聴しの栞

聴しの栞

今日もずっと考えていたの
あなたへの想いに気付いた日のこと
大げさに思い切り泣いたの
あなたが欲しくて結ばれたくて

吐き気と眩暈を持て余した
いつものカフェの喫煙室で
七月の綿雲を吹き流した
「きっとただ弄ばれていて」
嫌いになろうとしたのに本当は
あなたの匂いに包まれたくて

こんな自分じゃ駄目だって
すっかり諦め掛けていた
このページから始まる
誰もが聞き慣れた物語
ありがとう、それだけは尽きない
苦し紛れに絞り出すような言葉を
受け容れてくれた、まして
同じ想いを抱いてくれていたあなたに


もう味わうこともないかも
あなたを想い始めたときの苦しみ
それでも何度も読み返すの
あなたの愛しさ忘れたくなくて

違和感と痛みに耐え兼ねた
心を何処に預けたって
八月の薫風に後ろ髪引かれた
「きっと一瞬の気の迷いで」
嫌いになろうとしたのに本当は
あなたを穏やかに愛したくて

とても釣り合うひとじゃないって
それでも隠し切れなかった
このページから始まる
私にも赦された物語
ありがとう、それだけは尽きない
苦し紛れに絞り出すような言葉を
受け容れてくれた、まして
同じ想いを抱いてくれていたあなたに

聴しの栞

聴しの栞

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-08

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted