花の下にて

軽やかに舞う埃を眺めていた

あなたは私をいつも特別扱いして
可愛がっていた
壊れ物を扱うように、私に触れた
春の陽気に包まれて
知らず頬が桜色に染まる

あれから何年経ったろう
あなたの愛に私は精一杯応えたつもり

お気に入りの童謡を口ずさみながら
あなたの体を丁寧に拭いていく
動かない手
皺だらけ
真っ白な髪
穏やかな顔
楽しげな夢でも見ているようね

怖いのは、その先に何があるのかわからないから?

もう一度、手を握りあい
夜空の果てにあるものを見たかった

もう一度、目を見開いて
その先へ
あなたと二人で


一粒の雫が
一滴、あなたの頬に落ち
涙のように流れていった

花の下にて

願わくは 花の下にて 春死なむ
読んでくださりありがとうございました。

花の下にて

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-22

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