歌っていろよ、希望の詩を

約束をしようか。

君の希望の歌を聴かせて

約束したからね、と私は声に出さずに呟いた。

希望の歌を歌っていると。最後の瞬間まで生きる。そう約束した。

あなたが闇を彷徨うならば、私はもう惑わすことを言わない。
あなたが日の光を浴びてくれるならば、私はいつでも窓を開けておく。

共に生きると誓おう。
今ここに約束しよう。

だから、もう悲しい歌は歌うな。
光を灯す歌が聴きたい。日常がほのぼのと続いて行く歌が聴きたい。

本当はとか、現実はこうだとか、そういうのはいい。嫌と言うほど見飽きてる。

新しい明日を見に行こう。

「海に向かって、走り続けて」

私はタクシードライバーに声をかけた。
「はい」と面白好きな彼は返事して、色の変わり始めた空に向かって車は走り出した。

ラストスパートじゃない、これがスタート地点。
夜が明ける、やがて日が昇り出す。

海辺に着いたら、彼を連れて浜辺の店でサンドイッチを買おうと、私は潮の香りを嗅ぎながらシートにもたれて考えた。

ぴゅうぴゅうとかもめが飛ぶ。
助手席に座りたがる犬が、後ろに座る私に向かって「ワン!」と嬉しそうに吠えた。

向こうに着いたら、何をしようか、泳ごうか、散歩しようか。

カードも浮き輪も持ってきた。
私はワクワクしている犬と彼を見て、用意周到な自分にふふんと鼻で笑って満足した。

今日は一日快晴なり。夜は雨。
アイフォーンを閉じる。

今日は何して遊ぼうか、と私は犬を後ろから撫でた。
犬はキャンキャン、と飛び跳ねて後部座席に飛んできた。

おー、跳んだなぁ、と彼が喜んで声を上げた。
朝日が水平線の向こうから現れ、彼はグラサンを取り出して、「コーヒー買ってく?」とドライブインにウインカーを出した。

歌っていろよ、希望の詩を

約束しましょう。

歌っていろよ、希望の詩を

こんなご時世ですから。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-11

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