灰の破裂音

土の下に

 水墨の煙は、裏庭からカスを巻き上げて辺りに立ち込めている。ボクは切断されたドラム缶に座り折れたデッキブラシで焦げた残額を突っついてた。パチパチと不透明な音と赤く熱された粉を眺めては微笑を頬に作りボクが燃やした放射する黒い産物を見つめうっとりと感じていた。
 最近、嵌まりだしたこの静かな趣味はおそらく他人から見ると勿論だと思うが理解を得られないであろう。去年の十月、素晴らしく乾燥した日だったことを覚えている。小さい時から飼っていたコモドオオトカゲが死んで裏庭の花壇に埋めた。けども夜な夜な何かの動物がコモドオオトカゲの死骸を掘り起こして放置するのだ。当たり前の事だが再び土の下に埋めた。だがこの正体不明の動物は飽きることがないらしく掘り起こしては死骸を放置した。そういった事が続くと異臭、腐臭は鼻につく、また骨が見え始めた顔には気分を害した。仕方がないからボクはこう考えた。燃やして骨を埋めようと。確か理由はこうだっと思う。
 ボクはその日から裏庭に獲物を持ち込み燃やすことが習慣になり始めていた。皮の財布、ラジコン、車のホイールと、するとだ。他にも燃やしたくなった。そこで次にカエル、ラインカー、お札、教科書、イタチの標本。そして今、ボクはある一冊の本を手に取った。高校時代の卒業アルバルであった。捲りたい衝動を抑えて不完全燃焼の炭の上に置いた。マッチを擦って放る。ぺかぺかした乾いた紙はすぐにオレンジの炎を上げてくれた。もう一つ言うとアルバムのあるページにはボクが惚れた子がいた。
 お世辞にも容姿は良いと言えなかった。だがその子にボクは何故か惹かれていたわけで教室や廊下、体育館、武道場、テニスコートとその子の姿を見つけるとボクの目は自然とその子を追っていて、恥ずかしい事に日が過ぎ去るにつれ、その子の姿を探す回数が増えた。そうした或る日、その子の目とボクの目があった。そこでボクは気づいた。その子はボクに惚れていると言う事に、すると、何故かこの瞬間からボクの中にあった熱は冷めた。いやもしかすると、惚れられる事が怖かったのかもしれない、ボクは次の日からその子を見ることを辞めた。
 徐々に激しくなる目覚めた火はその子が眠るアルバムをまずそうに喰っていった。痛い、苦しい、焼ける、ただれるボクの意識はそこに注がれていた。もしもあの子を燃やさなかったらどんなに良かっただろうか? 人は事故だというし、ボクもその通りだと思う。けれども校舎から逃げ遅れるのはボクで良かったと何度も悔やむのはその通りだろうか? 
 盗んだ白い枝がパキッと鳴った。
 燃やしているのは、いや、燃やしたいのはボクの肢体で心で気持ちで真髄で涙。霞んだ灰が舞い記憶の奥底で鈍い破裂音が聞こえた。

灰の破裂音

灰の破裂音

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-15

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