第一部【代わり雛】
平幕・十両・幕下的存在の私達は少しでも強くなろうと、弱い者同士で酒の飲み比べをしていた。
飲むだけのくだらない真剣勝負だが、自分より弱そうな相手探して指名した。
しかし、指名されたら調子の悪い時でも断れる事が出来なかった。
そして、挑戦に答えて勝負をする事に成った。
第一話 【鏡】
同僚や先輩後輩等と会社の三階食堂で飲む時は、酒豪の東と西に横綱がいた。
出荷も終わり、点検場を掃除して休憩がてら雑談に入った。
『終わったな』と大木主任が言った。
『中!1階に行って発送の進み具合を見てこいよ』とデコ斎が言った。
『あいよ!!』
『てっちゃん!何時頃終わる』とベルトがけをしている船越鉄次郎さんに聞いた。
『うぅん~!あと、30分ぐらいだね』
『わかった!!』
『どうだった!?』
『20分ぐらいで終わるよ』
『そう!』
『じゃ、今日は残業なしだな』とフカマンが言った。
『今日は、食堂で飲み会やるぞ』と終業手前四時半にニノが言った。
『いいねぇ!!』
『会費はいくら!?』と同期の藤井が聞いた。
『1人2千円だな』
『何人出るの』
『今回も、10人ぐらいだよ』
『フカマン・俺(藤井)・上村・沢井・マラ勝・嘱託の木村さん・電話取りの倉田・笹岡だなぁ』
『後は、東の横綱デコ斎と西の横綱ニノか』とフカマンが言った。
『そう!』
『買い出しは誰が行く』と藤井が聞いた。
『無論!一番弱い奴だよ』とフカマンが言った。
『俺と、上村くんか】と私が言った。
『わかっているじゃねぇか』とニノが言った。
『じゃ、5時半になったら行ってくるよ』
『酒は、剣菱だぞぅ』とデコ斎が言った。
『わかっている』
『じゃ、上村くん!行こうか』
『車持ってきますね』
『うん!下で待っている』
『酒屋に寄ってから、商店街でつまみを買いに行こう』
『はい』
『ビールはどうします!?』
『冷蔵庫に大瓶6本入っていたから、いいんじゃない』
『そうですね。うがい程度ですものね』
『そう』
『こんちわ』
『いらしゃませ』
『剣菱を?』
『上村くん!何本にする!?』
『6本もあればいいんじゃないんですか』
『そうだな!余ったら次にやるときに飲めばいいか』
『そう!』
『じゃ、6本お願いします』
『のしは付けますか?』
『いらないです』
『そうだぁ!箱に入れてください』
『2本ずつでいいですか』
『はい』
『分かりました』
『1380円?×6=3280になります』
『はい』
『有難うございました』
『次に行こうか』
『金がぜぇいぶん残っていますね』
『うん!1万6千円あるよ』
『じゃ、スーパーに行きましようか』
『そうだな!菓子類ばかりじゃ飽きるものなぁ』
『駐車場もあるし、焦らないで済みますよ』
『何買う!?』
『焼き鳥・チャーシュー・サラミ・キムチ・柿の種・刺身の盛り合わせ・こんなところかな』
『スルメの買いましょうよ』
『炙るのが面倒だから、裂きイカにしよう』
『そうですね』
『じゃ、帰ろうか』
『はい』
『いくら残りました!?』
『4千円だな』
『次の飲み会にとっておきますか』
『そうだな』
『じゃ、みんな待っているから、急いで帰るか』
『はい!!』
そして、発送場には運送屋のトラックが5台止まっているので、玄関に止めた。
『車置いてきますから、荷物お願いしますね』
『OK!!』
『おっ!帰って来た』と藤井が言った。
『何処まで買いに行ったの!?』と沢井が聞いた。
『商店街のスーパーまで行ってきたよ』
『ご苦労さん』とデコ斎が言った。
『つまみ!買ってきたね』
『スーパーだと安いから結構買えましたよ』
『偉い!!!!』とフカマンが言った。
『酒は!?』とニノが聞いた。
『無論!剣菱だよ』
『剣菱か!旨そうだな!?』
『関東の酒は剣菱ですからね』
『そうだな、熱燗でも、人肌でも、冷でも、ロックでもどんな飲み方しても美味からな』とデコ斎が言った。
『それに!コップでも、お猪口でも、うまいしなぁ』と藤井が言った。
『桝だって活けるよ』とマラ勝が言った。
『そうだな!舛の角に塩を載せて飲むと最高だよ』
『また、コップに並々付いてもらって、受け皿にこぼれた酒をすするのも美味いものなぁ』とニノが言った。
『そう!?俺は、コップの酒を飲んで、受け皿にこぼれた酒をコップに戻して飲むよ』と藤井が言った。
『なんか!貧乏臭くないかい!?』とニノが言った。
『いや、受け皿を舐める方が貧乏臭いよ』と藤井が言い返した。
『どっちもどっちだよ』とデコ斎が言った。
『冷で飲む!?』と私が聞いた。
『お燗しようぜ』とフカマンが言った。
『お銚子なんかないよ』
『じゃ、面倒だから、やかんに入れてお燗しよう』
『それがいいや』と藤井が賛成した。
『取り敢えず、ビールで乾杯!!』とニノが言った。
『準備OK!!?』
『じゃ、ご苦労様でした!!』
『乾杯!!!!』
『((*´゚艸゚`*))まぃぅ~♪』
『喉を締めるな!』
『空き腹に効くよ!!』
『よし!後は、酒にしよう』
世間話や女の話に会社の不満で盛り上がった。
そして、一時間過ぎる頃から、相手の様子を伺い始めた。
『おい!飲めよ!!』と倉田がやかんを持って勧めた。
『俺は!手酌でやるからいいよ』
『まぁ!いいじゃねぇ』
『人のペースで飲むと酔の周りが早いんだよ』
『だから勧めるんじゃねぇ』
『そう言うのは反則だよ』
『このくらいの事を受けて立てなければ横綱にはなれないぞう』
『俺は、腰を据えて飲むタイプだからこれでいいんだよ』
『なるほどぉ~!?』
『今日は、中が調子悪そうだな!?』と電話取りの倉田が目を付けた。
『よし!一発ぶちかましてやるか』
『中!一』
『来た!!!!』
『勝負!!!!』
『OK!!!!』
『いいぞぅ!(*^□^)ニャハハハハハハ!!!!』とニノが笑った。
『俺から飲むぞ!”』
『いいよ!!』
そして、一気にコップを空けた。
『中!いけ!!』
『よし!』とコップを空けた。
『まだ行ける!!』
そして、五杯目で倉田の目が座ってきた。
『そろそろだな』
『中!もう一杯』
『おっ!目が回りだした』
『倉田さん!もう一丁!!』
『顔面蒼白になってきたなぁ』
『中~!飲むぞ!!』
『グゥぃ~!フゥ~!!』
『オエェ~』と酒を吹き出した。
そして、白目を出して仰向けぶっ倒れた。
『倉田の負け!!』
『倉田!立てるか!?』とフカマンが聞いた。
『大丈夫!大丈夫!!大丈夫!!!』と気を失った。
『宿直室で寝かしておけよ』とデコ斎が言った。
平幕・十両・幕下的存在の私達は少しでも強くなろうと、弱い者同士で酒の飲み比べをしていた。
飲むだけのくだらない真剣勝負だが、自分より弱そうな相手探して指名した。
しかし、指名されたら調子の悪い時でも断れる事が出来なかった。
そして、挑戦に答えて勝負をする事に成った。
また、勝負を受けて起たないと会社での自分の居場所が無くなった。
相手がぶっ倒れるまで飲み続けた。
そして、胃の中に限界が来て酒を吹き出してひっくり返った方が負けと成った。
宿直室で介抱されて勝負が付いた。
しかし、横綱は余裕を持ってニタニタ笑い、美味そうに酒を飲んでいた。
わたしも勝負に勝ち抜いて何度か横綱に挑戦してみた。
まず、西の横綱ニノに挑戦した。
『ニノさん!勝負!!』
『よしゃ!受けて立やるから、どんと来い!!』
しかし、
何度挑んでも跳ね返されてしまい完敗して3回ほど腰を抜かされた。
腰が抜けると、上半身と下半身がバラバラに成り、立ことも這う事もできなくなった。
そして、アップアップして這いずり回り、転がっていた。
『もう!ダメだ!!目が回る』
『まだまだ!!』
『飲め!飲め!!』
『苦しい~!!』
『(・`□´・)ふざけんなよぉ!』
『ギブアップ!ギブアップ!ギブアップ!!』
『根性のねぇヤローだなぁ』
『立て!コノヤロー!!!』
『まいりました!!!!』
『もっと鍛えてから挑戦して来い!!』と髪の毛を鷲掴みされて振り回された。
毎年新入社員が入って来ると見習い研修として各課を1週間ずつ巡回して来た。
仕事が単純で面白みがなく『俺はこれでいいのかなぁ!?』と途中で辞める新人も何人かいた。
我慢強く研修をこなした根性人が、1か月後、各課に配属が決まった。
それから地方業務課としての新入社員歓迎会を開くことになった。
『今日から、業務課に配属になった、吉田満くんです』と大木主任が紹介した。
『吉高です!よろしくお願いします』
『3階と2階のストックコントロールを担当している斉田くん』
『よろしくお願いします』
『地下のストックコントロールを担当している小山さん』
『よろしくお願いします』
『深田・藤井・上村・沢井・鶴見・内山・笹岡・嘱託の木村さん嘱託の木村さん』
『以上が業務課の出荷要員ね』
『よろしくお願いします』
『☆拍手!!(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\喝采!!☆』
『ニノ原!!』
『はい!!』
『出荷伝票を持って、各階の商品在庫場所を教えて上げた』
『はい』
『じゃ!吉高くん!行こうかぁ』と伝票を渡した。
『お願いします』
『まず!3階からねぇ』
『はい』
『そこに在るカゴを担いで来て』
『これですか!?』
『大きい方がいいね』
『これですね!?』
『OK!じゃ付いて来て』
そして、3階・2階・地下の品出しを教えながら、吉高くんの品定めをしていた。
『吉高くん、君は酒が飲めるのかい』とニノが聞いた。
『学生時代に、仲間と一気飲みしてドンチャン騒ぎしていましたよ』
『ほう~!頼もしいねぇ!!』
『大学は何処!?』
『城西農業開拓大学です』
『そんな大学あッたかなぁ!?』
『最近出来たんですよ』
『ふぅん~!?』
わたしも同じだが、毎年新人の答えは『学生時代は毎日のように飲み会をして鍛えていましたから飲み比べしても、誰にも負けません』と胸を張って自慢した。
このハッタリが新人歓迎会で地獄の底に落ちていく始まりだった。
そして、一時間もたたないうちに、のた打ち回る事に成る甘い罠とも知らず、いい気なって飲みつづけた。
『強いねぇ、もう一杯行こう』とフカマンが腹の中で笑っていた。
『ありがとうございます』
『ゴックン!ゴックン!!グィ~!!!』
『(*^□^)ニャハハハハハハ!!!!』
『強い!!!!』
『俺のも受けてよ!』
『いいですよ!!』
『コップじゃ小さいから、湯呑で行く』
『何でもいいですよ』
『( ゚∀゚)ウァハハ八八ノヽノヽノヽノ \』
『面倒だから、冷でいいね』
『何でもOKですよ』
『一気に!一気に!!』
『(*^□^)ニャハハハハハハ!!!!』
そして、へべれけになった。
私達は『流石に鍛えているだけ有って俺たちより強いねぇ』とおだて上げて皆で次から次へと酒を注でいった。
すると、慣れない環境の各課の巡回疲れと緊張感でストレスが知らず内に溜まり、無言のまま意識を失い白目を剥いて予定通りにぶっ倒れた。
東京店全体で行う歓迎会は4階の営業部で始めた。
お偉いさんの揃った堅苦しい酒は適当に飲んで、2次会に出かけた。
業務課の歓迎会は、大木主任の音頭で3階の食堂で始めた。
そして、倒れると看護婦代わりの総務部女子社員に宿直室で介抱してもらっていた。
その為に、ほとんどの新人は総務の大川真純、お姉さんに頭が上がらなかった。
そして!
『結婚するなら、こうゆう人がいいなぁ』と母性本能の優しさに憧れていた。
次の朝、朝礼に真っ青な顔で出てきた。
『吉田くん!気分はどう!?』とニノがわざとらしく聞いた。
『頭が痛いですよ』
『吉田くん!一升は飲んでいたよ』
『ホントですか!?』
『確かに強かったよ』
『でも、覚えていないのですよねぇ』
『何!ご飯に酒をかけて食っていたのも覚えていないの』
『えっ!そんな事をしていました!?』
『そうだよ』
『((*´゚艸゚`*))まぃぅ~♪うまい』て、お茶漬けだったよ』
『そんなことしたんですか!?』
『じゃ、真純さんに、抱きついたのも覚えていないの』
『そんなことしていませんよ』
『すごかったよなぁ!中!!』
『そう!えりとか言っていたよ』
『頭が痛くて思い出せないですね』
『エリって誰!?』とカマをかけた。
『これ!』と小指を立てた。
『誰ですかね!?』
『酒が強いと持てるから誰だか特定できないのだろう』
『そんなことないですけどねぇ』
『それで!ワイシャツはどうしたの』と白々しく私が聞いた。
『ゲロ吐いて汚したので、真純さんが洗濯してくれたんですよ』
『じゃ、乾くまで、俺の作業着を着ていなよ』
『ありがとうございます』
『取り敢えず、辛いだろうけど、朝礼だけ出て』
『はい』とフラフラしながら4階地方課営業室に上がっていった。
『クッ!クック!!ックッ!!』
『馬鹿だねぇ!!!』とニノと笑った。
8時45分から9時の営業開始まで、松井営業部長の耳にタコができる売上目標達成のツバキを飛ばして吠える激励挨拶を聞く。
『大丈夫かよ!?』
『大丈夫です!!』
『足元がふらついているよ』
『目が回ってきました』
『じゃ、午前中は仕事ができないな』
『いや!大丈夫です』
『無理しないでいいよ』
『はぁ!!!』
『何か!食えるか!?』
『気持ちが悪くて、食欲がありません』
『後で、真純さんに何買ってきてもらうよ』
『ありがとうございます』
『取り敢えず、午前中は直室で寝ていろよ』
『はい』
後は,1日宿直室で寝ていることになる。
4時頃2階に降りてきた。
『どう!元気になった』と私が聞いた。
『はい』
『顔がまだ青いな』とニノが言った。
『大丈夫です』
『帰れるかい!?』
『帰れます!!?』
『なんなら、宿直室に泊まっていってもいいよ』
『いや、帰ります』
『そう!』
『明日休むとには、電話してな』
『はい』
『じゃ、もう帰っていいよ』
『タイムカード押すと、早退になりませんか』
『押さないでいいよ。俺が、5時過ぎたら押しておくよ』
『よろしくお願いします』
『大木主任!いいですよね』
『いいよ』
『出来れば、明日から仕事してな』
『はい!!!』
これで恒例の新入社員歓迎会が終わった。
そして、業務課の若手戦力として期待された。
第一部【代わり雛】
そして、へべれけになった。
私達は『流石に鍛えているだけ有って俺たちより強いねぇ』とおだて上げて皆で次から次へと酒を注でいった。
すると、慣れない環境の各課の巡回疲れと緊張感でストレスが知らず内に溜まり、無言のまま意識を失い白目を剥いて予定通りにぶっ倒れた。