第一部【代わり雛】
『おい!タコ!!まだ、業務課にいるのかよ』と第二課に飛ばされたニノにからかわれた。
『うるせぇな!何しに来た!?』
『お得意さんと、六本木で飲み会だよ』
『左遷されたら、景気がいいじゃないか』
『過去の亡霊の得意先相手じゃないから』
『その、亡霊に追い出されたのは、だれだぁ!?』
『オレだよ!!』
『わかってんじゃねぇか』
『何時までも、セコイ点検なんかしているんじゃねぇよ!タコ!!!!』
『バカヤロー!てめえは第二課に飛ばされたじゃないか』
第一部【代わり雛】
仕事内容に興味もなかったが用品アクセサリー・部品関係の総合卸問屋に就職してみた。
その為に、入社して此れと言った人生設計も描けなかった。
また、尊敬する人物を目標として生きる信念と根性もなかった。
まして、他人を蹴落としてでも生き抜く迫力と気力など持っていなかった。
そして、出世欲等、爪の垢ほども考えず、同期入社組には出世街道から置いて行かれて大きく溝を開けられていた。
また、後輩には、次から次へと追い抜かれても一向に気にも留めなかった。
第一部【代わり雛】
『非常識なやつだな』と西原社長が奈良田総務課長に言った。
『前代未聞ですね』と奈良田総務課長が呆れて言った。
『入試試験の成績はどのくらいだった』と専務が人事課長に聞いた。
『応募に来た全員合格しましたが、中は一番、最低の成績だったと思います』と答えた。
『そうだような』と専務は落ちこぼれになる事を感じたようだ。
『恐らく、酒で失敗するタイプだな』と麻布店6階に個室を持つ西原専務が鼻で笑った。
『高卒なので直ぐには戦力にならないでしょうなぁ』と地方課平田常務が付け足した。
『モノになるまで地方課業務で勉強させろ』と人事課の北里部長が、定年まで後、2年の地方課織田店長に言った。
『我が社の汚点にならないように鍛えろよ』と社長が全員役員に言った。
その為に、入社式早々後にも、先にも、わたし1人だけ不良社員の先駆けとして名前を覚えられてしまった。