花の下にて
軽やかに舞う埃を眺めていた
あなたは私をいつも特別扱いして
可愛がっていた
壊れ物を扱うように、私に触れた
春の陽気に包まれて
知らず頬が桜色に染まる
あれから何年経ったろう
あなたの愛に私は精一杯応えたつもり
お気に入りの童謡を口ずさみながら
あなたの体を丁寧に拭いていく
動かない手
皺だらけ
真っ白な髪
穏やかな顔
楽しげな夢でも見ているようね
怖いのは、その先に何があるのかわからないから?
もう一度、手を握りあい
夜空の果てにあるものを見たかった
もう一度、目を見開いて
その先へ
あなたと二人で
一粒の雫が
一滴、あなたの頬に落ち
涙のように流れていった
花の下にて
願わくは 花の下にて 春死なむ
読んでくださりありがとうございました。