小説感想さ行作家
「廃墟に乞う」佐々木譲
第142回直木賞受賞作
オージー好みの村 …平成19年7月号
廃墟に乞う …………平成20年7月号
兄の想い ……………平成19年10月号
消えた娘 ……………平成20年1月号
博労沢の殺人 ………平成20年4月号
復帰する朝 …………平成21年3月号
以上「オール讀物」
道警本部捜査員、仙道孝司は過去の事件でPTSDを発症、休職していた。
"休職中だから、自由に動ける"ことを理由に独自捜査の依頼を受け解決への糸口を掴む、という構成の短編小説。
佐々木譲さんは長編が得意、というか、評価が高い。
今作の選評でも、長編を無理矢理短編小説にしたような感があり、物足りないと書かれていた。
全編通して逮捕まで書かないところがそう評される理由だろうか?
過去の事件をあまり掘り下げない点も含めてかもしれない。
「制服捜査」での刑事ではなく、駐在員が事件を捜査するのも真新しかったが、休職中の刑事というのも楽しかった。
捜査権限が無いからこそのアプローチがエンターテイメントとして楽しめる。
私は、このあえて書かないところが好きだなぁ。
佐々木譲さんの警察小説には、刑法と刑事個人の酌量の対比が良く出てくるが、今回もある。
表題の「廃墟に乞う」は秀逸。情景描写も相まって哀しみが滲みでるような文体。完璧な文章のお手本みたいだ。
佐々木譲さん、長くてちょっと入りにくいというかた、是非この作品からお試しを。
2011年3月22日のblog記事
「333のテッペン」佐藤友哉
333のテッペン……「Story Seller」
444のイッペン……「Story Seller」vol.2
555のコッペン……「Story Seller」vol.3
666のワッペン……平成22年7月号「小説新潮」
333メートルの東京タワーの登頂部で男が死んだ。
東京タワー内にある土産物屋で働く26歳のフリーター土江田(とえだ)は事件に興味が無かったがバイト先なので否応なしに巻き込まれる。
事件解決の為に雇われたという探偵に助手になってくれないか、と言われるも、あっさり拒否した。
拒否したはずだったのだが。
佐藤友哉さんは初読み。前レビューからの知識だとだいぶ癖があるんではと思っていたが、そうでも無かった。
文体はとても読みやすい。
独立した短編かと思ったら連作短編だった。
333と444を読み終えたときはメタフィクションだと思った。
一応、メタって? ってかたの為に書くと、フィクションの中にフィクションの設定を持ち込むってのが大意だ。
細かく分類するとエライことになるので気になるかたはwikiっていただくとして、
漫画なんかで、主人公が「主人公だから死なない!」とか言っちゃうのもメタだ。
序盤2話はキャラに背景は無い。
犯人役・探偵役・刑事役の駒が、それぞれの役割をロールする。
役割からはみ出したことは言わないし、しない。
「そんな探偵のキャラは古すぎる」とかいう台詞が随所に出てくるし、あらゆる有名ミステリー作品のトリックの小ネタが会話に織り込まれ、ミステリーを良く読んでる人は「あぁ、あったなぁ、そんな話。」と懐かしんだりニヤニヤしたりするだろう。
だから、これはそれを楽しむメタ文学なんだって思ってた。
だけど、555で展開が変わる。
役割からはみ出すのだ。
「探偵ならそんなことはしないし言わない」
って約束を破る。
そして、「あれ? メタじゃないのかな?」
と思ってたところに666だ。ズシンと来た。そう来たか! やられたわ。
これはメタ形式と思わせた時事小説だ。
散りばめられたヒントから数年前に起きたある事件をモチーフに書いたのだと気付いた。
でも結末は書ききってない。
読者側に妄想させるスタイル。
あんまり万人受けするタイプではないが、満足だ。こういうの大好き。
他の作品も是非読みたい。
2011年8月6日のblog記事
「桜さがし」柴田よしき
親友が「桜」や「春」がテーマの小説の紹介をやるらしく。
本屋にて「桜」にちなんだ小説無いべか、と探して購入した作品。はて、柴田よしきさんね、よく見かける名前ではあるが、どんなん書くのかね、と思い、とりあえず文庫本だったので解説書から読んでみた。
おぉ!? 女性作家さんなの!?
スンマセン、柴田よしきって名前から、男性作家さんだとばかり思ってました。
本のタイトルは「桜さがし」で2話目に収録。
中学時代の新聞部の仲間が大学生や社会人になってからの物語で新聞部のメンツ4人と部の顧問の元教師、現在は小説家を中心に描く連作短編集でした。
恋愛小説か、苦手なんだよな。と思いながら読んだんだけど。
読みたいと思って読み始めたわけでなく「桜」がテーマになってるものを、というきっかけで選んだ分、特に期待はしてなかったってのもあると思うんですが。
意外にも面白かった。あー、でもどうかな。恋愛小説が好きな人には物足りないかもしらん。キュン度は低いわ、描写が淡々としているし。私にはその淡白さがちょうど良かったです。
舞台が京都で京都の四季や行事が丁寧に描かれているので、京都旅行した気分になりますね。物語に出てくる恋愛は切ないものが多く、別れの物語が多いんですが、恋愛描写だけでなく、人生においての出会いや別れが根底のテーマになっているので。春に読むのはぴったりでしたね。
情熱的な恋愛ではなく、自分の人生や相手の人生、自分の夢や理想、現実的な生活を考えながら、別れや再燃を決めるあたりが面白いです。ただ人によっては「そんなリアリティーを小説でわざわざ読みたいとは思わん」という意見になるかもなぁ。
むしろ恋愛小説より、【植物小説】としては質が高いのではないかと(笑)スゲー数の植物が出てきます。食べ物も含めね。そういうのも薬膳料理が盛んな京都っぽさでもある。神社仏閣も出てきますね。【京都プレゼン小説】としても良さそうです。
「古都の四季描写を楽しめるほろ苦い恋愛小説ですよ」が一番しっくりくるかな。
2014年4月7日のblog記事
「東京バンドワゴン」小路幸也
平成18年4月30日「集英社」
明治から続く老舗の古本屋「東京バンドワゴン」を切り盛りする堀田家と、堀田家に関わる近所の人たちの物語。
語り手は亡くなったサチさん、東京バンドワゴン3代目店主である堀田勘一さんの奥さんだ。
春「百貨事典はなぜ消える」
古本屋の書棚に朝、百科事典が2冊現れ、夜になると消えている。堀田家は、その謎解きをする。
夏「お嫁さんはなぜ泣くの」
勘一の孫、青は美形で軽い性格。女問題を度々、堀田家に持ち込んでいたが、今度はいきなり嫁候補の娘さんがやってきた。同時に家族にストーカー騒ぎが。
秋「犬とネズミとブローチと」
勘一の孫、紺が、仕事で本の値付けに廃業予定の旅館へ向かった。だが仕事が終わり、朝になると、本だけでなく、依頼主も従業員も誰もおらず、旅館はもぬけの殻だった。一体何故?
冬「愛こそすべて」
勘一の孫、藍子が社長令嬢の依頼で古本の買付に向かった。だが相当の本好きなのに全てを手放すというのをおかしく思い調べると政略結婚を避ける為に、という理由で。堀田家は、なんとか本を高く買い取ろうとする。
4つの季節からなる連作短篇。
ぐるっぽや良く読みに行くブロガーさんの記事で「東京バンドワゴン」を見かけていたので、以前から読みたかった。
連続ホームドラマを観ているような気分だった。
構成としては、最初にちょっと変わった出来事が語られ、家族の食卓シーン(ここの会話がすごく面白かった)を挟み、勘一の孫と息子、孫の嫁、曾孫たちが捜査をして、解決する。というミステリー手法を使った家族ドラマだ。
結末は幸せな形で、読後感さわやか。
けれど、謎解きの仕掛けは凝っていて、読者がすぐに気づくからくりの他にも、意外な謎が転がっていたりして、その裏切りがなんとも小気味良い。
一番気に入った台詞は
勘一「マタダメダチョコか?」
亜美(紺のお嫁さん)「マカダミアチョコです。」
です(またダジャレか)
台詞のやりとりひとつ取っても楽しめる作品。
良い読書でした。
読書blog始めて、ぐるっぽに入って、いろんな作家さんに出会えるようになったことに感謝です。
2011年4月18日のblog記事
「マイ・ブルー・ヘブン」小路幸也
平成19年6月号~平成20年5月号「青春と読書」
東京バンドワゴンシリーズ第4作。
語り手は、古本屋東京バンドワゴン三代目店主、堀田勘一の妻サチさん。ただし舞台は昭和20年、終戦の年。
華族のお嬢様「五条辻咲智子」の邸宅に米軍がやって来て両親が連れて行かれてしまう。
咲智子は父から木箱を託され、肌身離さず持ち歩き箱を守ること、逃げることを命じられ裏口から出された。
親戚の家に身を隠す為、駅に向かうと、米軍に見咎められ連行されそうになる。
そこに現れた江戸っ子口調なのに英語をスラスラと話す若者に助けられる。
彼が堀田勘一。咲智子は彼の家に身を隠すことになり「サチ」と名前を変えて偽装結婚で勘一の嫁として過ごすことになった。
序盤は驚いた。え? サチさんって華族だったの?
最初は偽装結婚だったの?!
このあたりはシリーズ2と3に出てくるのかな?
1作目を読んで、4作目に入ったので、そのあたりは分からないけれど、独立したお話なので、1作目を読んでいれば十分楽しめる。
戦後直後というとキナ臭いことは沢山あったはずだが、そういったものは裏に匂わすだけで、具体的な表記はあまり出てこない。
シリーズの温かな空気は時代が違っても満載だ。
小路さんの他の作品の書評で、私が読者登録している、ゆずさんが
「命を掛して守る」
といった台詞が浮かずにしっくり来る世界観を書くのが巧い。という意味のことを書いてらしたが、ホント、そう思う。
ドラマの「不毛地帯」を好きで、よく観ていたので、街並みや空気は映像でイメージできた。
けれど、雰囲気は「朝の連続テレビ小説」だなぁ。
登場人物が、みんな良い人。さすがにそれは現実的じゃないだろうとは思うが、このシリーズはこれでいっか。とか考えちゃう。
我南人の名前の由来や、堀田家の温かさとお節介の始まりがよくわかる原点。
なにより勘一さんが、えれぇカッコイイ。
ただ、10代の読者は解らないか。昭和の雰囲気を体感していないと楽しさは減るかもしれない。
まぁ、コレをきっかけに昭和を知るっていうのもアリかな。
2011年4月26日のblog記事
「シー・ラブズ・ユー」小路幸也
平成19年5月30日「集英社」東京バンドワゴンシリーズ第2段。
冬「百科事典は赤ちゃんと共に」
近所に住む大学生が「お金に困った」と祖父の形見の百科事典を売りに来た。
しかし、買い取った中の一冊が、真ん中の数十ページが四角く切り取られていた。
同時にカフェには赤ちゃん置き去り事件が。
さぁ、どうする?
春「恋の沙汰も神頼み」
中学生になった花陽に数学を教えてもらう為に藤島に家庭教師を依頼。
どうやら花陽は藤島に恋をしている様子。
藤島は藍子が好きなんじゃないかと男性陣は予想。
まさか親子で三角関係に?
夏「幽霊の正体見たり夏休み」
花陽と研人が夏休みに出かけた海辺で、おばあちゃんに一冊の古本を渡される。
勘一が鑑定してみると、なんと中から勘一の若い頃の写真が出てきた。
勘一はその写真を持って居なくなってしまった。
この本にはどんな秘密が?
秋「SHE LOVES YOU」
我南人の奥さん秋実さんの七回忌がやってきた。東京バンドワゴンの面々はそれぞれ準備が忙しい。
紺と青は、七回忌が終わったら、姉の藍子にそろそろマードックさんと結婚してほしいと思い、計画を練り始めた。
前作の雰囲気そのままに少しずつ進んでいる。
ホントに朝の連続テレビ小説を観ている気分になる作品だなぁ。
第4作目を先に読んだのは良かったかもしれない。
1作目を読んだ時よりも、語り手のサチさんに感情移入できたし、勘一さんの台詞がとても楽しめた。
相変わらず、食卓の会話シーンが好きだ。
コーンポタージュに七味入れるとは。
今度、やってみよう。
このままの気分で明日から第3作目を読みます。
2011年5月14日のblog記事
「スタンド・バイ・ミー」小路幸也
平成20年4月30日「集英社」
東京バンドワゴンシリーズ第3弾。
秋「あなたのおなまえなんてぇの」
古本屋のガラスケース内の本が並び替えられていた。
いったい誰が何のために?
また〈ほったこん ひとごろし〉とクレヨンで書かれた本も見つかる。
売り手を調べてみると偽名を使用していた。
冬「冬に稲妻春遠からじ」
堀田家行きつけの店〈はる〉さんが臨時休業している。風邪を引いたからだが、治っても開けないらしい。
藍子が事情を聞くと女将さんの真奈美さんが新しく入った板前のコウさんにプロポーズして振られたとのこと。
このままでは行きつけの店が無くなってしまう。
堀田家は恋のキューピッドになるのだ。
春「研人とメリーちゃんの羊が笑う」
研人の同級生、芽莉依ちゃん。アダ名は〈メリーちゃん〉
東京バンドワゴンに本を読みに毎日、学校帰りに寄っていく。
「いつも羊が追いかけてきて、東京バンドワゴンに寄ると消えるのだ」
と話す彼女。〈メリーさんの羊〉ってこと?
子どもの空想では? と考えたがこっそり後をつけた研人のデジカメには、本当に二足歩行、顔だけ羊の羊男が写っていた!
夏「スタンド・バイ・ミ-」
堀田家の隣にある銭湯が改築中だ。
ミュージアムにするらしい。
その名もアートと銭湯を合わせて〈アートウ〉
我南人が関わっている為に取材やテレビ出演にと忙しい。
だが、それにともなって堀田家の周りにもマスコミが増えた。
なんだか善からぬ輩も居るようだ。
うん、とりあえず〈アートウ〉に吹き出した。
そのネーミングセンスはどうか!
相変わらず、良い人たちの賑やかで幸せな物語。
泣いた、笑った。
特に、羊男。そう来ましたか!
とうとうシリーズ全部読み終わってしまいました。
楽しかった。
ただ、藤島さんはカッコよすぎでしょ、あれはずるいよ。
あんなに何でも出来て金持ちで性格も良いとか。
傍に居られたら男も女も困っちゃうよね。
勘一さんには悪いけど紺と青の予想が当たったら面白いなぁ。
なんて夢想してみたり。
新しいシリーズ出てほしいですね~。
けど、勘一さんが居なかったり、弱ってしまった物語は嫌かもしれない。
100歳まで元気な設定で出してくれれば!
2011年5月16日のblog記事
「アマルフィ」真保裕一
平成21年4月30日「扶桑社」
外交官黒田康作シリーズ第一作目。あとがきに拠ると「ホワイトアウト」での織田裕二さんの演技を原作者本人も気に入っていて、映画の脚本を引き受けて、小説は映画とは違うものを書いた、らしい。
結末や途中は大きく違うが、日本人母娘が誘拐され、黒田外交官が父親の振りをしつつ、事件解決に向かう滑り出しは一緒だった。
真保さんの小説は「ホワイトアウト」しか読んだことが無いのだが、若干、テロ側に思い入れが強い傾向があるように思う。私は、やや右寄りの中道派な思想に近いので気にならないが、そこらあたりが気に障るかたはいらっしゃるかもしれない。
それと、小説というより脚本に近いような。キャラの外見や動きがト書きのメインで、映画、ドラマを観た前提でないと、あまり楽しめないかもしれない。
私は、ドラマを毎週観ている為、主人公は織田裕二さんを思い浮かべながら読んだし、俳優として好きなので、存分に楽しめた。
ドラマでの、何故、あんなに格闘慣れしているのか、も分かって満足だ、ドラマ観覧がより楽しめる。
ただ、困ったことが発生。
真保さんのせいでは決して無いのだが。
アマルフィの白い壁の建物、狭すぎる道、という描写が出てくるたびに、
映画ではなく、「水曜どうでしょう」を思い出して笑ってしまう。
ドラマ撮影(ハケンの品格)の為に日焼けが出来ない大泉が、顔が真っ白になるまで日焼け止めを塗りたくり、白い壁の建物の中からオレをカメラで探し出せるか? と遊んでいたアレだ。
緊迫したシーンほど思い出し笑い。水どうファンにはオススメできない作品。
2011年3月3日のblog記事
「天使の報酬」真保裕一
平成22年12月20日「講談社」
元厚生労働省官僚の霜村元信の娘、霜村瑠衣に「テロ準備罪」容疑がかかった。
邦人保護担当領事に就く外交官黒田康作は上司の命を請けサンフランシスコの霜村邸宅で家宅捜索に立ち会う。
霜村瑠衣はロベルト・パチェコという日系ボリビア人の恋人が居て、警察はロベルトがテログループに関与していると見ていた。
一方、瑠衣とロベルトは日本に来ていた。目的は7年前の事件の真相を暴く為。
隠された真相を追う者、隠す者、外務省、警察庁が錯綜する。
黒田外交官シリーズ2作目。ドラマとは展開がまるで違う。前作「アマルフィ」の小説と映画よりもずっと剥離している。ドラマでは霜村は元外交官で黒田と面識があるが、小説では初対面だし、ボリビアがメインで、ドラマのメインのメキシコはまったく出てこない。
大垣刑事(ドラマでは柴咲コウ)のキャラもまったく違う。パラレルワールドと捉えたほうが良さそうだ。
ラストがちょっとバタバタしたなぁ。詰め込み過ぎ感がある。
ただ、感心するのは黒田外交官のブレのなさ、だ。パラレルワールドでも、ドラマも映画も小説も黒田外交官だけは同一の印象がある。
織田裕二さんが天才なのか、小説を読み込んでいるか、原作者が織田裕二さん好きなのか、私のひいき目か。
このシリーズは黒田外交官の意思の強さを楽しむと面白く読めると思う。
しかし、ドラマ以上におっさんだらけだな。私は、好きだけど。
加齢臭が苦手な人には不向きな作品。
なんじゃそりゃ。
2011年3月13日のblog記事
「アンダルシア」真保裕一
平成23年6月9日「講談社」
「アマルフィ」
「天使の報酬」
に続く黒田外交官シリーズ3作目
今回も映画の脚本が先で、それを元に小説用に書き直したもの。
このシリーズに関しては映画やドラマを観ていないと楽しめない造りになっている。
今回の舞台はスペインとフランスに挟まれた小国「アンドラ公国」が舞台。
当然、地理に弱い私は、知らなかった国。
ただ、バスク自治区の話が出てくるので、馳星舟さんの「エウスカディ」を上下巻でガッツリ読んでいたのが役に立った。
石油利権争いのEUとアメリカの小競り合いも、いろいろな本で読んでいた。
前2作品と比べるとアクションシーンは少なめ。情報戦だ。
それゆえ黒田外交官の知識の深さっぷりと、おっさんたちの駆け引きの渋さ、理想と現実に挟まれた小国ゆえの苦悩なんかが、たっぷり堪能できる。
あ~。いいわ。黒田外交官めちゃくちゃカッコイイ。
眉間のシワが似合う男って大好きだ。
経済戦争の話が好きな人にはオススメ。
ただ、こういうの読むと、ホントにアメリカ嫌いになるのと。
あらゆる意味で日本の政治力の無さにガッカリする。
まぁそれが現実だ。
黒田外交官みたいな官僚が現実に居ればよいが。
現実はもっと悲惨だろうな。
それでも無関心で居るよりはいい。
そう考えて、こういうタイプの小説を読むようにしている。
他のテロ小説と比べると警察小説傾向が強いので、警察小説が得意な人には向いてるかもしれない。
2011年9月18日のblog記事
小説感想さ行作家