アスナロの木の妖精は

自作小説「アスナロの木の妖精は」を詩として要約したものです

深い森の中で
息を潜めてみる

魂が解放される時を
今か今かと待つ僕は
少しだけ
怯えている

早すぎも遅すぎもない
その時をただ
目を閉じて迎える

共歩きの世界は
時の規律を 見事に なくしていた

いつだったか 君が
教養がないのではない
魂の喪失だ と
僕にそう言葉を投げた あの日

あの日は
確かだったのだろうか

僕は深い森へ 足を進める
靄の中に追いやられた日々は

僕の時間として
確かにあったのだろうか


「16秒後に貴方は失われます」

突然響くその声には
どこか懐かしさがあって

あの赤いポストの上には確か
何かのオブジェがあったけれど

今僕の見る世界には
そんなものどこにも無くて


伝えなくちゃ
魂を取り戻した事を
きみに 伝えなくちゃ

どこにいるの
どこへ行ったの

僕の知る世界はどこに消えた

君を探した
君を見つけた

それは紙切れの中に居た君だった

もう居ない、
最初から居ない

それが君だった

僕の見て来た世界は

どこからが嘘で
どこまでが本当かなんて

誰にも聞けなくて
誰にも言えなくて

ただただ 怖くて



朝陽を見つめても
瞳が持ち堪えたのは

僕の世界が、全てが、
嘘だったからだ

光の中に 君の幻を見たんだ

君は優しく笑うと 空へと消えた


僕はそれを追いかけるように

僕は真実の意味を 今知るために

笑いながら
空をめがけ 飛びたつんだ

君を追いかけるように
真実の意味を今知るために

アスナロの木の妖精は

アスナロの木の妖精は

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-01

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