世界を憎んでいないと
世界を憎んでいないと
上等な靴は履けない
靴で踏みにじられた経験のあるひとだけが
その靴でひとを踏みにじろうと思わないから
世界を憎んでいないと
異端者にはなれない
世界から疎外された彼は
世界になにをも期待はしないから
世界を憎んでいないと
あなたはあなた自身になれない
世界に同調するものは
すべてそれ以外だった
世界はすべてだった
彼は世界だった
彼は世界をつくった
世界は彼をつくった
世界は彼を嫌った
彼も世界を嫌った
ときに世界を憎んだ
彼は世界をつくった
新しい世界をつくった
彼もまた憎まれる世界となった
ただそれでよかった
世界を愛していないと
人殺しにはなれない
愛のなれの果てが
にんげんであり彼の死だったから
世界を愛していないと
しあわせな思い出はあらわれない
それはたしかに愛だった
世界を憎んでいないと