高校生細工師とモノノケ商店
常世と幽世に存在するとある一軒の工房
眩く美しい色とりどりのガラス細工が並べられている工房には多くの人や妖達がそのガラス細工に魅せられ訪れる。
しかもそのガラス細工は魅せられるだけでなく[願いや想い、情景]を叶え見せてくれると言う噂でも有名らしい
そんな工房を一緒に覗いてみませんか?
工房の主は今日も学校が終わるとお客様を待ち続けているのですから…
始まり
卯月の上旬。
山吹や桜が咲き乱れている。
東京の下町の方では、今日から入学式シーズンである。
そして私立九星学園も本日入学式で続々と校門を潜る新入生。
そんな生徒の中には普通に制服を着ている者と制服の上からマントやポンチョを着た者達が目につく。これは、九星学園の学科を区別する為らしく普通科は制服だけ、工業科は椿のバッチ、そしてこの学園でしか存在しない神学や陰陽道などを高校卒業資格をとりながら学べる神陰科は黒いマントやポンチョを着用する規則であった。
そんな神陰科の生徒の特長であるマントを靡かせ校門を潜ったガラス細工のペンダントをした1人の女の子に誰もが目で追ってしまう。
女の子はそのまま学校の中に行ってしまい目で追っていた人達は次々に視線を戻して何事もなかったかのようになっていった。
しかし1人だけ女の子が入っていった方をまだ見つめているのだった。
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入学式が終わりそれぞれの学科は教室に戻っていくとすぐさまHRが始まった。
H簡単な学校の規則や配布物を渡した後先生が唐突に話始めた。
「では、クラスの親睦も含めて当てた人から自己紹介をしてください。では…神木山姫さん!」
先生に呼ばれ立っていたのは入学式前から生徒の注目を浴びていたガラス細工のペンダントをした女の子であった。
そして山姫は微笑みながら自己紹介を始めた。
「神木山姫と言います。得意な分野は神道と幻術です!これから3年間宜しくお願いします!」
自己紹介が終わるとクラスの皆は笑いながら口々に“よろしく!”と言った。
自己紹介は着々と進み次に当てられたのは安倍清綱という男の子だ。
名字から皆少しざわついたがそれを気に止めないで淡々と困った顔をしながら自己紹介を始めた。
「僕は、安倍清綱。…陰陽道が得意です。」
それだけ言うと清綱は椅子に座り顔を伏せた。
先生も皆も苦笑いになりながらも自己紹介が再開したが山姫はHRが終わるまでずっと清綱の事を何故か真剣な表情で見ていた。
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下校のチャイムがなり素早く帰ろうと清綱が鞄を机に置いたと同時に頭の上の方から声がした。
「あの…安倍君。話があるからちょっと残ってくれないかな?」
「別にいいけど…安倍君は止めてくれないかな」
「じゃ…清綱君でいい?」
山姫の質問に今度は頷いた。
そして皆は次々に帰っていきとうとう2人っきりになった。そしてそれを確認すると山姫は清綱の方に向き直ってから直球に言い出した。
「清綱君は…“安倍家”は嫌い…?」
「好きだよ…でも、自分はご先祖の晴明様よりも家の誰よりも劣っている。僕は恥でしかない。」
困った顔をさらに歪めながら話す清綱に対し山姫はため息をついた。
「そんな事ないですよ。君なら出来るよ。」
「出来ないにきまってるんだ!ほっといてよ…」
「…今日は帰るよ。でも、明日ここに来て」
ガサゴソッと鞄を開け中から1つの封筒を渡し“絶対に”と言い霧の様に消えていった。
これが全ての“始まり”であった。
高校生細工師とモノノケ商店