ピザストア犬死亡命ドライヴのブルース
君の
車を
運転して
いた。
ピザを
食べようと
思って、
僕たちは
あっち
こっち
の 路上
くまなく
さがして
走った。
予兆に怯える 都市の
冬空の
下。
僕は
最愛の 君を
ずいぶん 長い年月
停車のない ドライヴに
ずっと こうして車に乗せたまま 連れまわし続けてきた。
時間は
たくさん
必要だった。
君と
僕は
車の中で
根絶やしにされる 多くの 愛し合う人々のこと、
それと
僕らが この世界のなかで 不在であること に ついて、
たくさんの
僕らが僕ら以前に 使うことのできなかった 言葉と
僕らが僕らの後に 恋に落ちるまでの 記憶
混ぜっかえるように
舌っ足らずな口で おしゃべりした。
ドライヴは
続き ながら、
時間が どんどん 混濁する
そのうちに
迷ってしまった 僕たちは
ピザ屋
なんて
決して いつまでもどこまでも 見つけられやしない。
きっと
ゆうべ
僕らが
この車の中で
じっ と
たたまれて閉じる物語 永久停止までの 不 安
二人 きり
くるまって 耐えて いた
あの 真夜中
ピザ屋のある
愛しい 世界は
遅れた 僕らを
二人だけ 残し、
どこか、
午前一時 の 地獄
に でも、
堕ちていってしまったのだ。
哀れに 嘲笑し合いながら
僕らの 安っぽい魂 ここで 息ひきとる
「 間の抜けた 終わりだね 」
「 犬死よりも ひでえ終わりさ 」
僕たちは 車を 走らせ続けている。
終わりが
近づいた
21世紀 、
魂たちの 災厄の都市 冬空 の 下 。
いつの日か また別の日にか
最後の詩を書く僕と 最後に残る君には 至高と 破局 どのような未来も 残されず 、
消されていく この いま
僕が 君のために してあげられることは
なにも
ない。
ピザストア犬死亡命ドライヴのブルース
映画『シド・アンド・ナンシー』で、主人公が恋人の死後にピザ屋へ向かうのが印象的で、この詩のモチーフになった。
タイトルを考えるのも、文章を膨らませるのも、悪戦苦闘した。
タイトルはブルースとあるが、筆者の中ではパンクの感じ。
作者ツイッター https://twitter.com/2_vich