にんげんの道

にんげんは、風の音を忘れてはいけない

「にんげんの道」

森が ないている

なかまをうばわれて

海が 荒れている

いのちをよごされて


大地が 怒りに ふるえている

おまえらを、土に還らせるだなんて、と



空が

雲が

太陽が

月が

梟が みている


地球への 汚染も

にんげん、自らの いのちへの 汚染すらも

かえりみる ことはせず


「退化」

「進化」
だと うたい


にんげんらしさ を

まるごと かんちがいをした

ぼくたちを


かれらは、みている


かれらと
ぼくら にんげんの あいだ

風は 横目で 去っていく


過ぎゆく風を

ひきとめなくて いいのか

聴かなくて いいのか

「ぼくらが えらんだ道は
ほんとうに 正しかったのだろうか」 と


ごめんよ

ぼくたちは、 にんげんだ

ぼくらも いつかは かならず

土や 海や 風のなかへと

きみたちの もとへと 還るだろう


そのときになって
ぼくらは やっと

きみたちと おなじ星で 生きたことを

きみたちと おなじ
地球の いきものだったのだと

知るのだ


なにも

えらくなんて

なかったと



「おかえり」 と

土や 海や 風が

あたたかく やわらかく

迎え入れてくれる


そんな ひとの生を 送りたい



すべてが ほろんだ日にも

かわらず揺れる 海のたましい

ぼくは その ほんのいちぶに なれればと


きみたちにとっての

良質な ひとのたましい とは

何であろう



ぼくらには だれにも 語れない


ぼくら にんげんは なにも 知らない


きみたちだけが 知っている


きみたちだけが 語っている


ぼくらには 聴くことは できない


「にんげん」 だから


聴こえない


でも ぼくは

聴きたい と 耳を澄ます

そんなにんげんで ありつづけたい


寄り添うということ

それは つまり きっと

そういうことなのだろう


ゆるしてくれ とは いえない

ただ、

きみたちの こえを 聴きたい


このおもいを いだくこと それだけは

どうか どうか

ゆるしてくれないか



ごめんよ、

ぼくらは、にんげんだ

かぎりなく、にんげんなんだ


地球よ、 それでも

にんげんの道

にんげんの道

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-12-01

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