ベットシーツを直すとき

ベットシーツを直すとき

彼は猫よりも蝶よりも、軽やか。


彼が纏う甘いムスクの香りに酔う。


彼のキスは鉄のような味がする。


きっと煙草の所為だろう。
安っぽいライターのあかりを何度も灯して。



何も無い ただそっと 目をつむるだけ。
ベットシーツに付いた跡をなぞって。



ぬるい温もりが消えた頃、


私はそっとベットシーツを直す。



何も無い ただそっと 目をつむるだけ。
ベットシーツに染み付いた「愛」を数えて。

ベットシーツを直すとき

真っ暗な田舎道に突如ネオンの輝きが現れる。
まるで周りの空気に馴染んでいない、そこだけ異空間であるように堂々とそびえ立つ、少し廃れたラブホテル。

「愛を知り愛を感じ愛を生み愛を育み愛を誓う」

そんなのは知りもしない。いつも見ないふり。
知っているのは、只々私の上に体温が重なるだけの、なんの含みもない、無機質な行為だけだ。

ベットシーツを直すとき

  • 自由詩
  • 掌編
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2016-11-15

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