第一部 【代わり雛】
『誰と誰ですか!?』
『石田・小坂・鶴見だ』
『分かるように気がします』
『お前も、一緒だ!解っているのか!?』
『はい!!』
『もう、2月だぞ。このまま行くと卒業してもルンペンになるぞ』
『ルンペンんかぁ!?』
『そうだぁ!?』
『厳しいですね!?』
『他人事のように言うな』
『(*^□^)ニャハハハハハハ!!!!』
『笑っている場合か!?』
『はい!!!』と背筋を伸ばした。
『分かったら、のんびりとしていないで、何処でも良いから、お前もはやく決めろ』と二年と三年の担任に職員室に呼び出されて、小言を言われた。
面接は、一度経験しているので同じ失敗はしなかった。
第一話【鏡】
『各クラスの生徒の殆どが、去年の12月までに就職が決まったぞ』
『そうらしいですね』
『何、他人事のような事を言っているんだ』
『はぁ!?』
『はぁ!だぁ!寝ぼけたことを言っているな』
『すいませんです』
『気の抜けている奴だな。就職先が決まっていないのは、お前を含めて5人だ』
『誰と誰ですか!?』
『石田・小坂・鶴見だ』
『分かるように気がします』
『お前も、一緒だ!解っているのか!?』
『はい!!』
『もう、2月だぞ。このまま行くと卒業してもルンペンになるぞ』
『ルンペンんかぁ!?』
『そうだぁ!?』
『厳しいですね!?』
『他人事のように言うな』
『(*^□^)ニャハハハハハハ!!!!』
『笑っている場合か!?』
『はい!!!』と背筋を伸ばした。
『分かったら、のんびりとしていないで、何処でも良いから、お前もはやく決めろ』と二年と三年の担任に職員室に呼び出されて、小言を言われた。
『先生!俺に合いそうな仕事がないんですよねぇ!?』と言い訳をした。
『どんな,会社に行きたいのだ』と追い討ちをかけられた。
『それが分かれば、とっくに決めていますよ』
『お前なぁ!遅くなればなるほど、待遇のいい会社の募集がなくなるんだぞ』
『取り敢えず、名前が知れていて倒産しない会社がいいですねぇ』と身の程知らずに言った。
『ピントのズレている奴だな』
『そうですかねぇ』
『大企業は、6大学でないと求人募集は来ないよ』と言った。
『9月頃はナショナルや資生堂が来ていましたよ』
『名の通った企業は、就職決まっていたろぅ』
『でした!!』
『自分の実力を考えてみろ』
『俺の頭じゃ無理か』と正気に戻った。
そして、
『中小企業でも、景気のいいところはいくらでもあるよ』と慰められた。
『出来れば、東京の中心にある会社がいいですねぇ』と又、ないものねだりをした。
そして、
『就職さえ出来ればいいんだから、贅沢言っていないでさっさと決めろ』と企業に顔の効かない、ドス黒く腐ったナスの萎れた顔した貧乏臭い社会科の、黒川良治担任にケツを叩かれた。
…………
『勝ちゃん!どうだった!?』と次に呼ばれた鶴見に聞いた。
『早く就職する会社を決めろ。と言われたよ』
『俺もなんだよ』
『くどい先公だよ』
『もう少し、企業に顔が効けば俺たちも苦労をしないんだよな』
『俺たち、F組では先公もペイペイに近いからな』
『A組の棚木は主任だろう』
『そう!2流大学なら顔が効くからな』
『誠のクラスなんか早かったよな』
『誠は、教師生活が長いから、企業にも顔が利くし、卒業した連中が偉くいなって依頼が来るんだよ』
『だから!平井なんか、10月に決まって、コンビニでアルバイトしていたものなぁ』
『最近出来たばかりのところか』
『そう!これから、流行るらしいよ』
『ふぅん~!?』
『コンビニもサービス業になるのかなぁ!?』
『求人募集は来ていなかったな』
『それほど、忙しくなないのだろう』
『そうだろうな』
『しかし、誠に怒られないのかなぁ』
『就職が決まったら、黙認しているみたいだよ』
『それに!決まってしまえば、期末テストで赤点取っても,金を払って卒業できるものなぁ』
『しかし、俺に合った、いい会社が無いんだよなぁ』と悩んでいた。
『中ちゃんは、どうするの』と聞いてきた。
『俺、この会社に受けてみようかと思っているんだ』と求人一覧書を指さした。
『どれ!カー用品部品総合卸問屋か』と目を細めて言った。
『そう、初任給が他の会社より千円高いし、運転免許も会社で取らせてくれると、書いてあるから、ここにしようと思っているんだよ』と金に釣られて言った。
『一人で行くのも嫌だからさぁ』と意味深なことを言った。
『それなら、俺も行くよ』
勝っちゃんとは、それ程親しくは無かったが、なんとなく決めた。
そして、昼休み職員室に行き黒川先公に報告した。
『先生!鶴見と2人で、イースト㈱会社に訪問してきます』
『分かった。それで、何時行くんだ!?』
『明日、履歴書持って、午前中に行ってきます』と答えた。
『提出したら学校に戻って来いよ』
『はい!!』
『勝っちゃん!朝学校に来るのも面倒だから、何処かで待ち合わせをしようか?』
『そうだな!何処にする?』
『会社が虎ノ門駅から歩いて5分だから、駅で待ち合わせようか』
『何処の出口にする』
『行った事がないから、分からないな』
『地図で見ると、桜田通りになっているから、桜田通り側で待ち合わせようよ』
『そうだな』
『それで、時間は何時にする?』
『11時に行くとして、10時30にしようか』
『そうだな、間違えても30分あれが大丈夫だろう』
『じゃ、そうしよ』
『じゃ、明日な!!』
『かぁちゃん!明日会社に履歴し出しに行くよ』
『そう!それで何処の会社だい?』
『虎ノ門に本社がるカー用品の卸会社だよ』
『株式登録はしているの?』
『そこまでは、分からない』
『じゃ、決まったら、川崎のおじさんにきいてみるか』
『おじさん!株やっているの』
『そうだよ』
『うん~』
『それで、明日何時に行くんだい』
『11時に行くよ』
『じゃ、9時に家をでないとダメだね』
『バスで新小岩に出るのと、葛西から東西線で行くのと、どっちが早いのかな』
『バスだと、新小岩まで一時間はかかるね』
『葛西まで歩いて30分ガから、地下鉄の方が早いか』
『会社も地下鉄が近いんだろう』
『虎ノ門駅から5分だよ』
『なら、東西線で行った方がいいね』
『それに、遅刻するとイメージが悪くなるからね』
『別に、時間指定で無いから大丈夫だよ』
『いや、普段の心がけが大事なんだよ』
『そうか』
『東西線から大手町で乗り換えて銀座線で虎ノ門駅か』
『よし!!』
『かぁちゃん!明日、会社に行ってくるよ』
『決まったのかい』
『いや、履歴書を持っていくだけだよ』
『なんだぁ』
『受かりそうな会社かい』
『わかんないな』
『それで、どんな会社よ』
『カー用品の卸だよ』
『ふん~』
『大きいのかい』
『業界では大手らしいよ』
『なら!いいじゃない』
『うん!!!』
『何時に行くんだい』
『同じクラスの奴と10時半に虎ノ門駅で待ち合わせをして行くんだよ』
『そう!行き方は分かるのかい』
『ここからだと、町屋から霞ヶ関で乗り換えて銀座線で虎ノ門駅だね』
『何時間かかるかな?』
『一時間は見ておきな』
『うん!!』
次の日、2月7日月曜日10時30分に2人で会社に訪問した。
『オオォォォ-ぃ~こっち!!』と手を振った。
『オオォォォ-』と手を挙げた。
『反対側に出たよ』と勝っちゃんが言い訳した。
『じゃ!行こうか』
そして、イースト㈱会社の看板探してキョロキョロ見回し5分強歩いた。
すると、白い新築のビルに挟まれた、6回建てのビルだった。
『ここか。古臭くて汚いビルだな』と両隣と見比べて勝っちゃんが言った。
『本当だ。それに、右に傾いているよ』と上を見上げて私は言った。
『大丈夫かな』と勝っちゃんが、首をかしげた。
立て看板は出ていたが、只の旧式戦前建築物で、老舗の古さではなかった。
『とりあえず、履歴書だけ出して帰ろうか』と無駄足にしないようにした。
そして、正面玄関横のオフィースを見た。
『忙しそうだな』
『ホントだ、電話が、鳴りっぱなしだな』
『何人いる』
『男だけで、10人いるよ』
そして、ガラス張りの一階の都内課事務所に入った。
『すいません。入社希望で来たんですけど』と私が言った。
すると、売り上げ伝票計算をしていた、40歳のオールドミス?の事務の和泉さんが応対してくれた。
『いらしゃいませ』と口の周りにシワを寄せて微笑んだ。
『履歴書を持ってきました』と勝っちゃんが言った。
『ご苦労様です。それでは、こちらへどうぞ』と先頭に立ち階段を取締役員連中が喜びそうなケツの振り方をして登っていった。
『こちらで、しばらく、お待ちください』
『はい』と前面に社長の額が掛かっている5階の会議室に案内された。
そして、隣の総務部に入り、人事課の古賀課長のところに行った。
『課長、入社希望の男子学生が2人来ました』と報告した。
『大学生ですか』と聞いた。
『いいへぇ、男子高校生です』と付け足した。
『そうですか、すぐ行きます』と自分のディスクに戻った。
そして、入社試験資料を持って、古賀人事課長がニコニコ笑って入ってきた。
『ご苦労様です。私が人事課の古賀です』と2たりに名刺を渡した。
『はい。ありがとうございます』と私たちは頭を下げた。
そして、少し遅れて、真行寺さんがお盆に三つお茶を載せて入ってきた。
美人で、目から鼻にかけて整った唇まで抜けるような、スッキリと整った顔立ちだった。
また、スラリとした姿勢で背筋を伸ばし、それだけで美人と分かり、甘い香りが爽やかさと清潔感を出していた。
そして、私たちの前に客茶碗を置き、課長の前に湯呑茶碗を置いた。
私たちは、黙って頭を下げた。
『今まで他の会社の入社試験は受けましたか』と聞かれた。
『いいえ、ここが初めてです』と勝っちゃんが答えた。
『そうですか』と言って私の顔見た。
『僕もです』と私は嘘をついた。
そして、入社試験日程表を私たちに配った。
合格不合格の発表は、後日封書で自宅に郵送されることになっていた。
『質問はありますか?』
『ないです』
『それでは、試験日に来てください』
『はい』と頭を下げた。
『それと、決して遅れないでくださいね』
『遅れると、試験は受けられませんか』
『はい』
『わかりました』
そして、学校に帰り黒川先公に報告した。
『入社試験はいつだ』と聞いてきた。
『来週の月曜日、9時からです』と私は答えた。
『そうか、頑張ってこいよ』と問題児片付けに期待して言った。
2月14日月曜日に9時から本社会議室で入社試験を受けた。
そして、一週間後に郵送で合格通知が届いた。
『キミオ、よかったじゃないの』とかぁちゃんが喜んで言った。
『うん。3月から会社に行くよ』と嬉しさを噛み殺して、気のない返事をした。
『早いわねぇ』と嬉しそうに言った。
『仕事を早く覚えるために、各課を巡回するんだって』とこれから始まる別世界に興味を持って答えた。
『そう、学校は』と素朴に聞いた。
『卒業式の時だけ行くよ』とクソ面白くなかった学校と縁が切れる事が嬉しかった。
『そう、かぁちゃんも行かなければいけないね』と言った。
『来なくても大丈夫だよ』と面倒くさそうに言った。
『卒業式だから、行かなくては不味いよ』
とりあえず、けじめをつけることにした。
そして、3月20日午前中に卒業式は終った。
昭和47年三月1日から虎ノ門本社に初出勤した。…………
仕方なく残り少なくなった求人表を見て初任給の高い会社を探すことにした。
二学期の始まりになると廊下の壁に各企業の求人募集が貼り出される。
アイウエオ順に並んでいる求人表にTVのコマーシャルでよく見る資生堂が載っていた。
『面白そうだな。受けてみるかな』と目星をつけて、その日は見送った。
そして、一晩考えた。
『会社も大きいし倒産することもないだろう』と応募することに決めた。
次の日、職員室に行く前に、もう一度求人欄を確認すると消えていた。
『遅かったっかぁ』
他校からの入社が決まり求人募集は締め切ったようだ。
心残りはあったが縁がなったと諦めて最初から見直した。
そして、就職活動とはどうゆうものか『取り敢えず此処にするか』と模擬テスト感覚でコロンビアレコード会社を隣のクラスの松下と2人で受けてみた。
答案用紙を配る女子社員は二〇代半ばに見え、背が高くて細身の垢抜けのした美人だった。
『OPECとは』
『ASENAとは』
『WSOとは』
『分かんえんぇなぁ』
『次に行こう』
『!?!?!?』
しかし、隣の松下は合格したが、わたしは一般常識筆記試験が0点で面接の返答が曖昧で不合格になった。
『学生服を脱いで面接をするときは、半袖シャツを着ていけ。間違っても長袖シャツを、折りたたんで面接を受けるなよ』と黒川先公に言われていた
間抜けなことに、忘れてしまい長袖シャツをまくって受けた。
重役タイプの面接官たちが、10人ほど並んでいた。
そして、真ん中に座っていた面接官に聞かれた。
『家族構成は?』
『はい。両親と兄二人と妹と僕の六人家族です』
『父親の職種はなんですか?』
『今まで、鋳物工でしたが倒産したので分かりません』
『仕事を探しているわけですね』
『いいえ、働いていますが、仕事は分かりません』
『尊敬する人は誰ですか?』
『今東光です』
『なぜですか?』
『自分の言っていることに自信を持っているからです』
『はい、結構ですよ』で面接が終った。
そして、見事に落とされた。
『こんなもんだなぁ、まぁいいか』と若さでショックを抑え、気を取り直した。
『就職出来ればどこでもいいか』と仕事の内容も分からず虎ノ門本社に筆記試験と面接を受けに行った。
午前9時から筆記試験で午後1時から面接試験が始まった。
面接は、一度経験しているので同じ失敗はしなかった。
ほかに大卒生等男女合わせて20人程受けに来ていた。
大した成績ではなかったが景気の波に乗り、同クラスの鶴見と2人共に合格して仕舞まったのには『目出度し』と喜んだ。
一年後に大山浩二郎企画部長に私の試験答案紙を見せられた。
『中くん!君が就職試験を受けた時の将来の夢作文だよ』
『ニャハハハハハハ!!!!』と鼻で笑って見せた。
すると、字はミミズが這っていて、漢字の間違えが多く作文は小学生低学年だった。
『これでよく合格したな!?』と高度成長期の景気の良さに感謝した。
第一部 【代わり雛】
重役タイプの面接官たちが、10人ほど並んでいた。
そして、真ん中に座っていた面接官に聞かれた。
『家族構成は?』
『はい。両親と兄二人と妹と僕の六人家族です』
『父親の職種はなんですか?』
『今まで、鋳物工でしたが倒産したので分かりません』
『仕事を探しているわけですね』
『いいえ、働いていますが、仕事は分かりません』
『尊敬する人は誰ですか?』
『今東光です』
『なぜですか?』
『自分の言っていることに自信を持っているからです』
『はい、結構ですよ』で面接が終った。
そして、見事に落とされた。
『こんなもんだなぁ、まぁいいか』と若さでショックを抑え、気を取り直した。