだった。
雫にも大学進学を半ば気にしていた。大学に受かると言うより大学でいろんな経験をしてやろうという気持ちが強かった。大学進学出来たなら、もうバスケはしないと決めていた。高校3年間で思いっきりバスケに打ち込み大学では海外に行ってみたい願望や就職に至るまでの経緯として一生懸命に勉強しようと思っていた。
数学や化学に秀で理系の頭を持つ雫、国語や英文など文系より理系に向いていた。分析する能力と解析に至るまで頭でパッと整理出来る能力は秀でていた。普通に数学は90点くらい毎回の期末では取っていた。秋村裕太も雫には負けないと言いながら、数学の成績は雫よりよく、何方かと言えば頭が良い方だ。それが返って女性の人気があり、チャラいから、頭の良いには女子の間で通ることもなく、何人かの女子を口説く毎日だ。国立の大学に行くためにはセンター試験があるが、雫は私立や理系の強い大学に行きたかった。バスケはもう、高校でやめ、キャンパスライフを満喫していこうと思っている。
「ここ、テストに出すから！よく覚えておいて！」英文の先生は口説く言っている。
「雫！英語も出来るなら！良い大学いけるのに！」裕太は言った。
「なによ！わたしは私立を受けるの、国立はあまり興味がないからね！あんたみたいに、サッカーか女馬鹿には分からないでしょうけど。」
雫は言った。
「よく、言うよ、俺も理系の大学目指してんだから、そんな言い方はないぜ！」裕太が言った。
「ほら、前！先生！」雫は言った！
先生は右足で足踏みしながらこちらを見ている。「やべ。」裕太が言った。

24

期末テストを抜けたら、2学期が終わり、冬休みに入る、体力作りからの夏の合宿にくらべ、よりテクニカルなチームプレイに女子バスケ部も入っていく。
監督も勉強とクラブ活動には両立が大事だと豪語している。高宮や、美月は必死に今までバスケを頭においていたから、勉強に付きっ切りだ。3年生は推薦が決まったり、受ける大学を絞ったり、センターに向けての最終スパートに向け、日々勉強に明け暮れていた。早稲田や慶応にいく学生も多い。三浦高校には東大や京大にはあまり、興味がなく、私学の大学にいくのが、自然とブームになっていた。それでも難関国立大学を目指す学生がたくさんいた。
美咲先輩も慶応にいくために、３年生から塾に通い、クラブ活動と両立していたが、ラストスパートをかけていた。
期末試験はまず、国語、数学、だった。
雫は1時間目の国語は流し目に数学に力を入れた。微積の授業を高2からこの学校は始める。
微積は雫の得意分野で、スラスラと問題を解いていく。他の学生が頭を掻きむしったり、シャーペンの芯が折れた音がする。朝ご飯を食べていないのか、ぐーっとお腹が空いた音がする。時計の音がカチカチと鳴る静かな教室でカリカリテストの問題を学生たちが解いていた。
途中、難しい問題に入ったのか、雫は頭を傾げた。積分である、曲線の座標で表示されている面積を求める問題だった。積分に直した訳だがなぜか、数字と無限大の位置が分からない。面積に対して、曲線とx軸までの面積が3箇所に曲がっているので、「難しい？」と心で思いながらも、頭を掻きむしった。
一方の秋村裕太はもう、余裕で出来たという表情でシャーペンを置き、机に肘をついて眠っている。残り20分、積分の問題をスルーして次の問題に進んだ。カリカリ、カリカリ。
全問解いた時点で残り10分だった。読み返すことも出来ず前の積分の問題に取り掛かった。
「分かった！3つに曲線の面積を３つに別ければいいんだわ！意外と簡単！」
カリカリ、カリカリ！
「解けた！」
キンコーン” カンコーン！
2時間目の終わりのチャイムが鳴った。
「出来た〜！」雫は言った。

25

期末試験も終わり、後は冬休みを待つだけだった。枯れ葉が散る季節、木枯らしに吹く風の冷たさを雫は感じた。12月始め、世間ではクリスマスや大晦日を迎える師走の準備をしていた。バスケ部も体育館が冷ややかで身体を動かしてアップする学生も増えてきた。体育館の窓を開けると寒いので、部室に暖房を付け、練習が始まる前まで温まっていく選手もたくさんいた。雫は次に迎える県予選までの時間、フリースローの練習に打ち込んでいた。元々ディフェンスの選手だが、返って後ろからスリーポイントシュートを決めたらチーム全体の風が変わるし、気分を入れ替えれる。それともし、決まれば3点というチャンスもバックからの位置も充分フリースローを練習すべきだと思った。
ドリブルを切り込む選手は高宮と凛、ツートップ。中盤に位置する美月。バックに雫だ。
4人のコラボレーションが実にマッチしたとき、流れ的に莫大なチームになる。これまで、練習を繰り返し県予選に向けて練習をしっかり三浦高校はやっていく。
冬休みに入り、家にいることが多くなった。部屋でコタツに潜り、静かに時を過ごした。北風が冷たく家から出ることがあまり、なくなった。薫は相変わらず、毎日彼氏に会っているようだった。一度家に彼氏を連れて来たこともあった。父はあまり薫の交際相手に興味がなく、「お、よろしく頼む！」と言った具合だった。
薫は編み物を始めていた。彼氏にマフラーを編んであげて、お揃いのマフラーにするんだ！っと白と黒のパンダみたいなマフラーを編みながら浮かれていた。雫も「どうぞ、お好きなように！」とあまり、妹には干渉しなかった。
自由であまり気にしない家族だったが、母はいつもいつも、何かしらで園芸に趣味がこうじ苗を買っては埋めたり、花を買っては育てたりと庭のガーデニングか？土を好きに耕していた。「お母さん！わたしの靴下！」
薫は言った。「どうしたんだ？ないのか？」父は口を挟んだが、「ごめん、昨日、タンスの整理していらない、靴下捨てちゃったのよ！また、新しいの買ってあげるから！」と母は言った。
「えー！」と薫は別の洋服ダンスから新しい靴下を取り出した。
コタツに入り混んでいる雫は、テレビゲームや、漫画を読んだり、部活の時間以外は、ダラダラとしていた。「買い物行ってくるね！」
母は家を出て行った。
のんびり過ごしていると、凛から携帯に連絡あった！「雫！今日暇？よかったら、デパートに出てみない？」凛は言った。
「ええ、いいわよ！」雫は言った。
「じゃ！15時に駅前の角のパン屋さんでね！」凛は言った。
「分かったわ！」雫は言った。

外に出てみると、北風が吹いて来た。「寒い。」茶色のオーバーコートにマフラーを巻いて手袋をして出掛けた。駅前のパン屋に近づいて凛を待っていると、凛が走りながら手を振っている。「ごめん、5分オーバーしちゃった！さ！行きましょ！」凛は言った。
デパートの中に入ると有名なスイーツの店があるらしい。中央が吹き抜けになっている在り来たりのデパートだが、たくさんのテナントが入っていた。高級そうな店がたくさんあった。
凛が手袋を欲しいと言っていたので、セイントと書いてある、本革の店に入った。
「たくさん！あるものね！手袋もピンキリだと思ってたけど、さすがにこうも高級だと！手が出せないなぁ。」
凛は言った。
セイントと言う店でザックリ店内を見回してみると、ガスケースに入っていた、鰐川の手袋に目をつけた。「凛！マジ？これ0が１つ多い。」雫は言った。
「え、いくらなの？」
「30000プラス0。」
一瞬凛も目配せをし躊躇った。
「やはり、大手デパートね、やるじゃない！」
と吐き捨てながらも手が出ないガスケースの鰐川の手袋を見つめていた。
「洋服屋さんに行ったら、おまけで置いているんじゃない？」雫は言った。
「あそこのお洒落な店行ってみない？」
凛
「洋服屋ね！うん！」
雫

「ええ、このコートお洒落ね！
手袋はと！、凛来て！ここにあったわ！」

「いろいろあるんだね！あっこの色いい！デザインも！」
凛は言った。

凛はブルーの毛編みの手袋を手に取り魅入っていた。「それに！しなよ！1980円だし、妥当なとこだと思うよ！」雫は言った。
「決めた、これにする！」雫は言った。
会計レジまで持っていくと、2000円を財布から取り出し、支払いを済ませた。
「デパートの中のスイーツの店って一階だったよね！さつまいもやくり、オレンジやイチゴだってあるんでしょ！わたしワッフルが好きなんだー！」雫は言った。
「あらっ！クレープが食べたいな！」
凛はガラス越しに中にある見本を見ていた。」

「モンブランから生クリームからチョコからバナナ！劇的なスイーツの王道ね！たくさん、ワッフルに乗せることが出来るからなんでものしちゃお！」雫は言った。

凛はクレープ、雫はワッフルを食べた。
冬休みの1日1日が部活とバカンスで過ぎていく。バスケも本腰を入れてやってくる来年にウキウキしていた。

26

冬休みが終わった。部活も気合いの入った学生が放課後体育館に集まっていく。「雫！」
凛は雫にパスを出した。高宮からも美月にパスをする。野球で言えばキャッチボールがアップだが、それと同じようにパスを出したり、受け取ったりしている。
季節はもう春に近づいていた。春の3月から県予選が始まる。岡崎高校や嵯峨根高校との練習試合もしたが、今年は雫や凛にとっても最後の県予選となった。夏からはもう、受験勉強をしていかなければならない。１年生は2年生になり2年生は3年生になる。また、この春には新しい生徒が三浦高校に入りバスケ部の入部も多いだろう。
何か噂があったのか？ネット際でなにより、ザワザワしている。新しく入って来た、リリだ。小学生からアメリカに渡りみっちり10年間バスケの名門でプレイしていた、リリが今年から三浦高校に入学するそうだ。周りには新聞記者たちがたくさんいて、ザワザワしていたが、見ようにもリリはもはや、180センチの長身で周りの記者が子供のように小さく見えた。
凛は実はこのリリが三浦高校に入学することを前から知っていた。
凛は言った！「いっちょ！見せてみな！」とボールをリリに渡すと、ハーフラインから走り出しネット近くでダンクを決めた！
ワアー！新聞記者や他の部の人からも”スゲ〜''とどよめきが起こった。
リリはそのまま、左指でボールを固定し右手でくるくるボールを回転させていた。
「いい！みんな！このこリリ！今日からバスケ部に入るらしいから、みっちりしごいたって！」凛は言った。
リリがドリブルをすると床が埋まるようや音がする。壊れてしまうんじゃないかとバキバキ、ギシギシ呻き声をあげた。
凛はこの日本人離れしたリリと高宮を交互に使っていこうと決めた。
監督が「みんなも分かるようにこれから若い生徒がどんどん入部して来る。1人ケタ違いの人物がいるが、あれはリリだ！10年間バスケをし、アメリカの方で住んでいたリリが入る。我が伝統ある三浦高校バスケ部の力になると思う。よく、学んで吸収しろ！早速県予選に向け練習だ！以上。」
試合形式の練習をやるとの監督からの指示だった。レギュラーと2軍の試合だ。
一度この練習試合でリリの動きを観察しようと新聞記者や生徒や先生方が集まっていた。
スリーポイントシュートが決まらなかったボールをリバウンドのようにジャンプをして右手でボールを掴みそのままダンクをした。そして、ネットにぶら下がった。
「おー！スゲ〜！」観客がまた騒ぎ出した。
「使える！」そう思った監督だった。
アメリカン仕込みのバスケット選手に周りのみんなは唖然と棒立ちだった。ただ、高校生だが、他の学生より群を抜いていた。
「もう、いい。」その辺にしとけと言わんばかりに、コートをあとに、リリは体育館を出て行った。

27

三浦高校のスタメンが決まった。体育館のミーティングルームで監督が紙を持ってポジションを読み上げた。
「オフェンス左に高宮！オフェンス右にリリ。センターに雫！そして！右バックに美月！リベロに凛！だ！以上！」
豪華キャストの三浦高校バスケ部が始まる。
どれもより優れている。高宮からリリまでのオフェンスからリベロの凛から指示が動く！雫からのキラーパスからカウンターを狙える配慮だ。
年が明け季節はもう、温暖な春を迎えていた。県予選を控え、選手は調子を整えていた。
体力作りから始まった、三浦高校の選手は若干緊張していた。
大会場までバスが手配された。リリは身長が高く窮屈なバス内だったが、おちゃらけて、高宮や、美月にちょっかいを出していた。
バス内は女子高生の遠足みたいにキャーキャーうるさいのを我慢する監督。試合会場についたら、さっそく、アップを始めるように指示した。朝早く5時起きだった。雫と凛は三年生らしく、静かに座りながらも眠っていた。今日から始まる、合宿や練習試合、文化祭を越えまた、新しい雫や凛にとってはバスケ人生で大きなイベントだ、況してや緊張しながらも、試合に向け休みをとっていた。高宮はツンとしてか、窓の外ばかり見て落ち着いていた。

バスが到着した。試合会場を一瞥すると、大きなフロアーに6つの試合が同時に出来るアリーナだった。都会では土地がない分、体育館やアリーナは若干狭い、この会場は少し離れにあり、周りを見渡せば自然がまだ、残っている場所だった。
控え室に入り練習やアップのため、ウインドブレーカーを来て、会場にメンバーは向かった。
監督が言う。「ええ、待ちに待った県大会予選だ！これまで、たくさんの練習をして来た。雫や凛は高校生最後の大会になる。それぞれがインターハイを目指してやって来た！この予選を通過しまた、三浦高校バスケ部の名誉としても闘って頂きたい！メンタルで負ければ負けたも同然だ。今までの努力はして来た！あとは内面で勝てるかどうかだ！以上！最後、頑張りたまえ！」

「待ちに待った日が来たね！ここまで、たくさん、練習して来た！この日を勝ち抜くためにだけ、練習してきたのよ！絶対に予選突破しなきゃ！」雫は言った。
「そうね！」凛は言った。

県予選は3日間行われる。トーナメント方式で勝ち抜きになっている。１日に3試合で6つのコートで試合が行われる。12校がいっきに試合が行われるために、3日間で準決勝、決勝となっている。
みんな、気を引き締めていた。

28 1試合目 野上高校 対 三浦高校

凛は試しに！フリースローを打つと、直ぐにネットを揺らした！初めから飛ばさず、アップ程度に流していた。リリはベンチにいた。
雫からのチームプレーで圧勝した。

2試合目 田淵女子高校 対 三浦高校

「右へ！」高宮が先制した。20対6
三浦高校は抜群のスピードだ、素早く相手のカウンターをつき、高得点を取った。38対10
高宮や雫をベンチに下げ、２年生を入れた。
この試合も圧勝だった。

どんどん、勝利していく三浦高校。凛や雫は更に気を引き締めていた。雫から高宮の連携が凄まじかった。三浦高校は一瞬にして2度の勝利を収めた。
「雫、いい感じね、これからは手強くなって体力がものを言う試合になってくると思うけど気を引き締めて！」
凛が言った。
１年生も喜びに雄叫びを上げていた。高宮や美月は何が起こっているか分からない様子だったが一勝一勝、勝っていくにつれて、気分を取り戻していた。「インターハイまで！わたしたちはいくの！」雫は言った。
小学生から高校生までバスケ一筋だった。何もかもバスケが凛や雫にとって生き甲斐だった。その夢が形となって叶おうとしている。頭の中にはいつも凛がいた。雫は自然と涙が込みあげて、まだ、だと言う前にこれまでやって来たこと、やってこれたことを誇りに思う。
いつも、バスケボールを手にしていた、幼い頃から友人と遊ぶ中でいつも、バスケやポートボールで遊んだ。小学生の頃も気がつけばバスケしかなかった。雫の中には生きて来た人生の中で一番胸踊る夢の初舞台！絶対に諦めず勝利しなければならなかった。
男子にも目にくれず、一心で夢を追いかけた。青春の全てを凛や雫は賭けていた。当たり前のように思えることも、声を掛けられたら振り向くはずもあったがその全てを全て振り払い、バスケに生きて来た。
”夢が叶う”
雫は涙を堪え切れない。
そう感じた。

29

3試合目で、岡崎高校に当たった。マリがそこにはいる。監督も耐えかねてかリリを投入させることを余儀なくされた。試合前にマリがこちらに来て握手を求めて来た。凛は心から握手を受けたがリリはしかめ面で何も考えていないようだった。「ここから、本番、手強い相手だからリリや高宮を使って攻守に切り替えること！」凛は言った。
「ハイ！」メンバー全員が言った。
岡崎高校の監督と三浦高校の監督が話している。敵チームと分かりながら、前に練習試合のことを思い出してのことだろう。
攻守にわたって厳しい試合になるだろう、メンバー全員がそう思っていた。一筋縄ではいかない相手。
笛が鳴った。

大きく審判から上に放たれたボール！マリとリリ。勝ったのはリリだった。と同時に高宮が声をあげた、相手ネットの側に高宮がいる。「ハイ！」
リリはすかさず、高宮へパス！高宮はネットを揺らした。三浦高校、2点先に入れた。
「くそ！速い！」マリは言った。
「このチームは後が怖い、体力があるから後半戦に先行していても、ぶり返される。」
マリは言った。
「マリ！わたしたちがあの試合のあと！どれだけの訓練をしたか分かる？前とは違うのよ！わたしたちには夢がかかっていんだから。」雫は言った。
「まだ、始まったばかりよ！雫！あんたのチームがどれだけ、練習したか分からないけど、わたしたちにはわたしたちのバスケをやらせてもらうわ！」
マリは言った。
お互い点入れては奪われと20対18で三浦高校が若干リードしていた。高宮は先制したものの、なかなかそのあとはなかなか、ネットを揺らせないでいる。リリが活躍し、殆どの点はリリが入れていた。「おい！高宮！何やっている！お前の底力を見せてみろ！」監督は言った。
「くそ！全然上手くいかない！」高宮は言った。笛が鳴った！ハーフタイムを迎え、選手たちがベンチに帰って来る。20対26逆転されていた。
攻防戦で息がみんな上がっていた。
監督は言った！「高宮！ここはお前の力が必要だ！思い出してみろ！初めて高校に入ってバスケも知らないお前がこのバスケ部に入って来たことを！それから、たくさん凛や雫たちと練習したことを！歯をくいしばってバスケ部で付いてきたことを！お前ならできる！今、お前の力が必要だ！」チームがいるまえで、全員に聞こえるように、高宮にカツを入れた！
「分かりました！」高宮が言った。

高宮は震えていた。何が起こっているのか？もはや、気を失いかけるくらいに頭が真っ白だった。息のキレる音がベンチから聞こえる。
「いい！逆転するの！わたしたちまだ、やれるわ！」凛が言った。

ピーっ！笛が鳴る。
審判から放たれたボールはマリが受け取った！「ディフェンス！みんな、下がって！」一斉に味方ネットにメンバーは下がった。
マリがシュートを打ちネットとな弾かれた！
「リバウンド！！」凛はハリ叫ぶ！
雫が飛んだ！相手を押し倒した！ピーっ！反則だった。相手側のフリースロー！マリが3点を入れた！「くそ！」雫は叫んだ。
28対40 三浦高校は圧倒されていた。マリが活躍し、相手チームのベンチが騒がしい。
「点差12点！高宮が機能すれば！」凛は思った。
パスをディフェンスで繰り返し、狙いを定めていく！リリが美月を呼んだ！高宮が走っていく。ネットから弾かれた。「リバウンド！！」凛は叫んだ！マリが奪いカウンターから2点入られた。28対42 「くそ！上手くいかない！」凛は言った。
そのとき！パッと光ったように、高宮が一瞬でボールを奪いすぐさま、ドリブルをしたかと思うとネットに入れた。長い間、監督や凛や雫やメンバーは待ったが、高宮の本性が露わになった瞬間だった。そのまま、立て続けに10点をいれ、遂には逆転までに至った。44対42
観客席からはどよめきが起こっている。「何？あの10番！1人でプレーしているみたい！」岡崎高校の部員は高宮のドリブルが取れなかった。凄まじい速さで一瞬にして、相手を交わしネットを揺らしていった。「これが、高宮？さっきまで、全然ダメな感じだったのに、一瞬で変わったね！」凛は言った。
凛と雫が夢見たことが今このゲームで起こっている。電光石火のような高宮！依然としてオーラが違った。連続ポイントを10とし、更に12点差を岡崎高校に食らわした。
気がつけば、岡崎高校は点を入れれず、逆転負けに着した。スコア58対44!遂には岡崎高校を破った三浦高校は雄叫びを上げて喜ぶベンチ！何が起こったのか、キョロキョロする相手チーム！するとマリが高宮に握手を求めてきた。ハッとして、高宮は握手を避けたが、マリは「負けたよ。」と一声かけ、凛の方に近づいて来る！握手を求め、「あんた！いい後輩いるじゃない！」とガッチリと握手をした。もう、凛は涙ぐんでいた。雫は目からポロポロ落ちる涙をタオルで拭いながらも、「わたしたち！勝ったのね、」と膝を床に落としていた。

30

試合は4試合目、次の日に回された。体育館を抜け宿舎に帰る部員たち、トーナメント戦で残れなかったチームは、バスでそれぞれの学校へ帰っていく。「勝った勝った！」とはしゃぐ1、2年生。春の風に吹かれながらも、みんなウキウキ気分だった。
宿舎に帰って、「もう、言うことはない。」みたいな監督は自分の職員の部屋に戻っていた。明日は準決勝と決勝がある。体をゆっくり休め明日に臨まなければならない。
夕飯を食べているバスケ部は普通の女の子に戻っていた。お風呂に友達同士で入りに行ったり、周りを観光する者もいた。何れにせよ、ゆっくり眠らなければならないが、修学旅行気分の女子高生は眠るはずかない。男子の話になったり、先生の話になったり、夜通し話している女子もいた。携帯電話から家族に電話をかけている部員もいたが、浮かれ気分でいた。

雫は凛を夜に呼び出していた。目前に見えた夢の実現に返って2人でいるのも、恥ずかしかった。ブラブラ温泉宿を通りながらも、カップルが浴衣姿と下駄を履いて歩いている。
「わたしも青春間違えたかな？」雫が言った。「え？どうして？」凛は言った。
「妹みたいに自由に彼氏彼女の状態になってこんな旅館に泊まりたかった！」
「これからいくらでも出来るんじゃないの？だって雫！大学進学するんでしょ！」
凛は言った。
「ええ！そうよ！来年からは華のキャンパスライフよ！楽しむは！凛はどうすんの？」雫は言った。
「わたしはバスケしたいから、進学はしない、実業団に入るんだ！」
凛は言った。
「へえー、まだバスケするんだ！」
「そうよ！わたしはいつもバスケ寝ていてもバスケだから！」凛は言った。

ポッポと暗がりの電灯が着き始め、下駄を鳴らす音が少なくなった。春の夜風はとても、冷たかった。美月はクラスに彼氏がいたが、一緒に来るか来ないかで揉めていたことも忘れ友達とはしゃいでいた。
堪り兼ねたのか、監督も女子の宿舎を訪れる訳にもいかず、喫煙者でタバコを吸っていた。
明日は準決勝！お互いに喜びの中で眠れる。
就寝した。

31

人里離れた場所に宿舎はあったが、体育館に付いたとき他のチームは練習をもう、始めていた。朝から眠そうに歩いて来る美月、夜通し話をしていたみたいだった。
「さあ！始まるわよー！わたしたちの2日目！今日はとにかくバスケを楽しむの！」
「ハイ！」メンバー全員が言った。
監督は腕を組み何も話さなかった。夢や目標に近づいている彼女らには彼女らのやり方があるだろうと、一言話しただけで、話は少なかった。

準決勝 立位高校 対 三浦高校

今度のスタメンはかなり変わっていた、新人が1人高宮と代わり、高宮無しで戦うことになる。リリの活躍が期待される。
監督はスタメンを読み上げたとき部員たちのどよめきがあったが、作戦があるのだろうか？と頭を傾げる部員が多かった。
立位高校とは伝統はないが新しい新学校で頭が抜群にキレる高校だ。作戦なしではなかなか、勝ちを譲らせてくれないだろう。
必ず莫大な得点を生み出すリリは間違いなくガードがきついだろうと読んでいる。
審判から放たれたボールが頭上にいく、そのときもやはり、リリだった。入り込んだリリにガッチリ、ガードが堅い、ドリブルが出来ず、雫にパスをする。高宮がいない分キラーパスを誰に放つか？迷っていたそのとき、相手チームに奪われあっと言う間に2点入った。
「ダメだ！今は高宮がいない、前線への一気に攻めあげるキラーパスが存在しない。」
監督はゲームはチームがそれぞれ役割分担をし、そこからチームで展開をしてみろと言わんばかりに腕を組んでこちらを見ている。
「雫！高宮がいないときのゲームを意識してみて！ガードに駆られているリリにパスは良いけど、案外これ！賭けね！」
凛は叫んだ
「分かった！やってみる！」雫は言った。
相手チームは頭脳プレーでオフェンスとディフェンスを切り替えている。パスが多い、じっくりバックでパスを回し、時間を有意義に使いジワジワと攻撃に備えている。
リリは完全に2人にマークされている。
攻めてくる、相手チームに圧倒されながらも、ディフェンスをする雫。「あっ！」雫の左の選手がフリーだった！「しまった！」と、瞬間にネットを揺らされた。「自分のバスケをやらせてくれないわ！」雫は言った。
「どうする？」雫は頭の中が真っ白になった。完全に相手チームにゲームを握られている、そんな状況だった。
「しっかりしなきゃ！」頭をブルブル振り、正気に戻していく。リリのドリブルを2人でガードされては雫にもパスを出す相手がいない。
この状況下ですべきこと、「いったい何？」雫は体を動かしながらも抜け道を考え続けていた。「待て待て！リリに2人のマークが付いているということは！リリにパスを出すことは出来ない。しかし、リリがわたしたちの陣地にいるときは2人のマークがリリについてくるのだから、攻めるためにはリリ以外に攻撃を任し、リリを若干ディフェンスよりに探せておけばいい。そうしたら、マーク1人分相手チームに攻めるときは相手のメンバーは3人になる！！」
雫は頭をフル回転させた！
「リリ！下がって！」と雫はボールを持ったとき、叫んだ。リリが下がるに連れて2人のマークが付いて来る！「今だ！美月上がれ！」美月は上がった！「ヨシ！」と美月の前にパスが渡った！ネットを揺らした！

「やった！」雫は苦笑いをした。危ないところで相手チームの流れを断ち切った。流れがあるにもかかわらず、美月が何度も活躍する。リリからマークが離れたとき、雫はピンときて！すかさずリリへキラーパス！！
ネットを揺らした。頭脳プレーも、三浦高校や雫が上回っていた。圧巻とされた4試合目、準決勝も手にすることが出来た。 ベンチでは飛び跳ねて喜んでいる。5試合目は決勝。午後から決勝が始まる。それまでの時間まで3時間あった。控え室に戻り、監督の指示を得て、散らばった。

32

インターハイに向け最後の試合になった。
三浦高校の毎年の栄光まであと少し。雫と凛はインターハイをも優勝に導きたいと思っている。しかし、県予選で毎回の顔ぶれに飽きないのかくらい思う、女子がいた。高宮や、リリ、先発メンバーで、一気に勝負を掛ける作戦で監督はいた。準決勝で敢えて高宮をスタメンから外したのも、この決勝の為にある。高宮以外で得点を重ねること、他における、別の展開が出来るかを試していた。それと、決勝に高宮を出す為にゆっくり休めていたこと。高宮は調子が万全だ。
たくさん色んなことを話し、たくさん練習した。高校生最後までが一番の青春時代だが、雫にとっては小学生から夢みていたインターハイ出場の切符であった。この試合に勝つ為に苦しい練習も耐えてきた。息つく間もない大変な毎日が充実し、そして、学校を遅刻した！それくらい一心でバスケに打ち込んできた。今も、過去もバスケだった。その瞬間を今、向き合うことになる。

決勝 聖水高校 対 三浦高校

「とうとう来たわね！雫！もはや、わたしたちは勝利の中にあるわ！この試合を打ちのめしてインターハイの出場を決めるのよ！」凛は言った。
「ええ！わたしたちはインターハイ、貰ったも当然よ！」雫は言った。
複雑な気持ちでレフリーの笛を待っていた。
聖水高校は女子高でおしゃれな学校だった。
どんな時でも、めげずに向かってくる姿勢は県大会でも健在だった。ハングリー精神が強く。強引な反則をしたこともある。怪我の多い女子高だが、体力もありコツコツと力を付けてきた学校だ。コンビネーションやチームワークは三浦高校以上かも知れない。三浦高校は個性派揃いに比べ聖水女子は無名な選手が多い、しかし、ガッチリしたチームワークでこの予選を突破してきた名門校である。

ピーっ！審判の笛が鳴り高くボールが上に上がった。ボールを奪ったのは凛だった。凛からリリ、そして、高宮にボールが渡る相手のスキを付いてネット側までドリブルで持ち込み2得点！三浦高校が先制した。相手チームはパスを小まめに繋いでくる。美月は一生懸命マークを外さなかった。雫の前にパスカットがいくと、ボールを奪い、バウンドのパスを凛に渡す！
凛はドリブルで相手陣地まで来たところで、後ろにいる雫に渡した。高宮はマークを離れられないでいたところ、リリのフリーに気付きリリへパスをした。高いジャンプだった、リリは空高くジャンプしボールを両手でダンクをした。ネットにぶら下がり！やってやったと言わんばかりだ。攻守からボールが頻繁に相手チームから味方チームへと渡っていく。奪い合いが続いた。右から攻める相手チームから美月はマークを離さなかった。スキを見て雫がボールをまた、奪う。「キラーパスを！」そんな声が聴こえたのか！高宮のマークが一瞬外れて思いっきり相手チームのネット側に走る！キラーパス成功！雫から放たれた速いボールは高宮に渡り高宮はネットを揺らした。「ヨシ！」雫と高宮はガッツポーズだった。
聖水高校は何か緊張感を覚えていたが、ゲームの流れは明らかに三浦高校にあった。「ヨシ！このままいこう！」と右腕を上げ指を天に刺した凛。「イケる！」みんながそう思っている。
聖水高校の得点は10ポイントで止まり、20点の差を三浦高校は広げていた。チームワークに熱心な聖水高校も体力と個性のある三浦高校には及ばなかった。高宮と雫のコンビネーションや凛と美月の鉄壁なディフェンスにも叶わない。ハーフタイムに直こうしたときには、もはや、三浦高校は勝ちに転じていた。ベンチからの声援と客席からの声援もあり、横断幕！必勝！三浦高校！など、たくさん応援する人たちや学生がいた。
10分の休憩がハーフタイムにはあったが、「イケる！イケる！」と息をきりながら、選手は後半戦のために調子を整える。この、聖水高校に勝つことで、県予選突発！県大会優勝を三浦高校は得る！これまで、地獄のような練習に耐えた三浦高校の選手は顔中が涙でいっぱいだった。監督もやはり、この試合も選手自ら考えてゲームを行うようにと、あまり口出しはしなかった。これまで、体力を付けるために、”ロード”をして来た！嫌になるくらいの夏の合宿、勉強も疎かにせず、ここまで、血を吐くような日々を続けた選手たち！いったい、青春が男女間だけでなく、クラブ活動にある証明にも勝る瞬間だった。これから、高校を卒業し大学進学や就職しても、この選手たちはどんな大人にも引けを取らない社会人になるだろう。
分かち合い！突き進み続けた経験はいつしか、役に立つ！それは誰もが経験していないものを凛や雫たちは知っているからだ。途方にも流れ出る涙は、悔し涙や悲し涙などではなく、喜びや達成したときに流れる、苦労の嬉し涙だった。このメンバーで予選を勝ち切る！その思いが後半戦もうまいようにことを運んだ。
笛が鳴り、ボールが上へ上がる。雫がボールを奪ったとき！「よっしゃー！見せてやるわよー！みんな！気合い充分ね！」叫ぶ。
「わたしたちのバスケをする！」心で高宮が叫ぶ！「これから、ずっとみんな永遠に一緒！これで勝つ！」凛は叫んだ！
雫からの絶妙なパスにボールは凛に渡された！ドリブルで相手の陣地までいくと高宮やリリは手を高く上げてパスを待っている！と、パスを与えるフェイクを入れて3歩歩いてシュート！ネットを揺らした！
「よっしゃー！！」凛は叫んだ！
観客の声が騒がしい！
得点は32対10 12点の差を広げた！
雫や凛から繰り出すパスは精確で2年生や1年生にどんどん送られる！右や左サイドからの攻撃、相手チームにボールが渡ると一斉に全員でディフェンス！体力のずば抜けた三浦高校のバスケ部！やはり！「これでもか！」と得点を重ねた。体力から後半戦も疲れて乱れることはなかった！「こいつら化け物か？」と思われるほど走って走って走った！
三浦高校が60点を周ったところで時間切れの笛が鳴った！と同時にベンチの選手やコーチや学生がコート内に入って来た！
「やった！やった！」叫び合い！喜びあった！抱きしめ合う美月と高宮！凛と雫！
監督はジッと立っていたが、サングラスの下には涙でいっぱいだった。
観客は踊り出し！みんな手を上に上げて喜んだ！！！
「わたしたち！優勝よ！優勝！」凛は叫んだ！
ゴチャゴチャになった体育館だが！みんなはしゃいでいた。

33

2年後

「雫！起きなさい！学校の講義始まっちゃうわよ！」母は言った。
「ええ！あと5分！」雫が答える。
「もう、相変わらず。」母が言った。
「お姉ちゃん、また寝坊？参っちゃうなあ！大学生にもなって。」薫が言った！

「イッテキマース！」

2016年12月1日
バスケ部 石もち

雫は晴れの大学に進んだ。たくさんの想いを胸に新しいキャンパスライフという青春。男子にも目がなかった、高校生活も卒業し、次のステップへと動いていく。