セブの裏道のマッサージ店での世にも奇妙な経験について
今日はシリアスな話と軽い話とどちらにしようか考えましたが、どうもちょっと頭が痛いので軽い話をすることにしました。
しかし皆さん、今日の軽い話はちょっとパンチが効いていますよ。お化け屋敷とかが好きな人だけご覧ください。
僕が書いた文章を一度でも読んだことがあることは何となく感じられるかもわかりませんが、僕は結構怖いものを覗いてみたくなるタチです。
現実の僕はですね、これはみなさん一度も見たことはないはずですが、一見ごく普通の真面目な青年に見えるんですね。
で、それでいて一見やんちゃに見える人間がしり込みするようなことを誰にも言わず一人でやってきてみて、で飲み会の興が乗ってきた頃にふとそのエピソードを披露して、「へえ!」とびっくりされるのを、「へへっ」という顔をして見せるのが好きな人間です。
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例えばですね、こんなことをやりました。
学生時代に北京に用があったので行ったのですが、以前一度見た上海という街にもう一度行きたくて、あえて茨城発上海行きの飛行機で飛び、そこで丸一日上海を回る日を作り、しかる後に新幹線で北京に行く旅程を組んだのです。
僕は上海の西洋建築の上にローカルの人々の生活感あふれる雰囲気が乗っかっている南京西路が本当に大好きで、その時も、公安警察に止めろ止めろと説得されながらひたすらに路上演奏を続ける若者とか、物乞いをやっている子供を連れたおじいちゃんに「いま小銭がないけどこれならあるから」にこにこしてミネラルウォーターを渡すというおばちゃんとか、道の真ん中でコンチネンタルタンゴを流して社交ダンスをやっているおじいちゃんおばあちゃんを見て、本当にこの街は、小洒落ていて、人情味あふれていて、人が生き生きしている街だなと感心していました。
で、今度は路上でカラオケ大会をやっているおじちゃんおばちゃん達を遠巻きに眺めていました。いや、日本は本当に中国より民主的なんだろうか、いやむしろ、少なくとも上海に関して言えば、上海の方が東京よりよっぽど民主的なんじゃないだろうかとか、まあそんなようなことを考えながらいたわけです。なにせ東京では、道の真ん中でカラオケ大会なんてやり出したらすぐに交番から警官が飛んできて彼らを追い散らすに違いありませんからね。
さて、話が七めんどくさい方向に向かいだしました。今日はバカ話をする日です。話を戻しましょう。
何事か中国語で話しかけてくる女がいるのです。
"What?"
と聞くと、割合に正確な、日本のそこそこの大学を出た人程度の英語で
"Oh, excuse me. I thought you were Chinese. Where are you from?"
とかなんとか聞いてくる。
なかなか色黒で目がぐりぐりっとした田舎の子といった風で、まあ特段に美人でも不細工でもない、歳は20チョット位かなという子でした。
まあなんかどうでもいいようなことをやたら話してきて、ちょっと散歩しないかといってくる。
僕はこの時、「こりゃ詐欺だ。」と直感しました。
しかし、何を根拠にこう思ったか、今ではもはやもうよく分からないのですが
「多分この女は、まず喫茶店のようなところに連れて行って、で次にこの女の店に連れ込んで酒を飲ませてたんまり巻き上げる算段だろう。なら1軒目は付き合ってみて、ちょっと上海の詐欺っていうものの何たるかを覗いてみよう。」
と思ったのです。
こんなこともあろうかと、僕はホテルに財布は置いてきて、左ポケットに100元、右ポケットに100元、後ろポケットに100元の合計300元しか持っていきませんでした。当時の価値で300元は3900円ですね。そんなこともあって、彼女が僕にひっついて歩きながら、我々をつけている年増の女とアイコンタクトを取り合っているのを横目に見ながらも、「まあとられても300元だ。」という気分で道を歩いていきました。
果たして彼女は疲れたからちょっと喫茶店でお茶でも飲もうと僕を「上島喫茶店」とかいう名前の喫茶店に連れ込みました。
僕は100元かそこらのアイスコーヒーを頼む。するとウェイターが100元のアイスコーヒーと120元のロイヤルミルクティーを持ってきたかと思うと、大皿にたんまり盛られたフルーツセットをいきなり持ってきた。
「おいこんなもん俺は頼んだと承知してない。」
「まあいいじゃないの。そんな高く無いわよ。」
云々とのたまう。中国人は僕が思ったよりもTime is Moneyの箴言に忠実だったようで、1軒目で油断させてから2軒目で搾り取るなんていう迂遠なやり方は採らずに、1軒目で早速仕留めにかかったわけです。
僕はアイスコーヒーを一気に飲み干して、
「俺はもう帰る。アポイントメントがあるんでね。」
と席を立った。
「まあ、もうちょっとゆっくりしていきなさいよ。折角会ったんだし、もっと話したい。」
「いや、帰る。」
と、彼女はこの男はもはや自分たちが詐欺師であることに気づいたのだと悟って、ウェイターを呼ぶ。
ウェイターの持ってきた勘定書に2500元と書いてある。なんでこの女に4万円巻き上げられなきゃいけないのか。
「こんな高いものを俺は頼んでない。俺が頼んだものは100元のアイスコーヒーだけだ。俺は100元以上びた一文払わない。」
「そんな、あなた中国ではね、払いは全部男がするっていうのがルールなのよ。」
「俺は日本人だ。中国のローカルルールなんか知ったこっちゃない。」
「ねえ、あたしに恥をかかせる気?」
「俺はあんたに何の義理もない。」
「私お金無いの。」
「そんなの知ったこっちゃない。自分が頼んだものの払い位自分で始末をつけろ。」
ここにきて彼女が脅してきます。
「あたし彼氏がいるの。ギャングにも知り合いがいるのよ。今から電話する。」
とかなんとか言いだし、本当に携帯電話を手にどこかに電話をしようとする。
ここで合理的に考えれば4万円を払って中国ギャングに臓器を取られるリスクを避けるのがまっとうな選択だと思われるが、僕の本能は僕に、それとは真逆の行動をとらせたのです。
「バカ言え、お前にギャングの伝手があるなんて嘘八百に決まってる。」
と言い捨て、カバンを取って店の出口に歩き出す。
それまでウェイター役をやっていた詐欺仲間がついに正体を現して、Hey You!とかなんとかいって凄みを利かせる。それがますます僕を怒らせる。女はわけのわからないことを英語で機関銃の如くまくしたてる。冷静に振り返れば、こんなに英語ができるのにこんなセコイ詐欺でしか稼ぎようがないなんて、この国の経済はどうなっているのだろうと他人事ながら少し心配になります。
ただ、いざドアを出ようとした時、そういえば自分はアイスコーヒーを確かに飲んだことを思い出しました。そして彼女のロイヤルミルクティーを奢るのも、日本人の一般的常識に照らしてそう外れていないとも思いました。そこで、あくまで払うべきものは払いますよということで、僕は両手をポケットに突っこんで、200元を彼女にたたきつけてドアを出ようとしました。払うべき分だけですがね。
"Not Enough At All"
金切り声をあげる女。
"Shut Up! I WOULD CALL POLICE AND SEND YOU TO JAIL"
生涯、これほど大きな声で人を怒鳴りつけたことは過去一度もなかったのです。やはり本能は危機に際しては攻撃的になるようにできてるんですねえ。
女は心底悔しそうな顔を浮かべて、200元を相棒の男の手に叩き付け、中国語で何事か罵った。彼が情けなさそうな顔をしてしょんぼりしている。
「あんたの迫力が足りなかったのよ。大体日本人なんていいカモじゃない。ほんとダメな男。」とかなんとか言われているのでしょうか。
なるほどね、この子たち、新人さんだったのね。
怖いもん知らずの日本人を狙っちゃってずいぶん時間を損しましたね。お気の毒様。せいぜいこれからはもうちょい芸に磨きをかけて精進してくださいな。
と、こんな具合で店をでて、バンドの夜景でもみて気分転換しようと思ったのですが、しばらくすると僕はこのわけのわからない魑魅魍魎とした上海という街に、たった一人で来ているのだという事実に急に恐怖を覚えて、タクシーでホテルに帰って寝てしまいました。
誠に、人間はよく出来ています。危険からは離れるようにできています。
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こんな具合の怖いもの知らずですから、当然セブに赴任した時も、繁華街をうろつくわけです。一人で。
で、よりによって道を一本入るんです。
その通りは、大きな病院だとかセブンイレブンがあるくらいですから、フィリピンの基準で言えば決して危険な、貧しい地区というわけではありません。しかし、時々目つきのおかしいボロボロのランニングを着て黒ずんだサンダルをひっかけた痩せこけた老人とすれ違ったりはするので、あまり歩いていて心地いいところではありません。最初1,2回歩いた時は、結構構えましたね。それ以降は全然平気でしたが。
僕はグレーゾーンのマッサージ屋に行くのが大好きです。どこか知らない街に行ったら必ず探し出していきます。
何故置屋なりなんなりに行かないのか?行ったらセックスするのが分かりきっているからです。それに第一、初めて会った女と5分後にセックスするって、明らかに不自然じゃないでしょうか?僕は自然の摂理に反した行為は好きでないです。
何故キャバクラに行かないのか?別におしゃべりするだけなら家にも会社にもどこにでも女の子はいますからね。もったいない。
何が起こるか分からないから、マッサージ屋は面白いのです。
それに、マッサージされている間に女とあれこれ話すのが、その国の下層階級の生活の実際を知る一番手っ取り早い手段ですからね。
僕は割合にエッチなことをされている間もそんなことを考えています。
そのマッサージ屋は、いい具合に荒んだ感じの部屋のくたびれたマットレスの上で、いい具合に熟れた女が、いい塩梅のタイミングでそういうところに手を伸ばし、そういうことをしてくれるお店です。
普通マッサージ嬢というのは、どこまでも個人事業主ですからね、割合に個性があるし、融通も利くのです。ただ、当地では融通の利き方の幅が飛んでいるんです。
「ユー・ワント・スぺシアル」
と、口を耳に近づけて小声で持ちかけてきます。
これは日本で言えば、手で処理してくれる、ということを意味します。よほど柔軟な人でおっぱいを揉ませてくれるくらいです。
1,2人、極端なまでに突っ走るマッサージ嬢を日本でも知っていますが、これはもうもはや趣味と実益を兼ねて商売をやっているような、ある種のフェティシズムに取りつかれたような女です。この女について語るならば、それだけで一つシリーズを組むべきですし、そこから性とはなんぞや、という問いに対する何らかの答えのヒントを得ることができるとさえ言い得ましょう。
"What?"
そのちょっと腹は弛んでいるが、いい感じに尻の丸い、僕がこういう場でいたずらをするのには気に入っている女はこう答えます。
「ハンド、トゥリーハンドレッド、ブラウ、ファイブハンドレッド、ソクソク、ワンタウザント」
手なら300ペソ、口なら500ペソ、本番は1000ペソ。つまり手なら900円、口なら1500円、本番3000円。こんな具合です。
僕はたまたま500ペソしか持ち合わせがなく、全部使ってしまえばタクシーで帰れなくなるので、
"No Money. Hand Please."
ということでやってもらいました。
「ネクストタイム、ブリングワンタウザント、リメンバー」
フィリピン人も下層の方の人の英語は日本人と大差ありません。
まあ、こんな正常な神経ではできないようなことは、お互い流ちょうな言葉で話せるような相手とはとてもできませんから、3歳児の言語レベル位で話が通じる位がちょうどよいのです。
ちなみに余談ですがね、この店も、昼と夜では大分雰囲気が違うんですよ。
日曜日の昼間、休日出勤の前にちょっと一発抜いていくかということでその店に寄ったんです。
するとジーパンをはいた若い子がつきました。
"Do you want business?'
なるたけ簡単な英語で聞いてみると。
"No, I just came from Davao a few weeks ago. I am too young to be involved with such a thing."
とにべもない答えです。
まだ私はそこまで堕ちちゃいないんです、ということですね。まあ、川の向こうにわたるのも時間の問題でしょうがね。
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さて、前座は跳ねました。真打の登場です。
あそこは昼間に行くところじゃないと理解した僕は、夜中の12時半にホテルのドアマンにタクシーを呼ばせる。
大体ドアマンはこの時間にタクシーを呼ぶ客の行き先を知っていますから、どこか軽蔑するような目線を投げかけます。
しかし、そんなことにかまっていては、この国で外人として働いていけません。なにせ、オフィスで突然歌いだすような連中を相手にしなくちゃいけないわけですから、よほど神経が図太くないとやっていけない。
タクシーが捕まると、5分も行けばその店につきます。
別に決まった女がいるわけではないので、誰でもいい、250ペソを店に払う。これはママの取り分ですね。そのうちの何割かがマッサージ嬢にわたる。
そして女が出てくる。薄暗い中でみると、なかなかに彫りの深い女だ。
僕は彫りの深い顔をした女が好きなので、これはあたりかなと思いながら身を委ねます。
フィリピンのマッサージは日本のマッサージとはちょっと違い、まず肩から揉んでいく。そして背骨に沿って順々に下に移っていくんですね。で、お尻まで来たときに、
「オーケー?」
「イエス」
と、男はちょっと腰を上げる。
女は両手を太股に滑り込ませるように差し入れる。
両手は徐々に内またに、鼠蹊部に、近づいていく。
そして手はさっと睾丸部をかすめる。この時僕はいつも思わず「あっ」と声をあげてしまいます。
そして女はオイルを手に取り、睾丸を両手で包み込む。
その手は、陰茎に伸び、僕は息を漏らしてしまう。
と、
「ユーニースペシャル?」
「イヤア」
彼女はうまい方でした。
「ワンファイブ」
フィリピン英語で1500ペソの意味です。どういうわけか、彼女のオファーはソクソク一択でした。
「オーライ」
躊躇なく応えます。
すると、彼女はポケットの中からさっとゴムを取り出し、手慣れた手つきでペニスに装着する。
着けたが早い、彼女は穴にさっと入れました。
生温かさがゴムを通じて感じられ、声を漏らす。
しかし彼女、どうも変なんです、要はTバックを指でずらして挿入していて、前は見せないんです。
しかも、月明かりを頼りによくよく見ると、これはこの女、前じゃなくて後ろに嵌めている。
これは、あれか・・・
と思いつつも、私その手の人たちにお世話になったのは今回が初めてではありません。後から気づいちゃったパターンですがね。少なくともこの人が女だと思えるならば、それでいいやと思い直し、この人の顔をじっと見る。すると、この人は本当に気持ちよさそうな顔をしている。そして艶めかしく腰を振っている。ちょっとハスキーに喘いでさえいる。
あー、エロい。
しばらくして、僕は射精しました。
「サンキュー」
この人、少し不満げに言います。
「ユートゥークイック」
この手のセリフ、これは売春婦のお愛想です。さっさと終わらせたいのが実際のところなわけですから。
「ソ-リー。アイウィルトレインマイセルフ。」
どうやってTrainするんだって自分で自分のことが笑えてきましたが。
もうちょっとマッサージしてあげる。とこの人は言いました。
大体この手の不真面目な店は、出すものを出せば決まった時間が来ようがきまいがそれでおしまいです。
なかなか立派な人だと思いながら、うつ伏せになれというのでうつ伏せになります。
この人肩を揉んでくれました。結構うまい。さすが元オトコなだけのことはある。力が強い。
とかなんとか思いながらウトウトっとしていると、妙にこの人が腰を僕の尾骶骨に押し付けてくることに気づきます。
なんだ、もう一商売するのに僕を焚き付けようとしているのかと思うと、
どうもこれは、人間の手のようなものが、僕の背中で早いリズムを打って動いていることがわかる。
そのリズムの速さというとですね、まあ大体、良く運動会のBGMで出てくる天国と地獄のカンカンダンスのテンポ位の速さですね。
やがて粗い息遣いが聞こえる。
僕は男ですからね、まあ、8割方状況を理解したわけです。
心持としては極めてニュートラルで、鳥肌が立つでもなければ勃起するでもない。
人間極めて異常な状況に遭遇した時は、多分対象を良く見定めるために、冷静になるようにプログラムされているのだと思います。
その人の息遣いと腰と手の律動がやがて止まり
「フィニッシュ」
とやや上ずった声で言いながら席を立ちます。
怖いもの見たがり屋の僕は、この人が僕の背中にかけていたタオルを手に取って匂いを嗅いでみました。
ここでやめておきましょう。
セブの裏道のマッサージ店での世にも奇妙な経験について
まあ、世の中広いです。
でも、もう一歩位なら行ってみてもいいかなっと思います。ラオスの置屋とか。
シャワーがなくって水を汲んだ桶が置いてあるだけだそうです。
そこまでいったら、インドのボンベイに進むのではなくて、トルコのベリーダンスとか、スペインのフラメンコとか、その種のエロスに触れてみたいと思います。