ベットシーツを直すとき
ベットシーツを直すとき
彼は猫よりも蝶よりも、軽やか。
彼が纏う甘いムスクの香りに酔う。
彼のキスは鉄のような味がする。
きっと煙草の所為だろう。
安っぽいライターのあかりを何度も灯して。
何も無い ただそっと 目をつむるだけ。
ベットシーツに付いた跡をなぞって。
ぬるい温もりが消えた頃、
私はそっとベットシーツを直す。
何も無い ただそっと 目をつむるだけ。
ベットシーツに染み付いた「愛」を数えて。
ベットシーツを直すとき
真っ暗な田舎道に突如ネオンの輝きが現れる。
まるで周りの空気に馴染んでいない、そこだけ異空間であるように堂々とそびえ立つ、少し廃れたラブホテル。
「愛を知り愛を感じ愛を生み愛を育み愛を誓う」
そんなのは知りもしない。いつも見ないふり。
知っているのは、只々私の上に体温が重なるだけの、なんの含みもない、無機質な行為だけだ。