王様のパラドックス

おとぎ話をしようか
「一人残された王の孤独」
獣は静かに捕まるのを待つ


私が読み手で君が聴き役
不思議と眠くなる呪文
瞳を閉じる間際
君は私の髪にそっとキスをする
その瞬間がいつも心地良い

人の一生は、パズルのピースを埋めて行くこと
ただ世の中は複雑すぎて
隣り合うピースを見つける事もままならない
奪われたピース
失くしたピース


おとぎ話をしようか
「一人残された王の孤独」
獣はわざと罠に嵌る
(葬られた一族、責任から逃れた愚か者)

あれ、可笑しいな
君はいつも私の話を受け止めてくれていたのに
今日は少しも応答無しだ

電話をさせてくれ
声を聴きたい
未だ確かな輪郭も為さない君の声

瞳を閉じる寸前
君は私の髪にそっとキスをする

今夜は何だか可笑しい
その感触を感じない

簡単に、そっちの世界に行けたなら……

君が男でも女でもどちらでも良い
私の話を聴いてくれ
一人は寂しい

(若き王様、可哀想な王様)


おとぎ話をしようか…
いや、もう良い
自分自身の話はもう沢山だ

「一族のみんなに守られ、生き残った王は、幸せには暮らせませんでした」

めでたし、めでたし
これは悲劇か?それとも喜劇?


まるでパズルゲーム
最後のピースはどこへ行った?

もうこれ以上は耐えられそうにない
地下に隠して置いた取っておきのワインも効き目が無い
もう駄目だ
すまない、すまない

見捨てた家来の亡霊たちよ
(王様、王様、これ以上苦しまないで、これを飲んで)
ありがとう、礼を言うよ
愛しい幻聴よ、さようなら

意識が遠のく間際
私は君の額にそっとキスをする


今謝るのはあまりにも遅いけれど


その瞬間の微笑み、一瞬の愛惜の念に
感情の一部を託し、王様は永遠の眠りについた……

王様のパラドックス

「なるようになる」は無敵の呪文。
読んでくださりありがとうございました。

王様のパラドックス

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2016-11-07

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted